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  人類の展望

                       

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■米国はパリ協定離脱宣言を撤回すべし

2019.7.6

 

<目次>

はじめに

1.京都議定書からパリ協定へ

2.国連気候変動に関するIPCCの役割

3.IPCCへの信頼がゆらいだ事件

4.2013年IPCC第5次評価報告書より

5.科学者の警告を無視した政策が強行
6.「トランプの科学」のからくり
7.米国等の各国で科学者が行動を起こした

8.科学は万能ではないが、人為的原因の削減は人間の責任

9.トランプ米大統領がパリ協定離脱宣言

10.パリ協定離脱宣言に反発の動きが

 

 

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はじめに

 

 米国のトランプ大統領は、2017年(平成29年)6月1日パリ協定から離脱することを宣言した。

 私は、21世紀の人類は核戦争と地球環境破壊による自滅の危機を乗り越えて、物心調和・共存共栄の新文明へと飛躍できるかどうかの、かつてないほど重要な段階にあると考えている。このたび米国のトランプ大統領が、京都議定書より遥かに緩やかなパリ協定から離脱することを宣言したことは、人類の将来にとって極めて憂慮すべきことである。残念でならない。
 本稿は、背景にある地球温暖化の問題とトランプ大統領のパリ協定離脱の経緯と問題点を書き、米国が パリ協定離脱宣言を撤回することを求めるものである。

 

1.京都議定書からパリ協定へ


 1968年(昭和43年)、ハーバード大学のロジャー・レヴェル教授は、地球の大気中の二酸化炭素の濃度を観測したデータを発表した。地球温暖化の原因を解明する先駆的な研究だった。
 1972年(昭和47年)から地球環境破壊に関する報告書に地球温暖化の問題が盛られ、1980年代には、世界的に広く知られるようになった。CO2等が温室効果をもたらし、それによって地球が温暖化しているという仮説は、これを認めない科学者もおり、現在も論争が続いている。私は科学者ではなく、独自の見識を以て判断する能力を持っていない。一般論としては、広く支持されている説が必ずしも正しいとはいえず、常識は常に疑ってみる必要がある。だが、過去40年以上、この一見茫洋とした仮説が多くの人の理解するところとなり、国際社会が重大課題として取り組むようになってきたという過程を観察してきた者として、私はこの仮説を支持する。科学的な仮説でこれほど広く国際社会に理解が広がり、地球規模の対応を要する深刻な問題として国際的な取り組みがされるようになっているものは、他にないのではないか。地球温暖化の人工的な原因に関する部分の解決に、人類は一致協力して努力すべきと考える。それゆえ、トランプ大統領がパリ協定の離脱を宣言したことは暴挙であり、米国内でこれに反発する動きが広がっているのは、当然と考える。
 さて、1992年(平成4年)6月、ブラジルのリオ・デジャネイロで、国連環境開発会議、いわゆる第1回「地球サミット」が開催された。この会議は、21世紀に向けて、環境と経済発展を対立したものとして捉えるのではなく、両者を調和させながら実現することを目指したものだった。「持続可能な発展」の実現のための基本理念となる「リオ宣言」、これを具体化するための行動計画としての「アジェンダ21」、さらに気候変動枠組条約、生物多様性条約、森林原則声明などが採択された。この時、地球温暖化問題についても、国際的な取組みが協議された。
 その5年後、地球温暖化に対処するため、国際的な取り組みが話し合われ、1997年(平成9年)12月に京都議定書が議決された。議定書によって、2008年(平成20年)から二酸化炭素の削減への取り組みが始まった。
 京都議定書には、世界132ヶ国が参加した。だが、先進国のうち、アメリカとオーストラリアは、批准しなかった。なかでもアメリカは、中南米・アフリカ・中東・オーストラリア・日本・アジアのすべてを合計した以上の量の温室効果ガスを排出している。アメリカの人口は世界の5%だが、世界全体の25%近くの温室効果ガスを出している。一人当たりの炭素排出量で見ても、アメリカがずば抜けて多い。こうしたアメリカが、地球温暖化の問題への取り組みにおいて極めて消極的であることは、この取り組みを大きな限界のあるものにしている。アメリカが変わらなければ、地球の温暖化は止まらない。
 さらに京都議定書では、インドや中国などの大量排出国が規制対象外となった。その他の削減対象になっていない発展途上国からの排出は続き、かつ急速に増加した。そのうえ、カナダは削減目標の達成を断念するなど、多くの問題が発生した。
 京都議定書は、2013年(平成25年)までの5年間に関する協定だった。それ以降の地球温暖化防止の実効的な枠組みを作る必要がある。だが、ポスト京都議定書については、5年間のうちには結論が出ず、また協議や議論の途中であり、合意の目処は立たなかった。
 そうしたなか、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が続けられてきた。2015年(平成27年)11月30日にパリでCOP21が開催され、初日は初日に安倍晋三首相、オバマ米大統領、習近平中国国家主席ら150カ国もの首脳が参加する会合を開き、温暖化対策への決意を確認した。12月12日に、2020年以降の温暖化対策の国際枠組みとしてパリ協定が採択された。この協定は、京都議定書と同じく、法的拘束力の持つ強い協定として合意された。京都議定書以来、18年ぶりの枠組みの設定であり、196カ国が締約した。
 全体目標として、産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅を2度未満に抑えることを目標とし、1.5度未満にするよう努力する方針などを盛り込み、世界全体で今世紀後半には、人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする方針を打ち出した。そのために、全ての国が、排出量削減目標を作り、提出することが義務づけられ、その達成のための国内対策を取ることも義務付けられた。各国の国情を考慮しながら、全ての国が徐々に国全体を対象とした目標に移行することとし、5年ごとに目標の見直しをする。アメリカ・中国・インドも従来より積極的に排出量実質ゼロに取り組むこととなり、ようやく世界全体で地球温暖化対策に取り組む国際合意ができたといえる。
 地球環境問題では、各国がエゴの張り合いをしていたのでは、人類全体が共倒れになる。人類全体としての「持続可能な成長」の枠内で、先進国、途上国、それぞれが「持続可能な成長」のあり方を見出せなければ、海面上昇による主要な巨大臨海都市の水没、凶暴化する台風・竜巻の襲来、一層の砂漠化による農地の荒廃、大気・水・土壌の汚染による健康喪失等によって、人類は衰亡へと向かうだろう。これほど人間の生存・生活の権利を自ら危うくすることは、核戦争以外に他にない。
 パリ協定は、2016年11月4日発効した。批准国の温室ガス排出量が世界の総排出量の55%以上になることなどが発効要件だったが、2大排出国の米中が同年9月に批准し、採択から1年足らずのスピード発効となった。同年11月7〜19日にモロッコで開かれたCOP22では、協定の実施ルールを2018年に決めることで合意した。日本は昨年11月8日に批准した。そして、いよいよ各国が協定に従って、実行に取り組んで、約7か月というところで、米国の新大統領トランプ氏はパリ協定離脱を宣言した。これが実行されれば、国際社会の取り組みへの影響は深刻なものとなる。
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2.国連気候変動に関するIPCCの役割

