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説明: 説明: 説明: ber117

 

■中国は株バブルが破裂し、人民元を切り下げた

2015.8.18

 

<目次>

はじめに

1.上海株が約30%暴落

2.中国株バブル発生の仕組み

3.中国政府の株価引き上げ策の狙い

4.市場を統制しようとする政策の矛盾

5.株の暴落が続けば、中共政権は崩壊する

6.当面の中国株式市場の予想

7.人民元の国際準備通貨認定を許すな

8.中国政府はなりふり構わず人民元を切り下げた

9.人民元の国際化という狙いもある

10.人民元切り下げの日本への影響

結びに〜わが国の取るべき対策

 

 

説明: 説明: 説明: ber117

 

はじめに

 

 本年(2015年)6月から西のギリシャ、東の上海を震源地として、世界の経済は揺れ動いている。ギリシャの財政危機については別に書くことにして、ここでは、7月にかけて起こった中国の上海株の暴落、さらに8月に中国政府が行った人民元切り下げに焦点を当てる。

 中国経済は、不動産バブルの崩壊に続いて、株バブルの破裂が起こり、なりふり構わず通貨の切り下げを行うほど、悪化している。わが国は、今後、中国経済が深刻な危機に陥ることを予測し、しっかりとした対策を立てて防備を行うことが必要である。

 

1.上海株が約30%暴落


 財政危機で世界的な注目を浴びるギリシャの経済はユーロ圏経済の約2%にすぎないが、中国経済は、世界の国内総生産(GDP)の16%程度を占める。中国経済の危機は、世界にとってギリシャよりもはるかに大きな問題である。
 ケ小平よる改革開放政策導入から約30年間、中国は2ケタの経済成長を続けた。2008年のリーマン・ショックに際しても、4兆元の大型景気刺激策でこれを乗り切った。だが、2013年後半から不動産バブルの崩壊が始まり、2014年2月あたりからそれが本格化した。不動産バブルの崩壊で銀行が持つ不良債権の急増が予想されるとともに、金融規模が中国のGDPの4割以上にも相当する「影の銀行(シャドーバンキング)」が破綻するのは時間の問題になっている。
 こうした中で、中国共産党政府は、国際金融秩序に挑戦するアジア・インフラ銀行(AIIB)の設立を進めてきた。国内の治安を維持しつつ経済覇権を獲得するには、中国経済を成長させ続けなければならない。そこで、中国政府が力を入れたのが、金融緩和である。
 中国人民銀行(中央銀行)は昨年11月以来、政策金利や預金準備率を相次ぎ引き下げた。これが株式市場への投資を呼び込んだ。11月の利下げとほぼ同時期に、中国政府は上海と香港の株式の相互取引による上海市場への外国人投資家の呼び込みを行った。香港市場を経由すれば外国人投資家が初めて中国政府の認可なしに上海株に投資できるようにした。AIIBと一体の企画として進めている新たなシルクロード経済圏を作る「一帯一路」構想で海外資金を呼び込んだ。株価が急騰すると、中国の個人投資家たちは不動産などに投資してきたカネを株に振り向けた。しかも、借金をしてまで株を買いまくった。上海証券取引所の本年1〜4月の売買代金は米ニューヨーク市場を上回り、世界最大になった。本年の年初から6月12日にかけて約60%も上昇した。
 ここで外国機関投資家が売りに出た。株価の急落で動揺した中国人の個人投資家も株式を売った。その結果、上海市場全体の値動きを示す上海総合指数は、年初来最高値だった6月12日の5178.19に対し、7月9日は3709.33とー29.4%急落した。4週間弱の間に株価が約3割も下落したのである。
 株価が急落し出すと、中国当局は6月27日に追加利下げを行った。さらに7月4日には、中国大手証券会社21社に上場投資信託約2・4兆円分を購入させ、上海総合指数が4500に戻るまで保有株の売却を禁止した。上海や深センの株式市場では、自社株の下落を恐れる企業が相次いで証券取引所に自社株の売買停止を申請し、7月8日時点の売買停止銘柄は1400を超え、全体の半数を超えた。当局はさらに市場関係情報の統制、悪意ある空売りへの懲罰、新規株式公開の承認凍結、大量保有株主による株式売買の半年間停止など、株価下落を阻止するため、なりふり構わぬ市場介入を行った。自由主義国の常識では考えられない強権的な政策の連発である。
 それでようやく下げ止まったかに見えたが、7月27日の上海株式市場は、総合指数の終値が前週末比8・48%安の3725・56に急落した。下落率は2007年2月27日以来、8年5カ月ぶりの大きさだった。ことし7月9日の3709・33以来の安値水準となった。年初来最高値だった6月12日の5178.19からは、−29.1%の下落である。
 国際通貨基金(IMF)は、この前の週、株式市場への介入をこれ以上行わないよう中国当局に警告した。人民元の国際化をめざす中国当局は、IMFの警告を無視できない。そこで、習政権指導部はこの警告を受け入れ、新たな株価下支え策を打ち出さなかった。これに対し、習政権の株価下支え策が終焉に向かったとする見方が投資家に広がり、売りが売りを呼ぶ展開となったと見られる。
 6月12日以降の上海株暴落に対し、官民合わせて株価下支え策として投入された資金は、総額で5兆元(約100兆円)を超えたと見られる。リーマン・ショック後の緊急経済対策として、中国当局が打ち出したのは、4兆元だった。それより1兆元も多い。だが、それでも効果は一時的である。毎週末に対策を出し続けなければ、市場は「売り一色」になるという状況である。
 中国の株バブル崩壊による経済危機は、ギリシャの債務問題より、もっと深刻である。もはや習近平政権も手の打ちようがない状況になりつつある。
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2.中国株バブル発生の仕組み


