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  国際関係

                       

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■中国の日本併合を防ぐには

2006.12.16

 

<目次>

 はじめに

第1章 中国が台湾統一をするならば

(1)台湾を統一したい理由

(2)統一の方法は和戦両用

(3)侵攻の場合の時期はいつか

(4)日本にとっての台湾問題

(5)中国の国内事情による行動も

(6)中国はどのような行動を取るか

(7)核で日本とアメリカを威嚇する

(8)アメリカは中国に勝てるか

(9)中国が台湾を併合したら

10日本人はどうすべきか

11私の見方の背景

  第2章 中国の日本併合はあり得るか

(1)強大化する中国が向かってくる

(2)「日本併合」は迫りくる事態

(3)膨大な海洋資源の存在

(4)日本を守るとは「日本の海」を守ること

(5)対日開戦論と反日感情の高まり

(6)尖閣諸島への侵攻の可能性

(7)矛盾を外に向け、一段とファッショ化か

(8)共産中国とクリントン夫妻の癒着

(9)アメリカが日本を見捨てる!?

10中国はアメリカの追放を狙う

11中国に媚びる日本の事大主義者

12日本精神の復興が日本併合を防ぐ

第3章 日本併合を防ぐ方策

(1)憲法の改正が急務

(2)日米安保の攻守同盟化

(3)刑法の通牒利敵条項の復活

(4)北朝鮮だけでなく、中国の核から論ずべき

(5)自衛の手段としての核抑止力の検討

(6)総合的な国家安全保障の研究を

  結びに〜日本精神の復興を

 

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はじめに

 

21世紀の日本にとって、中国の存在は非常に重要である。世界平和の実現のためには、日本と中国が手を結び、相協力していく必要がある。しかし、今日、真の日中友好にとって、共産主義、とりわけファシズム的共産主義が、大きな障害となっている。中国共産党は、反日愛国主義を国民に教育している。また、共産党指導部がめざす台湾統一は、わが国の自由と独立、伝統と国柄、平和と繁栄に関わる極めて重大な事柄である。さらに、わが国自体が、共産中国に併合されかねない危機が生じている。

以下、この問題について検討し、わが国が取るべき方策について、私見を述べたい。

 

第1章 中国が台湾統一をするならば

 

(1)台湾を統一したい理由


 台湾統一は、中国共産党にとって、どうしても成し遂げなければならない課題のようである。
 かつてシナ大陸には、中華民国があった。中国共産党は、内戦を通じて、国民党政府を台湾に駆逐した。蒋介石は、台湾に侵攻し、ここに中華民国政府を移した。大陸では、共産党による中華人民共和国が建設された。その結果、中華民国と中華人民共和国が並立する状態となった。中国共産党が政権の正統性を誇示し、世界戦略を進めるためには、中華民国台湾を併合し、「祖国の統一」を成し遂げなければならない。これが政治的・思想的理由だろう。

 しかし、台湾統一の現実的な理由は、実利的なものである。現在私が中国の軍事問題について学ぶことの多い専門家に、平松茂雄氏がいる。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、平松氏を「中国研究の第一人者の一人」としている。平松氏は、防衛庁防衛研修所で20年間、さらに杏林大学で中国の軍事・外交を研究した。「氏が著してきた約20冊の中国専門書は、その内容の詳細さ、分析の確かさにおいて、他の研究者の追随を容易には許さないものだ」と、櫻井氏は紹介している。
 その平松氏は、中国共産党が台湾に固執するのは「ひとえに台湾の戦略的地政学的位置の重要性にある」と言っている。中国が太平洋に進出するために、「重要なカギとなる位置に存在するのが台湾」なのである。
 台湾は東シナ海と南シナ海の間に位置し、渤海・黄海・東シナ海と南シナ海を二分する位置にある。もし中国が台湾を併合できれば、中国は太平洋に面した国になる。

 中国は今や米国、日本に次ぐ世界で第三位の石油輸入国である。インド洋・南シナ海・東シナ海を通る海路は、これまでは日本にとって中東の石油を運ぶシーレーンだった。しかし、これからは、中国のシーレーンにもなる。石油の確保のため、中国は、太平洋だけでなく、インド洋への進出を着々と進めつつある。
 台湾人の評論家・黄文雄氏は、次ぎのように言っている。
 「台湾を確保しなければ、中国の勢力は海に進出できない。それが達成されれば、アジア、太平洋への覇権確立は可能になるし、さらにはインド洋への戦力拡大も可能になる。だから台湾併呑は中国にとり、自らの生存にかかわる大きな課題なのだ」
 しかし、中国の台湾侵攻を、アメリカは黙って見ているはずがない。黄氏は、次のように言う。
 「台湾はアメリカにとってはアジア・太平洋防衛の砦という要衝である。もちろん日本にとっても、ここが陥れば自らの生存に関わってくるほどの絶対国防圏といっていいほどだ。だから台中戦争は避けられないし、日中再戦、米中衝突も必至と見るべきだろう」と。(黄文雄著『米中が激突する日』PHP)

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(2)統一の方法は和戦両用

 

 中国としてもアメリカと対決するのは、安易にできることではない。できるだけアメリカを刺激せず、介入の口実を与えずに実質的に併合できれば、理想的だろう。
 政略・戦略の両方に通じた国家最高指導者は、武力を誇示しつつ、戦わずして勝つ道、最小の労力で最大の成果を挙げる道を考えるだろう。武力攻撃の恫喝をかけながら、経済の力で親中派を増大させ、民主的に台湾人の多数意思で併合をなしえれば、アメリカと戦火を交えることなく、国際社会の非難を受けることもなく、目的を達成できる。中国の資本は台湾のマスコミの8割を買収し、親中的な世論の醸成を推進させている。
 黄文雄氏は、「中国は、台湾の大陸出身者である国民党や親民党を扶翼し、それらに台湾防衛に不可欠なアメリカからの防衛兵器購入に反対させ、そして2008年の総統選挙で政権を奪取させ、中国の傀儡政権をつくらせようとするなど、中国併呑の『環境整備』を着々と進めている」という。2年後の平成20年の総統選挙は、自主独立派の苦戦が予想されており、予断を許さない。

 東アジアにおける平和的手段による併合には、日韓併合の例がある。日本は明治37年(1904)、日韓協約で、世界で初めて韓国の独立を認めた。その後、明治43年(1910)、両国による条約締結により、合法的に日韓併合が行われた。主要諸国の了解を得ての併合だった。
 中国の場合は、台湾を独立した国家とは認めていない。独立しようとするのを阻止して、自国に呑み込みたいのである。しかも、反国家分裂法を制定して、武力行使を辞さないことを国法としている。これは、戦前の日本より、はるかに帝国主義的・覇権主義的な姿勢である。 

 現在の中国の方針の下では、台湾併合には、二つの方法があるだろう、と帝京大学教授の志方俊之氏は言う。(『無防備列島』海竜社) 氏によると、一つの方法は、香港の場合のように、一国二制度を台湾に受け入れさせ、台湾を「第二の香港」にする方法である。香港では、政治・経済は別の制度を取っても、軍事は人民解放軍が担当している。これをさらに進めた方法が、台湾独自の軍事力を認める名目的な一国二制度である。独自の軍事力と言っても、人民解放軍を補完するような編成にし、基地や港湾を貸借すれば、実質的には指揮下に組み込める。
 これに対し、台湾が独立を宣言し、憲法を改正した場合は、中国は警告と制裁を行うだろう。経済封鎖から段階的に行い、台湾がこれに屈しなければ、中国は軍事行動を起こすに違いない。
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(3)侵攻の場合の時期はいつか


 平和的な方法で台湾を併合できなければ、いずれ中国は軍事的な手段をもって台湾の統一を試みるだろう。
 軍事行動に出る可能性が最も大きいのは、中国が台湾に対し、絶対的な軍事的優位に立ったときである。アメリカの国際評価戦略センターの報告によると、中国は、ベトナムやフィリピンなどとの領有権紛争でも見られたように、軍事バランスが中国側に決定的に有利になったところで、一気に軍事攻撃をかけるパターンがあるという。
 現在のところ、中国は台湾侵攻において制空権を得るだけの力がない。しかし、中台の軍事バランスは2010年代に入ると、中国側に有利に傾くと推測されている。その段階になると、侵攻を行なう可能性が高いと考えられる。2020年の前後5年ころという観測もある。アメリカ国防省の見方でも、中国共産党の見方でも、この年代には、中国は圧倒的な優位を確立していると見られている。

 独立を望む台湾人にとっては、中国が対外的に平和国家の路線を維持し、台湾に軍事的な優位を確立するまでの間が、独立を達成するために残された機会となるだろう。そのタイムリミットは、軍事的な観点からは、北京オリンピックが開催される平成20年(2008)年から、上海万国博覧会が開催される22年のころまでと見られる。この点で、2年後の総統選挙は、台湾人にとって、非常に重要な選択となる。
 平松茂雄氏は、「台湾にとってのタイムリミットは、同時に日本のタイムリミットを意味する」と言う。国際情勢の変化によって、こういう見方が当たるかどうかはわからないが、傾聴すべき意見だと思う。含意の説明は、次の項目に譲ることにする。
 まず平成20年から22年にかけての時期は、わが国にとって、安全と繁栄にかかわる重要な時期と考えて対処したほうがよいだろう。2年ないし数年のうちに中国と台湾の間で重要な事態が生じうると言っても、わが国の多くの人にはぴんと来ないだろう。戦後の日本はあまりにも平和であり、アメリカの保護のもとで、平和ボケ、保護ボケになっているからである。

 実は、中国国内には近年、「早期侵攻論」が主張され、平成18年(2006)つまり今年あたり侵攻すべきという論もあるという。台湾で独立派が優勢になる前に攻め取ろうというのだろう。中国全体がファッショ的な傾向を強めているから、こういう好戦的な意見の存在も軽視できない。
 もし台湾が独立の動きを起こしたら、中国はすぐさま警告と制裁を行うだろう。経済封鎖から段階的に行い、台湾がこれに屈しなければ、中国は、軍事的な有利であるか否かにかかわらず、軍事行動を起こすだろう。それだけ、中国にとって台湾の存在は重要なのである。
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(4)日本にとっての台湾問題


 台湾の問題は、台湾だけの問題ではない。わが国にとっても、極めて重要な問題である。中国が台湾を併合すれば、日本は台湾海峡・バシー海峡というシーレーンの重要な拠点を押さえられたことになる。バシー海峡は、台湾とフィリピンの間の海峡である。
 戦前の日本では、満蒙はわが国の「生命線」と呼ばれた。生命線とは、手相の話ではない。生きるか死ぬか、国が自存できるか否かがかかっている、絶対に守らなければならない地域のことをいう。今日、台湾はわが国の新たな「生命線」となっている。

 平松茂雄氏は言う。「日米からすれば、台湾は西太平洋防衛の要の島である。とくに日本にとっては生命線であり、ここが中国の手に落ちれば、日本が窒息することは必定である」「仮に台湾が占領され、日本のシーレーンが中国に扼された場合、そのとき日本は簡単に、その国の属国となってしまうだろう」と。(平松茂雄著『中国は日本を併合する』講談社インターナショナル)
 日本人でこのことを理解している人は、まだまだ少ない。わが国の産業も国民生活も、石油なしには成り立たない。中東と日本を結ぶシーレーンの要に台湾がある。台湾が中国の掌中に入れば、わが国の運命は中国の手に握られる。だから、台湾問題は、日本自体の問題となっている。政府もマスメディアも、このことの重大性を、国民に周知しようとしていない。
 平松茂雄氏が「台湾にとってのタイムリミットは、同時に日本のタイムリミットを意味する」と言うのは、上記引用のような事情があるからである。
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(5)中国の国内事情による行動も