 1988年(昭和63年)以降、地球温暖化の問題について科学的な評価報告をして、国際社会の政策協議に基礎的な資料を提供してきたのは、IPCCすなわち「国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)」である。IPCCは、人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された。世界の科学者が発表する論文や観測・予測データから、政府の推薦などで選ばれた専門家がまとめている。事務局はジュネーブのWMO本部の中に置かれ、現在、参加国は195カ国に上っている。
 IPCCには、各国政府を通じて推薦された科学者が参加し、5〜6年ごとにその間の気候変動に関する科学研究から得られた最新の知見を評価し、評価報告書(assessment report)にまとめて公表する。報告書には、科学的な分析のほか、社会経済への影響、気候変動を抑える対策なども盛り込まれる。国際的な対策に科学的根拠を与える重みのある文書となるため、報告書は国際交渉に強い影響力を持っている。
 IPCCには、三つの作業部会があり、第1作業部会(WG1)は科学的根拠、第2作業部会(WG2)は影響・適応・脆弱性、第3作業部会(WG3)は緩和策に関する報告書を作成する。また、それらの報告書を統合した統合報告書(Synthesis Report)が作成される。
 各作業部会の報告書は、「政策決定者向け要約(SPM)(Summary for Policy-Makers)」と、より専門的で詳細な情報が記載された「技術要約(Technical Summary)」からなる。
 IPCC総会で、評価報告書の作業計画に関する決定を行う。報告書作成のための執筆者や査読者等を決定する。
 IPCCは第4次評価報告書を発表した際に、『不都合な真実』で啓発活動を行っているアル・ゴア元米国副大統領とともに、2007年のノーベル平和賞を受賞して話題となった。
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3.IPCCへの信頼がゆらいだ事件

 ノーベル平和賞を受賞したIPCCへの信頼が揺らぐ事件が2つ起きた。それらの事件について、地球物理学者・環境科学者、増田耕一氏の見解の大要を記す。
http://macroscope.world.coocan.jp/ja/memo/ondanka/ipcc_ar4_error_etc.html