 エコノミストの田村秀男氏は、産経新聞平成27年7月4日と同日の夕刊フジの記事に、中国の株暴落について書いた。7月4日の時点ゆえ、上海株が最安値を付けた7月9日より5日前の時点である。だが、その時点で田村氏は、中国の株バブルとその崩壊の原因を深く捉えていた。
 産経とフジの二つの記事は関連しており、一本化して読むことにより、事態の理解を深めることができる。
http://www.sankei.com/economy/news/150704/ecn1507040012-n1.html
http://www.sankei.com/economy/news/150704/ecn1507040003-n1.html
 田村氏は、7月4日産経の記事で、債務危機のギリシャに比べ、「中国の先行きはもっと不透明だ。党の手でバブル化させた巨大な株式市場を制御できない。市場危機の世界への衝撃はギリシャ以上に深く、長引くだろう」と述べた。
 田村氏は、2008年9月のリーマン・ショック後の中国経済を次のように概観する。「党中央は中国人民銀行が創出する資金を不動産開発に振り向け、不動産ブームを演出した。ところが、習近平氏が党トップの座についた12年秋から相場が下落し始めた。公式発表の国内総生産(GDP)実質伸び率は前年比7%前後の水準で推移するが、代表的な物流指標、鉄道貨物輸送量は昨年から下落し続けている」と。
 ここで鉄道貨物輸送量は、田村氏が重視している指標である。中国の経済指標は、粉飾されているものが多いが、鉄道貨物輸送量はその中では信頼できるものであり、流通の量

から生産と消費の量を推し量ることができる。李克強首相が遼寧省共産党書記当時に米国の駐中国大使に向かって「GDPは人為的だが、鉄道貨物輸送データは信用できる」と推奨した。田村氏によると「中国はGDPにモノが占める比率が5割程度と高い。そのモノの動きを代表する鉄道貨物は経済実態をかなり正確に反映する」という。 アベノミクス開始後、円は急速に下がり続けるのに並行して、中国の鉄道貨物輸送量が急激に落ち込む傾向が顕著であり、輸送量は2014年初め以来、マイナス基調が続いている。

