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212-B27   国際関係

                       

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■中国指導者の交代と薄煕来事件の深い闇

2012.5.16

 

<目次>

1.  新星・薄煕来の失脚

2. 事件が呈する複雑で奇怪な様相

3. 核心はクーデタ計画の未遂に

 

 

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1.新星・薄煕来の失脚

 

●中国指導部の交代

 

 中国共産党は今秋開く第18回党大会で、指導部の世代交代を行う。胡錦濤総書記兼国家主席、温家宝首相ら1940年代前半生まれを中心とした第4世代から、習近平国家副主席ら50年代生まれ中心の第5世代への交代である。

 次のトップが習近平氏となることは、既に決まっている。習近平氏は、天皇陛下特例会見ゴリ押し事件で、小沢一郎氏らを通じて、天皇陛下とのご会見を無理やり実現した人物である。その習氏がトップの座につく日が近づいている。

 中国共産党の党内には、江沢民前総書記らの上海閥・太子党と胡総書記らの共産主義青年団派という二大勢力がある。太子党は、共産党の高級幹部子弟グループである。習氏はその代表格で、故習仲勲副首相の子息。江氏とは緊密な関係を持つ。

 今秋の世代交代で、習氏が総書記と国家主席を兼務するのは、ほぼ確定と見られる。共産党の最高機関は、現状9人で構成される政治局常務委員会である。現在は、太子党と共青団派がポストを分け合っている。中国事情の専門家が関心を寄せるのは、今秋、胡錦濤氏が兼務する党中央軍事委員会主席職を習氏に譲って、完全に引退するかどうかである。習氏がこれも兼務すれば、習体制の確立は一気に進むだろう。それと同時に、党内の勢力バランスが大きく変わる可能性がある。

 

●薄煕来という政治家

 

 ここで、注目すべき事件が起こった。常務委員の候補として名前が挙がっていた薄煕来(はく・きらい)・重慶市党委書記の失脚である。これによって、共青団派は、従来以上に影響力を拡大し、党大会に向けて、人事や政策決定等の主導権を手に入れたという見方もある。

 私が薄煕来という人物の名前を記憶にとどめるようになったのは、シナ系日本人評論家・石平氏の一文による。平成21年5月21日産経新聞の「チャイナ・ウオッチ」で、石氏は、薄氏を「政治新星」「毛沢東好きな政治家」「毛沢東を礼拝してその看板を継ごうとしている」と書いた。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110120/chn11012018370052-n2.htm

 また、石氏は、昨23年2月3日の「チャイナ・ウオッチ」を「『毛沢東の狂気』が蘇る時」と題し、薄氏は「毛沢東好きの野心家として全国的に知られている」として、次のように書いた。

 「彼が旗手となって展開している『毛沢東に戻ろう』とする政治運動の背景にはケ小平以来の市場経済路線がもたらした貧富の格差の拡大などの社会的ゆがみに対する民衆の不満と反感があろう。それを利用して中国の政治・経済・外交路線をふたたび『毛沢東的なもの』に戻そうとする動きは実に憂慮すべきものだ。毛沢東時代と比べると軍事力が飛躍的に増大した今の中国が『世界人口の半分が死んでも構わない』という毛沢東流の狂気を取り戻そうとしたら、それこそ、日本を含めた周辺国にとっての『民族滅亡』の脅威となるのではないか」と。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110203/chn11020312410001-n2.htm

 私も、中国における毛沢東主義の復活とそれによる共産中国のファッショ化を恐れる者だが、薄煕来という政治家について詳しいことは知らぬまま、次世代の指導者格として名前が記憶に刻まれた。

 

●薄氏失脚の概要

 

 本年(24年)3月15日、その薄煕来氏が失脚したと報道された。わが国の新聞やテレビは薄煕来氏の失脚を大きく取り上げたが、事件報道後2週間ほど経った3月末の時点では、まだよく分からないことが多かった。その時点までの新聞記事で、私が内容に重みを感じたのは、中国現代史研究家の鳥居民氏と、先にも引いた石平氏の書いたものである。そこで、両氏の文章の要点を編集して次に記す。

 