 

 仮に台湾人がここ数年、独立への道を選ばなかった場合、台湾の地位は現状維持が続く。一方、中国は、軍事力の増強を続ける。よほど政治的経済的に行き詰まるか、政策の大転換がされない限り、増強がされる。2010年代に入ると、台湾侵攻に十分な優位を得るだろう。そして、それまでに平和的に台湾を統一できていなければ、いずれ台湾統一に着手することになるだろう。そこからの時間の幅は、数年から15年以内くらいと見られる。

 中国が台湾に軍事行動を起こすとすれば、戦闘による損害、国際社会の反発、各国からの制裁等、リスクも大きい。この点について、黄文雄氏は、著書『米中が激突する日』(PHP)で次のように言っている。
 「おそらくあらゆる犠牲を覚悟したうえでの開戦であるから、やはりそれは、国内矛盾、亡国亡党の危機に直面したときではないだろうか。それにより、つまり追い詰められ、暴発し、賭けに出る形で武力行使をするという公算は決して低くはないのである」「最も大きな侵攻の危機(略)は共産主義体制が危機に直面したときである。この国は、それだけの理由で台湾に対して冒険的行動に出ると私は見ている。もちろんそのときには、アメリカは軍事介入し、これが米中戦争のきっかけとなるはずだ」と。
 黄氏は、中国の危機を強調し、日本の台湾への協力を強く求める論者ゆえ、政治的に割り引いて受け止めたほうがよいと思うが、中国については、バブルの崩壊や、格差拡大による暴動の頻発、環境破壊の恐るべき進行等が伝えられており、内部の矛盾が増大していることは間違いない。共産党支配体制が揺らぐとき、国民の不満をそらすために、対外的な軍事行動に打って出る可能性はある。ただし、こういう行動は、最もリスクが大きいものであり、活路を求めての一か八かの行動となるだろう。
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(6)中国はどのような軍事行動を取るか

 

 中国は台湾を侵攻する場合、従来の戦争の考え方を超えた作戦を行うだろう。中国は、これまでの戦闘方式の限界を破る新しい方式を採用している。これを「超限戦」という。「限界を超越する戦争」である。
 平成11年(1999)、喬良と王湘穂という人民解放軍の二人の空軍大佐が本を書いた。問題の書『超限戦〜21世紀の新しい戦争』(共同通信社)は、「コンピュータ攻撃、暗殺、爆弾テロ、麻薬密輸、生物・化学兵器、金融錯乱、宣伝・脅迫、環境破壊、メディア戦等」、これまでタブーとされてきたあらゆる手段を動員して戦争を遂行することを説いている。

 私の理解するところ、「超限戦」とは、従来の国家間の戦争の仕方に、共産党の戦術思想を加えたものである。共産党の戦術思想とは、国際法を無視した何でもありのやり方である。目的のためには手段を選ばず、勝つためにはあらゆることをするというものである。国際信義とか人権といった考えは、そこにはない。
 台湾侵攻においては、「超限戦」の実行として、軍事的な攻撃より、まずインターネットでハッカー攻撃を行うだろう。コンピュータをやられれば、国家機能は麻痺するし、金融も麻痺してしまう。その一方で、各所で誰がやったか分からないテロ攻撃を行なう。そういう手段で台湾国民を心理的に屈服させれば、最少の力で侵攻を成功させることができる。それが、現代の新しい戦争、超限戦の考え方である。

 実際に中国が人民解放軍を動かすとき、どのような事態となるだろうか。平松茂雄氏は、著書『中国、核ミサイルの標的』(角川Oneテーマ21)で次のように書いている。
 台湾侵攻の際、現在のところ、「中国空軍には制空権を掌握するだけの能力」がない。そこで「短距離弾道ミサイルを大量に集中的に発射し、台湾の政治・軍事指揮中枢、通信施設、空軍施設などを一挙に破壊して、台湾の作戦能力を殲滅する作戦」を取るだろう、と平松氏は言う。
 台湾は米国の支援により、多段階かつ大量のミサイル防御網の構築を意図しているが、台湾内部には、この推進に反対する勢力がある。仮に「中国はTMD(戦域ミサイル防衛)システム構築後の台湾をミサイル攻撃する場合には、少数のミサイル攻撃では効果がないので、間違いなく大規模な数百発のミサイルによる同時急襲攻撃になるであろう。そうなると、台湾のミサイル防衛システムはその何割かは迎撃できても、多数突破される可能性が高い」と平松氏は予想する。

 ミサイル防衛システムを突破したミサイルは、台湾の軍事施設や、場合によっては都市部に多大な破壊をもたらすだろう。台湾が独力で国土防衛をすることは、難しくなる。ここで、米軍が動かなければ台湾に勝ち目はほとんどない。
 これに対し中国は、米国が軍事介入できないような状況をつくることが必須の条件になる。軍事介入を防ぐうえで重要なポイントは、アメリカ海軍の介入を阻止することである。
 すでに中国海軍は、西太平洋海域に進出している。その主目的は、アメリカの海軍空母機動艦隊の介入を阻止して、台湾を併合することにあるだろう。

 これだけではない。中国は、アメリカ海軍の介入を防ぐために、着々と手を打っている。平松氏は、平成18年6月6日、東京の文京シビックホールで行った講演で、大意次のように語ったという。
 中国は、わが国の沖ノ鳥島付近の排他的経済水域(EEZ)に入り込んで、海底調査を実施している。その目的は、台湾有事に備えて、アメリカ海軍の航空母艦や原子力潜水艦を妨害するための潜水艦の航行あるいは機雷を敷設するためのものである。グアムの基地から、米軍が台湾へ来られないようにするのが狙いである。日本政府は、日本側の経済水域での中国の調査に許可を出している。中国は、非常に詳細な調査を行っている。これは潜水艦作戦のための調査だろう、と。

 私見を述べると、日本政府が中国の調査に許可を出したのは、実に愚かなことをしたものだ。単なる無責任か、事なかれ主義か、米中二股の事大主義か。結果は中国を利するとともに、日米同盟にとってマイナスになり、自分の首を絞めることになることは明らかである。
 上記のように、中国は、アメリカが台湾を支援できないように手を打っている。台湾侵攻の場合、アメリカが中国と戦うとすれば、沖縄や横須賀の基地の軍を動かすことになる。すでに中国は、これらの基地を攻撃する力を有していると見られている。中国は、核兵器で在日米軍基地や東京・大阪等を攻撃すると恫喝するだろう。
 問題は、中国の核にどう対応するかに帰着する。
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(7)核で日本とアメリカを威嚇する

 

 中国は核の第一撃能力を持っている。核弾頭を搭載した大陸間弾道弾ミサイルを保有している。中国は射程2000キロメートルの移動式で全自動化された中距離弾道ミサイル「東風21」」を配備している。
 「東風21」は、日本全土を射程内に収めている。北朝鮮の核開発はまだ開発途上であり、たとえ核兵器を保有しているとしても数発程度だけだ。だが中国のほうは、日本をターゲットにして、すでに数百発も実戦配備しているのである。
 中国のある軍事誌は、「近代産業が集中している島国日本に100万トン級の核弾頭を20発落とせば、日本は地上から消える」という物騒な軍事評論家の見方を堂々と載せたことがある。

 中国は、地上設置型のミサイルだけでなく、アメリカの第一線クラスの戦闘爆撃機に匹敵するJ10戦闘爆撃機を大量に生産している。J10はミサイルを搭載して日本列島に飛来し攻撃する能力を持つ。

 さらに、アメリカの出方によっては、中国は、アメリカの本土を核攻撃すると威嚇することもできる。中国の大陸間弾道ミサイルは、1万2000キロメートル以上飛んで、ワシントン、ニューヨークを含む米国東部海岸に到達することができる。
 しかも中国のミサイル技術は、急速に向上している。平成15年(2003)、中国は「神舟5号」による最初の有人宇宙船の打ち上げを行った。17年10月12日には、「神舟6号」による第2回目の有人宇宙船の打ち上げに成功した。有人宇宙船を打ち上げるロケットは、アメリカ本土に届く大陸間弾道ミサイルを発射するロケットを利用する。中国が、有人宇宙船を予定の軌道に正確に投入したことは、大陸間弾道ミサイルにより、アメリカを核弾頭で正確に攻撃できる能力を備えたことを示している。

 アメリカは、ニューヨークやワシントンを核攻撃されることと、台湾を防衛することとのどちらを選ぶか。多数の国民の生命を犠牲にしても台湾を守るとは考えにくい。中国は、核の恫喝でアメリカの介入を阻止できれば、台湾は脅すだけで政治的に統一できると考えているのではないか。これも、戦わずに勝つという孫子の兵法の現代的な実践だろう。

 中国の核ミサイルについて、精度が劣っているとして、それほど脅威を認めない専門家もいる。しかし、核兵器の場合は、攻撃目標から数百メートル外れて落下しても、破壊力にそれほど違いはない。既に中国は十分な量と質の核を持っている現実を見るべきだと思う。
 

 地上設置型のミサイルは、発射前に破壊してしまうことができる。しかし、移動式のものは、破壊が難しい。さらに海中深く潜行する潜水艦は、すべてを見つけ出して破壊することは不可能である。仮に地上ミサイルが全部破壊されても、中国は潜水艦から核攻撃する能力を保つだろう。その能力があることによって、相手の攻撃を抑止することもできる。
 中国海軍は、猛烈な勢いで潜水艦を増やしている。平成17年(2005)6月16日、中国は94型潜水艦から大陸間弾道弾の発射に成功した。このミサイルは、東シナ海の海中から中国内陸部の砂漠地帯の目標地点と見られる地域に飛んだ。この実験の成功は、中国が日本だけでなくアメリカ本土も攻撃できるようになり、ワシントンやニューヨークを一撃のもとに壊滅させることができることになったことを意味する。命中率は、アメリカ海軍の原子力潜水艦から発射されるトライデントミサイルに匹敵すると見られている。
 アメリカ国防総省は、この新型ミサイルをJL−2と命名した。JL−2は、3つないし8つの核弾頭を装備できると見られる。JL−2を搭載した94型潜水艦は、核の第一撃能力を持つ。中国の最新型潜水艦は、アメリカ海軍の監視の及ばない海中からミサイルを発射し、相手が気づかないうちに、第一撃で敵の頭脳部・心臓部を壊滅させてしまうことができることになったわけである。

 中国は、平成22年(2010)には、94型潜水艦を数隻保有することになると見られている。一隻の潜水艦が、16発のJL−2ミサイルを装備する。そうなると、中国は、アメリカの大都市のすべてを、いつでも同時に核攻撃できる力を持つことになる。早ければ中国は、平成22年にアメリカと並ぶ核大国の立場を確立することになるという観測がある。
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(8)アメリカは中国に勝てるか


