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■日本再建のため、教育基本法の再改正を――ほそかわ私案

2006.5.11初版/2007.1.7改題及び一部改訂

 

<目次>

はじめに

1.改正教育基本法(平成18年版)の全文

2.教育基本法の再改正のための私案

3.説明〜なぜ再改正は必要か

 

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はじめに

 

戦後のわが国の教育を呪縛してきた教育基本法について、拙稿「戦後教育を呪縛した教育基本法〜その弊害と改正」に書いた。その拙稿において、私は、平成18年12月に成立した改正教育基本法の成立過程の問題点を述べ、また同法の欠陥を指摘した。そして、この教育基本法の再改正が必要であると書いた。

 教育は「国家百年の計」という。その重要な教育の基本方針を定める教育基本法が、改正はされたものの重要な欠陥を持っている。これをそのまま放置しておくならば、我が国の教育の真の改革は、なしえない。

本稿では、最初に、平成18年12月成立の改正教育基本法の全文を掲載する。次に、この教育基本法の再改正案を提示する。その後に、再改正案の主旨を説明する。

私は、教育の専門家でも、法律の専門家でもない。一介の素人である。ただ教育というこの日本の命運と将来にかかわる重要問題について、国民の一人として、また一人の親として、考えてみたいと思うのである。

 

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1.改正教育基本法(平成18年版)の全文

 

教育基本法(平成18年法律第120号)

教育基本法(昭和22年法律第25号)の全部を改正する。

 

目次

前文

第一章    教育の目的及び理念(第1条―第4条)

第二章    教育の実施に関する基本(第5条―第15条)

第三章    教育行政(第16条・第17条)

第四章    法令の制定(第18条)

附則


 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。

 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。

ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

 

第一章 教育の目的及び理念

 

(教育の目的)

第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 

(教育の目標)

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

1 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。

2 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

3 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

4 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。

5 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

 

(生涯学習の理念)

第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

 

(教育の機会均等)

第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

 

第二章 教育の実施に関する基本

 

(義務教育)

第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。

2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。

3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

 

(学校教育)

第六条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。

 

(大学)

第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

 

(私立学校)

第八条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

 

(教員)

第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

 

(家庭教育)

第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 

(幼児期の教育)

第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

 

(社会教育)

第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。

2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

 

(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)

第十三条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

 

(政治教育)
第十四条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

 

 

第三章 教育行政

 

(教育行政)

第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。

3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。

4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

 

(教育振興基本計画)

第十七条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

 

第四章 法令の制定

 

第十八条   この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。

 

附則

 

(施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 

(社会教育等の一部改正)

2 (略 関連法における「教育基本法」は改正教育基本法を意味すること)

3 (略 関連法における対照条項の変更に関すること)

 

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2.教育基本法の再改正のための私案

 

次に、改正教育基本を再改正するための私案を、全文にて示す。

 

◆新教育基本法〜ほそかわ私案

 

前 文

 

我々日本国民は、たゆまぬ努力によって独自の歴史、伝統、文化を築いてきた。わが国近代の発展は、教育の振興によるところが大きく、敗戦後の復興と成長もまた、国を担う人材の育成に努めた成果である。
 しかし、家庭、社会、世界の変化により、今日、わが国の教育は新たな課題に直面している。
 我々は、わが国のさらなる発展とともに、世界の平和と人類の福祉に貢献することを願い、自他の敬愛に基づく公共の精神を尊び、多様な文化の共存に努め、自然と文明の調和を図る国民の育成を期するとともに、歴史と伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 我々は、この教育は、家庭、学校、社会、国家を通じて実現されるべきものと認識し、わが国の未来を切り拓く教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

教育の目的
第一条 教育は、人格の完成を目指し、共同体のかかわりの中で各個人に内在する可能性を開花させ、心身ともに健康な国民を育成するとともに、その個人が属する様々の社会の維持及び発展に寄与し、家庭、社会、国家、ひいては世界に貢献する日本人の育成を図ることを、目的とする。

教育の目標

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

1 知育、徳育、体育調和もって施し、幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。

2 個人に内在する価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

3 家庭において、親子、夫婦等の家族の敬愛、男女の協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

4 我が国の伝統と文化を尊重し、愛国心を涵養するとともに、他国を理解し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

5 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。

6 食に関する教育を、生きる上での基本であり、知育、徳育、体育の基礎となるべきものとして推進し、子供を健やかに成長せしめ、また国民の健康が増進すること。


教育の方針
第三条 教育の目標の達成は、あらゆる機会、あらゆる場所で追及されなければならない。
2 国民は、ひとしく教育の目標達成をめざし、大人及び親として、相互に人格を成長、発展させることに努め、次世代の育成に貢献するものとする。
3 男女は、互いにその特性を生かし、相互に協力し合って家庭、社会、国家を共に担う責務があることを、教育上重視するものとする。

生涯学習の理念

第四条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。


教育の機会均等
第五条 すべて国民は、その能力に応じてひとしく教育を受ける機会が与えられ、人種、信条、性別または社会的身分によって、教育上差別されない。ただし、これは必要な区別を排除するものではない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

3 国及び地方公共団体は、意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者への奨学の措置を講じなければならない。

家庭教育
第六条 教育の原点は家庭にあり、親は子の教育について第一義的責任を有する。父母その他の保護者は、人生最初の教師であることを自覚し、自らが保護する子供に、しつけを行い、生活のために必要な習慣を身に付けさせ、自立心を育成し、心身の調和の取れた発達を図るよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、家族の絆を育成及び強化し、家庭教育の充実を図るため適切な支援を行う責務を有する。
3 国及び地方公共団体は、国民の家庭の形成と家庭教育を支援するため、親となり、子育てをするための学問及び教育を振興することに努めるものとする。


幼児教育
第七条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

2 幼児教育は、家庭との緊密な連携を図り、これを助け、かつ補完するものでなければならない。

義務教育
第八条 国民は、教育の目的を達成するため、国民一般に共通する基礎教育としての普通教育を、ひとしく受ける権利を有する。
2 国民は、その保護する子供に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
3 国は、前項に定める義務教育に関する権限と責任を有する。
4 国または地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は徴収しない。

学校教育
第九条 学校教育は、教育の目的を実現するための中心的な機能を有する。
2 国及び地方公共団体は、学童、生徒、学生の健やかな成長に資する良好な環境の整備、振興に努めなければならない。
3 学校における教育活動は、公的な性格をもつものであって、学校は、国または地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
4 国は、普通教育を行なうため、初等及び中等教育を整備する。また、普通教育の成果の上に、個別的部分的な教育を施す専門教育及び職業教育の整備に努めるものとする。

家庭、学校、地域の連携と協力
第十条 家庭、学校及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、前項の連携と協力を促し、教育の目的達成と教育環境の整備を図るよう努めるものとする。

初等中等教育
第十一条 初等中等教育は、学校教育の基礎をなすものであり、児童、生徒の発達に応じて、段階的に教育の目的達成をめざすものとする。
2 国は、初等中等教育について全国的に一定水準を確保する責務を有し、内容その他の基本的な事項を定めるとともに、その達成状況の評価を行う。
3 地方公共団体は、国の定めた初等中等教育に関する施策を確実に遂行するものとし、更に地域の特性に応じ、独自の基準の制定その他の独自の施策を立案実行することができる。

高等教育
第十二条 高等教育は、高度で専門的な知識と技術を備え、勤労と責任を重んじ、自主的な精神にみちた人材の育成を図ることを目的とする。
2 大学は最高学府として、真理の探究を通じて、新たな価値を生み出し、学術の進展や我が国及び国際社会の発展に貢献する人材を養成するための教育及び研究の機関とする。

職業教育
第十三条 国及び地方公共団体は、国民が個性と能力に応じ、職業に関する知識と技能を身につけることを期し、職業教育の振興に努めるものとする。

私学振興
第十四条 私立学校の有する公的な性格及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

 

社会教育

第十五条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。

2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供、情報通信機構の整備その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。


公民教育
第十六条 公民教育は、国民が国家社会の形成員として、公私の区別をわきまえ、積極的に国政に参加し、また公共の利益の追求に取り組むことを目的として行われなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

 

宗教教育

第十七条 宗教的情操の涵養は、道徳の根底を支え人格形成の基盤となるものであることにかんがみ、教育上重視するものとする。

2 宗教に関する教育は、宗教への理解と寛容の態度を養うことが重視されなければならない。

3 国及び地方公共団体が設置する学校においては、特定宗教の信仰に導き、またはこれに反対するための教育を行ってはならない。

 

環境教育

第十八条 日本と地球の環境を保全するため、あらゆる段階の教育において、自然を尊び、自然との共生や一体感を育んできた日本人の伝統と文化の維持、継承を図るものとする。

 

教員

第十九条 法律に定める学校の教員は、法令に従い、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

 

教育行政

第二十条 教育行政は、国民全体に責任を負い、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるものとする。