 「この数年、彼ほど注目された人物はいなかった。日本でいうなら、大阪市長の橋下徹氏といった存在だった」(鳥居氏) 「重慶市在任中の4年あまり、薄氏は黒社会撲滅運動(打黒)や毛沢東時代の「革命歌謡曲」を歌うキャンペーン(唱紅)を展開する一方、貧富の格差の拡大や腐敗の蔓延(まんえん)などに対する民衆の不満を和らげるための諸政策を独自に講じてきた。その結果、民衆における「薄煕来人気」が高まり、彼はいつの間にか「民衆の声を代弁するカリスマ政治家」との名声を得ることに至った」(石氏)

 「この秋の党大会で、もしかして薄氏が党総書記になるのではないか、さもなければ、国家主席は総書記が兼任するのがしきたりとはいえ、その国家主席に薄氏が就任するのではないかなどと取り沙汰され」ていた(鳥居氏)

「同じ太子党、彼より4歳年下の習近平氏が、偶然の成り行きから次の党総書記になると決まってしまい、習氏に対する強い競争心が薄氏の胸中にはあった」(鳥居氏) 「野心家の薄氏は、民衆からの支持をテコにして党中央に圧力をかけ、次の党大会における自分の昇進をはかろうとしていたが、このような「下克上」的政治手法は結局、党中央指導部から強く警戒され、彼の失脚の種となった」(石氏)

 薄氏は、重慶のトップにあったとき、「鉄拳政策」を取ろうとした。「重慶の公安局を13年にわたり支配していた文強という人物を追い出し、遼寧省時代の部下の王立軍という警察官僚を重慶に呼び、公安局の副局長にした。揚子江有数の港町である重慶は役所と企業と暴力団が癒着していた。薄氏は、「黒」退治を大義名分にして思いのままに振る舞った。密告を奨励し、たちまちのうちに5000人を捕らえた。10年には、公安局の前のボスだった文強を死刑にした。公安、検察、法院が話し合っての荒っぽい仕打ちだった。そして、「黒」との繋(つな)がりを糾弾し、多くの私企業を市営に変えた。氏がやったことは、大衆からは喝采を浴びた」(鳥居氏)

 だが、こうした薄氏の活動は、共産党官僚から「恨みを買うことになって批判もされた」(鳥居氏) 中央政治局の常務委員で中央規律検査委員会書記の賀国強氏は昨年10月、「薄氏に向かい、王立軍副市長兼公安局長が遼寧省錦州市の公安局長だったときの職権乱用の事実を突き付け、王氏の処分を迫り、12月に2度目、この1月にも重ねて詰問したのだという」(鳥居氏)

 すると、薄氏の子分だった王立軍氏が公安局長のポストを外された直後、成都の米総領事館に逃げ込んだ。これが今回の事件を、国際的な関心事とした。

 こうしたなか、「薄氏が失脚した直後から、中国国内では薄氏を賛美したり英雄視したりする声が続々と上がってきている」(石氏) 薄氏は重慶で賃貸の公共住宅の建設や戸籍制度の改革を進めていた。「市内に住んでいる全ての出稼ぎ農民に都市戸籍を与える計画である。医療を受けることができ、子供は公立学校に通うことができ、公共住宅に入居できるようになる」という中国全国から注目される政策だった。(鳥居氏)

 薄氏の賛美・英雄視について、「背後にあるのはもちろん、貧富の格差の拡大や腐敗の蔓延に対する民衆の不満の高まりである」(石氏) 「薄氏を葬り去るのは簡単だが、今まで彼の存在によって代弁されてきた民衆の不満をいかにして吸収していくのか。それこそが今後の共産党指導部が直面する最大の問題となる」(石氏)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120326/chn12032603100002-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120329/chn12032908190000-n1.htm

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2.事件が呈する複雑で奇怪な様相

●毛沢東崇拝と共産党指導部の左派への警戒

 

 薄煕来事件は、報道されるにつて、複雑で奇怪な様相を呈している。そのうち、私が最も関心があるのは、毛沢東崇拝と共産党指導部の左派への警戒、薄氏・王氏らの臓器狩りへの関与、中国共産党指導部の機密情報の米国への漏えいである。

