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説明: 説明: 説明: ber117

 

■中国AIIBの野望と自滅に加わるな

2015.4.7

 

<目次>

はじめに

1.中国は国際金融秩序に挑戦し、経済覇権を目指す

2.英仏独伊の参加でG7に結束の乱れが

3.中国共産党主導のAIIBに募る懸念

4.有識者はこう見る〜石平・渡辺利夫・田村秀男の各氏

結びに〜中国の野望と自滅に加わるな

 

 

説明: 説明: 説明: ber117

 

はじめに

 

 中国が本年(2015年)内に「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」を創設する。3月末までに創設時の参加国を募っていたが、東南アジア、中央アジア、中東の国々に加えて、先進7か国(G7)の英仏独伊までもが参加を表明した。参加申請期限の31日を前に参加表明が相次ぎ、創設メンバーは50を超える国と地域となった。

 世界にはすでに、国際通貨基金(IMF)、世界銀行(IBRD)、アジア開発銀行(ADB)など20あまりの国際金融機関がある。これに対し、中国は第2次世界大戦後、米欧や日本が構築してきた国際金融秩序に挑戦し、中国中心の新たな国際金融機関を立ち上げようとしている。高い経済成長率と猛烈な軍拡によって国力を増大してきた中国が、ついに国際金融制度にまで触手を伸ばしているのである。

 AIIBの目的は、発展途上国のインフラ整備に融資することである。世界最大の成長センターであるアジアに対しては、アジア開発銀行が存在する。だが、アジアでは年間7760億ドル(約94兆円)のインフラ資金が必要との試算もあり、世銀等だけでは資金需要は満たせない。融資決定のスピードの遅さに対する途上国からの不満もある。そこを突いた中国の影響力拡大に、日米は歯止めをかけられないのが現状である。

 今後、中国は最大出資国としてAIIGの本部を中国に置き、初代総裁を出すとともに、融資の裁量権を握って、国際的な影響力を格段と強めようとするものと見られる。

本稿は、中国主導のAIIBの問題点を挙げ、わが国は中国の野望と自滅に加わるべきでないことを主張するものである。

 

1.中国は国際金融秩序に挑戦し、経済覇権を目指す

 

 昨年(2014年)7月、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国がブラジルに集まり、共同出資による発展途上国向けの新開発銀行(NDB)を創設する協定に調印した。BRICS銀行とも呼ばれる。5カ国それぞれが100億ドルを出資して500億ドルの資本金をもつ。開発途上国のインフラ関連投資への金融支援が目的とされる。同時に、経済危機に陥った国への緊急融資に1千億ドルの外貨準備基金を創設、うち410億ドルを中国が担う。これは、国際通貨基金(IMF)・世界銀行による旧来の金融秩序への挑戦である。

 BRICSは、ワシントンに本部を置く世界銀行を「旧秩序」と位置付け、これに代わる新たな秩序を創造しようとしている。この動きをリードしているのは、中国である。中国は、新興国・途上国の外貨準備合計の約5割のシェアを持つ。それを見せ金にして、人民元建てによる投融資を一挙に拡大して、ドルに挑戦する構えである。だが、ブラジル、インド等は民主国家であり、中国の言いなりにはならない。中国は本部を上海に置くことはできたが、総裁ポストはインドに握られるなど、満足のいく構成にはならなかった。そうした中で、中国が新たな国際金融機関の本命として画策してきたのが、、AIIBの創設である。

 中国は、アジア太平洋地域での地域的な覇権を確立し、さらに世界的な覇権の獲得を目指している。第2次大戦後、アジア太平洋地域においても、また世界全体においても、米国が優位に立ってきた。旧ソ連の崩壊後は、一時的に米国一極支配の状態になった。だが、米国は衰退の兆しを示している。その一方、中国は経済成長を続けていると見られており、2030年までに中国が国内総生産(GDP)で米国をとらえるとの予測もある。

 アジア開発銀行は、日本が主導している。本部は、フィリピンのマニラに置かれ、歴代の総裁は日本から輩出している。中国にとって、日本は米国とともに排除すべき対象である。これに対し、東南アジアは小国の集まりであり、中国は最大出資国として主導権を握りやすい。