 都知事の石原慎太郎氏は、平成17年(2005)11月3日に、米国の首都ワシントンで行なった講演で次のように語った。
 「戦争はしょせん生命の消耗戦だ。米国はイラクで米兵が2000人死んだだけで大騒ぎするが、生命に対する価値観がまったくない中国は、憂いなしに戦争をはじめることができる。戦禍が拡大すればするほど、生命の価値にこだわる米国は勝つことができない。生命に非常に無神経な指導者が、米国との緊張が高まったときにどういう挙に出るか、われわれは冷戦時代より、はるかに危険度の高い緊張の中にある」
 「米中間で紛争が起きた場合には、中国にとって一番目障りな日米安保をたたくために、もし核を落とすなら沖縄に落とすだろう。あるいは東京を狙うだろう」と。

 石原氏が、米中間の紛争について言及したのは、中国の台湾侵攻を想定したものだろう。
 この発言に関し、平松茂雄氏は、著書『中国、核ミサイルの標的』(角川Oneテーマ21)で次のように述べている。
 「もし台湾有事となれば、米軍が駐留する日本は中国にとってまさに敵国です。横須賀の米海軍基地から空母が出航し、沖縄の米空軍基地から攻撃機が出撃することになるから、中国の標的となるのは当然です。その場合、米国は本当に中国に核報復攻撃してくれるでしょうか。日本に対して、中国の核兵器の照準は常に合わされています。中国はボタンを押すだけで、日本に核兵器を落とせるのです」と。
 台湾侵攻の際、中国は、アメリカ軍の介入を阻止しようとする。介入すれば在日米軍基地のある沖縄や、東京・大阪等を核攻撃すると恫喝するだろう。

 中国人民解放軍の最高学府である国防大学の防務学院長、朱成虎少将は、香港駐在の外国人記者大陸訪問団との会見の席で次のように述べた。これは「米国が台湾海峡の戦争に介入したら、中国はどのように対応するか」という質問に答えてのものである。
 「米国がミサイルや誘導兵器で中国の領土を攻撃するなら、中国は核兵器で反撃せざるを得ない」「中国の領土には、中国軍の艦艇や戦闘機も含まれる」「中国は西安以東の都市の全てが破壊されることを覚悟しており」「米国も当然西海岸の100以上、もしくは200以上、さらにはもっと多くの都市が中国によって破壊されることを覚悟しなければならない」と。

 アメリカが台湾侵攻に軍事介入する場合、中国には、現在のところ、通常兵器でアメリカに勝つ能力はない。そこで、中国は、アメリカ本土の主要都市を核攻撃すると威嚇して軍事介入を断念させようとするだろう。
 アメリカは、デモクラシーの国であり、国民の人命を尊重する国である。台湾がいかに戦略的に重要とはいえ、数百万人の自国民の生命を賭けてまで台湾を守ろうとするだろうか。時の政権の戦略思想によるだろうが、いかなる犠牲を払っても断固として台湾を守るという可能性は低いと思う。
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(9)中国が台湾を併合したら

 

中国が台湾併合に成功したら、その後、日本はどうなるだろうか。
 平松茂雄氏は、次のように予想する。
 「台湾が中国に軍事統一された場合、台湾には大規模な海軍基地がつくられるであろう。そこから大量の潜水艦がバシー海峡から南シナ海、さらに西太平洋に展開された場合、日本のシーレーンは中国の強い影響下に入ってしまう」(平松茂雄著『中国は日本を併合する』講談社インターナショナル)

 日本が輸入している原油の91%は、マラッカ海峡を通っている。同海峡から南シナ海を航行する船舶のほとんどは、バシー海峡を通過して日本の港湾に到達する。バシー海峡は、台湾とフィリピンの間にあり、シーレーンの重要部分をなす。
 シーレーンで輸送する石油を止められたら、日本経済は窮地に陥る。すなわち、中国が台湾統一をするならば、日本は中国に生殺与奪の権を握られた同然である。

 ここで私たちは、大東亜戦争のときのことを振り返って見る必要がある。昭和16年(1941)7月、アメリカは日本への石油の輸出を禁止した。これで日本は追い詰められた。石油は、近代工業と国防に不可欠である。石油を止められることは、のど元を両手で締め上げられるようなものである。
 日本の指導層は、なんとか外交で打開の道を探ろうとした。しかし、アメリカは交渉を延ばしに延ばしたうえで、ハル・ノートを突きつけてきた。アメリカの強硬な姿勢にたじろいだ日本の指導層は、冷静に国際情勢を判断することができなかった。座して屈するより、戦いに活路を見出そうとし、米英戦争を開始した。その結果、開国以来ない大敗を喫した。
 対米戦争は、日本の指導層が計画的に準備したのではない。石油を止められたことが、決定的だった。

 もし今日、シーレーンを中国に押さえられたら、産業と国民生活への影響は、戦前の比ではない。戦後の文明は石油文明とも言われるように、石油は血液にも等しい。石油が止まれば、わが国は一気に危機に陥る。再び、わが国は、国家・国民の運命を賭けた選択を迫られることになるだろう。
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 10)日本人はどうすべきか


 台湾が中国に取られたら日本は窮地に陥る。マスメディアは北朝鮮については報道し、国民の関心は高い。北朝鮮の核開発・ノドン・テポドンの問題は、多くの国民が危機感を持っている。

 しかし、北よりはるかに重大な危機は、西南の海から迫ってきている。北の核は完成しているかどうか確証がない。私はすでに数発以上の核兵器を持っているだろと思うが、それとても中国の核ミサイルの数・質とは比べものにならない。

 中国は数百発の核ミサイルを日本に向けて配備済みである。ミサイルは全自動化しており、ボタン一つで、日本の主要都市は壊滅させられる。


 中国は、こうした核攻撃力の裏づけを持って台湾を統一しようとしている。中国が台湾を軍事侵攻するとき、わが国はどう対処すべきか。わが国は即、当事者となるのである。このことの理解が重要だ。

 平松茂雄氏は、著書『中国、核ミサイルの標的』(角川Oneテーマ21)で次のように言う。

 中国が台湾に侵攻するとき、「中国は米国の軍事介入を阻止するために、大陸間弾道ミサイルあるいは原子力潜水艦搭載の弾道ミサイルで、米国の主要都市を核攻撃すると威嚇するであろう。さらに日本の横須賀にある米海軍基地から空母機動艦隊が出動しないように、あるいは沖縄の米軍基地から攻撃機が発進しないように、日本に向けて首都、東京を核攻撃すると威嚇するであろう」。


 この時、日本は、中国の威嚇に屈服するか。アメリカとの強固な同盟を誇示することによって中国に手を引かせるか、二者選択を迫られる。

 わが国が独立と自尊を捨てて中国の恫喝に屈すれば、日米同盟は破綻し、わが国は共産中国に飲み込まれることになってしまうだろう。

 それゆえ、台湾侵攻の際、米国が断固として中国の核兵器に立ち向かうかどうかは、一つには、日本政府の決断にかかっている。政府の決断とは、国民の決断である。


 中国は、共産主義の国である。さらに近年ファシズム的な傾向を強めている。自由やデモクラシーは認めない。人権を無視する。人命を尊重しない。

 わが国が中国の属国になるということは、日本人が自由を失い、デモクラシーを停止され、人権を奪われ、人命をも損なわれることになる。ただ生き延びるために、ファシズム的共産主義に屈服することは、自分の魂を自ら捨てることになるだろう。それでもいいのか。今日、日本人は、真剣に考えるべき時にある。

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11)私の見方の背景


 私は、昭和40年代の半ばから50年代のはじめに、10歳台後半から20歳台はじめの年齢だった。その頃の日本には、共産中国に幻想を抱き、毛沢東崇拝という熱病に感染した人が多くいた。一方には、嫌中・反共の立場から、シナを頭から蔑視・敵視する人たちも多くいた。

 そうした中で、中嶋嶺雄氏は、国際政治学による冷徹な分析を発表していた。共産中国の建国から文化大革命・脱毛沢東化の動向まで、氏の見方には、ぶれがなかった。私は、氏のリアリズムに触れ、中国に対する客観的な見方を学んだ。しかし、この当代随一の現代中国研究者は、中国は共産党の下では決して発展できないと断言していた。この予想は見事に外れた。また、氏の所論は、軍事学に裏付けられていなかった。発展する経済力をもとに軍事力を増大するその後の中国の姿は、想定されていなかった。


 私が生涯の師とし、神とも仰ぐ大塚寛一先生は、昭和40年代半ば、日本に上陸したホンコン・フラワーを見て、これから中国は急速に発展し、日本は追い越される恐れがあると警告された。また、中国が原水爆やミサイルを持つにいたったのに対し、このまま軍事力を増大していくと、中国は滅亡の道をたどることになると予見された。核戦争になれば、核ミサイルを放つ国は共倒れになるからだと語られた。先生はここでも、比類のない驚異的な洞察力を示された。

 私は先生の指針を知って以来、できるだけ大局的な見方のできるよう努力している。もとより私の知識・理解は素人の域を出るものではなく、本稿も自分の研鑽のためのノートのようなものにすぎないが、何かしら同憂の方々の参考になればと思う。ページの頭へ

 

 

 

 

第2章 中国の日本併合はあり得るか

 

(1)強大化する中国が向かってくる

 

本章では、中国の日本併合の可能性について、より具体的に考察したい。

 中国は、1980年代から驚異的な経済成長を続けている。CIAの推測では、平成22年(2010)、中国のGDPは日本を追い越し、世界第二位の経済大国になる。中国は経済成長で得た資金を軍事につぎ込み、既に世界第二の軍事大国になっている。

 東欧の民主化と天安門虐殺事件が起こった平成元年(1989)から18年間、中国は毎年2ケタ台の伸び率で軍事予算を増加している。ただし、この数字は実態を表わすものではない。中国は、世界の武器貿易の約4割を占めるペースで、ロシアなどから新しい武器を購入してきた。輸入量は世界一である。こうした武器の購入費は、軍事予算に入っていない。宇宙兵器の開発費なども入っていない。実際の軍事費は、公表されている数字の約3倍だろうと見られている。実態はそれ以上かもしれない。

 わが国は、ODAによって中国の経済成長を支え、対日貿易における巨額の黒字を積み上げさせた。中国は日本が貢いだ富で、今や実質世界第一位の外貨準備高を誇っている。軍事大国へと急成長する中国の国家戦略を、日本人は後押ししてきてしまったのである。


 中国は、経済においては、2010年代後半から2020年頃には、実質購買力でアメリカを抜いて世界最大規模になる。また軍事においては、2025年から2030年頃に、アメリカを超えて世界最強になる、と予測されている。

 こうした予想は、すべて中国の経済成長や軍拡が順調にゆけば、という前提に立っている。中国の内部には、様々な矛盾が高じており、破綻は間近いという見方も多くある。共産党政権は、体制の維持が難しい事態にいたれば、国内の不満を外に向けるため、台湾や尖閣諸島等への侵攻を行う可能性がある。国内事情によっては、ここ数年のうちにも起こりうる。

 外国資本の投資に支えられた経済、北京オリンピック・上海万博で注目されるなかでの国際社会の評価等への重大な影響を考えると、中国指導部にとっては、一か八かの軍事行動となるだろう。


 仮に中国共産党がファッショ的な仕方で国内の矛盾を抑え込み、現在の経済成長・軍拡を継続することができれば、2020年代の半ばから30年頃には、中国は余裕をもって東アジアで覇権確立の行動を起こせるだろう。その時点では、もはやアメリカは中国を抑えられないと予想される。