 薄氏が重慶で行った施策は、胡錦濤主席側から猛反発を受けた。改革開放派の温家宝首相も薄氏を公開の場で「文革の残滓が居る」などとたびたび批判していた。温首相は3月14日、全国人民代表大会後の記者会見で、「改革が成功しなければ、これまでの成果を失い、文化大革命のような歴史の悲劇を繰り返しかねない」と述べた。文革への言及は、薄氏が進めた左派的な運動・政策が、文革を想起させるものだったからだろう。中国における現在の改革は、毛沢東による文化大革命の否定の上に進められてきたものである。文革当時なら「走資派」といわれたような資本主義的な改革が社会的矛盾を広げ、各地で暴動が頻発している。共産党指導部は、そうした社会動向が毛沢東主義の復活に発展することを警戒しているのだろう。

 中国共産党指導部は薄氏の解任後、世論操作を目的に、新聞やネットへの管理を強化するよう内部通知を出した。ネットでは、薄氏が展開した毛沢東賛美の革命歌斉唱運動を支持する左派サイト、「烏有之郷(ユートピア)」「毛沢東旗幟網」「紅色中国」等が一斉にアクセス不能の状態となった。これらのサイトとは、改革開放が貧富の差を生んだとして批判し、薄氏の取り組みを高く評価して、薄首相待望論や「重慶の経験を全国に広げよう」といった薄氏支持の文章を発表してきたサイトとされる。

 4月6日、「烏有之郷(ユートピア)」は、当局から「憲法に違反し、悪意を持って国の指導者を攻撃し、(秋の)第18回党大会に関するでたらめな議論を掲載した」との批判を受け、1カ月間サイトを閉鎖するよう命じられたと、サイト上で明らかにした。他にも複数の左派サイトが見られなくなっていると報じられる。

 共産中国では、民主化や人権問題等に関する自由民主主義的な意見は、厳しく規制される。その一方、共産党一党独裁を支持する左派の言論が規制されるのは珍しいと見られる。民衆の間には、共産党官僚の腐敗や貧富格差の拡大などに対する不満が鬱積している。その不満は、毛沢東時代を再評価したり、毛沢東を崇拝したりする心情に転じ得る。特に貧困層には、薄氏は人気があった。左派サイトの規制は、薄氏支持の意見がネットを通じて影響力を広げることに対する、政権の警戒心の強さを示している。左派が活発になることを、現政権が強く警戒するのは、左派が掲げるものは、もともと中国共産党が取ってきた思想・方針ゆえ、左派の活動が拡大するのは、政権の正当性を危うくするからでもある。

 それとともに、共産党指導部が新聞やネットへの規制を強めているのは、次に書く臓器狩りの実態が中国国内に拡散するのを防ぐためではないかと思われる。

 

●王立軍が米国に機密資料を渡した

 

 薄煕来氏が重慶でやったことは、一見すると、賃貸公共住宅の建設や戸籍制度の改革など社会的矛盾に積極的に取り組むクリーンな政治と思える。ところが、中国の政治社会は、そう単純ではない。そのことを表すのが、薄氏・王氏が臓器狩り等に関与していたことである。

 薄氏失脚の直接の原因となったのは、腹心の王立軍氏が米国総領事館に逃げ込んだことである。重慶で革命歌を歌う「唱紅」と暴力団撲滅運動の「打黒」を行うなかで、薄氏は、中共指導部からわが身を守るために、部下の王氏を切り捨てる動きに出た。追い詰められた王氏は、真夜中に女装姿で薄氏の監視網をかいくぐり、成都にある米総領事館に逃げ込んだ。中国共産党が政権を取った後、副部長(次官)級の高官が国内で米国総領事館に亡命したのは、前例のない出来事だった。米下院議会は、王氏に関する政府の対応を調査している。

 シナ系の反政府メディア「大紀元」は、薄煕来氏の失脚と王立軍氏の行動について詳しく伝えている。

http://www.epochtimes.jp/jp/2012/03/html/d66260.html

http://www.epochtimes.jp/jp/2012/04/html/d83973.html

http://www.epochtimes.jp/jp/2012/04/html/d28088.html

http://www.epochtimes.jp/jp/2012/04/html/d87441.html

 大紀元の記事によると、王氏は米国総領事館に一日滞在し、中共上層部に関連する大量の機密資料を米国側に手渡した。また、その前にあらかじめ関連の証拠資料を海外に送った。王氏は、薄氏の汚職問題及び暴力団と結託した問題を暴露した。それから中国指導部内の権力闘争を明らかにした。米国側が王氏の亡命を拒否したためか、王氏は中国当局に拘束された。