 NDBとAIIBに共通するのは、融資対象国に内政干渉を行わず、政治的な条件も人権尊重も要求しないという姿勢である。世銀やアジア開銀に大型融資を拒否された途上国が、融資を求めて中国の磁場に引き付けられていくことが予想される。中国は、恣意的な資金提供を行い、融資に名を借りた勢力拡大を図るだろう。軍事力で圧力をかけながら、各国を人民元の力で自らの勢力圏に呑み込んでいこうとするものである。

 中国は、軍事面だけでなく金融面においても米国に挑戦し、米国から覇権を奪おうとしている。BRICSや開発途上国において力量を発揮して、中国の影響圏に誘い込み、その加勢を得て「中華民族の偉大なる復興」への道を歩もうと画策している。金融面でその動きの中心となるのが、AIIBの創設である。ページの頭へ

 

2.英独仏伊の参加でG7の結束に乱れが

 

 本年(2015年)3月12日、英国がAIIBへの参加を表明した。これに続いて、独仏伊も参加を表明した。これら4カ国は先進7か国(G7)のメンバーである。それまでの参加国は中東、アジアの発展途上国が主だったが、ヨーロッパから先進諸国が参加することになり、形勢に重大な変化が起こった。

 英国の参加は、日米に衝撃を与えた。英国の動きは、AIIBが市場で資金調達する際の信用力を高め、経済覇権の動きを強める中国には追い風となった。米国は英国の参加を強く批判している。世界銀行やアジア開発銀行の対抗馬としてAIIBの影響力が強まることを警戒しているためで、米政府高官は、英国から「事実上、米国に相談はなかった」と明かして不快感を表明した。英紙フィナンシャル・タイムズは、「米英が珍しく仲違いした」と書いた。

 英国にとっては、巨大市場を抱える中国との関係強化には魅力がある。AIIB参加を決めた背景には、英国はG7でも群を抜いて対中経済関係を強めている事実がある。ヨーロッパでは、ウクライナ問題による対露制裁の長期化等で経済が悪化している。ロシアがウクライナのクリミア半島併合を断念しない中、対露制裁の長期化は避けられない。そうしたなか、キャメロン政権は、中国との関係強化を図り、投資を呼び込むことで経済の活性化を図っている。中国商務省の統計によると、2014年の対中投資実行額は、日本が前年比で約39%減、米国が約20%減、ドイツが約1%減だったが、英国は逆に約28%増やしている。

 英政府は「新たなアジアの経済パートナー」として中国との関係を深める一方で、中国の人権や香港等の問題では沈黙を守っている。人権や自由、デモクラシーより、実利を優先する姿勢である。

 英国に続いて、フランスやドイツ、イタリアも相次いで参加を表明した。これらのヨーロッパ諸国は、日米と比べて安全保障面で直接中国の脅威にさらされていない。地理的な条件が異なるからである。長期的な安全保障と当面の経済利益を天秤にかけて、AIIBという「バスに乗り遅れるな」と飛び乗った形だろう。だが、AIIBは中国が実質的なオーナーとして50%近くを出資する。ヨーロッパ諸国がる利益は少なく、ずさんな融資で焦げ付いた際のリスク分散に使われかねないという見方もある。

 中国は、カネの力で、G7の結束に風穴を開けた。親米的なカナダも参加を検討している。G7に結束の乱れが生じたことは、今後の国際関係への影響が懸念される。自由主義諸国では、他にニュージーランド、オーストラリア、オランダ等が参加を表明した。東アジアでは、韓国、台湾が参加を決定した。BRICSは、ロシア、ブラジル、ロシア、インドが参加を表明し、南アフリカを除くメンバーが参加する。

 こうしたなか、わが国の政府は、AIIBに対して慎重な姿勢を取っている。政府は、中国政府に対し、(1)融資基準を明確に(2)参加国に発言権はあるか(3)ADBと協力はできるか−などを問いただしている。だが、中国から回答はない。この程度の基本的な事柄に回答できない相手に、こちらから駆け寄って行く必要はない。