 既に、赤い妖怪は大陸の西部や南部、南シナ海、東シナ海に勢力を伸ばしている。その手は、遅かれ早かれわが国の国土に向かってくるだろう。中国による「日本併合」を防ぐには、どうすればよいか。この点について私見を述べてみたい。

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(2)「日本併合」は迫り来る事態


 日本は島国であり、日本人の国民性は島国根性だといわれる。日本文明が熟成した江戸時代には、鎖国が長く続いた。その影響が残存しているのだろうが、近代世界に乗り出した以上、視野を開いて、世界の中の日本という自覚をしっかり持たねばならない。個人個人では、海外留学や海外生活、国際業務等を通じて、世界の中の日本を意識している人が増えているが、ものの見方に国益という観点をしっかり加える必要がある。

 日本は、四方を海に囲まれている海洋国家である。わが国が持つ排他的経済水域は、世界第6位に位置する。同時にわが国は、周辺国のすべてと領土・領海問題を抱えている。北では、ロシアと北方領土の返還が未解決である。漁船への発砲や拿捕の事件が多発している。西南では、中国・台湾と尖閣諸島を巡って、また韓国とは竹島を巡って、軋轢が強まっている。日本人には、海洋国民としての国際性と、領土と領海への敏感な意識が必要となっている。
 今日になって日本人は、ようやく共産中国の行動に眼を向けるようになった。尖閣諸島や春暁ガス田群等をめぐる行動が、あまりに露骨だからである。

 中国研究の第一人者の一人、平松茂雄氏は『中国は日本を併合する』(講談社インターナショナル)という題名の本を出している。氏は実証性を追及してきた専門家である。その氏が「日本併合」という言葉をあえて使うのは、「それが紛れもなく迫りくる事実となったからである」と言う。
 「日本併合」とは、単に中国が東シナ海の排他的経済水域・大陸棚や、尖閣諸島・魚釣島の領有権を侵犯していることを意味するのではない。日本という国そのものを、中国は呑み込もうとしているのだと氏は警告している。

「中国は日本を併合する」という主張の根拠として、平松氏は、共産中国の過去の行動とわが国の対応を克明に述べている。
 中国は、建国以来50年ほどの間に十数回の戦争を行なっている。かつては主に陸地国境線をめぐる戦争・紛争だったが、1970年代以降は海上の境界線に関する争いが増えている。
 中国との間で現在、わが国が直接関係するのは、領海と海洋資源である。中国は、早くも昭和31年(1956)から海洋政策を進めてきた。大躍進政策(1958-1960s前半)の開始より前である。昭和43年(1968)、東シナ海に中東に匹敵する豊富な石油資源がある可能性があるという発表がされると、中国は、わが国の領土である尖閣諸島を自国の領土だと主張するようになった。文化大革命(1965-1976)の真最中である。中国指導部の領土・領海・資源への所有欲は、非常に強いことがわかる。

 平松氏は、平成18年6月6日、東京の文京シビックホールで行った講演「台湾は日本の生命線」で、大意以下のように述べたという。
 「中国は、国際海洋法条約を利用して、南沙諸島における岩に高床の建物を建てて人を住ませ、経済水域を確保するなど、海への拡大を着々と進めていた。1980年代には南シナ海を固めた。
 次は東シナ海と予測し、私は対策を呼びかけたが、日本政府現場以外聞く耳を持たなかった。沖ノ鳥島に対しては、パトロールすら行っていなかった。現場が情報を送っても東京で関心が無いために情報が止まっていた。私は東シナ海の石油開発を問題視し、やめさせるよう政府に提案したが、『中間線の中国側でやっている』としてアクションが行われなかった。
 中間線とは、日中双方の権利のある範囲が重なっている中間なので、中間線より中国側にも日本は権利を主張できる。実際に中国は中間線より日本側に権利を主張している。日本側での開発を断固阻止すると言っていたのに、試掘もされてしまった。落し所であるはずの中間線を、日本は権利の範囲のように扱ってしまった」と。

 

中国の海洋での動きに対し、わが国の政府は、これまで二つの対応をした。一つは、日本の4社の石油企業からの日本側海域の大陸棚で鉱区を設定しての資源調査の申請を、30数年にわたって許可しなかったこと。もう一つは、その同じ海域、日本側の排他的経済水域内で中国の海洋調査船が調査することを最初は黙認し、次いであろうことか公式に許可したことである。

 平松氏は、「ここに著者が日本併合という言葉をあえて使う最大の理由がある」と言う。
 「日本の主権がおよぶ排他的経済水域・大陸棚から、勝手に海底のデータを収集し、資源を横取りしつつあるというのは紛れもない中国の『侵略』行為である。そしてそれは一発の銃弾が発射されることもなく、大方の日本国民が何も知らぬうちに、すべては静かに、平然と完了遂行されたのである。
 侵略・併合というものが常に武力衝突を伴うものではないことを、とくに中国との関係においてありうることを、日本国民はしっかり認識すべきであろう」(『中国は日本を併合する』)
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(3)膨大な海洋資源の存在

 

中国は積極的に海洋で行動している。中国は、東シナ海で広範囲に海洋調査を実施しているが、その調査は、わが国の排他的経済水域や大陸棚にまで入り込んでいる。さらに尖閣諸島や春暁ガス田群等を我が物にするような行動をしている。

 「このまま事態が進展すると、日本政府は中国の軍艦に対峙する決断を迫られる。だが後ずさりして安易な妥協や黙認をするならば、日本は東シナ海の主権的権利と海洋権益を奪われるだけでなく、東シナ海を失うことになるのだ」と平松茂雄氏は警鐘を鳴らす。(『中国は日本を併合する』)

 東シナ海を失うことは、単に広大な領海を失うだけでなく、そこに存在する膨大な海洋資源を失うことになる。わが国が、その海域で、海底の地殻が陸地と同じであり、地続きであることを証明できれば、国連海洋法条約の規定によって、領海の外側最大350カイリまでを、自国の大陸棚とすることができる。
 この海域には、大量の資源の存在が見込まれている。まず豊富な石油と天然ガスがある。東シナ海の石油の埋蔵量は、中東に匹敵する可能性があると推計されている。国土にほとんど石油の出ないわが国にとって、どれほど貴重な領域となるかわからない。天然ガスも同様である。
 さらに、同海域には、マンガン、コバルト、ニッケル等の金属資源がある。また、バイオ資源として活用のできるカニ・エビ・貝類等も豊富と見られている。それゆえ、大陸棚の資源を開発・利用できれば、わが国は一躍、資源大国になり得ると期待されている。

 沖ノ鳥島は、日本の最南端にある領土である。近年まで、この島は、何の価値もない岩のように思われてきた。しかし、同島が、国連海洋法条約によって、「島」と規定されていることは、重大な意味を持つ。もしこの島が国連海洋法条約の規定する「人間の居住または独自の経済的な生活の維持」という要件を満たすことができれば、周囲に広がる排他的経済水域と大陸棚は、日本の陸地国土面積を上回るほどの広さとなる。
 海上保安庁は、この島に灯台を新設することとし、平成18年度中に完成させる計画である。
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(4)日本を守るとは「日本の海」を守ること

 

 中国は東南アジア諸国と海洋権益をめぐる争いを重ね、南シナ海での覇権を追求してきた。このままいくと南シナ海は、その名の通り「シナの海」となる可能性が高まっている。
 さらに、東シナ海でわが国が譲歩を続ければ、東シナ海も「シナの海」に転じるだろう。「南シナ海と東シナ海を中国に抑えられると、台湾はその生存空間を失い、中国に呑み込まれることになるであろう」と平松氏は予想する。
 追い詰められた台湾は、中国が軍事侵攻をするまでもなく、人民多数が大陸との統一を希望し、民主的・合法的な仕方で、中国に併合されるようになる可能性もある。軍事侵攻の場合については、第1章(6)に書いた。日中・日米・米中の関係において、台湾が重大な焦点となることは間違いない。

 台湾もまたわが国が海洋によって接している隣国の一つである。とりわけ台湾の重要性は、わが国の生命線であるシーレーンの要の位置に存在することにある。台湾―バシー海峡―南シナ海―マラッカ海峡を結び中東からの石油を運ぶシーレーンのどこかを抑えられたら、わが国は危機に陥る。
 中国は台湾統一に向けて、さまざまな動きを行っている。中国の潜水艦がわが国の海洋を遊弋(ゆうよく)しているのも、その作戦のための海底調査と見られている。わが国が、自国の領海を侵犯されても、放任していれば、中国は着々と準備を進めるに違いない。
 それゆえ、と平松氏は言う。「日本の国家戦略とは、一言で言えば『日本の海』を守ることである。それはわが国の排他的経済水域を守ることであり、わが国の生命線であるシーレーンを守ることである」。そして、「日本の海」を守るとは、「中国から守るのだということを明確に意識する必要がある」と氏は、強調する。

 私は、別に拙稿「『フランス敗れたり』に学ぶ〜中国から日本を守るために」を書いている。本稿は、それを基本認識とすれば状況論となる関係にある。
 中国から日本を守るには、「日本の海」を守ることが必須である。「日本の海」を守ることが、中華思想に基づくファシズム的共産主義から、自由と独立、伝統と国柄、そして日本人の精神を守ることになる。
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参考資料
拙稿「『フランス敗れたり』に学ぶ〜中国から日本を守るために

 

(5)対日開戦論と反日感情の高まり

 

平成17年(2005)4月、中国で反日デモが広がった。このとき初めて中国における反日感情の強烈さを知った人が多いだろう。デモは共産党が扇動し、外交に利用したものだった。当局が抑えにかかると、整然と行動がやんだ。その後、大規模な反日行動は起こっていない。しかし、これは、反日感情が収まったことを意味するわけではない。
 反日デモの後、中国には対日開戦論が登場した。中国商務部研究員で日本問題の権威とされる唐淳風は、デモの約2ヶ月となる昨年6月、日中開戦を予告する本を書いた。唐はその書『中日両国は開戦するか』で、日本はすでに対中戦争の準備を進めているとして国民に警告を呼びかけているという。当然、背後に共産党指導部の意思があるだろう。
 日本が対中戦争の準備をしているというのは、日本国内では、全くありえない見方であるが、共産中国では、言論と情報が厳しく統制管理されている。国民の得る知識は、国家権力から与えられたものしかない。

 中国を観測し続けている台湾人・黄文雄氏は、著書『米中が激突する日』(PHP)に次のように書いている。
 「ここ数年来のネット上における対日言論攻撃は、言語道断といえるまでに激烈化している。たとえば『小日本』『日本鬼子』『倭猪(日本ブタ)』といった“人種差別”の侮蔑用語は一般的で、『大和民族を地球上から消せ』『中国人は神から日本人を抹殺する権利が与えられている』『BC兵器や核兵器で日本を滅亡させよ』といった攻撃的な意見が公然と飛び交っている」
 『開放雑誌』2004年12月号によると、中国人を対象とした意識調査の結果、25歳以下の青少年のうち、敵対する捕虜や婦女子を銃殺することに「賛成」は82%に達していた。そこでは「中国人でなければいくら殺してもかまわない」「あえて中華民族に対抗する種族は殺しつくすべき」「日本人婦女は強姦したあと殺すべき」「日本人なら、男は腸を開いて皮を剥ぎ、女なら輪姦したのち殺すべき」「日本人なら嬰児から老人まですべて殺しつくすべき」という回答が多く見られたという。
 黄氏は、次のように言う。「このように、今日の中国人の反日意識とは、決して日本側が『反省、謝罪』をすれば解消できるという程度のものではない。こうした民衆意識が中国の軍国主義化を支持し、推し進め、日本脅威論に激怒し、対日開戦論を盛り上げているのである」と。