 7月4日の記事に話を戻すと、鉄道貨物輸送量の下落に見るように「モノは動かない」。では、「カネはどうか」と田村氏は問う。「中国の現預金総額は14年末約2400兆円で、米国の1・7倍、日本の2・7倍に上る。東京銀座など海外にとっては「爆買い」さまさまだが、本国でカネが回らない。そこで習近平政権は株価を引き上げ、個人投資家のカネを引きつける策に転じた。人民銀行は株価上昇を公言して利下げし、人民日報など党直属メディアが株価上昇をはやし立てる」と。
 ここで中国の株式市場の特徴について補足すると、日米欧などの市場が機関投資家中心なのに対し、中国は市場の8割が売買経験の少ない個人投資家である。不動産バブルがはじけると、個人投資家たちは不動産などに投資してきたカネを株に振り向けた。中国の個人投資家は、大半が高等教育を受けておらず、投資に関する正しい知識がない。中国人は、現世志向で、財富に対して妄信に近い執着を示す。民衆は政府・権力者を全く信頼せず、近親者と財富を信じるのみである。その彼らの金銭への欲望が株に向かった。彼らの多くは、不動産はもうだめだが、今度は株が儲かると信じて、借金をして株を買った。これを政府が誘導した。
 田村氏は、この「信用取引」について、次のように述べる。「利下げのたびに株の信用買いが飛躍し、株価が連動する。国有企業が圧倒的に多い中国の上場企業が発行した株式の大半は市場で売買されない。流通株の時価総額に対する信用買い比率は15%以上に上り、日本のバブル期の数倍以上だ。党が支配する企業も信用取引拡大と並行して、新規上場や増資などを通じて株式市場から資金調達する。株式市場はまさに党の利益のためにある。経済実体から大きくかけ離れた株価はバブルである。皮肉なことに党が呼び込んだ外資が崩壊の引き金を引いた」と。
 田村氏は、7月4日の夕刊フジの記事では、この点に関して、次のように書いた。
 「信用取引は、投資家が証券会社からカネを借りて株式投資する。人民銀行が利下げすると、証券会社の資金調達コストと投資家の借り入れコストが下がるので、たちまち信用取引が活発になる。証券会社は投資家への貸し出しによる金利収入が大きな収益源になるので、新規株式公開(IPO)や増資で自己資本を拡充し、貸出余力を大きくしてきた。
 上海株式市場での信用取引による買い残高は6月中旬時点で29兆円以上、3兆円弱の東京証券取引所の約10倍である。時価総額では上海は東証よりも2割弱大きい程度だから、上海の信用取引の度合いの大きさは、ず抜けているとみていい。昨年11月初めから今年6月初旬までの間に、上海株価は約2倍、信用取引残高は3倍に膨れ上がった」。
 「中国人民銀行は昨年11月、今年3月、5月、そして先週末に利下げしたが、そのたびに信用取引がぐんと伸び、株価上昇に弾みがついてきた。人民銀行の利下げは、信用取引を拡大させて株価を引き上げる。人民銀行は日銀のように政府から独立しているわけではなく、党中央の指令下にあるのだから、習国家主席が株高の号令をかけるだけで株価が上がる仕組みなのだ」と。
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3.中国政府の株価引き上げ策の狙い


 中国政府は、どうしてこういう株価引き上げ策を行ったのか。経済成長を維持することによって、各地で頻発する暴動を抑え、共産党政権を維持しようとする国内的な要因がある。

中国では、急激な経済成長が社会的な矛盾を生み、都市と農村、富裕層と貧困層の格差が拡大している。また、共産党官僚の腐敗・横暴が深刻化し、多くの汚職事件が摘発されている。これらを要因として人民の不満が高まり、中国各地で多数の暴動が発生している。
 経済的な格差については、社会における所得分配の不平等さを測る指標にジニ係数がある。ジニ係数は0に近いほど格差が小さく、1に近いほど格差が大きいことを表す。0.4を超えると社会不安を引き起こす「レッドゾーン」、0.5を超えると暴動が頻発する「危険水域」と言われる。中国では既にジニ係数が0.5を超えている。
 実際、2000年代には、中国政府の発表で、毎年5万件ほどの「集団事件」と呼ばれる官民衝突や集団抗議等が発生した。平成17年(2005)には年間8万7000件、発生したと発表された。その後、政府は暴動件数を発表しなくなった。これは発生件数が一層増加しており、都合の悪い数字は出さないものと見られる。2008年リーマン・ショック、欧州債務危機等による世界経済危機の影響で、中国では失業や賃金不払い等により生活を破壊された国民が多くなった。
 中国共産党は、政権を維持するには、どうしても成長率8%を維持しなければならない。年8%以上の経済成長率を維持していたときでさえ、年間数万件の暴動が発生していた。成長率が8%を切ると、1億人以上の労働者に仕事を与えられなくなる。
 胡錦濤政権の末期となった平成23年(2011)には、暴動・騒動事件の発生件数が18万件を超えたという。これは毎日全国どこかで約500件が発生している計算になる。暴動の内容も警察の車両や地方庁舎を襲撃する暴動が続発している。土地を失った農民や就職のできない若者、環境汚染で生活に不安を持つ住民等が激しい行動を起こしているのだろう。胡政権最後の年である今年の国家予算に計上された「治安維持費」は当年度の国防費を上回った。それほど、中国社会は大きく乱れているのである。