 国は、教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られるよう、地方公共団体との適切な役割分担を行い、これを監督する権限を有する。

3 地方公共団体は、国との緊密な連携を図り、区域内の教育に関する施策を策定し、これを実施する権限と責任を有する。

 

教育振興基本計画

第二十一条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

 

補則

第二十二条   この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。

 

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3.説明〜再改正はなぜ必要か

 

 改正教育基本法の再改正は、なぜ必要か。次にその説明を行う。以下、ほそかわ私案の条文の順序に従って、条項ごとに説明したい。

 

(1)前文

 

 今回の改正において、旧教育基本法の相当部分が修正され、多数の条項が新設された。改正された教育基本法を貫く思想は、前文に表現されている。まず、旧法と新法の前文を比較してみたい。

 

――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●旧教育基本法

 

 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

●改正教育基本法

 

我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。

 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。

ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

新法の前文は、一見して、旧法を一部修正・加筆したものであることがわかる。全体によい修正が行われているが、私は「公共の精神を尊ぶ」という文言と、「伝統を継承し、」という文言を加えたことを評価したいと思う。
 今回の教育基本法の改正は、戦後教育の矛盾の是正と、今日の教育の惨状の改革に、真の目的があったはずである。少年による凶悪犯罪、いじめ、不登校、学級崩壊、学力低下、道徳の崩壊、ニートの増加等々、我が国の教育は、深刻な事態に陥っている。
 私は、戦後教育の失敗の相当部分が、自国の歴史を否定または忘却して、自虐的な歴史観に陥ったこと、また「公」を忘れ、「私」に傾きすぎたことにあると考える。この失敗から立ち直るには、歴史教育の建て直しと、道徳教育の復活が不可欠である。それゆえ、私は、単に伝統の継承だけでなく、歴史の尊重をも入れるべきと思う。
 戦後教育の失敗は、さらに元をただせば、戦後教育が占領下において、GHQの強制によって始められたことによっている。現行の憲法は占領下に作られたものであり、旧教育基本法はその憲法の精神を実現するためにつくられた。
 それゆえ、教育基本法の改正にあたっては、「日本国憲法の精神にのっとり、」などと盛り込むべきではなかった。あらゆる法律は、現行の憲法のもとに作成されることは自明の理であり、あえて書く必要はないのである。
 以上の考察に基づき、次に再改正の私案を示す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって独自の歴史、伝統、文化を築いてきた。わが国近代の発展は、教育の振興によるところが大きく、敗戦後の復興と成長もまた、国を担う人材の育成に努めた成果である。
 しかし、家庭、社会、世界の変化により、今日、わが国の教育は新たな課題に直面している。
 我々は、わが国のさらなる発展とともに、世界の平和と人類の福祉に貢献することを願い、自他の敬愛に基づく公共の精神を尊び、多様な文化の共存に努め、自然と文明の調和を図る国民の育成を期するとともに、歴史と伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 我々は、この教育は、家庭、学校、社会、国家を通じて実現されるべきものと認識し、わが国の未来を切り拓(ひら)く教育の基本を確立するため、この法律を制定する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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(2)教育の目的

 

 旧教育基本法は、第一条に、教育の目的を定めていた。改正教育基本法も、同様である。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  旧教育基本法

 

第一条(教育の目的)
 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 

  改正教育基本法

(教育の目的)

第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そもそも各国が公教育を行なうのは、将来、自国を担う人材を育てるためである。教育の目的は人格の完成をめざすという理念を掲げる旧教育基本法には、個人の価値が強調される一方で、公共的な意識の形成が明記されていなかった。また自国の伝統の尊重や愛国心という言葉がない。その結果、戦後教育は、私的な価値を優先する個人主義的で、国に対する愛情や誇りを持たない人間を多く生み出す傾向に陥った。
 この点、改正された現行法は、なお目的に明確でない点があると思う。この点をさらに改善するため、以下に私案を示す。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  ほそかわ案

 

(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、共同体のかかわりの中で各個人に内在する可能性を開花させ、心身ともに健康な国民を育成するとともに、その個人が属する様々の社会の維持及び発展に寄与し、家庭、社会、国家、ひいては世界に貢献する日本人の育成を図ることを、目的とする。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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(3)教育の目標

 

旧教育基本法は、第ニ条に教育の方針を定めていた。これに対し、改正教育基本法は、第二条を「教育の方針」ではなく、「教育の目標」としている。第一条で、教育の目的を定め、次に目標を定めたわけである。そこで、この目標の検討をしてから、方針の検討を行う。

なお、目的とは「成し遂げようと目指す事柄。行為の目指すところ。意図している事柄」(『広辞苑』)であり、目標とは「目的を達成するために設けためあて」(同左)である。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●改正教育基本法

 

(教育の目標)

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

1 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。

2 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

3 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

4 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。

5 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

教育の目標が、網羅的に掲げられているが、その分、羅列的で、明確な目標がつかみにくい。今回の教育基本法の改正の過程で大いに議論されたことの一つが、第5号に「愛国心」という言葉を盛り込むかどうかだった。公明党が「愛国心という言葉は、戦前の軍国主義を思い起こさせる」として反対した結果、自公案は「国」ではなく「国と郷土」とし、「心」ではなく「態度」という言葉を用いた。その前に「伝統と文化を尊重し、」という言葉を加えている点は評価できるが、いかにも妥協的・折衷的なまとめ方だった。この自公案がそのまま、全く修正されずに、改正教育基本法の条文となった。
 その他の点では、新法は、旧法で「勤労と責任を重んじ、」となっていたところを、「職業および生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う」という主旨の文に直した。これは、ニートやフリーターの増加への対応を意図したものと思われる。

また、改正教育基本法には、食育に関する規定がない。平成17年7月に施行した食育基本法は、前文にて、食育を「「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる」こととしている。そして、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付ける」とし、「家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいく」と書いている。それほど、食育を重視するのであれば、教育基本法に食育がまったく盛られていないことも、欠陥だと思う。教育に関わる教育基本法と食育基本法の間に、連携をつけるべきだろう。

これらの点につき、私は、条文を一部修正して、目標を定めなおしたいと思う。まず私案を示す。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

◆ほそかわ案

 

(教育の目標)

第2条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

1 知育、徳育、体育調和もって施し、幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。

2 個人に内在する価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

3 家庭において、親子、夫婦等の家族の敬愛、男女の協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

4 我が国の伝統と文化を尊重し、愛国心を涵養するとともに、他国を理解し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

5 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。

6 食に関する教育を、生きる上での基本であり、知育、徳育、体育の基礎となるべきものとして推進し、子供を健やかに成長せしめ、また国民の健康が増進すること。

 

改正教育基本法に対し、1号において「知育、徳育、体育調和もって施し、」を補った。2号の「個人の価値」を「個人に内在する価値」に変えた。3号において「正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずる」を「家庭において、親子、夫婦等の家族の敬愛、男女の協力を重んずる」に変えた。4号と5号を入れ替えた。4号は「伝統と文化を尊重し、」の前に「我が国の」を加えた。「愛国心の涵養」を定めた。「他国を尊重し、」を「他国を理解し、」に変えた。3号と4号を通じて、家庭、社会、国家、世界を一貫した道徳性を育成することを意図している。6号に、食育に関することを補った。

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(4)愛国心

 

 愛国心は、今回の教育基本法の改正において、最大のポイントとなった。ここで条文の検討から離れて、愛国心についての私見を書いておきたい。

 

 愛国心は、「国を愛する心」と書く。ここに言う「国」とは、郷土としてのクニであり、また祖国としてのクニである。 愛国心は、郷土愛と祖国愛の両面で成り立つ。郷土愛は、生まれ育った土地の人々や自然に対する愛着である。自分の成長と生活の体験のなかから自ずと培われる感情である。祖国愛は、多くの場合、この郷土愛の延長上に生じる。郷土愛を育むことは、祖国愛を育む基礎となる。
 祖国愛は、自分が生まれ、その一員として生きている国家に対する愛着である。国家は、領土・人民・主権(統治権)によって成り立つ。それゆえ、祖国愛は、自国の自然と、人々と、統治機構としての国家への愛情という三つの要素を持つ。
 三つの要素の中でも、重要なのは、人々に対する愛情である。具体的には、建国の由来に対する共感、祖先に対する感謝と尊敬、歴史と文化に対する誇りが、祖国愛の核心部分を構成する。

 愛国心に対して、軍国主義の台頭に結びつくのではないかと警戒する人々がいる。そういう人々は、愛国心を祖国愛に、また祖国愛のうちの国家への忠誠心に引き寄せて理解する。そして、政府への忠誠の強要を連想する。さらに、政府とは戦争を起こすものと想定し、愛国心の涵養は、軍国主義につながると考えるのだろう。そこには、昭和戦前期の我が国における軍部の台頭と専横の記憶がある。