 薄氏に関する問題について、王氏は手紙に次のように書いているという。

 「私はこれ以上見たくない。中国共産党最大の偽君主・薄熙来が今後も演技を続ける姿を。もしこのような奸臣が政権を握れば、中国の未来に最大の不幸と民族の災難となるだろう」「薄熙来は無情きわまる人間だ。文化大革命で父親を闘争の対象にし、兄弟姉妹や前妻にした仕打ちを見れば分かるだろう。私は彼に全力で仕えたが、犬以下の扱いをされた。やりたくもない汚い仕事をさせられたのに見捨てられ、私の運転手など周囲の人間を逮捕して脅してきた」「私は命をもって薄熙来の件を暴露し、中国の体制のため、中華民族に災いとなる野心家を取り除くために全てを投げ出す覚悟だ」と記している。

 4月11日、人民日報等の中国各紙は薄氏が党中央政治局員・中央委員の職務を停止したと報じるととともに、薄氏の妻・谷開来氏等が英国人男性殺害の容疑で送致されたと伝えた。昨年11月、重慶市内のホテルで英国人実業家ニール・ヘイウッド氏が急死した。検視解剖もなく火葬され、不審な点が多い。重慶市の公安責任者だった王立軍氏は薄氏に「毒殺」との見解を示した、という情報がある。産経の川越一記者は「王氏の解任は、薄氏が妻の関与した犯罪の表面化を防ぐために取った措置だった可能性がある」と書いている。王氏が米国総領事館に持ち込んだ資料に、これに関する情報があり、中国当局が薄氏を再捜査することになったらしい。党関係者に配布された機密文書に、薄氏の処分理由は「部下や家族の監督を怠り、党規約に違反したこと」と書かれているという。

 薄氏に英国人殺害の嫌疑はかかっていないようだが、中国共産党であれば、氏を殺人の共犯者ないし指示者に仕立てて、薄氏を徹底的に潰すことも簡単にできるだろう。事件を薄氏及びその家族・部下の非違行為によるものと限定すれば、この事件に関わる別の重大問題の表面化を防ぐことができる。その重大問題とは、臓器狩りへの関与である。

 

●薄氏らは臓器狩りの黒幕

 

 中国指導部内の権力闘争について、王氏が米側に渡した内部資料には、江沢民派の重鎮である薄煕来氏と中共中央政法委のトップ周永康氏が連携して、習近平氏を転覆させようとしている証拠が含まれている。また薄氏が監禁中の生きた法輪功学習者の臓器摘出を指示する録音テープや内部極秘資料、周氏が率いる中央政法委が法輪功や民主活動家の弾圧を命じる内部通達などが含まれているという。

 大紀元は、「王・薄が、『中共が生きている人を殺し、臓器を摘出し、暴利を取り、臓器を移植した』という驚きの『臓器狩り』の黒幕であるであることも暴露された」と書いている。臓器狩りとは、生きている人間から臓器を切り出すという残酷このうえない行為である。法輪功学習者らがその対象とされている。

 臓器狩りの目的は、臓器の売買による利益の獲得である。大紀元は、王氏は直接、臓器狩りに関与していたとし、「公表された王立軍の履歴の中に、臓器移植の研究歴が含まれている。これは、彼の学歴や公安局長の職業にまったく関係ない経歴である。情報によると、遼寧省瀋陽市労動教養所で行った臓器狩りは2001年から始まり、2002年にピークに達したという。当時の遼寧省長は薄煕来だった。薄煕来と王立軍は、遼寧省に在任していた時から、すでに法輪功学習者に対して残酷な迫害を行っていた」とも書いている。

 漏えいした米国外交公文書によると、中共の第17回全代会の前、当時商務部長だった薄氏は副総理の昇進名簿に名前が上がっていた。しかし、温首相は薄氏が世界各国の法廷で法輪功への弾圧疑惑により告訴されていることから、薄氏の副総理任命に強く反対した。また、前副首相の呉儀氏も、自らの退任を交換条件として、薄氏を後任に登用してはならないと断固として主張した。その結果、薄氏は重慶市党書記に左遷されたのだという。薄氏の左遷は、共産党指導部の重要機密を隠すために行われたのだろう。臓器狩りの大元は、江沢民氏につながっているという見方もある。