 国内的な要因に加えて、国際的な要因が二つある。一つは、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の設立との関係である。中国は、AIIBによって国際金融秩序に挑戦し、経済覇権を目指している。英仏独伊の参加を取り付け、G7に結束の乱れを起こさしめた。中国共産党主導のAIIBを成功させるには、中国市場の魅力と中国経済の成長力を見せ続けなければならない。株価を引き上げて、それを演出しなければならない。実際には、AIIBの設立どころか、中国は足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めている。だが、中国共産党政府はそれを認めず、野望を追い続けている。
 もう一つの国際的要因は、中国は、IMFに対して人民元を国際準備通貨に認定させようとしていることである。田村氏は、7月4日の産経の記事で次のように書く。「習政権はアジア・インフラ投資銀行(AIIB)の設立に続いて、人民元を国際通貨基金(IMF)の仮想通貨『SDR(特別引き出し権)』の構成通貨組み込みを狙う。元がドル、ユーロ、円、英ポンドと同じ国際準備通貨となると、元での貿易や投融資が世界で受け入れられやすくなり、対外的影響力がぐっと増す。AIIBもドルに頼らなくても済む」と。
 IMFが元を自由利用可能通貨として認定した場合、元はIMFが持つ合成通貨「SDR(特別引き出し権)」を構成する主要国際通貨の一角に組み込まれることになる。そうなれば、人民元の信用力が高まり、金融による覇権の実現に近づく。
 中国は人民元の国際準備通貨認定という野望に燃えている。その実現のために、金融市場の対外開放を進めた。それが、上海株式市場の空前の好況を生んだ。
 田村氏は、7月4日の産経の記事で次のように言う。「IMFで拒否権を持つ米国の要求は金融市場の対外開放だ。中国は基本的に本土市場への外国人投資を禁止してきた。北京は渋った揚げ句、昨年11月に香港経由に限って上海市場への外国人投資を解禁した。外国投資家は値上がり益を稼いだ後、6月上旬に上海から一斉に資金を引き揚げた」と。
 田村氏は、続けて次のように述べる。「株価が急落すると、信用買いの投資家は借金返済のために担保の株の投げ売りに追い込まれ、株価が暴落する」ということになった。それまで、中国経済は政府のコントロール下にあるというのが市場のコンセンサスだった。だが、政府が市場をコントロールしようとして、利下げなど株価維持策を打っても、もはや市場は制御不能という状態になった。
 株価が急落すると、借金で株式を買った個人投資家は、大きな不安を感じて動揺する。そのうえ、中国共産党が2012年に「2020年に名目の国内総生産(GDP)と個人所得を10年比で倍増させる」と打ち出した公約が、あやしくなってきた。2016年からの「第13次5か年計画」でも第12次と同じく年率成長率7.0%を維持しなければ、倍増計画の達成は難しいと見られるようになってきた。こうした予測を知った個人投資家は、資金を株式市場から預金に移す。
 田村氏の記事に戻ると、「党中央はあわてて、追加利下げし、信用取引制限を緩和した。4日(註 7月)には証券業界が市場安定化基金設置を決め、人民銀行が基金に資金供給する」という手を打った。だが、これで「仮に下げ止まったとしても、バブルを温存させるのだから、次の暴落エネルギーがたまる」と、田村氏は予測した。これが7月4日の時点だが、その後、9日に年初来最安値をつけ、一時下げ止まったかに見えたが、27日にはマイナス8.84%という約8年5か月ぶりの大きさの下落となった。
 一体この株バブルの崩壊は、どこで止まるのか。自由市場であれば、市場の論理によって、どこかで決着する。しかし、田村氏は、次のように言う。「株暴落は党指令型経済の限界そのものだ。党による市場コントロールが続く限り、危機の収拾は困難に見える」と。
 この点については、7月4日の夕刊フジの記事に次のように書いた。「株価が暴落すると、値上がり益で借金返済する当てが外れた投資家は期限までに証券会社に返せなくなる。証券会社は投資家への貸付資金を銀行から借り入れているので、最終的には銀行の不良債権となる。銀行は不動産バブル崩壊に伴う地方政府や不動産開発業者向けに巨額の不良債権を潜在的に抱えている。北京はさらに利下げを連発するしか打つ手はないが、バブル延命策に過ぎず、効能はすぐに切れるだろう」と。
 同日の産経の記事に戻ると、ここで田村氏は国際社会に対して、次のように主張する。「世界最大の貿易国でのバブル崩壊、次もバブルという循環は国際経済を脅かし続ける。国際社会はギリシャばかりに目を向けず、習政権に対し、近い将来の人民元の変動相場制移行を含む抜本的な金融の自由化と改革を迫るべきだ」と。
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4.市場を統制しようとする政策の矛盾