 しかし、愛国心と軍国主義は本来、基本的に別のものである。軍国主義は、「戦争あるいは軍事のための配慮が社会の中で最高の地位を占め、国民生活の全領域を軍事的価値に従属するものとみなす思想」(『マイペディア』)である。
 愛国心が即、軍国主義を生み出すのではない。軍国主義を防ぐのは、政治の課題であって、軍国主義を防ぐために愛国心を教育しないのは、自主的自律的な国民のあり方ではない。自国民の子弟に自国を愛することを教えることは、独立主権国家として当然の行いである。

 近代国家はその構成員に対し、国民としての意識を形成し続けることによってのみ、維持・発展することができる。国民意識の形成においては、国語、歴史、宗教または思想の共有が重要な素因となる。
 しかし、世界には、多言語・多民族・多文化・多宗教の国が多い。わが国のように、統一した国語、共通の歴史、単一に近い民族構成、宗教の共存と融和を特徴とする国は、珍しい。これと最も対比的なのはアメリカであり、米国は世界で最も多言語・多民族・多文化・多宗教の国である。アメリカほどでないにしても、旧ソ連やスイス、インドなど、一言で近代国家と言っても、構成は複雑で多様である。

 その近代国家に共通する核心的な要素は、国民が「自分は○○国民である」という自己意識を共有していることに尽きる。この国民的なアイデンティティを育成するものこそ、愛国心の教育に他ならない。
 それゆえ、愛国心の涵養は、近代国家として不可欠の行いである。愛国心を育て、保つことなくして、近代国家は維持・発展し得ない。愛国心教育を否定する国家は、国家として自己否定をするに等しい。

 人が、自分は何者であるかを規定するのが、アイデンティティである。アイデンティティは、複合的で重層的である。一人の個人は、○○国の国民であるとともに、○○家の家族であり、○○県の県民であり、○○会社の社員であり、○○団体の会員でもある。
 それゆえ、国民的アイデンティティが低下した国家では、人々の主たるアイデンティティの対象は、家や地域や企業や宗教などに置かれる。国民の多数が、自己規定の上位に「○○国民である」という意識を保ち得ない国家は、国民の紐帯が弱まり、分解に向かう。戦後の日本国は、こうした自己否定・自己分解の国家の典型だった。

 国際社会において、自己否定・自己分解を続ける国家は、国際化や多民族・多文化の共生に向かうのではない。他の国家から政治的・経済的・文化的・思想的に影響を受け、その影響下に入るのである。
 戦後日本は、占領期にはアメリカから、昭和20〜40年代には旧ソ連から、そして現在は中国・韓国・北朝鮮から、強く影響を受けてきた。
 日本を支配下に置こうとする国や、日本が他国の支配下に入ったほうがよいと考える人間は、日本における愛国心教育を阻止しようとする。

 愛国心を否定すると、世界が一つになると思っている人がいる。実際は、愛国心の否定は、国境なき世界への前進ではなく、自国が他国の国境の中に併呑されるだけである。
 わが国における愛国心教育に反対する人の中には、旧ソ連や中国を根拠地とする共産主義者や、祖国を外国に持つ在日外国人や、異民族に発祥した宗教の信奉者などがいる。彼らが日本の愛国心教育に反対するのは、政治的・軍事的・思想的な目的があるからである。善良なる国民は、安易に彼らに同調してはならない。
 
 国家の盛衰興亡は、国民における愛国心の有無にかかっている。国を考える国民が少なくなれば、日本は衰退する。家族が家のことを考えない家庭は、不和と対立に陥る。社員が会社のことを考えない会社は、間違いなく衰退・倒産する。
 日本国は、衰退・崩壊の危機にある。国民が自分のことばかりでなく、国全体のことを真剣に考えないと、日本は間違いなく亡国にいたる。

 今日、日本国は、昭和10年代におけるような排外的で独善的な愛国心の強調でもなく、また戦後60年続いた自己否定的な愛国心の忘却でもなく、これらの両極端を避けたうえで、健全な愛国心を育てる教育を行なうべきである。
 「愛国心の涵養」にいう「涵養」は、「自然に水がしみこむように徐々に養い育てること」(『広辞苑』)を意味する。このような教え方でよいのである。

 愛国心と国際協調の精神は、両立する。これは個人に置き換えてみても分かる。自分を大切にする人は、必ず自己中心で倣岸不遜で人に攻撃的になるわけではない。自分を大切にする人であってこそ、人にも思いやりを持てる。自分を大切にしない人は、人の痛みを理解できない。
 自国を愛する心を育てながら、他国を理解し配慮することを教えるべきである。

愛国心を尊重している人の中に、あえて法に規定することには、反対だと言う人がいる。国旗・国歌の法制化の際、保守的・愛国的な人々の間に、法制化に反対する意見があったが、法制化したことによって、行政が指導を強化することが出来た。
 小学生が国旗を掲げた校長に土下座を要求した事件の起こった東京都国立市は、日教組や共産党系が強いことで全国に名をはせていたが、いまは卒業式等で国旗掲揚・国歌斉唱が全小中学校で実施されている。法制化していなかったら、法的根拠が無いとして反対を受け、ほとんど前進できていなかっただろう。国立に限らず、全国的にそうである。

愛国心は内面的な「心情」、国旗・国歌は外面的な「行為」ゆえ、違うと言う人もいるだろう。しかし、愛国心は道徳の一部であり、道徳は道徳心を育てるものである。内面的なことに関して国家が関わることをもって「干渉」すべきでないと言ったら、道徳教育は成り立たない。
 平成18年に教育基本法の改正が議論されていた時、内閣府の世論調査では、国民の8割が愛国心の教育は必要と求めていた。にもかかわらず、国民のごく一部でしかない公明党=創価学会の意見によって、基本法に盛り込むことが阻まれた。これは、異常な事態だと思う。


 ちなみに、学習指導要領には、「国を愛する心情を育てる」等の表現で、愛国心を育てることが明記されてきている。

●小学校6年の社会
 「目標」の項目:「(1)国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について興味・関心と理解を深めるようにするとともに,我が国の歴史や伝統を大切にし,国を愛する心情を育てるようにする。」

●中学校の社会
 公民的分野の「目標」:「(3)国際的な相互依存関係の深まりの中で,世界平和の実現と人類の福祉の増大のために,各国が相互に主権を尊重し,各国民が協力し合うことが重要であることを認識させるとともに,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることが大切であることを自覚させる。」

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 学習指導要領は、法令的な性格を持ち、一定の強制力を持つ。しかし、教育現場では、愛国心に関する限り、これがほとんど無視されてきた。例えば、心を育てる教育の実施のために文部科学省が作った「心のノート」にも、「国を愛する」というページがあるが、このノートも活用されていない。
 これまでの状態現状改善するには、改正教育基本法をさらに改正して、「愛国心の涵養」を明記し、学習指導要領にそった教育が正常に行なわれるようにすることが、求められている。

 愛国心を教えることが問題なのではなく、愛国心をどのように教えるかが問題なのである。
 今後、教育基本法に、「愛国心の涵養」を明記し、人格の完成という教育の目的の達成を目指すなかで、家族、社会、国家、ひいては世界に貢献できる日本人として必要な、健全な愛国心を育成していくことが、日本の亡国を避け、日本を再建するために必要不可欠だと思う。

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(5)教育の方針


 

条文の検討に戻る。旧教育基本法は、第二条に「教育の方針」を定めていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●旧教育基本法

第二条(教育の方針)
 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 私は、この条文はあまりよくできた条文と思えなかった。主語はあるが、主体のない文章だからである。行為の主体が隠れ、また進むべき方向も明確でなかった。「学問の自由を尊重」する主体は、直接的には政府だろうし、「実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献する」ように努める主体は、国民だろう。また学問の自由の尊重と、国家及び国民が担う教育の義務とは、別の話しである。会社にしても団体にしても、基本方針があいまいでは、目的を達成できない。国家であれば、一層そうだろう。わが日本国は、約60年間、こういうあいまいな状態であり続けた。

 

改正教育基本法には、「教育の方針」に関する条項がない。「教育の目標」の条項に含ませたのだろう。しかし、目標と方針は違う。目標を達成するためには、方針を立てねばならない。

改正教育基本法は、平成18年4月28日に発表された自民党と公明党の連立与党案が、そのまま一字一句修正されずに、法律になったものである。審議の過程で、民間では「日本の教育改革」有識者懇談会(別称、民間臨調・西沢潤一会長)が独自の研究を行い、これと提携した教育基本法改正促進委員会(超党派改正議連・亀井郁夫委員長)が対案を提示していた。これを教改委案と呼ぶことにする。その内容には、改正教育基本法より部分的に優れた点があった。

教改委案は、第二条については、以下のような対案を提示していた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●教改委案