 中国はADBを補完するためにAIIBをつくるというが、中国はADBから135億ドル(1兆6千億円)もの融資を受けている。これは、ADBの融資資金額の残高25.3%を占める巨額である。わが国は中国に、まず融資金を即刻返済してからにして下さい、と督促請求してはどうか。ページの頭へ

 

3.中国共産党主導のAIIBに募る懸念

 

 AIIBについては、中国が恣意的な組織運営を行い、覇権拡大の道具にするだろうという懸念がある。

 中国は法治国家ではない。人治的体質による共産党幹部、人民解放軍幹部の腐敗・汚職が大問題になっている。国名に「人民民主主義」を標榜するが、建国以来一度も選挙が行われていない。自由主義的なデモクラシーは存在しない。5割近くを出資すると見られる中国は、AIIBで巨大な影響力を振るうだろう。圧倒的な資金力を持つ中国の強権的な姿勢に対し、英独仏等の自由主義諸国がリベラル・デモクラシーに基づく組織運営がされるように対抗し得るのか、自由主義の力量が試されるだろう。

 現時点でAIIBは、世銀やADBと異なり、理事会を置くのかどうか不透明な状態である。中国は、大きな議決権を確保し、意思決定で有利に立つだろう。融資審査における基準も不透明である。また、AIIBが厳格な審査体制を構築し、担当者を雇用・育成できるかは不明である。融資の判断も中国が独自基準を採用する恐れが強い。低利・迅速さを前面に、十分な審査がなされない融資が増えれば、融資対象事業によって環境破壊につながる乱開発が行われる懸念もある。

 中国が経済・外交的な影響力を高めようと、投資銀を使って甘い審査で資金をばらまくならば、発展途上国の健全で持続的な発展は望めない。途上国の政権の腐敗・汚職を見逃し、お手盛りの融資や返済能力を度外視した過剰融資を行うことも予想される。こうした「中国基準」の国際金融機関が、中国の国際社会での存在感を高め、覇権拡大の推進力になるだろう。

 ADBは低金利融資だが、AIIBは高金利融資である。伝えられるところでは、AIIBから融資を受ける国は、人民元を1年借りて5%、10年物なら年20%の高い利子を払わねばならないようである。ADBの場合は、ドルで1年借りて0.256%、10年物の金利は0.665%である。大手銀行で借りられない者が、消費者金融に手を出すのに似ていないか。我が国の代表的なサラ金は現在、年利4.5%〜18%くらいである。年20%の利子を払って人民元を借りてインフラ工事をして、確実に返せる国がどれだけあるだろうか。

 融資金は、中国企業の海外進出を後押しする補助金のように使われるだろう。中国企業というのは、自由主義国のような民間の私企業ではない。第一は「央企」と呼ばれる中央政府が直轄する国有企業である。第二は地方政府だが、これも傘下の国有企業、銀行、開発業者を束ねる利益共同体である。それゆえ、中国企業の進出は、共産党が支配する国家資本の進出であり、共産中国そのものの進出なのである。

 習近平指導部は、2013年秋、シルクロード経済ベルトと海洋シルクロードで構成する「一帯一路」構想を打ち出した。中国を起点に中央アジアや東南アジア、中東などを経由して欧州までつなぐ構想であり、鉄道や道路網、送電網、港湾などインフラ建設で欧州にとっても経済的メリットがある。この構想の実現にもAIIBからの資金が活用される見通しである。

 この動きをつかむには、経済だけを見ていたのでは駄目である。最も注意すべきことは、中国の経済覇権の拡大は、必ず軍事的な覇権の拡大につながることである。海洋シルクロードは、人民解放軍が先導し、これを「シルクロード基金」とAIIBが支えることになるだろう。海洋シルクロードは、マラッカ海峡からペルシャ湾に至る拠点をつなぐ中国の「真珠の首飾り」戦略と重なり合う。「真珠の首飾り」戦略とは、南シナ海、マラッカ海峡、インド洋、ペルシャ湾までを影響会下に置こうとするものである。中国はパキスタンのグワダル港開発の合意や、スリランカの港への潜水艦の入港等を獲得してきた。AIIBの融資は、中国海軍の艦船受け入れの軍港建設にも投資されることになるだろう。