 王氏によって、共産中国の最高指導部に係る大量の機密情報が米国政府の手に渡った。今後、米国政府はこれらの資料を利用して、中共の動向を決める重要な役割を果たすことになるだろう、という見方がある。薄煕来氏・王立軍氏というわが国では、ほとんどの人は名前さえ知らなかった中国の地方指導者に係る事件が、共産中国の指導部の極めて重大な問題を国際社会に暴露し、共産党指導体制を揺るがすような大事件の発端になる可能性がある。その点では、文化大革命期、毛沢東の後継者として憲法に氏名が記載されるところまで上り詰めた林彪の亡命未遂墜落死事件より、波紋は大きいかもしれない。

 薄氏は、重慶で貧困層のために、賃貸公共住宅の建設、出稼ぎ農民への都市戸籍付与等の人道的な政策を行っていながら、他方ではそれ以前から臓器狩りという非人道的な行為を行っていた。また、薄氏の掲げた唱紅打黒は、単に革命の理想や社会正義の実現のためではなく、その実績によって中共指導部に復帰し、権力を握りたいがための私利私欲の行動だったことを暴露している。

 実は指導者が革命の理想や社会正義の実現ではなく、権力を得たいがための私利私欲で行動するという事例は、薄氏が称賛する毛沢東自身がそうだった。毛沢東は、農民や貧困層の解放を指導する革命の英雄のように見えて、実は権力欲の権化であり、自分の権力を維持・確保するために権力闘争を起こし、中国を繰り返し混乱に陥れた。その最大の出来事が、文化大革命だった。質素な人民服を着た最高指導者は、贅沢と官能におぼれた独裁者だった。私は、毛沢東の実像を明らかにし、その虚像を否定しない限り、中国に真の発展はないと思っている。

 毛沢東崇拝と共産党指導部の左派への警戒、薄氏の妻の英国人男性殺人容疑、薄氏・王氏らの臓器狩りへの関与、中国共産党指導部の機密情報の米国への漏えい―――薄煕来事件は、中国の政治体制や国際的評価に大きな影響をもたらすだろう。事件は複雑で奇怪な様相を呈しているが、さらに注目されることが起こっていた。ページの頭へ

 

3.核心はクーデタ計画の未遂に

 

●クーデタが計画されていた

 

 薄煕来氏が失脚した事件において、薄氏によるクーデタ計画が未遂に終わったと報じられている。

 国際教養大学教授のウィリー・ラム氏は、雑誌「SAPIO」平成24年5月9日・16日号の「北京改題」に、薄煕来氏は軍事クーデタを計画し、第2の文化大革命寸前だったと書いている。

 ラム氏によると、薄氏は2月、腹心の王立軍氏が北京に身柄を拘束されたことを知り、重慶に駐留している人民解放軍部隊を動かしてクーデタを計画していた。計画は事前に漏れ、実行には至らなかった。だが、「一歩間違えば、文化大革命で多発した軍や民兵組織などによる武闘に発展した可能性もあり、極めて緊迫した状況だった」という。

 王氏が成都市の米国総領事館に駆け込んだ際、パトカー、軍の装甲車両等数十台が総領事館を取り囲んだ。薄氏は5000丁の自動小銃と50万発の弾丸を用意していた。しかし、2月7日北京から国家安全省や中央紀律検査委員会、国防省将校が派遣され、王氏の身柄は確保され、北京に移送された。すると、薄氏は翌8日、重慶駐留部隊を率いて、軍用機で雲南省昆明市に移動。だが、その動きは、北京政府に察知され、胡錦濤主席の命令で多数の軍が昆明に派遣された。その情報が入ると、多勢に無勢の薄氏は重慶に戻るしかなかった。

 実は昨年11月、薄氏は重慶で軍事演習を行ったことから、薄氏の軍事クーデタ計画は事前に漏れていた。梁光烈国防相がクーデタ実行の恐れがあることや軍の装備などを、党中央に報告していたという。

 ラム氏は「薄氏はもはや袋のネズミ状態だったわけで、3月初旬、全国人民代表大会に出席するため、何食わぬ顔で北京入りした薄氏が身柄を拘束されたのは当然だった」と書いている。