 田村秀男氏は、産経新聞平成27年7月12日の記事で、中国とギリシャを比較し、「双方ともに自国経済の非常時に対応できない通貨制度が根底にある」と指摘した。ギリシャの場合は、ユーロ相場を決定づける金融政策を欧州中央銀行(ECB)に委ねている。ユーロを使っている限り、独自に金融緩和をすることができない。中国の場合は、共産党中央が人民元をコントロールしている。だが、実態は変動を一定範囲に制限した「準固定相場制」となっている。そのため、両国とも不自由な通貨制度によって自国経済の非常時に対応ができないのである。
http://www.sankei.com/world/news/150712/wor1507120006-n1.html
 田村氏は、上記の記事で中国株バブルの崩壊について、大意次のように書いている。
 人民元のレートは「上昇基調」できたが、実体経済は「需要不足で供給過剰」になっている。景気の不振で「資金の流出」が増え、「外貨準備が急速に減っている」。AIIBも外貨準備が減り続けると信用力がそこなわれる。そこで、習政権は「株価引き上げ策」を取った。人民銀行は昨年11月から利下げを続け、「個人が借金して株を売買する信用資金の供給」を行った。株価は急上昇したが、実体経済との乖離が目立ち、突然バブルがはじけた。
 田村氏は言う。「人民元を改革し、変動相場制にしていれば、機動的な金融緩和によって景気をテコ入れし、元安に誘導できる」。だが、上海株暴落で党中央は逆に「市場統制」の強化に走った、と。
 これは、市場経済を取り入れていながら、あくまで政府が市場を統制しようとする中国共産党政権の矛盾した政策が生み出した事態である。中国は、昨年来の不動産バブルの深刻化に続いて、株バブルも破裂し始めた。株価下落は実体経済に悪影響を及ぼし、一段と同国の景気を冷やす。中国経済には「保八」という言葉があり、経済成長率8%を維持しないと、1億人規模に失業者が増え、1日に数百件発生している暴動がさらに増え、共産党政権の維持が難しくなると見られてきた。中国政府はその8%を維持できなくなっている。2015年の成長率目標は7%だが、株バブルの崩壊でその達成は困難となった。既に中国経済は、通貨高・物価下落によるデフレ不況の様相を呈している。市場を統制しようとする共産党政権の統制主義的な対応では、この危機を乗り越えるのは、難しいだろう。
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5.株の暴落が続けば、中共政権は崩壊する

 

中国・上海で1か月ほどの間に株が約3割暴落し、その後も激しい動きが続いているが、シナ系評論家の石平氏は、7月16日の産経新聞の記事で、株価の暴落は中国共産党の「政権の崩壊」につながりかねない、それゆえ「必死になって」「暴落を食い止めようとした」、だが株式市場との戦いで共産党政権に「勝ち目」はない、「自らの作り出した市場経済によって首を絞められる事態」になっている、と指摘している。
 石氏は、本年4月2日の記事で「習近平政権は今アジア・インフラ投資銀行を創設したりしてアジアへの経済支配を強力に進めているが、気がついてみたら、その足元の経済と財政の土台が既に崩れ始めているのである」と書いた。その理由として、不動産バブルの崩壊を挙げるとともに、シャドーバンキングの問題を挙げる。

石氏は、次のように述べた。「今まで、中国の各地方政府は乱開発のために国有銀行やシャドーバンキング(影の銀行)から莫大な借金をつくった」「地方政府の財政事情が悪化していくと、彼らは当然、借金を返すことができなくなる。同じ財政難に陥っている中央政府もその肩代わりができるはずはない。そうすると、日本円にして数百兆円規模の地方債務が焦げ付くことになりかねないが、その結果、一部の国有銀行とシャドーバンキングの破綻は避けられない。場合によっては、中国経済の破滅を招く金融危機の発生が現実のものとなるのである」と。