 中国軍国防大学の紀明貴少将は、先の構想によって米国の「アジア回帰」の出ばなをくじくと主張している。中国共産党及び人民解放軍には、西太平洋から米国の排除を目指し、太平洋の西半分以西を、シナの海とする野望があるものと見られる。

 だが、最近の中国経済は資本流出が激しく、成長鈍化が先行きの不安を引き起こしている。世界貿易機関(WTO)でさえ不公正取引の対中提訴が多い。新貿易交渉のドーハ・ラウンドを潰したのも中国だった。中国は、AIIBによって、共産党が支配する極めていびつな統制主義的資本主義を世界に広げようとしている。AIIBに参加する国々は、中国型の統制主義的資本主義の害毒が市場と社会に広がっていくのを見ることになるだろう。

 中国は、もはやかつてのように高度経済成長を続ける国家ではない。既に不動産バブルの破裂が進みつつあり、破裂はじわじわと広がりつつある。破裂の前から、毎日のように全国各地で激しい暴動が数百件も起こっている。経済成長率は「保八」という絶対目標の8%を死守できず、7%台と発表されているが、統計の信ぴょう性は低い。最も信頼性が高い指標と見られる鉄道貨物輸送量が急激に落ち込んでいるのは隠せず、前年比でマイナス基調に転じている。外貨準備3.8兆ドルを誇ってきたが、ここのところ海外からの借り入れが急増し、外貨準備が過去半年間で4%も減少した。国内にこうした経済危機を抱えているからこそ、中国共産党政府は、AIIBを用いて、過剰生産能力のはけ口を海外に求め、併せて中国企業の海外進出を促進しようとしているのである。ページの頭へ

 

4.有識者はこう見る〜石平・渡辺利夫・田村秀男の各氏

 

 シナ系日本人評論家の石平氏は、中国のアジアインフラ銀行(AIIB)創設の動きについて、次のように言う。

 「習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである」と。

2013年6月24日に中国上海株が急落し、中国金融市場がパニックに陥った。石氏は、既にそれが中国経済崩壊の「ドミノ倒しの始まり」と見た。
 今日、中国経済に重大な影響を与えているのが、「影の銀行(シャドーバンキング)」である。「影の銀行」は信託会社やファンドなどのいわゆるノンバンクである。金融規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当し、総融資額は約24兆元(約383兆円)にものぼると見られる。銀行の預金金利が年利基準3%と定められる中で、年率10%前後の高利回りをうたった財テク商品「理財産品」などで資金を集め、金融当局の監視下にない簿外で運用。資金の行き先の多くは、採算性の低い地方政府による建設ありきのインフラ整備などへ向かう。そのため不良債権化の懸念がある。中国は金利上昇によって中小の金融機関や企業の資金調達が難しくなっており、政府が「影の銀行」をつぶそうとすれば、中国経済全体が崩壊しかねない状況にある。
 石氏はこれに加えて「不動産バブルの崩壊は当然、さらなる金融危機の拡大とさらなる実体経済の衰退を招くから、経済の果てしない転落はもはや止められない」と述べた。石氏によると、2013年後半から不動産バブルの崩壊が現実となり、2014年2月あたりから本格化した。不動産価格の暴落は2月半ばから浙江省の中心都市の杭州で始まった。3月10日には、大都会の南京で2つの不動産物件が25%程度の値下げとなった。例年「花の五一楼市(不動産市場)」といわれるほど不動産がよく売れる5月1日を中心とした期間も、惨憺たる結果だった。全国54の大中都市における不動産販売件数は、昨年同時期と比べて32・5%減。首都の北京では前年同期比で約8割も減った。不動産価格も当然下落しており、重慶市最大の不動産開発プロジェクト「恒大山水城」は3割以上値下げ、杭州市ではある分譲物件を予定価格の3分の1程度に値下げ、広州市ではある業者が史上最高価格で取得した土地に作った大型不動産物件が3割程度の値下げをした。
 中国全土に広がりつつある不動産開発企業の破産あるいは債務不履行は、そのまま信託投資の破綻を意味する。それはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招く。「影の銀行」が破綻すれば、経済全体が破滅の道をたどる以外にない、と石氏は、2013年後半から予想している。