第二条(教育の方針)
一 教育の目的は、あらゆる機会、あらゆる場所で行われなければならない。国民は、ひとしく教育の目的達成に努めるものとする。
ニ 国民は、教育の目的を達成するに当たり、その自由と権利が尊重され、国家の一員としての責任を自覚して社会的参加を果たし、文化の継承と発展に貢献するよう努めるものとする。
三 男女は、互いにその特性を生かし、相互に協力し合って家庭、社会、国家を共に担う責務があることを、教育上重視するものとする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 教改委案の特徴は、主体を明記している点である。このようにするのであれば、「教育の方針」という条項は、有効なものとなる。

ただし、内容を見ると、第一項は、前半は表現がおかしいと思う。目的は、成し遂げようと目指す事柄であって、「目的を行う」とは言わない。目的は「成し遂げる」か「達成する」である。

第一項の後半と第ニ項は、主語と主体が「国民」となっており、旧教育基本法の欠陥を改善するものとなっている。第ニ項において、国民の「自由と権利が尊重され」と受身になっているのは、尊重する主体が政府だからだろう。続く「果たし」「努める」は、主体が国民である。
 
 私は、この案の場合、第一条、第二条は子供に行う教育の目的と目標を述べるもの、第三条はその教育を行なう大人の方針を述べるもの、と整理し直すとよいと思う。
 その際、教育の目的は「人格の完成」にあるのだから、大人や親が相互に人格を形成し、成長させ、発展させる努力をすることが、子供の人格形成に重要であることを書くべきと思う。憲法は、国民相互の人格形成のために、国民に自由及び権利を保障しているものである。私案は後に書く。

 次に、教改委案の第三項についてだが、これは非常に重要な提案である。ジェンダーフリー教育や過激な性教育が横行するのを防ぐには、教育基本法に、性差に関する教育をどのように行なうのか、基本方針を定めるべきだからである。この点、旧教育基本法では、第五条に次のようにあった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●旧教育基本法

第五条(男女共学)
 男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 前半の「男女は、互に敬重し、協力し合わなければならない」という表現は、家庭・社会・国家におけるあらゆる行いに当てはまるものである。ところが、旧教育基本法はこれが男女共学についてしか関係していなかった。
 この点、教改委案は、教育の方針に関する条文の第三項に、「男女は、互いにその特性を生かし、相互に協力し合って家庭、社会、国家を共に担う責務がある」と定めている。大変よい提案だったと思う。私は、教育基本法の再改正にておいては、この条項を、子供の教育を行う国民としての大人の方針として、位置づけ直したい。

以上の検討をもとに、以下に再改正のための私案を示す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(教育の方針)
第三条 教育の目標の達成は、あらゆる機会、あらゆる場所で追及されなければならない。
2 国民は、ひとしく教育の目標達成をめざし、大人及び親として、相互に人格を成長、発展させることに努め、次世代の育成に貢献するものとする。
3 男女は、互いにその特性を生かし、相互に協力し合って家庭、社会、国家を共に担う責務があることを、教育上重視するものとする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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(6)生涯学習

 

旧教育基本法は、第三条「機会均等」、第四条「義務教育」、第五条「男女共学」、第六条「学校教育」、第七条「社会教育」となっていた。このあたりの条文は、現代の必要に応じて、大幅に修正・増補しなければならないところだった。
 通信情報革命と高齢化の進展のなかで、生涯学習が促進されている。生涯学習は、教育の目的を国民の一生を通じて達成すべきものである。
 家庭教育は、旧法では、社会教育の条文にごく簡単にあるのみだった。あまりに弱い。独立した条文にして、その重要性を明記しなければならない。幼児教育についても、重要性をうたう必要があった。
 学校教育については、旧法より、もっと具体的に定める必要があった。教育の目的を達成するためには、学校・家庭・地域の連携と協力も盛り込むべきだった。ほかにもまだまだ基本法に定めておくべき事柄があった。
 このように考えると、旧教育基本法は制定後、数十年たち、この間、発展を続けた社会と文化から、いかに乖離してしまっていたかがわかる。もともと欠陥が多いうえに、旧態依然のまま放置されてきたことに、いまさらながら愕然とする。
 大幅な改正をしないと、日本の教育を改革することはできな状態だった。

改正教育基本法は、第3条を「生涯学習の理念」、第4条を「機会均等」としている。教改委案は、これが逆になっている。生涯学習は、教育の目的の実現に向けて、単に学校教育を受ける年齢だけでなく、一生を通じて学習し続けるという考え方である。その理念のもとに教育の機会均等が保障されるべきであるから、条文の順序は、自公案に従うこととする。

改正教育基本法は、次のような条文を定めた。

 

●改正教育基本法

 

(生涯学習の理念)

第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

改正基本法は、生涯学習の理念を述べており、「自己の人格を磨き、豊かな人生を送ること」という、教育の目的である人格の完成にかなった規定となっている。また、人格完成をめざして、国民が生涯にわたる学習と貢献のできるような「社会の実現」に目標を置いている。これは、現代の要求に合っており、また私が、今後、我が国の目指すべき国家目標と考えている道義国家の実現にもかなっている。

私は、改正教育基本法の第三条は、このままでよいと思う。私案では、第4条になるが、条文は同一ゆえ、掲載は省略する。

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(7)教育の機会均等


 

旧教育基本法は、第三条に「教育の機会均等」を定めていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●旧教育基本法

第三条(教育の機会均等)
 すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

これに対し、改正教育基本法は、以下のようである。

 

●改正教育基本法

 

(教育の機会均等)

第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

 

 第一項は、旧法とほとんど同じだが、前半の文章が練れていない。ここは、「すべて国民は、その能力に応じてひとしく教育を受ける機会が与えられ、」としたほうがわかりやすい。

 「性別」に関しては、「男女の区別は、差別である」と言うフェミニストがいる。しかし、「区別は、差別である」と言って区別を否定すると、人種・信条・障害・身分などは、概念自体が意味をなさない。社会的弱者や少数者は、区別をされないと、配慮や保護を受けられなくなる。だから、男女にだけ「区別は差別」というのは、理が通らない。この点、区別を排除するものではないということを、再改正において、条文に補いたいと思う。

改正教育基本法は、第2項に、障害者に関する規定を入れた。これは、よい修正だった。

最後の第3項に関し、教改委案は、「意欲と能力」として「意欲」を補う案だった。これは妥当だと思う。

以下に再改正の私案を示す。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(教育の機会均等)
第五条 すべて国民は、その能力に応じてひとしく教育を受ける機会が与えられ、人種、信条、性別または社会的身分によって、教育上差別されない。ただし、これは必要な区別を排除するものではない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

3 国及び地方公共団体は、意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者への奨学の措置を講じなければならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 この「教育の機会均等」は、日本国民について国民の権利として保障するものである。国民とは、日本国籍を有する者である。在日外国人は、この条文の対象に含まない。

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(8)家庭教育

 

 旧教育基本法は、第三条「機会均等」、第四条「義務教育」、第五条「男女共学」、第六条「学校教育」、第七条「社会教育」という構成だった。改正教育基本法は、この部分は大幅に条項を増やすとともに、新たな順序を打ち出した。

 改正教育基本法は、「義務教育」「学校教育」「大学」「私立学校」「教員」「家庭教育」「幼児期の教育」「社会教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」という順序である。

 改正教育基本法は、生涯学習の理念を掲げながら、具体的なところになると、従来どおり学校教育を中心とした考え方である。「家庭教育」「幼児期の教育」は、学校教育関係の条項の後に置かれているからである。しかし、私は、教育は、まず家庭において親が行うものであり、家庭教育が第一に置かれなければならないと思う。そして、子供の発達段階に応じて、幼児教育、義務教育としての学校教育、さらにその上の教育というように積み上げていくものだから、基本法の条文はそれに沿った順序がよいと思う。

 そこで、まず改正教育基本法では、第十条に置かれた家庭教育について、取り上げたい。

 

深刻な状態になっている我が国の家庭とその教育を立て直すためには、教育基本法に家庭教育を独立した条項として定め、親または保護者のあり方や、学校・地域社会との連携について、指針を示す必要がある。これは全国民的な課題である。

この点、改正教育基本法は、家庭教育について独立した条項を設けて、画期的な規定を行なった。

 

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●改正教育基本法

 

(家庭教育)

第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

家庭教育の重要性をしっかり基本法に盛り込もうという意思が伝わってくる。私は、この条項は素晴らしい内容だと思う。そのうえで、「しつけ」という言葉を用いて、さらに焦点を明瞭にしたいと思う。