 「2010年1月に、2007年に発表されたIPCCの第4次評価報告書(AR4)に間違いがあるという報道があった。批判の論調は、第1部会が示した気候の将来見通しの科学的根拠を疑うものとなりがちだった。だが、具体的な指摘のほとんどはIPCC第2作業部会の報告書の記述についてのものだった。
 深刻なまちがいだったのは、第2作業部会の巻のアジアの章の、ヒマラヤの氷河が『2035年までに消滅する可能性が高い』あるいは『2035年までに面積が5分の1になる可能性が高い』という趣旨の記述だった。これは第1作業部会による雪氷の将来見通しとは独立したものだった。情報源をたどると、前者はある科学者の主観的発言を伝える雑誌の報道記事、後者は『極域を除く世界の氷河の面積が2350年までに5分の1になる』という見積もりが間違って伝わったものだった。
 IPCCでは、根拠とする文献は査読済み論文を原則とし、それ以外の材料を採用する場合は著者たちによって査読に相当する検討をすることになっていた。しかしこの場合は実質的にそれができていなかった。また、AR4原稿への査読者からコメントがあったにもかかわらず適切な対応がとられていなかった。
 また、オランダの海面下の面積比率がまちがっていた。これはオランダ環境評価庁が作成した資料の間違いを引き継いでしまったものだった。明らかな間違いだが、現状の説明の間違いであり、将来見通しへの影響はないものだった。
 ほかにも間違いや問題点がチェックされ、IPCCは翌年の総会で、報告書の査読のしかたなどいくつかの制度改革を行なった。
 次に、2番目の事件は、2009年11月、イギリスのイーストアングリア大学の気候研究ユニット(CRU)の研究者の電子メールが暴露された事件である。警察は、誰かが控えのメールサーバーに不当にアクセスした犯罪である可能性が高いとして捜査したが、容疑者や動機は特定されないまま捜査は、2012年に打ち切られた。この事件は、気候研究ユニット電子メール事件、クライメート事件と呼ばれる。
 追及は、不当アクセスの動機ではなく、暴露されたメールを書いた科学者に向かった。特に強い非難を受けたのは、CRUの所長のフィリップ・ジョーンズとアメリカのペンシルベニア州立大学教授のマイケル・マンだった。
 マンが筆頭著者となった過去千年間の北半球平均気温の推定は、IPCC第3次報告書(2001年)の第1作業部会の巻にとりあげられ、IPCCからの報道発表で、20世紀の温暖化の事実が検出されたことを示す代表例として使われた。一方、ジョーンズは、機器観測による過去百数十年間の気温を総合し、地球全体や北半球の平均値の時系列を示した。IPCC第4次報告書の温暖化の検出と原因特定に関する主要な根拠は気候モデルによる20世紀気候再現実験だが、そこで再現されるべき観測事実を示す役割をしている。暴露されたメール内容を使った言説は、この2種類の研究を疑うものだった。
 イーストアングリア大学、イギリス国会、ペンシルベニア州立大学はそれぞれ複数の外部有識者による委員会を作ってこの問題の評価をした。その結果、捏造などの不正の疑いは晴れたと思われるが、研究過程の情報の公開についてはさらに努力が必要だという指摘がされている。
 全地球平均気温の200世紀の変化傾向に関する限り、NASA GISS(Goddard Institute for Space Studies)のハンセンらや、NOAA NCDC (National Climatic Data Center)のピーターソンらが公開された観測データだけを使った推計で、基本的に同じ結論を得ており、仮にCRUを疑ってもAR4の結論はゆらぐものではなかった。温暖化にときどき懐疑的であったカリフォルニア大学バークレーの物理学者モラーが公開された観測データを推計するプロジェクトを始めたが、その初期的結果(2012年7月報道発表)も、AR4と基本的に同じだった。以後、20世紀の温度上昇の事実を疑う言説の影響力は弱まったと思われる。」

 以上が、増田氏の見解の大要である。氏の見解に対しては異論・反論があるが、結果として、これらの2つの事件は、IPCCへの信頼を損なうものとなっていない。2015年(平成27年)11月に行われたCOP21の協議は、IPCCの評価報告書をもとに行われ、パリ協定が締結されている。IPCCの評価報告書が科学的に間違いだらけで、無意味なものであれば、150カ国もの首脳が参加した会議が合意に達するわけがない。同協定には、196カ国が参加している。それらの国には、多くの科学者がおり、また気象・環境等に関する政府機構や科学研究機関がある。全く根拠のないものを、人類の大多数が信じ、人類の運命に関わるものとして取り組んでいるとは、私には考えられない。理論もデータも完璧ではない。問題点、検討点はある。だが、概ね正しいとして、世界全体で実行すべき課題が地球温暖化対策である、と私は理解している。
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4.2013年IPCC第5次評価報告書より

 IPCCは、2013年(平成25年)に第5次報告書を出した。わが国の気象庁のサイトに掲載されている第1次作業部会の報告書の「政策決定者向け要約 主なメッセージ」を次に掲載する。< >で括った部分は、最重要の要旨である。
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_spm_hl.pdf

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政策決定者向け要約 主なメッセージ
〜気候変動に関する政府間パネル 第5 次評価報告書 第11作業部会報告書〜

気候システムの観測された変化

 <気候システムの温暖化には疑う余地がなく、また1950年代以降、観測された変化の多くは数十年から数千年間にわたり前例のないものである。大気と海洋は温暖化し、雪氷の量は減少し、海面水位は上昇し、温室効果ガス濃度は増加している。>
 地球の表面では、最近30年の各10年間はいずれも、1850年以降の各々に先立つどの10年間よりも高温でありつづけた。北半球では、1983〜2012年は過去1400年において最も高温の30年間であった可能性が高い(中程度の確信度)。
 海洋の温暖化は気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量において卓越しており、1971年から2010年の間に蓄積されたエネルギーの90%以上を占める(高い確信度)。1971年から2010年において、海洋表層(0〜700 m)で水温が上昇したことはほぼ確実であり、また1870年代から1971年の間に水温が上昇した可能性が高い。
 過去20年にわたり、グリーンランド及び南極の氷床の質量は減少しており、氷河はほぼ世界中で縮小し続けている。また、北極域の海氷及び北半球の春季の積雪面積は減少し続けている(高い確信度)。
 19世紀半ば以降の海面水位の上昇率は、過去2千年間の平均的な上昇率より大きかった(高い確信度)。1901年から2010年の期間に、世界平均海面水位は0.19[0.17〜0.21]# 上昇した。
 大気中の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素濃度は、少なくとも過去80万年間で前例のない水準にまで増加している。 二酸化炭素濃度は、第一に化石燃料からの排出、第二に正味の土地利用変化による排出により、工業化以前より40%増加した。海洋は排出された人為起源の二酸化炭素の約30%を吸収し、海洋酸性化を引き起こしている。