 シナ大陸は、広大である。それゆえに、バブルの崩壊は一気には進まない。地方都市から各地域の主要都市に波及し、徐々にしかし確実に全土に広がっていくだろう。そして、全土の規模でバブルが崩壊した時、中国経済はどん底に落ちる。 わが国及び日本人は、その時が近いことを警戒し、しっかり備えをしておくべきである。

 石氏は、2014年時点で中国経済は、既にマイナス成長になっているかもしれないと指摘した。そう推察される根拠として、「今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1・45%と1・54%の減となった」というデータを挙げる。この物差しで見ると、今年上半期の中国経済の成長率は政府公表の「7・4%増」ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある、というのである。これに加えて、次のような情報を伝えた。「今年上半期の全国工業製品の在庫が12・6%も増えた」「今年上半期において全国百貨店の閉店件数が歴史の最高記録を残した」「7月の全国100都市の新築住宅販売価格は6月より0・81%下落し、4、5月以来連続3カ月の下落となった」「全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの『悪性競争』が既に始まっている」と。

さて、石氏は本年4月2日に、「足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めている」中国経済の現状について、大意次のように書いている。

 「中国財政省は今年1〜2月の全国財政収入の伸び率は「前年同期比で3.2%増であった」と発表した」「2006年から10年までの5年間、中国の財政収入は年平均で21.3%の伸び率を記録しており、11年のそれは25%増という驚異的な数字であった。しかしその3年後の14年、伸び率は8.6%となり、ピークの時の約3分の1に急落した。そして前述の通り、今年1〜2月の伸び率はさらに落ちて3.2%増となったから、中国政府にとって実に衝撃的な数字であったに違いない」

 「地方政府の財政も大変厳しい状況下にある」「この20年間、長期にわたる不動産ブームの中で、各地方政府は国有地の使用権を不動産開発業者に高値で譲渡するという錬金術を使って何とか財政収入を確保できた。だから各地方政府の財政収入に占める『土地譲渡金』の割合は平均して4割程度に上っていた。しかし昨年から不動産バブルの崩壊が進む中で、『土地譲渡』という地方政府にとってのドル箱が危うくなってきている」「今年1〜2月の全国の『土地譲渡収入』は前年同期比で36・2%も激減した」

「今まで、中国の各地方政府は乱開発のために国有銀行やシャドーバンキング(影の銀行)から莫大な借金をつくった」「地方政府の財政事情が悪化していくと、彼らは当然、借金を返すことができなくなる。同じ財政難に陥っている中央政府もその肩代わりができるはずはない。そうすると、日本円にして数百兆円規模の地方債務が焦げ付くことになりかねないが、その結果、一部の国有銀行とシャドーバンキングの破綻は避けられない。場合によっては、中国経済の破滅を招く金融危機の発生が現実のものとなるのである」と。

 これが、石氏が「習近平政権は今アジアインフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである」と書く理由である。

http://www.sankei.com/column/news/150402/clm1504020009-n1.html

 

 AIIBの問題点を把握するには、中国経済のあり方を理解することが必要である。私は、社会主義の経済体制は、共産主義者が言うように資本主義と本質的に異なるものではなく、自由主義的資本主義と統制主義的資本主義の違いだという見方をしている。統制主義的資本主義のうち、国家的または集団的所有の割合が多いのが、社会主義である。中国が「社会主義市場経済」という一見矛盾した方針を取ってこられたのも、社会主義と市場経済が本質的に相容れないものではなく、資本主義の統制主義的形態だから、それに政府が管理する市場経済を限定的に取り入れることが、原理的に可能だからである。中国は計画経済部門を縮小し、民営化の推進や外資系企業の導入を通じて、資本主義的な発展をしてきた。

 さて、こうした中国経済を、拓殖大学総長で開発経済学者の渡辺利夫氏は「国家資本主義」と捉える。渡辺氏によると、「中国の市場経済化は2000年代に入って間もなく終焉し、その後はステートキャピタリズム(国家資本主義)ともいうべき経済へと変質した」。国家資本主義に変質した中国では、中央政府が管轄する独占的企業群が成長の牽引車となっている。資源、エネルギー、通信、鉄道、金融の5分野の特定国有企業が国務院直属の資産管理監督委員会の直轄下におかれ、「央企」と略称される。