今回の上海株の暴落は、石氏の言う「中国経済の破滅を招く金融危機の発生」の発端となるかもしれない。
 石氏は7月16日の記事で次のように述べる。「中国政府は政治、経済、公安、外交などの全ての力を総動員して必死になって上海株の暴落を食い止めようとした。そのことは逆に、北京の政府が株の暴落を何よりも恐れていることの証拠となった。ただでさえ経済が沈滞して国民の不平不満が高まっている中で、株の暴落が引き起こしかねない騒動や暴動が大規模な社会的動乱に発展する恐れがあるからだ。そうなると共産党政権が命脈を保てないのは明白である。だからこそ政権が「防備戦」と称し、株暴落の食い止めに躍起になっているのだ。そのことは逆に、政権の運命が気まぐれな株価の変動に左右されていることを意味している。株価の変動に翻弄され、株価の暴落が政権の崩壊につながりかねない現実こそが中国共産党政権のもろ過ぎる実体なのである」と。
 ケ小平の改革以来、「共産党政権は『市場経済』を何とかうまく利用してきた。そして、経済の成長に成功し、政権を維持してきた」。だが、「株式市場は市場の論理に基づいて自律的に動くものだからいつでも政権の思惑通りになるとはかぎらないし、政権が株価の暴落を防ぐのに99回成功したとしても一度失敗しただけで大変なことになる」「今になって、政権は自らの作り出した市場経済によって首を絞められる事態になっている」と石氏は書いている。
 習政権が株式市場の統制に失敗するならば、先に石氏が予想したような、数百兆円規模の地方政府債務の焦げ付き、それによる一部の国有銀行とシャドーバンキングの破綻といった段階に進んでいく可能性がある。
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6.当面の中国株式市場の予想


 当面の動向に関する予測は、楽観を許さない。米大手ヘッジファンドの首脳らは、世界同時株安を招いたリーマン・ショック前より危険性が高まっていると指摘している。
 報道によると、2006年から09年まで米財務長官を務めたヘンリー・ポールソン氏は、米大手銀ゴールドマン・サックスの最高経営責任者(CEO)時代に中国事業を拡大し、財務長官時代には米中戦略経済対話を切り盛りした実績がある。そのポールソン氏は、中国政府が不良債権の処理を先送りし、株価急落には買い上げをしたのは、「低採算の事業を破綻させないで救済するばかりで、資本市場の改革が遅れてしまう」と警鐘を鳴らしている。
 「物言う株主」として著名なビル・アックマン氏は、7月15日に中国政府が発表した4〜6月期の実質国内総生産(GDP)について「正しい数字だと自信が持てる人はいるのだろうか」と疑念を投げかけ、「中国はギリシャよりもはるかに脅威である」と語る。エリオット・マネジメントを率いるポール・シンガー氏は、市場の熱狂は「世界恐慌が起きた1920年代後半の米国に似ている」と述べている。ペリー・キャピタル代表のリチャード・ペリー氏は「(中国市場は)だんだん賭博の場と化してきている」と懸念を表明している、などと伝えられる。
 今後、不動産バブルの崩壊は一層深刻化する。株バブルの崩壊も、さらに続くかもしれない。これらは中国の銀行の不良債権を増やす。一部の国有銀行や「影の銀行」が破綻する。その規模が大きくなれば、中国の国家経済そのものが、深刻な危機に陥る可能性が高くなる。また、国際的には、中国企業の海外投資や国際企業の中国向け販売が減少するから、世界経済にも長期的に負の影響を及ぼすことになる可能性がある。
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7.人民元の国際準備通貨認定を許すな