 黄氏は「民衆意識」と書いているが、現在の中国に自由な言論は存在しない。政府に批判的な意見を述べた者は弾圧を受け、雑誌は休刊にされる。法輪功の学習者は、臓器売買のために、生きながら臓器を摘出され殺害されている。「民衆意識」と見えるものは、共産党によって作られた意識であり、ネットや雑誌に投稿している人間も一般国民だけでなく、当局の人間が入って意識操作を行っているだろう。
 中国は、アメリカ企業の協力を受けて、世界で最も高度な情報管理社会を作り上げている。平成5年(1993)以来、江沢民体制のもとで、反日愛国主義を吹き込まれてきた国民は、統制の中で、日本への憎悪と敵愾心をたきつけられている。特に若い世代がそうである。高揚した感情は、はけ口を求める。そうした中で、唐淳風のような日本問題の専門家が対日開戦論を唱えれば、国民を対日戦争に駆り立てる効果を生むだろう。
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(6)尖閣諸島への侵攻の可能性


 中国における好戦的・攻撃的な勢いは、当面、わが国の尖閣諸島に向けられる可能性がある。中国の尖閣侵攻をシミュレートしたのが、平成18年(2006)6月、アメリカで刊行された『ショーダウン(対決)』である。(補註: 翻訳版が扶桑社から刊行)
 拙稿「『ショーダウン』――米中対決」に書いたが、本書は、北京オリンピックが終わった翌年の平成21年(2009)7月、中国が靖国神社にミサイルを撃ち込み、尖閣諸島への攻撃を開始する。アメリカの民主党女性大統領は日米安保条約の発動を拒み、日本を支援しないと言明。日本は中国に大敗を喫する、というシナリオを提示している。
 先の拙稿では、中国は尖閣諸島を台湾の「身代わり」として侵攻するという国際ジャーリストの日高義樹氏の意見も紹介した。中国では、貧富の差が拡大し、社会不安が高まり、平成17年には1年に5万回を超える暴動が起きている。この数字も共産党によるものであって、実態はそれを上回るだろう。日高氏は、次のように考察している。
 「国民の不満を抑え、国を一つにまとめておくのに一番効果的なのは、台湾を攻撃し占領することである。だが台湾攻撃は準備に時間がかかるだけでなく、ブッシュ政権がいるかぎりほとんど不可能である。ブッシュ大統領が『台湾を守る』とはっきり宣言しているからだ。
 このため狙われるのが尖閣諸島なのである。 尖閣諸島は台湾に近く身代わりとして最適である。日本が領土と言っているところを占領すれば当分の間、国民の不満の爆発を抑えることができる」と。

 黄文雄氏は、尖閣諸島について、次のように書いている。
 「中国の主張によれば、尖閣は日本に『窃取』(強奪)され、『覇占・瓜分』(強奪・分割)された中国最後の領土である。香港・マカオはすでに取り返し、台湾は中国に属しているので、尖閣だけが外国に唯一占領された領土だというわけだ」
 「中国メディアの宣伝によれば、尖閣諸島は『古(いにしえ)より中国の絶対不可分な神聖なる固有領土』であって、日本の尖閣諸島への『侵略』は、『中国に対する公然たる挑発』となり、それそのものが『日本軍国主義の復活の証拠』となっているのだそうだ。また日中再戦のきっかけは尖閣にこそあり、『中国人は最後の血の一滴を流すまで、中国の絶対不可分の一部を死守する』などと警告している」(『米中が激突する日』)
 油断はできない。
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参考資料
・拙稿「『ショーダウン』――米中冷戦・両雄対決

 

(7)矛盾を外に向け、一段とファッショ化か

 

中国の内部では、様々な矛盾が高まっている。失業者の増加、暴動の頻発、銀行の不良債権率の増大、エイズ感染者の広がり、河川・海洋の汚染、砂漠化の進行等、統制のもとでの急速な経済成長は、ほころびを示しつつある。


 自由主義の法学者であり、天安門事件で逮捕され、オーストラリアに亡命中の袁紅氷・元北京大学教授は、「政治、経済、社会の全面的な危機に直面している中国は、国内で有事に備える『緊急状況法』の実施を既に確定」していると言う。緊急状況法とは、有事には国家主席が無制限の立法を持つという法律である。そして、「最大のねらいは、中国および全世界を戦争に巻き込ませることによって、中国共産党の政権を維持することである」と指摘し、中国の全面ファシズム化に世界は注意すべきであると警告している。

 袁はまた次のように発言している。

 「中共のファシズム化はこのようなプロセスをたどるものと予想できます。まず、国内で極端な民族主義感情を煽動し、次にこの極端な民族主義感情を利用して対内的あるいは対外的な戦争を発動します。中国全体を戦争状態に突入させる中、機に乗じて口実を見つけ、緊急事態法に基づいて緊急事態を宣言するのです。一旦緊急事態が宣言されると、中共は人権の保障に関するあらゆるコミットメントを無視することができます。これによって3つの目的を達成することが可能となります。

 第一に、中共は人々の預金その他有価証券等の形で保有されている財産を剥奪することができます。第二に、異論者、法輪功信者、地下キリスト教会のメンバー、党内の反対派等々を大規模に逮捕・虐殺し、ますます先鋭化・深刻化しつつある政治危機を解決することができます。第三に、緊急事態法を通じて全中国人の行動の自由を制限し、社会危機を解決することができます」(『大紀元』日本語版2005年4月23日号)


 袁は、台湾侵攻に関しても、次のように言う。「彼らが台湾と戦争をする理由は、国家主権と領土を保全することではなく、台湾に戦争を仕掛けることで、大陸において緊急事態を実現する理由を見つけ、大陸において今や通常の方法では解決できなくなっている経済・政治・社会危機を回避することなのです。」(同2005年7月13日号)

 これまで書いてきたように、その台湾の「身代わり」として、まず尖閣諸島に侵攻するというシナリオも考えられる。国民の不満・感情のはけ口を日本に向ける。それとともに、日中戦争を理由として、ファシズム的な国家統制政策を進め、共産党支配体制の引き締めを図るかもしれない。

 中国に進出している日本企業は、よほど身の振り方を考えた方がよいだろう。インドやベトナム等、親日的で道徳心のある投資先がアジアには存在する。

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(8)共産中国とクリントン夫妻の癒着


 近未来小説『ショーダウン(対決)』では、来るべき日中戦争の際、民主党の女性大統領は日本を支援しない、そのため日本は惨敗するという筋立てになっている。シミュレーションものは、ひとつ条件が変わると、実際の展開は全く違ってくる。しかし、本年11月の米中間選挙で民主党が圧勝したことを見ると、平成20年(2008)の大統領選挙で民主党の候補者が勝つ可能性は高い。
 ブッシュ大統領は、大量破壊兵器があると言ってイラクで戦争を始めたが発見できず、失態を演じた上に、解決のめどが立っていない。毎日のように米人兵士が死んでいる。何か大きな変化が起こらない限り、共和党は政局の劣勢を挽回できない。民主党の最有力候補はヒラリー・クリントン。アメリカ初の女性大統領が誕生するや知れない。

 私たち日本人は、アメリカに民主党政権が誕生する可能性があることを想定しておく必要がある。アメリカの政権交代は、日中関係に深いかかわりのあることである。
 民主党には、伝統的に親中反日派が多い。かつてF・D・ルーズベルトは、中国に共感を抱き、日本を憎悪した。彼の日本を敵視する政策が日米戦争を引き起こし、ソ連の謀略を許して中国の共産化を招いた。ルーズベルト政権の政府高官には、ソ連のスパイやエージェントが多数いた。敗戦後の日本は、6年8ヶ月にわたって連合国軍の占領統治下にあった。その間に、徹底的な日本弱体化政策を強行したのは、民主党のトルーマン大統領だった。

 米ソ冷戦の終結後、中国共産党は、ソ連に代わって、アメリカの政界・財界・学界への工作を活発に行っている。特に民主党が対象になっている。
 国際政治アナリストの伊藤貫氏によると、ビル・クリントンが大統領だった時代、中国は移動式・多弾頭の核ミサイルに関する先端技術をアメリカから盗んだ。それによって中国はアメリカ本土を核攻撃できる能力を手にした。クリントン政権は、この窃盗事件に関して対抗策を取らなかった。
 理由は何か。クリントン夫妻やゴア副大統領、ケリー上院議員、民主党の幹部・有力者が、共産中国のスパイ組織を通じて、中国から多額の賄賂を受けていたからである。
 そのうえ、クリントン夫妻は、中国系アメリカ人ジョン・ホアンに商務省次官補代理のポストを与えていた。ホアンは、その地位を利用して米国政府の機密書類を本国に流した。クリントン夫妻は、ホアンをさらに民主党本部の政治資金担当・副議長に就けてもいる。FBIやDIA(国防情報庁)は多くの証拠をつかんでいるが、クリントン夫妻らは「知らない。覚えていない」で逃げ延びてきている。(伊藤貫著『中国の核が世界を制する』PHP)

 共産中国と癒着したクリントン政権は、日米の支配―従属関係を一層構造化した政権でもあった。
 関岡英之氏の『拒否できない日本』(文春新書)は、今日の日米関係を知るための必読書であるが、関岡氏は、アメリカによる「年次改革要望書」の重大性を明らかにした。この対日要望書は、平成5年(1993)の宮沢喜一首相とクリントン大統領の会談に基づき、平成6年(1994)から毎年、アメリカが日本に提出してくる日本改革の要望書である。
 関岡氏は、これが日米外交の決定的な文書であり、日本改造の「指針書」であることを発見した。この要望書を通じて、アメリカによる「制度化された内政干渉」が行われているのである。この内政干渉の制度化をしたのが、クリントン政権だった。
 夫のビルに続いて、妻のヒラリー・クリントンが大統領になるということは、アメリカが共産中国に暗部を握られた指導者のもとで、親中反日路線に戻ることを意味する。
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(9)アメリカが日本を見捨てる!?