気候変動をもたらす要因
 <放射強制力の合計は正であり、その結果、気候システムによるエネルギーの吸収をもたらしている。合計放射強制力に最大の寄与をしているのは、1750年以降の大気中の二酸化炭素濃度の増加である。>

気候システム及びその近年の変化についての理解
 <気候システムに対する人間の影響は明瞭である。これは、大気中の温室効果ガス濃度の増加、正の放射強制力、観測された温度上昇、そして気候システムに関する理解から明白である>
 第4次評価報告書以降、気候モデルは改良されている。モデルは、20世紀半ば以降のより急速な温暖化や、大規模火山噴火直後の寒冷化を含め、観測された地上気温の大陸規模の分布や数十年にわたる変化傾向を再現している(非常に高い確信度)。
 温度変化、気候フィードバック、及び地球のエネルギー収支の変化に関する観測やモデルによる研究が総合されて、過去及び将来の強制力への応答としての地球温暖化の大きさについての確信度を与えている。
 気候に対する人為的影響は、大気と海洋の温暖化、世界の水循環の変化、雪氷の減少、世界平均海面水位の上昇、及びいくつかの気候の極端現象の変化において検出されている。人為的影響に関するこの証拠は、第4次評価報告書以降増加し続けている。人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い。

将来の世界及び地域における気候変動
 <温室効果ガスの継続的な排出は、更なる温暖化と気候システム全ての要素の変化をもたらすだろう。気候変動を抑制するには、温室効果ガス排出量の大幅かつ持続的な削減が必要である>
 21世紀末における世界平均地上気温の変化は、RCP2.6シナリオを除く全てのRCPシナリオで1850年から1900年の平均に対して1.5℃を上回る可能性が高い。RCP6.0シナリオとRCP8.5シナリオでは2℃を上回る可能性が高く、RCP4.5シナリオではどちらかと言えば2℃を上回る。RCP2.6シナリオを除く全てのRCPシナリオにおいて、気温上昇は2100年を越えて持続するだろう。気温上昇は年々から十年規模の変動性を示し続け、地域的に一様ではないだろう。
 21世紀にわたる温暖化に対する世界の水循環の変化は一様ではないだろう。地域的な例外はあるかもしれないが、湿潤地域と乾燥地域、湿潤な季節と乾燥した季節の間での降水量の差が増加するだろう。
 21世紀の間、世界全体で海洋は昇温し続けるであろう。熱は海面から海洋深層に広がり、海洋循環に影響するであろう。
 21世紀の間、世界平均地上気温の上昇とともに、北極域の海氷面積が縮小し厚さが薄くなり続けること、また北半球の春季の積雪面積が減少することの可能性は非常に高い。世界規模で氷河の体積はさらに減少するだろう。
 21世紀の間、世界平均海面水位は上昇を続けるだろう。海洋の温暖化が強まることと、氷河と氷床の質量損失が増加することにより、全てのRCPシナリオについて海面水位の上昇率は1971年から2010年の期間に観測された上昇率を超える可能性が非常に高い。
 気候変動は、大気中の二酸化炭素の増加をさらに促進するような形で炭素循環過程に影響を与えるであろう(高い確信度)。海洋のさらなる炭素吸収により、海洋酸性化が進行するであろう。
 二酸化炭素の累積排出量によって、21世紀後半及びその後の世界平均の地表面の温暖化の大部分が決定づけられる。気候変動の特徴の大部分は、たとえ二酸化炭素の排出が停止したとしても、何世紀にもわたって持続するだろう。このことは、過去、現在、及び将来の二酸化炭素の排出の結果による、大規模で数世紀にわたる気候変動の不可避性を表している。
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5.科学者の警告を無視した政策が強行