近年、わが国の公共道徳は、急速に崩壊しつつある。戦後約60年、個人の自由と権利を強調して責任と義務を軽視した現行憲法と、その憲法の精神に基づく教育を行うための旧教育基本法のもとで、わが国の教育は道徳教育を欠いたままきてしまった。
 青少年の道徳心・公共心を育てることを怠ってきた結果、自己中心・利己主義が横行している。私利私欲が自由や人権という言葉で粉飾される。そういう世代が親となり、まともな子育てができずに周囲に迷惑をかけるのみならず、子供が食べている給食費を支払わずに、開き直っている。その大人の態度がまた他の純真な子供たちに悪影響を及ぼす。
 日本を立て直すには、憲法の改正と、教育全体の改革が急務である。それを大前提として、私は、もっと直接的な方策を親に対して実行しないと、現状は改善されないと考える。
 ここで私が喫緊に振興すべきだと考えるのは、「親学(おやがく)」である。つまり親となり、親として子育てをするための学問・教育である。
 子供の問題のほとんどは、親に問題がある。子育てに自信がなく、子育てがうまくできない。または子供をつくることに関心が無く、育てることにも関心のない若い人たちが増えている。 学校教育・社会教育を挙げて、「親学」の振興を真剣に行なうことが、日本の教育の改革、そして日本国の再建に欠かせない。
 改正教育基本法の第2項は、「保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策」と記しており、私の趣旨に通じるものがあるが、さらに教育基本法を再改正して、「親学(おやがく)」の振興を盛り込むことを、私は提案したい。

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ほそかわ案

(家庭教育)
第六条 教育の原点は家庭にあり、親は子の教育について第一義的責任を有する。父母その他の保護者は、人生最初の教師であることを自覚し、自らが保護する子供に、しつけを行い、生活のために必要な習慣を身に付けさせ、自立心を育成し、心身の調和の取れた発達を図るよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、家族の絆を育成及び強化し、家庭教育の充実を図るため適切な支援を行う責務を有する。
3 国及び地方公共団体は、国民の家庭の形成と家庭教育を支援するため、親となり、子育てをするための学問及び教育を振興することに努めるものとする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

第3項に「親となり、子育てをするための学問及び教育」とあるのが、「親学」を意味する。第1項には「しつけ」という言葉をそのまま使用している。

日本の教育を立て直すには、親の自覚と責任を問う必要がある。親になるための学習、親が親らしく子育てをできるようになるための訓練、言い換えると「親学(おやがく)」が求められている。

 たとえば、地方公共団体や大学で、子供を持つ人や、これから親になるような人たちに「親学講座」をする。保育園・幼稚園では、親や祖父母に対して「しつけ講座」をする。高校の家庭科や大学の一般教養で「親学」を教える。方策はいろいろあると思う。運転免許の場合、交通安全のために更新のたびに講習をするが、ビデオ一つ、冊子一つ見るだけでも、人の意識は変わるものである。また、こうしたことを実行するには、親学を教えられる指導員を養成する必要があるだろう。教材も必要となる。

 

 私は、日本を立て直すためには、家庭でのしつけからやり直す必要があると思っている。学校教育において道徳教育を復活することは不可欠だが、道徳教育は、人格形成の基礎となるしつけが家庭でしっかりなされてはじめて、その上に道徳が涵養されるものである。基本的には3歳、どんなに遅くとも7歳までに、しつけができていないと、いくら義務教育を施しても、人格形成はうまくいかない。それゆえ、しつけのできる親を育てることは、教育の基盤をつくることになる。

 

 人間は他の動物に比べ、本能と学習の関係が複雑で微妙になっている。本能のある部分は、後天的に生活環境のなかで発現するようになっており、また学習によって身につけていく部分が非常に大きいと思われる。

 アロンの野生児のように、人間の子であっても、狼に育てられれば、言葉を話せないどころか、二足歩行すら出来ない状態になるのが、人間である。

 子育てについても、後天的に子供の育て方を学ぶことのできる環境がないと、うまく子育てができない。

 昔は大家族で、自分の弟や妹が生まれると、親が育てているのを見たり、あるいは自分が下の子の子守をしたりした人が多かっただろう。それが記憶して蓄積された。また、自分が親となったときには、同居している自分の親や祖父母から育て方を教えてもらいながら、子育てが出来た。しつけにしても、親だけではなく、祖父母や親戚・地域の大人など、総がかりでなされていた。おそらく人類は、そういう仕方で、何万年、何十万年とやってきたのだろう。

 ところが今は、急速に核家族化が進み、世代間の経験知の伝承が家庭でうまくなされなくなっている。それに加えて、共稼ぎの家庭が多く、母親が家庭にあって子育てに専念できないケースが増えている。また地域の人間関係も希薄になってきている。

 こうした家庭と社会のかつてない変化に対応して、家庭教育のあり方を補強するものを打ち出す必要があると思う。そういうものとして、私は「親学」に注目している。

 

 幼児期の子には、親がしっかりしたしつけをする。少年期の子には、学校や社会で道徳を教え、誇りを育てる教育をする。これらを並行して進めていけば、日本人は、大人も子供も精神的によみがえると思う。

 「親学」については、親学会のサイト及びその書籍をご参照願いたい。

http://www.oyagaku.jp/

 なお、私は親学会の会員ではなく、協力を求められているわけでもない。一人の親、一国民として主旨に賛同し、振興を願う者にすぎない。

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関連掲示

・拙稿「『親学』を学ぼう、広めよう

 

(9)幼児教育

 

改正教育基本法は、家庭教育とともに幼児教育の条項を新設した。これも重要な修正である。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●改正教育基本法

(幼児期の教育)

第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

この条文は、極めて重要な内容である。ここ数年、男女共同参画社会基本法のもと、急進的なフェミニストと多数の経済人は、乳幼児を持つ母親までも、子供を預けて家庭の外で労働するように仕向けている。そして、国及び地方公共団体に、子育ての社会化、集団化を推進させようとしている。制度的にも配偶者特別控除が廃止され、年金の個人化が勧められている。経済的に追い詰められた女性は、働きに出るしかない。とりわけ乳幼児の超長時間保育が奨励されている現状は、極めて憂慮すべきものである。11時間とか13時間もの保育が行われている。下手をすると、あらゆる教育が根底から崩されるような破壊的な結果を招く。

私は、果たして改正教育基本法が、どこまでこうした現状を反省し、軌道修正しようとするものかどうか、わからない。現状の追認または推進とも取れるからである。

この条文は、家庭教育と緊密に結びついてのみ、現状の変革となる。幼児教育の主体は、親または保護者であり、家庭における幼児教育あっての社会的な幼児教育である。改正教育基本法は、さらにこうした条文を加えてこそ、有効なものとなる。

 以上の考察に基づいて、私案を以下に示す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(幼児教育)
第七条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

2 幼児教育は、家庭との緊密な連携を図り、これを助け、かつ補完するものでなければならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

第六条(家庭教育)の条文の説明に親学に関することを書いた。その点を補足する。

日本の教育を立て直すには、親の自覚と責任が問われねばならない。それには、教育改革だけでなく、憲法の改正が急務である。改正教育基本法は、前文に「公共の精神を尊び」「伝統を継承し」という文言が入った。しかし、それに続いてすぐ、「我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図る」と書かれている。個人の自由と権利を重んじて、責任と義務を軽視している現行憲法の思想が、教育基本法をなお呪縛している。憲法を改正しない限り、「親学」も真に実りあるものには、ならない。

 また、改正教育基本法は、家庭教育・幼児教育の条項を新設したが、家庭教育・幼児教育にも、教育第二条「教育の目標」が貫かれねばならない。すなわち第二条は、3項に「正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」、5項に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と掲げている。

 こうした教育の目標は、青少年だけでなく、その親を中心とした大人全体に対しても、適用されるべきである。生涯学習とは、生涯にわたる国民教育でもあり、その中核には、人格の形成・向上がおかれねばならない。そして、戦後日本に公共道徳を復活するには、国民教育のもとになる公民倫理を打ち立てる必要があると思う。現代日本の教育問題の根本的な改善は、こういう領域に踏み込んでこそ、実現できるだろう。

 公共道徳に関しては、「日本の『公と私』〜新しい公民倫理のために」に私見を書いているので、ご参照願いたい。

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10) 義務教育

 

改正教育基本法の条文は、家庭教育より学校教育を先においている。私は、生涯学習、家庭教育、幼児教育、義務教育、学校教育という順番が良いと考えるので、義務教育について、ここで取り扱う。

改正教育基本法は、以下の通り。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●改正教育基本法

 

(義務教育)

第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。

2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。

3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

まず普通教育と義務教育という用語の規定を明確にしたほうがよいと思う。これは、現行憲法の規定の不備から来ている。
 普通教育という用語は、初等・中等・高等のそれぞれに用いられており、概念規定が明確でない。普通は、特殊と対比して使われる言葉である。普通教育は、特殊教育にあたる専門教育や職業教育に対比し、国民が一般に受けるべき共通の基礎教育をいう。こうした一般共通の普通教育の上に、個別的部分的な専門教育・職業教育が行なわれる。
 私は、教育基本法においては、初等・中等教育のみを普通教育と呼び、高等学校以上の学校における教育は、専門教育または職業教育としたほうが、よいと思う。
 次に、上記の意味の普通教育は、親または保護者が国民の義務として子供に受けさせなければならないので、これを義務教育ともいう、としたほうが、わかりやすくなると思う。