 

日本より中国を重視し、権力と金儲けのためなら中国相手に何でもするような大統領が、再びアメリカに誕生するかもしれない。中国指導部は、長年収賄関係にあるヒラリー・クリントンを大統領にするために、潤沢な選挙資金を提供するだろう。彼女のアジア政策アドバイザーたちは、アメリカは中国と組んで日本を抑えつけておくべきというのが基本政策である。ヒラリーの政権下では、日本への圧力が強まるだろう。
 そして、もし日中衝突という事態になった場合、アメリカは日本を守るためには動かない可能性が高い。ヒラリー以外でも民主党の有力政治家の多くは、中国と軍事対決することを避け、いざとなれば日本を見捨てるという考え方だろう。

 では、共和党ならよいかというと、共和党が別に親日的な政党なのではない。
 ちなみに日本に事前協議なしに米中国交回復を断行したのは、共和党のリチャード・ニクソンだった。ニクソンのブレーンだったキッシンジャーは、一貫して親中反日的である。
 また、米ソ冷戦の終結後、今度は日本が主敵として対日貿易戦争を仕かけたのは、「反共の盟友」だったロナルド・レーガンである。アメリカとの貿易戦争の結果、日本はバブルの崩壊に至り、「第二の敗戦」(吉川元忠氏)を味わった。
 近くは平成17年に成立したわが国の会社法、改正独占禁止法、そして郵政民営化関連法は、アメリカが日本の国富を収奪し尽くすための法的な仕組みである。それを強要したのも、共和党のジョージ・ブッシュ大統領(子)である。

 アメリカ人は、アメリカの国益を第一に考えているのであって、日本のために献身してくれているのではない。日米安全保障条約は、対等の条約ではなく、軍事的な保護―被保護の関係を規定した取り決めである。アメリカは自分の利益になるから、日本と安保条約を結んでいる。アメリカにとって、日米安保は、日本占領を固定し、日本の主権を制限して半独立国の地位にとどめておくという機能を持つ。
 民主党だけでなく共和党にも、日本に財政赤字を支えさせ、またアジアでの覇権を維持するために日本を利用すればよいという考えの政治家は多いだろう。アメリカが中国と対峙するうえで、今は日本の基地や経済力が役立つ。しかし、もし中国と核戦争となるかも知れぬほどの危機に直面したら、共和党の政治家も自国民を核から守るために日本を切り捨てるかも知れない。そう踏んでおいた方がよい。

 ブッシュ政権は、いま米軍の世界的再編成(トランスフォーメイション)を行っている。平成13年(2001)の9・11アメリカ同時多発テロ事件以後、ブッシュ政権の戦略は、テロとの戦いを中心に組まれており、中東の石油の確保とイスラエルの擁護が重視されている。中国・北朝鮮の脅威は、注視されていない。
 イラク戦争への米国民の疑問・反発は、中間選挙で共和党の敗北をもたらした。ブッシュ大統領は、これまでのネオ・コンの戦略から転換しつつある。選挙後に彼らの戦略の推進者の一人だったラムズフェルト国防長官を解任した。北朝鮮とイランに強硬な姿勢だったボルトン国連大使も罷免した。共和党は、国民の支持を回復するために、政策を変化させつつある。
 中東政策を中心とするブッシュ政権は、ライス国務長官を頭脳として、北朝鮮の問題を中国に委ね、将来的には東アジアを中国に任せる形で、世界的なパワー・バランスを取り直そうとしているように見える。
そう考えざるを得ないほど、アメリカは中東に力を集中させている。ページの頭へ

 

関連掲示

・9・11アメリカ同時多発テロ事件については、拙稿「9・11〜欺かれた世界、日本の活路」をご参照ください。

 

10)中国はアメリカの追放を狙う

 

 強大化する中国は、内部に多くの矛盾を抱えながらも、東アジアでの覇権の確立をめざしている。中国が取っている外交政策の最大課題は、アメリカをこの地域から追い出すことである。そのために仕掛けているのが、日米分断・日韓分断・米韓分断である。
 シナでは、西暦紀元前の戦国時代から合従連衡の策が唱えられ、実践されてきた。自国の周辺国を団結させず、分断して個々に結ぶ。優位に立ったら、力でねじ伏せて呑み込む。シナ人は、そういう策略に長けている。

 中国共産党は、日・米・韓を分断して、北朝鮮と韓国を融和させようとしている。ノムヒョン大統領の親北政策は、反日反米政策であり、同時に中国への依存を強めるものである。朝鮮半島が中国の強い影響の下に統一されれば、中国は事実上、朝鮮半島を呑み込んでいくだろう。また中国は、日・米・韓を互いに離反させつつ、日本と韓国がアメリカと手を切るように、手練手管を用いていると思われる。
 中国は地域覇権構想を抱いている。米国を排除して、中国が主体となる東アジア共同体の実現である。東アジア共同体とは、シナ文明による東アジア支配である。古代シナの帝国による華夷秩序・冊封体制の再現である。
 この野望の実現のために、中国の工作の最重点は、日米関係を悪化させ、日米同盟を解消することにある。日高義樹氏は、「アジアからアメリカを追い払い、日本を二流国に転落させるーーこれが中国共産党の最大の国家防衛戦略であり、対日本戦略なのである」と書いている。(『米中冷戦の始まりを知らない日本人』徳間書店)

 近年のアメリカは、中国の術策にうまく乗せられているように、私には見える。中国が米国本土を攻撃する能力を持ったことが、大きく影響している。また中国は外貨としてドルを買い、アメリカのドルの基軸体制を支えている。同時に中国市場には、アメリカ企業の投資先になっている。投資した企業は、商売のために中国と妥協する政策を政府に要求する。アメリカは核による激突を避けながら、東アジアから徐々に撤退し、それでいてドルの力を維持し、中国市場ではアメリカ企業が利益を獲得し続けられるようなやり方を模索しているのではないか。

 アメリカがアジアから撤退していくならば、日本人が独立自尊の精神で団結していないと、わが国は中国の属国と化し、中国に呑み込まれてしまう。平松茂雄氏の言葉で言えば「日本併合」である。これは、日本という国の事実上の消滅となるだろう。中国の自治区のような地位に組み込まれる恐れがある。即ち、自由とデモクラシーは奪われ、伝統と国柄は否定され、中華思想と共産主義の信奉を強要されるだろう。超少子高齢化の進む日本列島に中国人が多数流入し、世界的にユニークな日本文明は、シナ文明に包摂され、独自の文化は破壊され、日本人は魂までも奪われるや知れない。
 尖閣諸島付近を遊弋する中国海軍の船は、21世紀の黒船である。日本人は、幕末の危機に奮い立った先祖・先人が持っていた固有の精神、日本精神を取り戻さなければならない。
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11)中国に媚びる日本の事大主義者

 

前項で、日本人は、日本精神を取り戻さなければならないと書いたが、逆にわが国には危機に直面して、自己を失い、ますます他に依存しようとする人たちがいる。特に政界・官界・財界等の指導層に多い。長年アメリカに従属して独立心を失っているうえに、共産中国への見方が甘いと思う。
 中国では、沖縄はもともとシナ領だというのが、常識になっている。そのうえ、近年、北九州ももとはシナ領だという学説が出ている。こういう非常識や珍説は、突然出てきたものではない。黄文雄氏は、次のように書いている。
 「もともと中国人は、『日本人は中国の呉伯や徐福の子孫だ』とか、『弥生人は中国人、先進技術を持ち込んで日本を建国した』などといった『常識』を持っている」(『米中が激突する日』PHP)

 私の伯父の一人は、戦前中国に数年いた。私はその伯父から「シナ人は、日本はシナ人が渡って作った国であり、日本人はシナ人の子孫だと考えている」「シナ人は、日中の戦争をシナにおける内戦のように思っていた」と聞いた。黄氏の書いていることと、概ね合致している。
 黄氏は、言う。
 「日本が今後も中国からの内政干渉に屈服し続ければ、やがては満洲、チベット、台湾に対して見られる『神聖なる絶対不可分の固有の領土』という中国型の領土観、天下観から、今度は日本までも『中国の絶対不可分の領土だ』と主張されかねない」
 日本人が誇りを失い、追従的な姿勢を見せれば、中国の主張は、氏が警告するような方向にエスカレートするかも知れない。

 情けないことに、わが国では、指導層に事大主義者が増えている。事大とは、「大きいものに事(つか)える」である。事大主義とは、「自主性を欠き、勢力の強大な者に付き従って自分の存立を維持するやり方」(『広辞苑』)を意味する。
 近代朝鮮では、李朝末期に事大党が現れた。清につくか、ロシアにつくかで動揺する主体性を欠いた当時の朝鮮の姿を笑う人がいるが、日本人は他国民のことを笑っていられない。戦後の日本は、従米的な事大主義者とソ連崇拝的な事大主義者が角逐を続けた。ソ連の解体後は、共産中国に媚び、追従する事大主義者が年々、増加している。
 「事大主義とはそもそも、卑怯にして臆病な不健全きわまりない心理である。強い者に媚び、迎合し、つき従うというわけだから、そのためには道理も条理も真心も捨てて恥じない」と黄文雄氏は断じる。
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12)日本精神の復興が日本併合を防ぐ

 

わが国では、古代からシナへの朝貢意識、隷属意識が存在した。徳川幕藩体制の初期には、シナを本国とし、シナのあり方を規範として、それを模倣する「慕夏思想(ぼかしそう)」が御用学問となったこともあった。「夏」というのは、伝説的なシナ最古の王朝を言う。今日こうした中華思想に同調する心理が、再び動き出している。だから、精神的なところから日本人のあり方を立て直さないと、日本人は自由と独立、伝統と国柄、自らの魂を守ることができない。
 幕末の日本に黒船が来航したとき、日本人は、西洋列強に蹂躙されまいと、維新を成し遂げた。近代国家・日本が国際社会に進み入ったとき、日本人は日清戦争・日露戦争を戦った。清もロシアも大国だった。明治の日本人は、大国を相手に堂々と戦う気概を持ち、これに勝利した。当時の日本人は、愛国心と独立心、そして団結心を持っていた。
 現代の日本人は幕末・維新、日清・日露の時のような精神を取り戻せるか。そこに、今後のわが国の運命がかかっていると思う。私が、日本精神の復興を呼びかけるゆえんである。
 わが国が現在のアメリカの従属国的・被保護国的地位を脱し、また今後、中国に属国化せずに、一個の独立国として立ち続けるには、日本人が日本精神を取り戻すことが、なにより必要不可欠である。

わが国が国防上、重要な課題に取り組めずにきたのは、日本人が日本精神を喪失してきたことによると私は考える。その課題とは、憲法改正、日米安保の攻守同盟化、刑法の通牒利敵条項の復活、核抑止力を含む総合的安全保障の強化等である。次章では、これらについて述べることにしよう。 ページの頭へ

 

 

第3章 日本併合を防ぐ方策

 

(1)憲法の改正が急務

 

 中国による日本併合を防ぐため、具体的な方策として、いま日本人がなすべきことは何か。

まず日米安保条約があれば平和でいられるという時代は終わったことを、みなが自覚することである。そして、国防の基本に立ち返ることである。近代国家の国防とは、自力で自分の国を守ることが基本である。それには、現行憲法の改正が必要不可欠である。

 大東亜戦争の敗戦後、わが国は、GHQが約1週間で起草した憲法を押し付けられた。現行憲法は、第9条に戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を定めている。これは、日本が自力で自国を守れないように日本を抑えこんでおくための封印だった。憲法の規定は、侵攻戦争を放棄したものであって、自衛のための軍備は戦力ではないという解釈で、わが国は自衛隊を保持してきた。しかし、アジア屈指の能力を持つにいたって、なお自衛隊を戦力ではないというのは、欺瞞である。

 早急に憲法を改正し、自力による国防を整えるという国家安全保障の基本に立ち返るべきである。新たに制定する憲法には、国民の国防の義務を規定する。私は、日本国民にとって最も大切なことは、国民が精神的に一致団結し、スイスのように国民皆兵で国防を整えることだと思う。また、集団的自衛権の行使を明記する、国家非常事態条項を設ける等を行いたい。

 憲法についての基本的な意見は、過去に書いたものをサイトに載せてあるので、ここでは簡単にとどめたい。私が憲法改正は急務と言うのは、国防の必要に限ったことではない。外交、財政、教育、家庭等あらゆる面にわたって、憲法の改正が求められている。この点も別に私見を公表しているので、詳細は省く。
 とりわけ、わが国の置かれた国際情勢を理解するならば、一日も早く憲法の改正が求められる。中国・台湾・北朝鮮・尖閣諸島等の問題の厳しさを深く認識している人は、そういう意味がわかることと思う。 