 トランプ氏は大統領選出馬表明前の2012年ごろから、ツイッターで「気候変動という概念は中国が米国の製造業を弱くするために作りあげたものだ」などと主張してきた。選挙期間中は、気候変動問題は存在せず、過剰な環境規制が経済を圧迫していると主張した。ツイッターに「気候変動の話は中国のでっち上げだ」と書いて話題になった。出馬表明後の2015年11月に出版された著書でも「地球には氷河期もあった。気候変動が人為的なものだとは簡単には信じられない」と言及し、パリ協定からの離脱を政策として掲げた。
 こうしたトランプ氏に対し、2016年9月、宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング博士をはじめ375名の科学者が、トランプ氏に警告する公式書簡に署名したことが、世界的に報道された。
 トランプ氏が大統領選に勝利すると、科学者の間で次期大統領の科学政策を不安視する声が上がった。
 本年1月20日、トランプ氏が大統領に就任すると、直後にリニューアルされたホワイトハウスのWebサイトから気候変動に関するページがなくなった。翌週、トランプ新大統領は、環境保護局に対して研究資金援助と新しい契約を即時停止し、Webサイトから気候変動に関するページを削除するように命じた。気候変動に関わりの深い環境保護局、内務省、保健福祉省、農務省に対しては、メディアを含む一般向けの情報提供を一時的に停止するように箝口令を出した。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、以前から予定されていた気候変動と健康に関する会議を突然中止した。さらに、今後は環境保護局から発表される科学的な成果やデータについては、政府から出向した職員が事前にチェックするという方針が出された。
 こうした政策に対して、気候変動の研究者を中心に大きな批判の声が上がり、トランプ政権に対抗する動きが起った。第一に「科学者たちの行進」の提唱。「科学的な成果やデータを政治的な意向で検閲すべきではない」と訴える研究者とそれに賛同する人々のデモの呼びかけである。第二に、データアーカイブ・プロジェクト。気候変動のデータが消される前に有志によって保存しようという取り組みである。第三に、アル・ゴア元米副大統領や共同主催者だった公衆衛生協会(APHA)などが中心となり、CDCが中止した会議と同様の会合が有志の手で開催されることになった。
 これらの動きがきっかけとなって、箝口令が敷かれた政府組織に属する職員らしき人々が非公式アカウントを作り、気候変動とトランプ政権に対する批判をツイートし始めた。それらのアカウントは1日で数万人のフォロアーを獲得し、先の三つの動きとともに大きな社会運動となっていった。
 これが、トランプ政権の発足から、わずか1週間の間に米国で起きたことだった。新政権は、最初の1週間で気候変動の研究者だけでなく、米国及び世界の多くの研究者の反発を買った。サイエンス・ライターで編集者の柏井勇魚氏は、2017年1月当時、次のように書いた。
 「研究者というのは基本的にオープンであることを是とする人たちです。それはサイエンスそのものがオープンであることにその正しさの論拠をおいているからです。論文が公開され、データが公開され、その研究手法が明らかにされて初めて、誰もがその研究の妥当性を評価できます。とくに気候変動の研究は、全世界規模で長期間、広範囲に渡って継続的に取られた様々なデータを突き合わせて、ようやく何かが見えてくるという分野です。その意味では気候学はサイエンスの持つオープンさに支えられているといってもいいでしょう。そういう彼らに対して「口をつぐめ、政府のチェックを受けるまでは研究成果もデータも公開するな」といえば、怒るのは当然です。サイエンスをなんだと思っているのか?」と。 
 トランプ大統領は、環境保護庁の長官に、スコット・プルート氏を任命した。プルート氏は、オクラホマ州の司法長官時代に、主な石油&ガス生産会社、電力会社、政治グループと緊密に協力し、多数の環境規制の撤廃に努めていた。同氏は、2017年3月、「CO2の排出量が気候変動の直接的原因であるとは思わない」と述べ、「気候変動を懸念する科学者および環境グループはCO2の排出量を強調しすぎる」と主張した。これに対し、3月13日、30人の著名な気象科学者は、プルート宛てに抗議の手紙を送った。彼らは「崖から落ちると、重力から逃げる方法はないことと同様、余分な二酸化炭素や他の温室効果ガスを大気に加えると、それに続く温暖化を免れることはできない」と書いた。このグループには、カリフォルニア大学サンディエゴ校のノーベル賞受賞化学者マリオ・モリーナ博士及び国立科学アカデミーの8人の科学者が含まれていた。
 トランプ政権の閣僚の中で、ジェイムズ・マティス国防長官は、「気候変動は本物であり、アメリカの国益とペンタゴンの資産をどこにでも脅かす」と主張していると伝えられた。レックス・ティラーソン国務長官も、エクソン・モービルの元CEOだが、気候変動を信じていると報じられた。
 しかし、トランプ大統領は、地球温暖化を「でっちあげだ」と主張し、科学技術予算を大幅に削減する方針を示した。これに対し、科学者団体や環境団体などが、さらに行動を起こすようになった。
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6.「トランプの科学」のからくり

 日本経済新聞社シリコンバレー支局の兼松雄一郎記者は、日経電子版2017年4月7日付に、興味深い記事を書いた。
http://college.nikkei.co.jp/article/96391414.html
 その大要は次の通りである。