 中国企業の伝統は「官僚資本」である。企業が政治権力と結託して、資産規模の極大化を図る中国流の企業形態である。共産革命前の中華民国期に「四大家族官僚資本」と呼ばれる浙江財閥の築いた富は圧倒的であったが、「央企はその現代的バージョンである」と渡辺氏は言う。

 渡辺氏は、中国経済について、大意次のように書いている。

 「国家資本主義」(ステートキャピタリズム)を担う主体の一つが、「央企」である。「120社に満たないこの央企が国有企業15万社の利潤総額ならびに納税総額の6割前後を占め、国家と共産党独裁のための財政的基盤を形成する。央企の経営幹部には共産党指導部に連なる人々が座し、厚い財政・金融支援を受けて投資拡大を継続する特権的企業集団である。中国が圧倒的な投資依存経済となったのも央企の投資のゆえである。

 もう1つの投資主体が地方政府である。中国の地方政府は単なる行政単位ではない。傘下の国有企業、銀行、開発業者を束ねる利益共同体である。地方政府は企業投資やインフラ投資、銀行融資に関与し、外資系企業の導入にも大いなる力を発揮している。シャドーバンキングとして知られる理財商品を開発して大量の資金を吸収し、これを不動産・インフラ投資に回すのも地方政府である。

 資源、エネルギー、通信、鉄道、金融などの基幹部門における央企の投資に地方政府による不動産・インフラ投資が加わって、中国は先進国のいずれもが過去に達成したことのない極度に高い投資依存率の国となった。

 その半面が家計消費という最終需要の低迷である。最終需要の裏付けのない投資拡大はいずれ限界を迎える。中国は所得分配の最も不平等な国の一つである。可処分所得に占める最終消費比率の高い低所得者層に所得が薄くしか分配されないために家計消費が盛り上がらないのである。胡錦濤政権は階層間で均衡の取れた『和諧社会』の実現を求めたものの、この間、所得分配は逆に不平等化してしまった」と。

 こうした高い投資依存の帰結が「過剰生産能力の顕在化」である。渡辺氏は、次のように続ける。「とりわけリーマン・ショック後の大規模な景気刺激策は深刻化していた鉄鋼、電解アルミ、鉄合金、コークス、自動車などの過剰生産をもはや放置できない状態としてしまった。

 指導部もこの事態を憂慮し『発展方式の転換』が胡政権以来のスローガンとなった。3月15日に閉幕した全人代(全国人民代表大会)で李克強首相が表明した『新常態』とは、要するに投資依存型の経済成長のこれ以上の追求は不可能であり、7%という近年の中国には例のない低成長率を『常態』(ノーマル)だと認識しようという提案である。記者会見で李首相はしかし、7%といえども実現は容易ではない旨を発言した。

 その意味するところは、一方には、央企と地方政府という強固な利益集団の投資拡大衝動を抑制することは難しく、また成長鈍化にともなう雇用機会減少への国民の不満に火を点(つ)けてはならないという事情がある。他方には、投資依存経済をこれ以上放置すれば、資本ストック調整という反動不況リスクがますます高まることへの恐れが強い。ぎりぎりの妥協が7%なのであろう」と。

 ここで渡辺氏は、こうした中国がどうして今、AIIBの設立を急いで進めたかを分析する。現在の中国経済の「窮地を脱するための方途」が、「習近平政権によって打ち出された海外戦略」である。「輸出と外資導入によって積み上げられた4兆ドルという突出した外貨準備を原資として、拡大の一途を辿るアジアのインフラ建設需要に応じるための国際投資銀行の創設を図り、これを中国の過剰生産能力のはけ口とし、併せて中国企業の海外進出への道を開こうという戦略である」。それが、AIIBの設立が急がれた理由であり、NDBも同様だと渡辺氏は言う。