さて、改正教育基本法の第3項は、重要な問題をはらんでいる。「国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。」としているが、これでは、統治機関としての国と地方公共団体の関係が、対等のようになってしまう。自民党は、近年、地方分権に積極的だが、無原則的な地方分権は、国家としての統一を損なう。憲法に国防や非常事態の規定がきちんとなされていないまま地方分権を進めると、日本の解体となりかねない。また他国の侵攻も誘発しかねない。教育においては、地域格差が広がるおそれがある。この改正教育基本法の不備は、早期に是正する必要がある。

以下に私案を示す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(義務教育)
第八条 国民は、教育の目的を達成するため、国民一般に共通する基礎教育としての普通教育を、ひとしく受ける権利を有する。
2 国民は、その保護する子供に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
3 国は、前項に定める義務教育に関する権限と責任を有する。
4 国または地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は徴収しない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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11)学校教育


 

学校教育について、旧教育基本法は、以下のように定めていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●旧教育基本法

第六条(学校教育)
 法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ここに言う「公の性質」だが、学校に限らず、法に定める組織・団体が「公の性質」を持つのは当然である。国が法人格を与えるのは、その対象が、何らかの「公の性質」を持つからだろう。本条は、学校は「公の性質をもつもの」だから、私立ならば、学校法人の資格を取らないと開設できないという規制をかけているだけである。
 もっと重要なこと、学校教育の目的が、この条項には何も書かれていない。これは、欠陥だった。国民が税金を納め、国や地方公共団体が学校を作り、親が親の義務として子供を学校に行かせるのは、何のためなのか。その根本のところを定めるべきだろう。規制のことなど、その次ぎの話しである。

 改正教育基本法は、「学校教育」について、以下のように定めた。

 

●改正教育基本法

 

(学校教育)

第六条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。

 

 第1項については、先ほど書いたとおりである。第2項は、大変良い内容だと思う。特に「規律」の重視、自発的な学習の意欲に触れているのは、素晴らしいと思う。

 なお、上記の規定には、学校教育を家庭教育の前に置いている割に、学校教育の役割についての規定がない。この点、教改委案には、以下のような案が盛られていた。

 

――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●教改委案

第七条(学校教育)
一 (略)
二 学校教育は、教育の目的を実現するための中心的な機能を有する。
三 (略)

 

 こちらは、第二項に、学校教育が「教育の目的を実現するための中心的な機能を有する」と定めて、学校教育の役割を盛り込んでいる。学校教育自体の目的は述べていないが、教育の目的全般が、学校教育の目的であることが、わかる。それでよいと思う。

 以下に私案を示す。私案第八条で触れた普通教育に関しては、ここでさらに具体的に定める。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(学校教育)
第九条 学校教育は、教育の目的を実現するための中心的な機能を有する。
2 国及び地方公共団体は、学童、生徒、学生の健やかな成長に資する良好な環境の整備、振興に努めなければならない。
3 学校における教育活動は、公的な性格をもつものであって、学校は、国または地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
4 国は、普通教育を行なうため、初等及び中等教育を整備する。また、普通教育の成果の上に、個別的部分的な教育を施す専門教育及び職業教育の整備に努めるものとする。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

なお、改正教育基本法には「大学」という条項があるが、これは高等教育のところで検討する。

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12)家庭・学校・地域の連携

 

改正教育基本法は、家庭、学校、地域の三者の連携に関する条文を新設した。教育は、家庭、学校、社会でばらばらに行われていたのでは、その目的を実現できない。日本の教育は待ったなしの所に来ている。「親の責任だ」「教師の責任だ」「いや社会の責任だ」などと、責任のなすりあいをしていたのでは、日本の教育は決してよくならない。家庭・学校・地域社会の連携と協力が欠かせない。

条文は、以下の通りである。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●改正教育基本法

 

(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)

第十三条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

この条文の主体は、「学校、家庭及び地域住民その他の関係者」である。これともに、もう一つの主体として、国及び地方公共団体を補う必要があると思う。その点を入れているのが、教改委の案だった。

 

――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  教改委案

 

第八条(学校・家庭・地域の連携と協力)
一 国及び地方公共団体は学校、家庭及び地域社会が相互に緊密な連携と協力を図り、教育の目的達成と教育環境の整備を図るよう努めるものとする。

――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

語順は、家庭・学校・地域社会が良いと思う。私は、条文において家庭教育が先で、学校教育が後に続くという構成を取っている。教育においては、まず家庭である。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(家庭・学校・地域の連携と協力)
第十条 家庭、学校及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、前項の連携と協力を促し、教育の目的達成と教育環境の整備を図るよう努めるものとする。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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13)初等中等教育

次に、学校教育の段階及び種類についての条項に移る。改正教育基本法は、この部分は手薄であり、私は、条項を新設するとよいと思う。

この点、教育基本法の改正論議において、教改委が出していた案は、再考に値する。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●教改委案

第十条(初等中等教育)
一 国は、初等中等教育について全国的に一定水準を確保する責務を有し、内容その他の基本的な事項を定めるとともに、その達成状況の評価を行う。
ニ 地方公共団体は、国の定めた初等中等教育に関する施策を確実に遂行するものとし、更に地域の特性に応じ、独自の基準の制定その他の独自の施策を立案実行することができる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 この条文案には、初等中等教育の目的と役割が書いていない。それを明記することが先である。そうであってはじめて、全国的な水準維持等について定めることが生きる。
 次に教改委の条文案は、国と地方公共団体の関係を明確に定め、そのうえで地域の特性を生かす教育を保障している点が良かった。教育について、無原則的な地方分権は、国家としての統一を損なう。また地域格差が広がるおそれがある。教改委案は、こうした弊害を防ぐために有効なものだった。
 補足だが、地方分権の動きの中には、日本の統治権を分散し、中央と地方の対立を醸成して、国政を左右しようという意図が見られる。憲法に国防や非常事態の規定がきちんとなされていないまま地方分権を進めると、日本の解体となりかねない。また他国の侵攻を誘発しかねない。教育をこのような政権闘争の手段としてはならない。
 私は、教改委の条文案を再考し、第一項として私見を加えて、改正教育基本法の再改正のために、以下に示す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(初等中等教育)
第十一条 初等中等教育は、学校教育の基礎をなすものであり、児童、生徒の発達に応じて、段階的に教育の目的達成をめざすものとする。
2 国は、初等中等教育について全国的に一定水準を確保する責務を有し、内容その他の基本的な事項を定めるとともに、その達成状況の評価を行う。
3 地方公共団体は、国の定めた初等中等教育に関する施策を確実に遂行するものとし、更に地域の特性に応じ、独自の基準の制定その他の独自の施策を立案実行することができる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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14)高等教育

 

私は初等中等教育をもって普通教育とし、これが同時に義務教育であると整理し直すとよいと思っている。初等中等教育の上に、高等教育がある。その中に専門教育及び職業教育がある。高等学校における普通科は、教養科と名称を変更する。
 高等教育について、教改委は、以下のような条文を提案していた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●教改委案

第十一条(高等教育)
一 高等教育は、高度で専門的な知識を備えた人材の育成を図るとともに、真理の探究を通じて、新たな知見を生み出し、学術の進展や我が国及び国際社会の発展に貢献することを期して行われなければならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 この条文案は、「知識」「知見」「学術の進展」という言葉が並んでおり、高等教育が知識を中心の教育であるかのような規定になっている。内容が偏っており、加筆・修正が必要だと思う。
 まず「高度で専門的な知識を備えた人材」とあるが、これは単に知識だけでなく、「知識と技術」と改めたい。また、ここに「勤労と責任を重んじ、自主的な精神にみち」と補いたい。これは、現行法第一条にある文言である。高等学校まで進学する者が大多数となっている今日、高等教育は一部のためのものではなくなっている。高等教育まで受けた日本人は、国民として、また社会人として一層の自覚を持って、勤労や社会参加をすることが要請される。

 次に、「真理の探究を通じて、新たな知見を生み出し、」とあるが、「知見」は個人が見て知って得た知識である。「知見を得て、」ならわかるが、「知見を生み出し、」は無理がある。「生み出す」に重点を置くなら、「新たな価値を生み出し、」だろう。高校・専門学校なら「知見を得て」、大学・大学院なら「価値を生み出し」だろう。条文の前半に「知識を備えた」とあるので、前者では重複する。後者に修正したい。

 条文の後半は「貢献」する主体が、人材なのか高等教育なのかが、あいまいである。この点は、高等教育全般というより、大学の役割にかかってくる。そちらに移したいと思う。
 駅弁大学などといって増え続けた我が国の大学の数は、他の先進国に比べ、異常なほど多くなっている。それほどまでに教育が盛んに行なわれていながら、成果はどうか。