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 トランプ政権は、主要な科学者やメディアの発する情報は嘘なのではないか、との疑いを繰り返しばらまいている。だが、決して科学に対して無知なのではない。科学者の主張を理解した上で、あえて疑いをばらまくのが「トランプの科学」。エリートである科学者たちを否定する階級闘争の『物語』によって大衆を魅了し、意識的に人気取りに利用する。たばこやエネルギー業界のロビイストが使ってきた手法を大衆の娯楽にする政治手法へと昇華させたのが、「トランプの科学」の神髄だ。
 米アリゾナ州トゥーソンの北東の荒野に、アリゾナ大学の研究施設「バイオスフィア2」がある。地球の小型模型として気候変動の影響などが研究されており、宇宙への移住を想定し、閉鎖環境での長期生活実験をしていた。1990年代半ばにコストカッターとしてここに呼ばれたのが、スティーブン・バノン氏だった。「科学者たちの多くはここで観測できる現象が地球でも起きると考えている」と同氏が語る当時のインタビュー動画が残っている。少なくともバノン氏は当時から科学者の多くが温暖化を認めていることを認識していた。ところが、今や、同氏はトランプ政権の首席戦略官となり、政権の温暖化否定政策に大きな影響をふるっている。バノン氏は無知なのではない。科学的な確からしさよりも大衆に受けるメッセージを政治的にあえて選んでいるのだ。
 科学史家のハーバード大教授ナオミ・オレスケス氏は、著書『世界を騙しつづける科学者たち』という本で、次のようなからくりを指摘している。「たばこや温暖化の問題で、権威のある科学者が自分の専門外の分野で疑いをばらまく。少しでも疑う科学者がいれば、主要メディアが両論併記するため、科学的に結論が出ていないということになる。疑いをばらまくことをなりわいとする科学者を業界が支援し、それによって規制を遅らせる。それによって業界が既存の利益構造をできるだけ延命させる」と。
 トランプ政権の態度は「科学の否定」ではない。むしろ前提を疑うという一見科学的な態度を取り、畑違いの科学者の権威に頼り、科学的知見を部分的に引用して主張の中に取り込んでいる。同時に近代科学を近代科学たらしめている事実検証の手続きに対しては、驚くほど不誠実だ。再現可能な形で証拠を示し、相互に検証し合い、共同体として同意した事実を積み上げていく。近代の科学者の共同体が作り上げて来た体系に敬意を払わない。そうした知的に不誠実な振る舞いをしてもトランプ政権が一定の支持を集めるのは、米国において科学者共同体と教育水準が相対的に低い大衆との間に絶望的な知識の断絶があるからだ。
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7.米国等の各国で科学者が行動を起こした

 トランプ政権に抗議する科学者は、大規模な行動を起こした。2017年4月22日、科学者のデモ行進「マーチ・フォー・サイエンス」が、米ワシントンをはじめ世界各地で開かれた。「地球の日(Earth Day)」に合わせて、展開されたものである。科学者有志がインターネットで呼びかけ、「米科学振興協会(AAAS)」などが支援した。AAASは、世界最大級の学術団体であり、学協会単位の加入もあり、会員総数は12万人を超える。世界で最も権威のある三大学術誌の一つ「Science」を発行していることで知られる。
 行進の当日、ワシントンでは1万人以上(米メディア推計)が参加した。科学者らは、ホワイトハウス前で「温暖化は事実だ」「温暖化は“フェイクニュース”(偽のニュース)じゃない」「科学を黙らせることはできない」「米国に賢さを取り戻せ」などのプラカードを掲げ、連邦議会へ行進した。参加者は、トランプ大統領による地球温暖化の否定やトランプ政権が計画する温暖化対策をはじめ環境関連の研究費カット、環境保護庁や米宇宙局(NASA)などでの科学者の解雇・リストラなどの動きを強く批判し、科学に基づかない政策の後退について反対を表明した。
 主催者発表によると、科学者らによるデモ行進は、世界の600カ所以上で実施され、数十万人が参加した。ロンドンで開かれた集会には、数千人の科学者や市民が参加し、「地球温暖化は現実だ」などと書かれたプラカードを掲げて市内を行進し、トランプ政権に抗議するアメリカの科学者たちに連帯を示そうと訴えた。日本では、東京や茨城県つくば市で集会が行われた。北極にいる探検家もツイッターで参加表明したと伝えられる。
 この日、トランプ米大統領は、「経済成長と環境保護」の両立をめざす現政権にとって「厳密な科学は非常に重要な意味を持つ」とする声明を発表した。トランプ氏は声明で「環境やそのリスクへの理解を深める科学研究の発展に、我が政権は全力で取り組む」「厳密な科学はイデオロギーでなく、誠実な研究と妥協のない議論にかかっていることを心に留めるべきだ」と強調した。ところが、その同じ日に、ツイッターでは「雇用が重要だ」「経済成長が環境保護を強化する」とも発言し、経済重視の立場を改めて表明し、「米国の労働者を傷付けずに環境を守ることは可能だし、そうしなければならない」と訴えた。明らかに本音は、ツイッターの方にある。
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8.科学は万能ではないが、人為的原因の削減は人間の責任

 

トランプ政権の環境政策への批判が強まる一方、米国には気候変動問題の全容や解決策が科学的に解明済みだと考える「科学万能主義」を戒める声もある。

産経新聞6月12日付のワシントン支局・小雲規生記者は、次のように伝えている。

ジョージア工科大学の元教授で気候変動問題の専門家、ジュディス・カリー氏は、本年3月、米下院科学・宇宙・技術委員会での公聴会で「IPCCの結論確信もって受け入れることは正当化できない」と述べた。気候変動に関する歴史的なデータは不十分なうえ、将来の気温の変化を予測するための計算モデルは極めて複雑で完成形があるわけではない。複雑なモデルには前提条件をわずかに変えるだけで、長期的な予測結果が大きく揺らぐ性質もある。にも関わらず連邦政府の支援を受ける研究機関や大学は研究者に対して、IPCC報告書に象徴される統一見解に従うよう「圧力」をかけている、とカリー氏は述べた。