 現行憲法は、第96条に改正の手続きについて、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めている。
 改正の手続きとして国民投票を要するわけだが、そのための手続法が出来ていない。ようやく今日、国会で国民投票法が検討されている。本年(平成18年)12月9日、自民党・公明党・民主党は、国民投票法案について合意したというから、近いうちに同法が成立する見込みである。(補註:平成19年5月成立)
 しかし、これら三党の合意によると、同法の施行時期は公布から3年後とし、その間は新設される衆参憲法審査会の憲法改正原案の審査権限を凍結するという。憲法改正原案の提案・審議・議決は、3年間凍結されたわけである。ということは、改正はどんなに早くとも、平成22年(2010)の始めころまでは行わないということである。

 この間に、わが国及びわが国を取り巻く諸国では、いくつか重要な選挙が行われる。まずわが国では、来年(2007)参議院議員選挙がある。与党が議席を減らすことは必至であり、与党の大幅な敗北となれば、政府の国会運営は難しくなり、不安定な政治情勢となるだろう。
 続いて、韓国で大統領選挙が来年12月にあり、親北反日反米の路線の継続となるか、転換となるか、注目されるところである。再来年の平成20年(2008)には、台湾で総統選挙がある。陳水扁総統と民進党は総統夫人のスキャンダルで支持率を下げており、国民党の親中反日派の新総統が誕生する可能性が高くなっている。さらにこの年には、アメリカで大統領選挙がある。その予想については、先に書いた。

 こうした平成19年〜20年に行われる韓国・台湾・アメリカの一連の選挙は、わが国にとって重要だと思う。韓国で親北反日反米政策が継続となり、台湾で親中反日の総統が誕生し、アメリカで民主党の親中反日の大統領が登場した場合、わが国は最も厳しい立場となるだろう。
 この点でも私は、憲法改正を平成22年(2010)の始めころまでは行わないことを政党間の取引のようにして決めたことは、非常に安易だと思う。国家の命運をかけた日本再建の時に当たり、国家指導者は、世界の大勢をとらえて、判断を誤らないようにしてもらいたい。
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参考資料

・拙稿「国防は自然権であり、堤防のようなもの
・拙稿「国防を考えるなら憲法改正は必須
・憲法改正のほそかわ私案
 安全保障は第4章

 

(2)日米安保の攻守同盟化


 憲法改正の次に必要なことに話しを進める。ひとつの事実として、今日の国際社会では、単独で自国を守ることは、極めて困難である。例えば、わが国にとって、中東からわが国まで石油を輸送する長大なシーレーンを単独で防衛することは、絶対不可能と言っても過言ではない。だから、自力による国防を整えつつ、他国と安全保障条約を結ぶことが必要なのである。

 また、別の事実として、戦後の国際社会におけるわが国の地位は、依然として変わっていない。国連憲章には、第2次世界大戦中に連合国の敵国であった国々に対し、地域的機関などが、安全保障理事会の許可がなくとも強制行動を取り得ること等を記載した条項がある。いわゆる敵国条項である。わが国は、現在も国連すなわち連合国にとっての旧敵国と扱われている。だから、わが国がこのような地位のままに孤立し、どの国とも安全保障条約を結ばずにいることは危険である。仮に日米のどちらかが安保条約を破棄し、国際社会で日本が孤立した場合、ロシアでも中国でも、安保理に諮ることなく、わが国を侵攻し得る。

 次に、とりわけ重要な事実として、東アジアでは、米ソ冷戦の終結後も、冷戦は終わっていないということがある。共産国のソ連は解体したが、共産中国は存続してきた。また、共産系国家である北朝鮮も存在している。
 東ドイツと西ドイツは統一したが、北朝鮮と韓国は、分断国家のままである。また、中国と台湾の間には、主権の正統性と国際社会での地位をめぐる問題が存続している。
 ベルリンの壁は撤去されたが、38度線は厳然と実在する。朝鮮戦争は、国際法的には終結していない。38度線をはさんで、北朝鮮軍と国連軍(=連合国軍)が対峙している。
 こうしたなかで、中国は、ソ連解体後、経済的・軍事的に急速に強大化してきている。日本人の拉致という国家的なテロを続けてきた北朝鮮は、中国に続いて核を保有している。そして、ソ連解体後のロシアは、依然として中国に勝る核大国であり、わが国は北方領土を占拠されたままである。ロシアとは今も正式な平和条約を結んでいない。大東亜戦争末期の日ソ戦争は、未だ終わっていないのである。

 このような東アジアにおいて、わが国が他国と安全保障条約を結ぶとすれば、アメリカを主対象とする以外に選択肢はない。日本はアメリカと、自由とデモクラシーという価値を共有している。その価値を協力して守ることは、日本の安全保障の強化となるだけでなく、アジアと世界の平和に寄与することになる。
 アメリカは、日本に対し、米軍を補完する範囲で自衛力の保持を認め、日米安保を締結している。憲法がわが国をアメリカの従属国的・被保護国的な地位におくものだから、安保条約も本質的に片務的な内容となっている。
 新憲法のもとでは、集団的自衛権に基づき、アメリカと対等の立場で、新たな攻守同盟として安全保障条約の再締結を行うべきと思う。攻守同盟とは、共同の兵力をもって第三国を攻撃し、またはその攻撃に対して防御する目的のために締結する軍事同盟条約である。

 重要なことは、条約というものは、必ず履行されるというものではないことである。相手国は自分の都合で、いつ条約を破るかわからない。大東戦争の末期、わが国は、中立条約を結んでいたソ連に、突如侵攻されるという痛恨の体験をしている。アメリカとの安保条約も、いついかなることがあっても永遠に維持されるというものではない。
 それゆえ、国防の基本は、あくまで自力で自分の国を守ることにある。その上で、他国との安全保障条約を結び、安全保障を強化するという基本姿勢を保つものでなければならない。

 この点を踏まえた上であえて言うのだが、憲法を改正したうえで、対等の立場で日米安保を攻守同盟化することは、日米の提携を強化することにより、アメリカが中国と対決する事態においても、日本を切り捨てにくくする効果をも、もたらすと思う。軍事的被保護国を切り捨てることと、攻守同盟の同盟国を見捨てることは、意味の重さが違うからである。
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(3)刑法の通牒利敵条項の回復


 憲法改正と日米安保の攻守同盟化に加えて、わが国が実行すべきことがある。それは、諜報活動への対策である。現代における戦争は、軍事力を行使して戦う実際の戦闘以上に、情報の盗取や世論の操作等による心理戦が重要になっている。
 中国は、この心理戦に極めて長けた国である。権謀術数は、シナ文明の特徴とさえなっている。さらに共産主義の「目的のためには手段を選ばず」という謀略の技術がこれに加わった。一方、わが国は、もともと正直・素直な国民性であるところに、大東亜戦争の敗戦後、通牒利敵行為の取り締まりが極度に弱くなり、「スパイ天国」とまで言われている。
 スパイ行為への無防備状態が、旧ソ連の左翼運動への支援や北朝鮮による日本人拉致を許してきた。私は、それ以上に重大な損害を受け続けているのは、中国の特務機関による対日工作だろうと想像している。政治家・外交官・自衛官等が、金銭や女色の罠にかかり、どれほど国益を損なっているかわからない。
 中国の日本併合という有史以来の危機に対処するには、通牒利敵行為への厳しい取締りが必要である。
 なお、私は『日本解放綱領』という文書について、数年前から各所に書いてきた。この文書をご存じない方があったら、この項目の最後に挙げた参考資料をご参照願いたい。

 通牒利敵行為への対処のために、まずなすべきことは、刑法第85条、86条の復活である。以下の記述は、中川八洋氏の『国が亡びる〜教育・家族・国家の自壊』(徳間書店)に多くを負う。
 刑法は、第82条の次が第87条となっている。この間の四つの条項は削除されている。第二編第三章「外患に関する罪」という章にあった条項である。まず章の全体を示してみよう。

―――――――――――――――――――――――――――――――
第三章 外患に関する罪
(外患誘致)
第八十一条  外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。
(外患援助)
第八十二条  日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。
第八十三条  削除
第八十四条  削除
第八十五条  削除
第八十六条  削除
(未遂罪)
第八十七条  第八十一条及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。
(予備及び陰謀)
第八十八条  第八十一条又は第八十二条の罪の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第八十九条  削除
―――――――――――――――――――――――――――――――

 便宜のために算用数字で書くが、この第81条・第82条をもって、外患罪という。未遂・予備・陰謀も罰する。こうした重要なことを定めた章の中で、第83〜86条が削除されている。「通謀利敵」と題された条項である。この四条は、昭和22年、GHQの命令によって削除となった。そのまま今日まで復活されていない。原文は以下のものである。

―――――――――――――――――――――――――――――――
(通謀利敵)
第八十三条 敵国ヲ利スル為、要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、汽車、電車、鉄道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス
(同前)
第八十四条 帝国ノ軍用ニ供セサル兵器、弾薬其他直接ニ戦闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
(同前)
第八十五条 敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス
(同前)
第八十六条 前五条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハニ年以上ノ有期懲役ニ処ス
―――――――――――――――――――――――――――――――

 敗戦によってGHQが占領していた間、日本は主権を喪失していた。占領期間は、国を守る国家組織は存在してはならず、軍事的武装解除を定める条約として、GHQは現行憲法第9条2項を、事実上命令した。また、刑法第83条、第84条は、軍事に関するものゆえ、削除させられた。同時に、外国人の国内での諜報活動や外国への日本国民の通牒から国を守る対抗諜報(防諜)等の行動も組織も禁止された。それが、第85条、第86条の削除の理由である。
 アメリカは、占領解除と同時に、日本が刑法第83〜86条をすぐ復活できるように、削除のままにした。ところが、独立回復後、左翼の学者らが、通牒利敵条項の復活を阻止してきた。そのうえ、保守の政治家も条項を復活する大切さを忘れたまま、現在に至っている。これらの条項の復活なしは、わが国は独立主権国家としての主権を完全に回復したとは言えない。

 私は、特に第85条、第86条の復活が重要と思う。復活の際は、現行刑法に合わせて、一部の用語を修正し、以下のようになるだろう。

―――――――――――――――――――――――――――――――
第八十五条 敵国のために間諜をなし、又は敵国の間諜を幇助した者は、死刑又は無期若くは五年以上の懲役に処する。
2 軍事上の機密を敵国に漏泄した者についても、前項と同様とする。
第八十六条 第八十五条に記載した以外の方法を以て敵国に軍事上の利益を与え、又は日本国の軍事上の利益を害した者は、二年以上の有期懲役に処する。
―――――――――――――――――――――――――――――――

 憲法を改正し、自ら国を守る体制を取り、また他国と対等の軍事同盟を締結するに当たっては、上記の条項の復活は、不可欠である。こうした刑法改正の上に、はじめてスパイ防止法の制定が意味を持つ。次項で、核の問題について私見を述べるが、とりわけ核の研究に関する通牒利敵行為は、極めて厳しく罰しないといけない。
 ここまで述べた方策を実行して初めて、核に関する検討ができると私は思う。言い換えれば、上記の方策も取れずに、核保有を論じるのは拙速だと考える。