 教育の成果は、その教育が生み出した人材をもって判断するのみである。現代日本の教育の成果は、20歳を迎えた青年を見れば分かる。基礎学力の身についていない学生が増え、また国民としての自覚が弱く、社会常識も欠く成人が増えている。日本の教育は、膨大な時間と費用とエネルギーをかけながら、青年たちの可能性を引き出せていない。
 こうした結果を見すえて、我が国の教育内容・教育制度の全般を見直すことが急務になっている。この点、改正教育基本法の条文は、十分なものとは言えない。再改正を行って、もっと根本的な理念・方針を打ち立てることが大切だと思う。

 

大学については、改正教育法は、次のように規定した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●改正教育基本法

 

(大学)

第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は、大学を独立した条項にせず、高等教育のより高次の段階として扱うことでよかったと思う。以下に、大学を含めた高等教育の条文の私案を記す。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(高等教育)
第十二条 高等教育は、高度で専門的な知識と技術を備え、勤労と責任を重んじ、自主的な精神にみちた人材の育成を図ることを目的とする。
2 大学は最高学府として、真理の探究を通じて、新たな価値を生み出し、学術の進展や我が国及び国際社会の発展に貢献する人材を養成するための教育及び研究の機関とする。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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15)職業教育



 高等教育のうち、職業教育についても、教改委は、新設を提案していた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●教改委案

第十四条(職業教育)
一 国及び地方公共団体は、国民が個性と能力に応じ、職業に関する知識と技能を身につけることを期し、職業教育の振興に努めるものとする。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 私は、この案に異論ない。同文なので、これを私案第十三条とし、掲載は省略する。ページの頭へ

 

 

16)私学振興


 次に、改正教育基本法は、私立学校に関する条項を新設した。条文は、以下の通り。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●改正教育基本法

 

(私立学校)

第八条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「公の性質」は、旧教育基本法にあった言葉だが、より一般的な「公的な性格」という用語に改めたい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(私学振興)
第十四条 私立学校の有する公的な性格及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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17)社会教育
 

 

家庭教育・学校教育と見てきたところで、次に「社会教育」を検討したい。

 

●改正教育基本法

 

(社会教育)

第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。

2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

 

 私は、これに「情報通信機構の整備」を加えたい。IT革命は、もっともっと人類の文化と生活を変えていくだろう。教育においても、今後、家庭・学校・社会で、IT革命による影響はますます大きくなると思う。

 

◆ほそかわ案

 

(社会教育)

第十五条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。

2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供、情報通信機構の整備その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

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18)公民教育

 

本項から教育の内容に移る。「政治教育」「宗教教育」「環境教育」について、順に見ていく。

まず政治教育について、旧教育基本法は、以下のように定めていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  旧教育基本法

第八条(政治教育)
 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「公民」とは、国政に参与する地位における国民のことをいう。citizenの訳語だが、citizenは「市民」とも訳す。米国は state が連合した合衆国ゆえ、国民のことを citizen と言い、国民の権利を citizenship または civil rights と言う。我が国ではこれを「公民権」と訳す。citizen は「共和国の国民」のことであり、君主国では subject と言う。subjectは「臣民」と訳す。
 「市民」という言葉を愛用するのは、共和主義や共産主義の信奉者やそのシンパである。彼らは、国民や公民という言葉を使わずに「市民」を使う。しかし、我が国において「市民」とは、国民・県民・市民・町民・村民の中の「○○市に住む民」と、同じ言葉である。
 「市民」は、歴史的には欧州の「市民革命」における「市民」である。つまり「ブルジョワジー」である。ところが、「市民」を愛用する共和主義者や共産主義者は、自分のことを「ブルジョワ」だとは思ってはいない。プロレタリアートやその側に立知識人のつもりでいるからである。そうした彼らが使う「市民」という言葉には、反国家・反政府の立場に立つ者という意味が色濃く含まれている。
 さらに彼らは「地球市民」という言葉を使う。これもおかしな言葉で、地球は一個の都市ではない。都市化されていない広大な地域があり、人類の多数は農村や山村に住んでいる。地球という都市など、存在しない。それゆえ、「地球市民」も存在しない。大自然が人類の居住地を包んでいるのであって、人間は地球の支配者ではない。

 「市民」や「地球市民」という言葉は、このように非常に無理のある言葉である。その本質は、「日本国民」という意識を薄め、「国民」を相対化するために使われるイデオロギー用語だということにある。そこには、彼らの階級意識や政治思想が注入されている。
 日本国憲法には「市民」という用語はない。旧教育基本法にもない。憲法に使用されているのは「国民」である。旧教育基本法には、「公民」も使われていた。

 「公民」は「公の民」と書くように、「公」の意識を持って国政に参加する日本国民である。歴史的には、大会の改新で「公地公民制」という言葉に使われたように、天皇を中心とした国家の人民という意味もある。「市民」より「公民」の歴史は、千年以上も長いのである。

 旧教育基本法は、条文に「公民」を使っていたが、公民はどうあるべきかが規定されていない。そのため、旧教育基本法に「良識ある公民たるに必要な政治的教養」を培うと定められていたのに、「政治教育」の目的が明確でない。


 改正教育基本法は、旧法の政治教育の条文について、根本的な考察を何も行なっていない。ただ旧法の文言の言い回しを一部現代語風に改めただけである。第二項は旧法と同じである。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  改正教育基本法

 

(政治教育)
第十四条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 この点、教改委の案は、公民としての教養を培う教育の目的を明確にしようとしていた。条文の題も「政治教育」ではなく、「公民教育」と直している。第二項は、旧法と同じである。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●教改委案

第十五条(公民教育)
一 公民教育は、国民が社会における自己の責任を自覚し、国家社会の発展に積極的役割を担うことを目的として行われなければならない。
ニ (略 現行法と同じ)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ここにおける「公民教育」は、公民の概念を踏まえている。ただし、「社会における自己の責任」「国家社会の発展に積極的役割」というだけでは、政治に限らず、職業やボランティアまで広く含まれてしまう。公民の持つ「国政に参与する地位における国民」という意味がよく出ない。この点やはり、政治教育に重点を置いた表現が必要だと思う。

 公民としての政治的教養を培う教育は、道徳性の育成、愛国心の涵養と深い関係を持つ。道徳性の育成という方面から見ると、私的な家庭における道徳を基礎として、公的な社会及び国家における道徳を培う。このうち、公民教育は、国民道徳に多く関わるものである。
 私はこの展開を踏まえ、条文に「公私の区別をわきまえ」とか「公共の利益の追求」という表現を入れると良いと思う。
 第二項については、新旧の教育基本法と同じでよいと思う。ただし、第一項に政治教育が明記されていてこそ、この項目の主旨が明確になる。
 以下に私案を示す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほそかわ案

(公民教育)
第十六条 公民教育は、国民が国家社会の形成員として、公私の区別をわきまえ、積極的に国政に参加し、また公共の利益の追求に取り組むことを目的として行われなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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19)宗教教育

 

宗教教育について、旧教育基本法は、次のように定めていた。

 

●旧教育基本法

 

第九条(宗教教育) 

宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。

2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

 

 改正教育基本法は、第一項に「宗教に関する一般的教養」という文言を加筆した。第二項は旧法と同じである。

 

●改正教育基本法

 

(宗教教育)

第十五条 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。

2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「宗教に関する一般的な教養」と同じく尊重されねばならないとされるのは、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位」である。これらと同格で、「宗教に関する一般的な教養・・・は尊重されなければならない」と表現したのでは、この一文はほとんど意味をなさない。たとえば、「教育上、宗教の社会生活における地位が尊重され、宗教に関する寛容の態度及び宗教に関する一般的な教養が培われなければならない」とでも直さないと、ただの言葉の羅列に終わる。
 「宗教に関する一般的な教養」は教育の場で「宗教的情操の涵養」を行なうことによって培われる。「一般的な教養」を言う前に、「宗教的情操の涵養」を条文に盛り込む必要がある。「情操」は、「感情のうち、道徳的・芸術的・宗教的など文化的・社会的価値を具えた複雑で高次なもの」(『広辞苑』)を意味する。また「涵養」は、「自然に水がしみこむように徐々に養い育てること」(同左)を意味する。

教改委は、この点、以下のような提案をしていた。

 

●教改委案

 

第十六条(宗教教育)

一 宗教に関する教育は、宗教への理解と寛容の態度を養うことが重視されなければならない。

ニ 宗教的情操の涵養は、道徳の根底を支え人格形成の基盤となるものであることにかんがみ、教育上特に重視するものとする。

(三 国及び地方公共団体が設置する学校においては、特定宗教の信仰に導き、またはこれに反対するための教育を行ってはならない。)

 

 大変よい内容だったと思う。ただし、第一項に目的、第二項に目的達成の方法ないし留意点を書くという順序がよいので、第一項と第二項の順序を入れ替えたい。

 第二項については、「特に重視する」とあるが、これは「重視する」で十分だと思う。基本法には、他にも重視するものがあるが、そのうちで一番重視するとまで定める必要はない。