ピュリツァー賞の受賞者で現在、米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニストのブレット・スティーブンス氏は、IPCC報告書について「洗練されたものではあるが、間違っている可能性からは逃れられない」と指摘し、「科学について完全に正しいと主張することは科学の理念に背くことになる」と主張している。

 また1980年代からNYTなどで気候変動問題を取材してきたジャーナリストのアンドリュー・レブキン氏は、「分からない問題が存在することを過小評価すれば、かえって問題を解決しようとしない人たちに力を貸すことになる」として、科学で未来を完全に予測できないことを認めたうえで、幅広い解決策を模索するべきだとする。

小雲記者は、上記のような専門家やライターの見解を引くとともに、「米国における立場の違いは科学的な知識の有無ではなく、所属するコミュニティーに左右されるとの指摘もあり、離脱派と残留派の対立は「文化戦争」の様相を呈している」と述べている。

ロイター通信が6月6日に発表した米国の世論調査によると、パリ協定離脱への支持は、全体では39%という低水準だった。しかし、共和党支持層では70%、民主党支持層では17%と好対照をなした。どの政党を支持するかで、離脱への賛否が大きく分かれる。

同じ傾向が2013年のある世論調査でも見られた。大気中のCO2の増加が気温上昇を引き起こしていると科学者の多くが考えていることについて、共和・民主の両党の支持層で認知度に大きな違いはなかった。しかし、「人間が地球温暖化を引き起こしていると信じているか」との質問に、民主党支持層は80%超が同意したが、共和党支持層は約25%の同意に留まった。イエール大学のダン・カーン教授は、「人々が気候変動について何を信じるかは、知識に左右されるのではなく、回答者がどういう社会的なグループに属しているかに左右される」と述べているという。カーン氏は、気候変動問題をめぐる対立への注目が高まるなかで自分が属しているグループと異なる意見を持つことは、グループ内での立場を危うくすると指摘し、「合理的な人間ならば、自分が属しているグループ内で大勢となっている意見を取り入れるだろう」と見ている。小雲記者は「気候変動問題をめぐる米国内の対立は科学的な知見とは無関係な、経済や社会、地域などに深く根ざした文化間の戦争状態にあるといえそうだ」と書いている。

私見を述べると、IPCCの評価報告書は、地球温暖化の原因をすべて人工的なものだとは断定していないのではないか。第5評価報告書は「人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い」という書き方をしている。数百万年から数億年という超長期的な時間の幅で考えると、現在地球に起っている気候変動には自然的な原因があることも考えられる。太陽黒点の活動や地球自体の物理的な変化も考えられる。しかし、人為的な原因が全くないとは考えられない。産業革命後の急速な産業の発達による温暖化効果ガスの排出の影響を過小評価してはいけないと思うし、まったくその効果を否定する一部の科学者の姿勢には疑問を感じる。仮に自然的原因と人為的原因が重合していると考えても、人為的な原因については削減を図ることが必要だし、それは人間の責任として努力すべきことだろう。事は温暖化に限らない。全地球規模で沙漠化、森林消失、大気・土壌・水質・海洋お汚染、種の大量絶滅等々が進行している。これら全体への取り組みと、地球温暖化の対処は、切り離せない課題である。

産業革命以来、経済的な発展に猛進し、環境との調和を軽視してきたことが、現在の人類文明と地球生態系の危機を生み出している。そのことへの真摯な反省なく、温暖化問題への取り組みよりも、自国の労働者の雇用や自国民の経済的利益の確保を優先する姿勢は、長期的に見た時には、子供や孫、またその先の世代の将来を損なうことになるだろう。ページの頭へ

 

9.トランプ米大統領がパリ協定離脱を宣言

 

トランプ大統領は、2017年(平成29年)6月1日パリ協定から離脱することを宣言した。米国は温室効果ガス排出量の国別割合で、中国の20.1%に次ぎ、17.9%で第2位を占める。続いて、欧州連合12.1%、ロシア7.5%、インド4.1%、日本3.8%の順である。米国は、また発展途上国のCO2削減を経済的に支援すべき先進国の筆頭にある。こうした位置にある米国の離脱が現実になれば、世界全体への影響は、非常に大きなものとなる。米国内では、離脱宣言に反発する州、市、企業、団体等が増えている。