 AIIBの最近の動きについては、先に書いたが、渡辺氏は「国内的矛盾の解消という不可避の政策課題の解決策を、中国の勢力圏の拡大につなげるというしたたかさを習近平政権はみせつけたのである」と言う。

 渡辺氏は、AIIBの創設について「中国の膨張、日米の力量の相対的減衰をこれほど端的に示した事例は近年ない。オバマ政権の内向き志向、遅すぎた安倍晋三政権の登場のスキをみごとに突かれてしまったのである。かかる帰結にいたらしめた日米の指導者の自省は徹底的でなければなるまい」と述べている。最後のこの点に関しては、オバマ政権の内向き志向は大統領及びそのスタッフ・支持者の問題だが、安倍政権登場の時期は選挙の実施時期と有権者の選択の結果ゆえ、直接指導者の自省の課題とは言えないだろう。国際金融秩序については、米国政府及び巨大国際金融資本が主導している。それらの指導層が中国に対してどういう長期的な戦略を持って行動しているかが、最も問われるところだろう。

http://www.sankei.com/column/news/141126/clm1411260001-n1.html

 

 渡辺利夫氏は、中国経済は国家資本主義であり、共産党指導部に連なる人々が経営幹部を占める特権的企業集団が、国家と共産党独裁のための財政的基盤を形成するという。産経新聞編集委員の田村秀男氏は、次のように述べる。

 「中国のあらゆる政府組織、中央銀行(中国人民銀行)とも軍と同じく、習近平党総書記・国家主席を頂点とする共産党中央の指令下にある」と。

 田村氏は、こうした観点に立って、AIIBについて、次のような見方をしている。

 「中国は当初から資本金の50%出資を表明し、今後出資国が増えても40%以上のシェアを維持する構えだ。総裁は元政府高官、本部も北京、主要言語は中国語。AIIBは中国財政省というよりも、同省を支配する党中央の意思に左右されるだろう。今後、何が起きるか。

 例えば、党中央が必要と判断したら、北朝鮮のAIIB加盟がただちに決まり、同国向け低利融資が行われ、日本の経済制裁は事実上無力化するだろう。東南アジアや南アジアでの中国の軍艦が寄港する港湾設備がAIIB融資によって建設されることもありうる。そう、AIIB問題の本質は外交・安全保障であり、平和なインフラ融資話は表看板にすぎない」と。

 AIIB設立の狙いについて、田村氏は、基本的には渡辺氏と同じ見方だが、さらに明確な見方をしている。

 「中国がAIIBを創立し、アジア地域全体でインフラ投資ブームを演出する背景には、自身の窮状を打開するためでもある。鉄道、港湾、道路などで需要を創出し、中国の過剰生産能力、余剰労働力を動員する。そのために必要な資金はAIIBの名義で国際金融市場から調達する。そして、中国主導の経済圏が拡大するにつれて、人民元が流通する領域を拡大して、人民元経済圏を構築する。各国が人民元に頼るようになれば、外交面での中国の影響力が格段に強化される。AIIBは党支配体制維持・強化のための先兵なのである」と。

 田村氏のこうした見方は、独自の経済分析に基づいている。中国の外貨準備と海外の銀行からの借り入れを比較して、次のようにいう。

 「中国の外準残高は2014年末で3兆8430億ドル(世界2位の日本は1兆2千億ドル)もあるが、実は半年間で約1500億ドルも減った。景気の低迷や不動産相場の下落の中で、資金流出が年間で4千億ドル以上に上るからである。無論、習近平政権による不正蓄財追及から逃れるために、一部党幹部らが裏ルートで資産を外に持ち出していることも影響している。

 外準は人民銀行による人民元資金発行の原資になっている。外準が減ると、中国経済が貧血症状を起こす。そこで、中国は急激な勢いで、国際金融市場から借り入れを増やしている」。

 最近の外準と海外の銀行からの借り入れの増減額の推移を見ると、「昨年9月末には、外準の増加額を借入額が上回った。12月末のデータはまだ公表されていないが、借り入れは資金流出分を補うためにも、かなり高水準になると推計される。このまま資金流出が止まらないと、ロンドンなど国際金融市場から借金を増やさないと、外準は数年間で半減してしまうだろう。しかも、人民元金融システムを維持するためにこれ以上減らすわけにいかないのだから、外準をアジアのインフラ整備のために活用すること自体、ありえない。『世界一の外貨資産』というのは、いわば見せ金にすぎないのだ」と。