 ところで、先に、中国政府が株価引き上げ策を取った要因の一つに、IMFに対して人民元を国際準備通貨に認定させようとしていることがあると書いた。この点について補足したい。
 田村氏は、7月12日の記事で、「北京は人民元を国際通貨基金(IMF)に対し、国際準備通貨として認定させようとするが、そんな資格はないはずだ」と言う。まったくそのとおりなのだが、7月24日IMFのライス報道官は、中国政府が株価急落を食い止めるため市場に介入して一連の措置を講じたことに関し、「人民元の年内の準備通貨入りを目指す同国の取り組みには影響しない」と述べた。IMFは、依然として人民元を国際準備通貨として認定する方向に進もうとしている。
 IMFが元を自由利用可能通貨として認定した場合、元はIMFが持つ合成通貨「SDR(特別引き出し権)」を構成する主要国際通貨の一角に組み込まれることになる。この点について、田村氏は本年2月8日の記事で、「元にSDR通貨の資格はあるのか」と問うた。
http://www.sankei.com/economy/news/150208/ecn1502080008-n1.html
 田村氏は、その資格はないと断じる。不適格である第一の理由は、「人民元の正体とはしょせんドルのコピーである」「中国人民銀行はドルの増量に合わせて元を発行している」「コピー通貨が、変動相場制であるユーロ、円やポンドと対等の国際準備・決済用通貨であるはずがない」という。また、第二の理由は「中国は管理変動相場を堅持するために、上海などの金融市場への外からの資本流入を厳しく規制している」「ロンドン市場などでの元取引は中国系銀行が介在し、元マネーの大部分を本国に還流させるようにしている」「国際的に自由に流通する元建ての金融資産の規模も種類も限られる。そんな通貨が『国際利用可能通貨』と定義されるなら、他の国だって通貨の自由変動相場を見直し、金融市場を規制してもよい、ということになる」という。
 そこで田村氏は、IMF最大のスポンサーである日本は、人民元の国際準備通貨認定という中国の野望を阻止すべきだと主張している。この主張は、今回の上海株の暴落による株バブルの崩壊によって、一層重みのある意見となっている。
 私は、人民元を国際準備通貨に認定することは、中国経済危機の世界的な波及を拡大する恐れが高いので、やめるべきだと思う。通貨はその国の経済の実力を表す。中国経済は、土台が既に崩れ始めている。土台の崩壊はまだ始まったばかりである。そういう国の通貨を国際準備通貨に加えることは、世界経済を大いに不安定にすることになるだろう。IMF及びIMFを金融による世界支配の手段としている巨大国際金融資本家たちは、共産中国への幻想から目覚め、シナを舞台とした強欲のギャンブルを止めるべきである。
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8.中国政府はなりふり構わず人民元を切り下げた

 

 中国共産党政府は、異例の介入を繰り返しても、上海株の暴落を止められなかった。そうした中で、中国政府は人民元を8月11〜13日に3日連続で切り下げた。3日間で対ドルは約4・5%の基準値引き下げとなった。
 中国は、人民元の対ドル相場に基準値を設け、相場の変動幅を一定範囲に抑える「管理変動相場制」を採用している。人民元は対ドル取引の基準値に対し、1日当たり上下2%ずつ許容される変動幅で取引される。中国人民銀行は、11日に新たな基準値の算定方法を発表した。そして同日から3日間営業日ごとに独自に決定する基準値を引き下げて、人民元を強引に切り下げた。
 昨年秋以降、中国政府は、利下げや預金準備率の引き下げなど、景気へのテコ入れ策を次々に打っている。だが、株価下落など景気回復への十分な効果が得られていない。
 中国製造業の生産実態などを示す7月の鉱工業生産は、前年同月比6.0%増と前月から0.8ポイント低下した。7月は発電量が2.0%減で、工業用需要の鈍さを示した。中国の公式な国家統計は、実際よりかなり高い数字を出していると見られるから、経済情勢がもっと落ち込んでいるだろう。国家統計局は「輸出不振」を最大の原因とした。そこで、中国政府は、元切り下げというなりふり構わぬ刺激策に踏み切ったものだろう。
 通貨を切り下げると国際的な信用は下がる。だが、そういっていられないほど、中国は経済が悪化しているのだろう。経済成長率は年率7%と発表されているが、中国政府の数字は粉飾されている。発表されている数字の半分くらいではないかという見方もある。今回のなりふり構わぬ切り下げを見ると、実際はもっと悪いのではないかと推測される。
 人民銀行は、切り下げの理由の一つとして、貿易黒字の確保を挙げた。通貨の切り下げは、輸出品の価格を下げる。今回の切り下げは、元安に誘導し、特にアメリカでもっと中国製品が売れるようにして、それで景気を刺激しようとしているものだろう。米国政府は、これまで中国は人民元を不当に安くする為替操作で輸出攻勢をかけていると、中国政府を批判してきた。今回の切り下げは、まさにその方法である。
 中国政府は、年7・0%の経済成長を死守しようとしている。この政策を「保七」という。本来は「保八」でなければ、政権を維持できないほどの社会的影響が出るといわれてきたが、8%は無理なので、7%を死守しようとしている。今後、元安誘導に続く措置として、追加利下げなどの金融緩和策、公共投資の積み増しなどの景気対策が打ち出されると予想される。だが、不動産バブルが崩壊し、株バブルが破裂し、銀行の不良債権がさらに増大しつつある中で、そうした景気対策がどれほど効果を生むかは、大きな疑問である。
 中国の中枢部では、活発な権力闘争が行われている。今回の人民元の切り下げは、習近平政権に長老たちが圧力を加えたものと見られる。長老派の最有力者は江沢民だろう。江沢民は2年後の共産党大会に向けて巻き返しを図っている。習近平を追い込むために、人民元の切り下げを求めたのだろう。習政権は権力基盤が弱くなってきており、頼むのは経済である。だが、その経済が悪化している。長老たちは、経済問題で習政権を追求し、権力の奪還を図っていると見られる。
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9.人民元の国際化という狙いもある