トランプ氏が、今回の暴挙をあえてしたのは、地球温暖化の科学的研究を理解しようとせず、自国の、しかも目先の利益や、支持率低下の中でのコアな支持層の支持固め、ロシア・ゲートでの追及逃れ等のためと思われる。
 トランプ政権の中枢においても、長女のイヴァンカ氏(大統領補佐官)やティラーソン国務長官等は、離脱に反対したと伝えられる。ティラーソン氏が会長を務めていたエクソン・モービルのほか、BP、シェル等の化石燃料を扱う企業でさえ、パリ協定に賛同している。シリア、二カラグア以外の196カ国が締結しているパリ協定から離脱することは、米国に不名誉と不信をもたらすだけである。国際社会での指導力の低下は、確実だろう。
 米国は近年、フロリダで海面上昇による市街地の水没が起っている。かつてゴア元副大統領が『不都合な真実』で予測した現象です。それが現実になってきているのである。また、全米各地に広がる異常な乾燥による大規模な山火事、凶暴さを増すハリケーンや竜巻の被害等、地球温暖化の影響と思われる自然現象に、米国は見舞われている。トランプ大統領のパリ協定離脱は、短期的には雇用の創出(石炭労働者等)やGDPの押し上げ(鉄鋼・自動車等)を得られても、長期的には米国自身にとって重大なマイナスを結果するだろう。
 オバマ政権のもとで、米国を地球環境保護の方向に進めたケリー前国務長官が、トランプ大統領の今回の決定は、「アメリカ・ファースト」ではなく、「アメリカ・ラスト」だと言っている。そのラストは「最後」というだけでなく、「最期」にすらなりかねない。
 米国では、今後、民主党はもちろん共和党の一部からも、また環境保護運動をする企業・各種団体等からも、パリ協定離脱反対の運動が起こるだろう。それは、トランプ政権を揺るがすほどのうねりとなっていくことが予想される。

 地球環境の問題は、政治的、経済的な利益で判断するのではなく、科学的な根拠に基づいて議論しなければならない。この点、温暖化の事実、自然的原因と人工的原因、温暖化対策の効果等について科学者の間でもいまだ見解が分かれており、この機会に再度徹底的に議論してほしいものである。ページの頭へ

 

10.パリ協定離脱宣言に反発の動きが

 

 トランプ米大統領のパリ協定離脱表明に対して、米国内で協定離脱反対の運動が起こることが予想されたが、即刻、州レベル、市レベルの動きが出ている。
 大統領の発表当日、ワシントン州、ニューヨーク州、カリフォルニア州の知事が、パリ協定の目標を達成するために United States Climate Alliance を結成するという声明を発表。また温暖化対策を推進する米国各地の市長らで構成される Mayors National Climate Action Agenda(MNCAA) に加わる市長が急増しているとのこと。MNCAAは、トランプ氏の離脱表明を受けて「各市が(パリ協定の)目標を達成するよう努力し、一丸となって21世紀のクリーンエネルギー経済を作っていく」「大統領が同盟国との約束を破るのであれば、われわれが世界各地との関係を強化し、地球を壊滅的な環境問題から救う」などとした声明を発表した。ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ヒューストン、フィラデルフィアなどの主要都市の市長も参加している。
http://www.climate-mayors.org/

 トランプ大統領は、離脱表明演説で「私はピッツバーグの市民を代表するために選ばれた。パリのためではない」と述べた。ラストベルト地帯の有権者の支持を得て、という意味で、気の利いたことを言ったつもりだったのだろうが、そのピッツバーグの市長もMNCAAに参加。「市はパリ協定を支持し、全面的に履行していく」とする行政命令を発しました。これは、トランプ氏への痛烈な反撃である。
 本件について、米国事情に詳しい東洋英和女学院大学客員教授の中岡望氏は、次のように述べている。
 「トランプ大統領の演説は、繰り返しが多く、極めて歯切れが悪いものであったが、それ以上の問題は、離脱の根拠が極めて希薄なことだ。トランプ大統領は『パリ協定で約束した温室効果ガス削減目標を実施に移せば、米国は大きな犠牲を強いられる』『2025年までに270万人の雇用が失われ、2040年までにGDP(国内総生産)3兆ドル、650万人の雇用が失われる』と語った。こうした数字は National Economic Research AssociatesNERA) という民間のマーケティング会社の調査によるものだが、米国政府がパリ協定離脱を正当化する根拠にするには、極めて信頼性の低いものである。
 さらに大統領演説の際にホワイトハウスは、温室効果ガスの削減目標が達成されたとしても2100年までに温度を0.2%しか低下させることができないというMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究 ”How Much of a Difference Will the Paris Agreement Make?" に言及し、『パリ協定によって気温を下げる効果は無視できる程度のものだ』と説明している。だが、これに対してMITの研究者は、トランプ大統領は研究結果を間違って引用しているとし、『私たちはパリ協定からの離脱を支持できない。研究結果では、何の削減努力もしなければ温度は5度以上上昇することになる』と批判している。それ以外にも事実の誤認と歪曲は数多くあり、パリ協定離脱という重要な決定を行うにしては、あまりにもお粗末な論拠である」と。
http://toyokeizai.net/articles/-/174746

 米国内でのパリ協定離脱反対運動は今後、本格的に高まり、トランプ政権を揺るがすものとなっていくだろう。米国は、トランプ大統領によるパリ協定離脱宣言を撤回すべきである。
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関連掲示
・拙稿「地球温暖化〜”不都合な真実”を知ったら

・拙稿「『太陽の時代』のギガトレンド〜21世紀の産業革命を促進しよう

 

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