 そして、こうした「窮状」を打開するために進めているのが、AIIBなのだと田村氏は見ている。外貨準備の減少と海外からの買い入れの増加だけでなく、田村氏は、最近の鉄道貨物輸送量の急激な落ち込み等から見ても、中国経済が全体的に深刻な状態になっていることを指摘している。

http://www.sankei.com/economy/news/150329/ecn1503290012-n1.html

また、AIIBによる経済覇権主義の要となる人民元について、田村氏は次のように述べている。IMFが理事会で自由利用可能通貨として認定することになれば、元はIMFが持つ合成通貨「SDR(特別引き出し権)」を構成する主要国際通貨の一角に組み込まれる。現在、SDRはドル、ユーロ、円、ポンドの4大自由利用可能通貨で構成され、保有国はSDRをこれらの通貨と交換できる。元が加わると、世界各国の通貨当局や中央銀行は元を外貨準備として持つようになるので、元は国際決済用として一挙にグローバルに普及する道が開ける。「だが、元にSDR通貨の資格はあるのか」と田村氏は問う。
 田村氏によると、第1に、人民元の正体とはしょせん「ドルのコピー」である。リーマン・ショック後の中国と米国の中央銀行による資金供給量(マネタリーベース)の増加額の推移をみると、中国人民銀行はドルの増量に合わせて元を発行している。「コピー通貨が、変動相場制であるユーロ、円やポンドと対等の国際準備・決済用通貨であるはずがない」と田村氏は言う。
 第2に、中国は管理変動相場を堅持するために、上海などの金融市場への外からの資本流入を厳しく規制している。巨額の外貨が出入りすると、人為的な相場では対応できなくなるからだ。ロンドン市場などでの元取引は中国系銀行が介在し、元マネーの大部分を本国に還流させるようにしている。「そんな通貨が国際利用可能通貨と定義されるなら、他の国だって通貨の自由変動相場を見直し、金融市場を規制してもよい、ということになる」と田村氏は言う。
 そして「投融資先への政治的影響力を高める元が国際準備通貨に認定されれば、今度元を刷っては垂れ流す。そうなると、国際金融市場の秩序は不安定になるだろう」と警告する。

http://www.sankei.com/column/news/150208/clm1502080008-n1.html

中国がAIIBの創設で国際金融に影響力を格段と増すことになれば、人民元に印刷された独裁者・毛沢東が、わが物顔で国際金融市場を荒らすことになるだろう。ページの頭へ

 

結びに〜中国の野望と自滅に加わるな

 

 AIIBには、懸念される点が多い。わが国の政府は慎重な姿勢を取りつつ、6月までに最終的に参加するかどうかを決める方針だというが、私は、わが国は、AIIBに参加すべきでないと考える。中国の覇権主義的な野望と自滅に加わってはならない。そのうえ、中国経済は景気低迷や不動産バブルの崩壊等によって、これから本格的な危機に突入する。そういう時期に、危険な人民元経済圏に迷い入ってはならない。ここはじっと推移を見守っていくのが得策と考える。

 不動産バブル崩壊の前、胡錦濤政権の末期において既に中国では全国で年間18万件を超える暴動・騒動事件が起こっていた。習政権になってから、暴動は激化しているようである。そこに経済が本格的に悪化すると、社会不安は一層増大する。窮状打開のために、中国共産党指導部がファッショ的な軍事行動を行い、人民解放軍が周辺諸国に侵攻する危険性が高くなる。矛先は、東へ向くか、南へ向くか、西へ向くか、どちらかである。増勢した濁流は堤防の弱いところを乗り越え、押し崩す。中国では、既に2010年に国民動員法が施行されており、人民解放軍に戦争準備の指令が出され、大規模な軍事訓練がされている。圧倒的な軍事力で、経済的・社会的危機を打開しようという構えである。わが国及び日本人は、十分に警戒し、しっかり防備をしておかなければならない。ページの頭へ

 

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