 中国の人民元切り下げの狙いは、景気対策の他にもう一つ考えられる。中国はIMFに人民元を国際通貨にすることを要請している。人民元の切り下げは、IMFに対して通貨の変動に関する柔軟な姿勢を見せ、国際通貨の認定を求めるという狙いがあると考えられる。
 IMFは8月4日に、「特別引き出し権」(SDR)の構成通貨の変更時期について、2016年1月の予定から10月に先送りを提案する報告書を公表した。SDRの構成通貨への人民元採用を見送るということである。採用を却下したのではなく、来年の9月に改めて見直すとしている。
 中国は2005年に固定相場制を廃止し、人民元の国際化、将来的な基軸通貨化を目指してきた。IMFは今年4月に「人民元は経済実勢に近い」と高い評価をした。だが、中国政府は、株式や為替市場に国際社会では異例の介入をし、今度は元安への誘導を行っている。
 中国共産党政府が本気で人民元の国際化を望むなら、共産党政府が為替レートを管理していることを止め、変動相場制に移行すべきである。中国政府は、8月11〜13日に人民元の切り下げをした。主たる狙いは、輸出拡大による景気回復だが、副次的にIMFへのアピールという効果を狙っていると考えられる。IMFはこの切り下げについて、13日「実質的に変動通貨制に移行できるのではないか」という見解を出した。これも非常に高い評価である。14日には、中国に対する年次審査報告書を公表し、通貨人民元の相場自由化に向けた改革の加速を要請し、2〜3年以内に実質的な変動相場制に移行するよう求めた。人民元の切り下げをするほど、中国の経済状況が悪いのであれば、国際通貨の仲間入りはさせられないと考えるべきだろう。だが、IMFには人民元を国際通貨に加えようと考えている者たちがいる。IMFには、中国のエージェントが多くいるといわれおり、中国寄りに偏向した政策が出てくる環境があるのだろう。
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10.人民元切り下げの日本への影響

 
 人民元切り下げで、日本経済に及ぼす影響としては、中国に輸出する企業の競争力の低下、現地の日本企業の円建て利益の減少、日本で「爆買い」する中国人観光客の減少などが考えられる。もっと深刻な影響が考えられるのは、通貨安競争である。
 アメリカ市場には、中国製品だけでなく、ベトナム、インドネシア、タイ等の製品が多く輸出され、しのぎを削っている。中国の人民元の切り下げに続いて、ベトナムが通貨の切り下げをした。輸出競争のためである。露骨な元安誘導は各国の通貨安競争を誘発し、アジア通貨の切り下げ競争が続く恐れがある。
 通貨安政策は自国の競争力を高める一方、他国の輸出産業に打撃を与える。それだけに、自国の利益だけを追求する誘導は自制すべきである。だが、自己中心で利己的な中国共産党政府には、対外協調の姿勢は見られない。通貨安競争が広がると、日本の円だけが円高になる。すると日本製品の輸出に不利になる。安倍政権は、この影響を考慮し、すでに消費税の増税見直しを始めているようである。10%への増税を凍結する可能性がある。私は、消費増税中止のよいきっかけになると思う。
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結びに〜わが国の取るべき対策

 

 中国経済は、いよいよ1〜2年のうちに本格的な危機に進み、デフレに陥ると予想される。社会不安がいっそう深刻化し、政権はますます不安定になり、対外的に覇権主義的な軍事行動を起こす可能性が高まる。その国際的な影響を想定し、わが国はしっかりとした備えをすべきである。経済的にはアベノミクスを完遂する一方、追加の消費増税を絶対やってはならない。安全保障的には、法制の整備とそれによる装備・訓練の推進、そして憲法の改正による本格的な国家再建が急務である。ページの頭へ

 

関連掲示
・拙稿「中国AIIBの野望と自滅に加わるな

・拙稿「デフレ脱却の経済学〜岩田規久男氏

・拙稿「アベノミクスの金融政策を指南〜浜田宏一氏

・拙稿「安全保障関連法制の整備を急げ

 

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