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参考資料
・拙稿「『日本解放綱領』の残影〜中国の対日政治工作

 

(4)北朝鮮だけでなく、中国の核から論ずべき

 

 次に検討すべき課題は、核の問題である。本年(平成18年)10月9日、北朝鮮が核実験を行ったと発表した。これをきっかけに、わが国も核武装すべきだという意見が上がった。それに対し、核を巡る議論そのものを封じようとする動きが起こった。
 保守政党の中で、有力政治家が「核論議をすべきだ」いや「すべきでない」と言い合うのだから、珍妙な事態である。わが国は、自由主義の国であり、言論の自由は憲法で保障されている。議論そのものを自制せよというのは、自由の自己否定である。そういう政党が、「自由民主党」と名乗るのは、羊頭狗肉だろう。

 私は、人類史の巨視的な見方において、第2次世界大戦の戦後をもって、現代とする時代区分をとっている。理由は、核兵器の登場が時代を画したと考えるからである。現代の世界は、核が支配する世界である。この世界で、米ソという二大核大国の対峙が、40年以上続いた。わが国は、米ソ冷戦の狭間にあって、アメリカの「核の傘」のもとに、生存してきた。
 わが国の周辺国が核を開発・保有したのは、北朝鮮が初めてではない。共産中国は、北朝鮮よりはるか昔の昭和39年(1964)に核実験に成功した。昭和45年(1970)年4月には、人工衛星を打ち上げ、IRBM(中距離弾道ミサイル)が完成していることを世界に示した。これにより、中国は、日本とわが国にある米軍基地を攻撃することができるようになった。いわば中国は、日本人と在日米軍を人質に取ることによって、アメリカの核攻撃を断念させる「第二撃能力」を保有したわけである。
 わが国は、この昭和45年つまり1970年の時点で、中国の核攻撃の対象となった。その後、わが国は中国の核の標的になっているのである。

 現在、中国は26発の大陸間弾道弾を保有するだけでなく、わが国に向けて300発ともいわれる核ミサイルを配備している。ボタン一つで自動的に日本全国の主要都市を壊滅できる破壊力を保有している。
 北朝鮮は、平成8年(1996)の時点で、プルトニウム型原爆を5個保有していた。同国政府高官による情報である。10年も前に、北朝鮮は日本を攻撃できる核を開発しているのである。
 わが国の外務省は、中国や北朝鮮と対等の交渉ができなくなっている。この現実から目をそらし、対応を怠ってきた政治家が、今になって北朝鮮の核にばかり鋭敏に反応するのは、よほどどうかしている。
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(5)自衛の手段としての核抑止力の検討


 わが国は、世界で唯一、核攻撃を体験した被爆国である。そのわが国は、わが国に原爆を落としたアメリカと安全保障条約を結び、アメリカに国防の大部分を委ねてきた。現在、わが国は「非核三原則」を「国是」としている。これは佐藤栄作首相が、昭和43年(1968)に核を「持たず、作らず、持ち込ませず」という政策を唱え、衆議院で決議したものである。
 その後、あたかも憲法の規定に並ぶ大原則であるかのように政治家は言う。しかし、この三原則は法制化されたものではない。また国際条約でもない。単なる政策に過ぎない。

 佐藤が非核三原則を唱えた時、核保有国は、国連安保理の常任理事国5カ国だけだった。注目すべきは、この時点で既に中国は核を保有していたことである。しかも、非核三原則が出されたわずか2年後に、中国はわが国を射程に入れた核ミサイルを開発した。佐藤の政策は、東アジア情勢に逆行し、わが国の国防を危うくするものだった。

 佐藤が非核三原則を提唱する前、わが国は、そのような原則を立ててはいなかった。岸信介首相は、昭和35年3月7日参議院予算委員会にて、次のように答弁している。
 「憲法は、言うまでもなく、憲法で持ち得ることは自衛権を持っており、これを裏づけるため必要な最小限度の実力を持つということを申しております。(略)いやしくも核兵器という名がついたから全部いかないのだという憲法解釈は、これは憲法の解釈としては、われわれとらないところだということを申しておる」と。
 岸発言は、憲法解釈上、将来における核兵器の保有を留保したものと言える。現行憲法は自衛権を認めていると解釈するのであれば、最小限度の自主的な核抑止力は自衛力の一部と考えることができる。あとは核の開発・保有がわが国の国益という観点からプラスかマイナスかの判断であり、これは政策上の問題である。そして、科学兵器の発達の度合いや国際環境の変化におうじて、政策の見直しは必要である。

 核の時代において、この約60年の国際社会の歴史が示しているのは、核攻撃を抑止できるものは、核兵器しかないという現実である。また、現代の国際社会で発言力を持つのは、核兵器を保有している国だけである。自力で国を守るという国防の基本に立ち返るなら、自衛の手段としての核抑止力についての検討がされねばならないと思う。
 核兵器は、人類を自滅に招きかねない兵器である。核廃絶は、人類の悲願である。唯一の被爆国である日本は、世界的な核廃絶の先頭に立って行動すべきである。しかし、その前にわが国が、中国や北朝鮮の核で壊滅してしまっては、本(もと)も子もない。日本人の多数が核攻撃で死亡し、生存者の大半が放射線障害に苦しみ、再起不能なほどに生産力を喪失したならば、世界平和への貢献どころではない。
 日本を侵されない体制を整え、国際社会での発言力を高めつつ、長期的に核の削減を進めていくべきものと思う。
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(6)総合的な国家安全保障の研究を

 

 核の問題については、国連の敵国条項の存在、アメリカでは日本の核保有に反対論が多数で容認論は極少数という現実、NPT脱退の場合の各国の反応、日米原子力協定との関係等、複雑な問題が絡んでいる。だから、あらゆる角度から、徹底的な議論をすべきだと思う。核論議自体を封じようとするのは、東アジア事情と米中冷戦の時代から目をそらす、逃げの態度である。

 拙稿「人類史上最も危険な思想」に書いたが、中国の軍事指導者・朱成虎少将は、核先制攻撃と中国人核戦争生き残り戦略を唱えている。核の時代は、かつてないほど危険な思想を生み出したのである。当面の焦点は、台湾である。中国が台湾を軍事侵攻するとき、わが国は、中国から核の恫喝を受け、運命をかけた決断を迫られる状況となる。
 こうした事情・時代・状況に対して、核攻撃から国家と国民を守るため、わが国は何をなすべきか。

 第一に、私は、非核三原則の見直しをし、「持ち込ませず」という原則をはずすことが急務だと思う。またこれが現下で最も現実的な方法だと考える。アメリカの空母や原潜が核兵器を装備したまま、日本の基地を出入港していることは、公然の秘密である。まずこういう欺瞞的なことをやめることから、国民は意識を変える必要がある。
 現行憲法の前文と第9条2項といい、専守防衛の戦略思想といい、日本人は国防について自己欺瞞を続けている。人間は自己欺瞞を続けると、精神が荒廃し、ついには変調をきたす。核の問題についても、現実に向き合い、事実を認め、言葉と実際が一致するところから姿勢を正すべきである。

 ついでに言うと、現在、わが国が導入しているミサイル防衛システム(MDシステム)は、高価だが、実効は疑わしい。いろいろ問題点が指摘されている。高速で飛来するミサイルを、ミサイルで打ち落とすのは、鉄砲の弾に鉄砲の弾を撃ち当てるようなものである。また、ダミーを含む多数のミサイルを同時に発射されたら、打ち落とせずに着弾するものが必ず出る。それが核ミサイルであれば、一箇所数十万人の犠牲者が出るだろう。
 いま導入しているMDシステムが完成するのは平成22年(2010)だが、中国はその翌年にそれを上回る技術を完成させるという。だから、日本はそれ以上の新システムを、アメリカから買い続けなければならない。それがわかっていて、MDシステムに金をかけ、日本の防衛を託すことも、自己欺瞞だと私は思う。

 第二に、やむをえず核兵器を保有する場合は、ヨーロッパで採用されているニュークリアー・シェアリング方式を検討するとよいと思う。核共有方式である。志方俊之氏、中西輝政氏、原理(おさむ)氏らは、この方法を提案している。
 県立広島大学講師の原氏は、月刊『正論』平成18年12月号に「核兵器を保有しない日本が北朝鮮の核兵器に対し抑止力を持つ方法」という論文を載せた。氏によると、ニュークリアー・シェアリング方式(以後、NS)は、NPTで核兵器の保有を禁止されている国が、核抑止力を獲得する政策として採用されているものである。NATO加盟国のうち、ドイツ、イタリア、オランダ等の5カ国が採用している。国連憲章で旧敵国とされている独伊が含まれていることに注目したい。
 この方式では、平時は、非核保有国は核兵器を保有せず、アメリカが核兵器を完全に管理している。しかし戦時には、米軍は核兵器を同盟国に譲渡する。その後は、個々の同盟国が核兵器を保有して抑止力を持つことになる。
 例えば、アメリカが保有する核兵器をわが国内の米軍基地に配備し、核のボタンを日米で共有する。核兵器はわが国の所有物ではない。使用権を一部所有する。核のボタンが二つあり、その一つを日本が持つ。こうした共同管理の方式が考えられる。
 日本独自の核武装には、アメリカ人の多くが警戒心を持っているが、NS方式には理解を得られる可能性がある。

 第三に、最後の選択は、わが国が、自主的な核抑止力を持つことである。中川八洋氏、柿谷勲夫氏、兵頭二十八氏、日下公人氏、片岡鉄哉氏、伊藤貫氏らは、自主核武装論を説く。
 特に国際政治アナリストの伊藤氏は『中国の核が世界を制する』(PHP)で、具体的な政策を提案している。伊藤氏のいう「自主的核抑止力」は、小規模で安価な、必要最小限度の核抑止力である。先制核攻撃に使用できるICBMやSLBMのような長距離弾道核ミサイルはいらない。戦略爆撃機や大型空母も必要ない。小型駆逐艦と小型潜水艦をベースとする核弾頭付き巡航ミサイルを200〜300基配備する。巡航核ミサイルは、日本が核攻撃を受けた場合に、報復核攻撃を実施する目的だけに使用できる兵器である。伊藤氏は、これらの配備に要する予算は、毎年1兆円程度、GDPの1.2%程度と試算している。
 この提案は、私の知る限り、最も具体的な提案である。ただし、その実施には相当の研究を要すると思う。わが国が独自に核を保有する意思を表すことは、現状ではアメリカ国民の多数を警戒させ、また中国・ロシアの反発を招くだろう。
 国際社会から孤立する結果を生むのでは、国家安全保障の目的に反する。自国を守るための選択が、逆に自国を危地に招くことのないようにしなければならない。政治・経済・外交・軍事の専門家を結集して、総合的な国家安全保障の研究を至急立ち上げるべきだと思う。
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結びに〜日本精神の復興を


 最後に、私は核を持つこと自体が課題ではなく、日本人が日本精神を取り戻し、国民が団結することが最も重要だと思っている。いかに進んだ科学兵器を持とうとも、国民の精神が腐敗しているのでは、調和と繁栄の道を進むことは、できない。

 中国による併合という迫り来る危機に対処するためにも、改めて日本精神の復興を呼びかけたい。

日本精神は、本サイト全体のテーマである。ここで改めて述べることは控えたい。初めての方は、「日本の心」の各項目からご参照願いたい。

 

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