 第三項については、私は必要な条項だと思う。この条項を定めることにより、「宗教的情操の涵養」の規定に反対する人々の懸念を払うことができる。それでもなお「宗教的情操の涵養」に反対するという人は、おそらく、いわゆる「国家神道」の復活を警戒するのだろう。それほど恐れるのであれば、憲法に「国教を禁止する」と定めればよいのである。ただし、国教の禁止には、国立戒壇の設置を禁ずるという意味が含まれる。

 以下に私案を示す。

 

◆ほそかわ案

 

(宗教教育)

第十七条 宗教的情操の涵養は、道徳の根底を支え人格形成の基盤となるものであることにかんがみ、教育上重視するものとする。

2 宗教に関する教育は、宗教への理解と寛容の態度を養うことが重視されなければならない。

3 国及び地方公共団体が設置する学校においては、特定宗教の信仰に導き、またはこれに反対するための教育を行ってはならない。

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20)環境教育

 

 教改委は、環境教育に関する条項を新設することを提案していた。

 

●教改委案

 

第十七条(環境教育)

一 地球環境を保全するため、あらゆる段階において、自然を尊び、自然との共生や一体感をはぐくむ教育を重視するものとする。

 

 私は、こうした条項を盛り込むことが必要だと思う。世界平和の実現と地球環境保全は、21世紀の人類の2大テーマである。日本人は、この二つの課題の取り組みに貢献できるような国民でありたいと思う。なお、条文案のうち「あらゆる段階」とは、何の段階か、教育の段階か、個人の発達段階か、国家の発展段階等か、あいまいである。この点を明記した方がよいと思う。

 教改委案を支持した議員には、「地球環境を保全するため、あらゆる段階の教育において、自然を尊び、自然との共生や一体感を育んできた日本人の伝統と文化の維持、継承を図るものとする。」という案もあったという。この案の場合、環境教育と、伝統と文化の継承が見事に結合されている。ただし、冒頭は「日本と地球の環境を保全するため、」と直した方がよいと思う。そうすることにより、日本の国土と、国民の伝統・文化の関係が一層強く打ち出せるからである。

愛国心は、郷土愛と祖国愛の両面を持ち、国家の要素の一つに領土があると書いた。郷土や祖国の自然を愛し、その自然を保全しようという心を育てることは、愛国心の涵養にもなる。環境教育には、我が国の伝統と文化を受け継ぎ、自然とのかかわりの中で愛国心を育てるという働きもある。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◆ほそかわ案

 

(環境教育)

第十八条 日本と地球の環境を保全するため、あらゆる段階の教育において、自然を尊び、自然との共生や一体感を育んできた日本人の伝統と文化の維持、継承を図るものとする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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21)教員

 

旧教育基本法には、教員に関する独立した条項はなく、第六条の第2項に定めがあった。

 

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  旧教育基本法

 

第六条 (略)

2 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。

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 このような条文が、約60年、そのままにされていたのだが、「全体の奉仕者」とは何か。「全体」とは誰のことか、「奉仕者」とは誰に対して何を行なうのか。意味不明の用語だった。逆に言うと、どんな解釈でも成り立ってしまった。その解釈の仕様によって、身分の尊重、待遇の適正が、不当に高くも低くもなりかねないものだった。日教組は、教員は聖職者ではなく、労働者だと規定する。彼らが「国民全体」に奉仕しているとは思えない。彼らが奉仕しているのは、「労働者階級」または「人民」である。そのような思想を持って違法な政治活動を行なう教員までも、教員の身分の尊重、待遇の適正が期せられなければならないとして、適切な指導や処分がなされないできた。

 教員について、改正教育基本法は、次ぎのように定めている。

 

●改正教育基本法

 

(教員)

第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

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 旧法の「全体の奉仕者」が削除された。また、使命の自覚について加筆し、職責の遂行のために行なうべきことを加筆している。

ここで私は、「法令に従い、」という一句を加えたいと思う。これは、次ぎの教育行政の条項において「不当な支配に服することなく、」の一句を削除するのと合わせて、教育現場の正常化に必要な加筆だと思う。

 私案を次に示す。改正教育基本法の条文に「法令に従い、」を加えたものである。

 

◆ほそかわ案

 

(教員)

第十九条 法律に定める学校の教員は、法令に従い、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

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22)教育行政

 

 教育行政について、旧法は次のように定めていた。

 

●旧教育基本法

 

第十条(教育行政)

教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。

2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

 

 改正教育基本法は、以下の通り。

 

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●改正教育基本法

 

(教育行政)

第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。

3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。

4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

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 旧法が二項であったのに対し、新法は四項に増えている。旧法の条文が、「国民全体に対し直接に責任を負つて」、「必要な諸条件の整備確立を目標として」など、全体に抽象的であるのに対し、国と地方公共団体の役割分担や協力を定めている。

ここで最大の問題は、「不当な支配に服することなく、」という文言を残したことである。この文言は、日教組が国の関与を排除する根拠としてきた。改正教育基本法は、後ろに「この法律および他の法律の定めるところにより」という言葉を続けるから問題がないというが、先の文言が存続すれば、教職員組合のイデオロギー的・政治的な活動を許してきた現状は、根本的には改善されない。日教組は、教育現場への「政府の不当な支配」を排除すると言って、他の法律のいろいろな解釈をひねり出して、従来のように政治闘争を続けるだろう。それでは、我が国の教育は正常化されない。

「不当な支配に服することなく、」という文言は、削除すべきである。もしどうしても残すというのであれば、主語を「教育は」から「教育行政は」に替えるべきである。本来、この条文はそのような意味の条文だからである。
 

教改委案は、この点、慎重に練られた案だった。教育行政という条項がなく、旧教育基本の第十条(教育行政)に関係する条項は、以下に相当する。

 

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  教改委案

 

第十八条(国及び地方公共団体の役割分担)

一 国は、教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られるよう、地方公共団体との適切な役割分担を行い、これを監督する権限を有する。

ニ 地方公共団体は、国との緊密な連携を図り、区域内の教育に関する施策を策定し、これを実施する権限と責任を有する。

 

この条文案には、問題の「不当な支配に服することなく」の文言はない。その点、日教組による歪曲した解釈の余地がない。

教改委案は、教育行政全体には触れずに、国及び地方公共団体の役割分担を定めている。しかし、その前提となる教育行政に関する条項は重要であり、そこに教育行政のあり方を定めた上で、国と地方自治体の関係と分担を定める構成がよいと思う。

 

改正教育基本法は、第一項に「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」と定めた。再改正においては、前半は、主語を教育行政に変え、「不当な支配に服することなく」を削除したい。後半は、国と地方公共団体の関係が対等であるかのような規定である。これは、独立主権国家としておかしいのであって、国の主導性が明記されなければならない。

自民党は憲法改正案においても、地方自治に関する章に以上に力を入れており、地方分権を進めようとしている。しかし、国防の回復や非常事態対応の明記などを行った上でなければ、安易な地方分権は、日本解体を引き起こしかねない。教育においてもこれが言えるのであって、改正教育基本法第一項の後半は危険性を孕んでいる。私は反対する。第四項も、財政に関する地方への無原則的な移行に進む危険性がある。

この点、教改委案は、国と地方公共団体の関係を明確に定めており、適切な規定だったと思う。私案は、教改委案に第一項を加えたものである。

 

◆ほそかわ案

 

(教育行政)

第二十条 教育行政は、国民全体に責任を負い、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるものとする。

2 国は、教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られるよう、地方公共団体との適切な役割分担を行い、これを監督する権限を有する。

3 地方公共団体は、国との緊密な連携を図り、区域内の教育に関する施策を策定し、これを実施する権限と責任を有する。

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23)教育振興基本計画

 

 改正教育基本法は、教育振興基本計画という条項を新設した。

 

●改正教育基本法

 

(教育振興基本計画)

第十七条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

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 改正された教育基本法のもとに、教育振興基本計画を策定することは、当然必要である。また、達成状況等を国会に報告する義務を課すことは、よいことだと思う。

この条項は、全体に適当だと思う。修正の必要はなく、そのまま、私案第二十一条とする。ページの頭へ

 

 

24)補則

 

 最後の補則条項については、改正教育基本法の規定でよいと思う。ちなみに、以下の通りである。

 

●改正教育基本法

 

第十八条   この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。

 

 これが私案では、第二十二条となる。

 

以上で、教育基本法の再改正に関する私案についての説明を終える。

 

 最後に、補足だが重要なことを一点述べたい。教育基本法は、憲法の下で教育の基本方針を定めている。それゆえ、教育基本法の根本的な改正には、憲法の改正が必要である。憲法から根本的に直さなければ、今日の日本の危機は解決できない。上記の教育基本法再改正案は、現行憲法の枠内での再改正案である。新憲法の制定後は、さらに根本的な改正を行うべきものと考える。

新憲法の私案は、以下の関連掲示をご参照願いたい。ページの頭へ

 

関連掲示

・拙稿「日本再建のための新憲法〜ほそかわ私案

 

 

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