 これだけなら、薄氏は自分が権力を握るため、あるいは自分の地位を守るため、人民解放軍の一部を勝手に動かして自滅したという話になるだろう。だが、薄氏の軍事行動と同じ時期に北京でクーデタ騒ぎが起きたという情報があり、これらは呼応して行われた可能性がある。事件の原因の根は深い。

 ラム氏は書いていないが、事件には周永康氏が関係している。周氏については先に触れたが、薄氏にとって共産党内の立場が格上の盟友である。

 

●江沢民派の大物・周永康が関与

 

 周永康氏は、中国共産党の中央政治局常務委員、党内序列は第9位。司法・公安を管轄する政法委員会の書記で、わが国で言えば、法務大臣と国家公安委員長を兼務している国務大臣というところか。薄氏より地位が上で、7歳年長。江沢民氏派の重鎮であり、江沢民―周永康―薄煕来―王立軍というラインが成り立つ。

 「大紀元」平成24年4月13日号が、周氏と薄氏の関係について伝えている。

http://www.epochtimes.jp/jp/2012/04/html/d61505.html

 それによると、共産党員の腐敗を監視する中央紀律検査委員会が作成した極秘文書の中に、周氏は薄氏と共謀し習近平氏の主席就任阻止を計画し、「必要な場合、クーデタも辞さない」との記述があったという。また中国国外の中国語情報サイト「博訊ネット」は、米国総領事館に駆け込んだ王立軍氏は、米国側に薄氏と周氏が習下ろしを計画する映像・録音の証拠データなどを提出したと報じた。周氏は「習近平氏は腰が弱すぎる。党の最高指導者としては相応しくない。薄煕来氏は我が党の未来の真のリーダーだ」と発言したという。周氏と薄氏は5回にわたって計画について話し合った。その内容は、周氏の後継者として薄氏を中央政法委書記に就任させること、習氏が就任する2年以内に習下ろしを実行すること、などであるという。必要な場合は武力の行使も辞さないとし、そのため、薄氏は200人以上の記者、学者を買収して囲い込んだなどともいう。王氏が米国側に提出した資料は、周氏に関するものが最も多かったとも伝えられる。

 本年(24年)3月初め、北京市で突然新しい規定が制定された。突発事態が発生した時、武装警察部隊は「行動と同時に報告・許可申請が可能」という内容だった。北京武装警察は本来、軍部に直属しており、中央軍事委員会の許可なしで行動できない。この規定は周氏がクーデタを起こす用意の一環だったという見方があるという。

 周永康氏・薄煕来氏によるクーデタ計画は、前回ウィリー・ラム氏の記事をもとに書いたような形で、未遂に終わった。発端となった王立軍氏が米総領事館に駆け込んだ事件で、四川警察が米総領事館を包囲した。このことに、胡錦濤国家主席は相当な不満を抱いているという。四川警察を動員する権利は政法委員会の書記・周永康氏にあり、米国との外交事項も絡むにもかかわらず、周氏が政治局の許可なしで勝手に行動したからだという。

 今後、周氏は追い詰められるだろう。周氏の後ろ盾・江沢民氏は重病であり、植物人間状態にあるといわれる。また周氏の盟友である薄氏は完全失脚し、これから厳しい処分を受ける。後ろ盾と盟友を失った周氏は今秋行われる第18回中国共産党全国代表大会の前に失脚する可能性が高いと見られている。

 ところで、周氏・薄氏のクーデタ未遂事件は、中国共産党指導層による臓器狩りという一大スキャンダルに繋がっている可能性がある。

 ある中国問題の専門家は、周氏と薄氏の関係について、次のように述べていると大紀元は伝える。「江沢民派は法輪功弾圧の問題において、胡・温両氏の支持を得られていない。胡・温寄りの次期指導部中心メンバーも江沢民派に同調しないはず。そのことは、江沢民派の重鎮である周氏は誰よりも分かっている。そのため、周氏は薄氏を自分の後継者として次期中央政法委のトップの座に就かせることによって、弾圧の責任追及から逃れたい一心だ。これは野心家で最高指導部入りを狙う薄氏の権力欲と一致した」と。

 ここにいう「法輪功弾圧の問題」とは、私の見るところ、臓器狩りの問題である。臓器狩りとは、生きている人間から臓器を切り出すという残酷このうえない行為である。法輪功学習者らがその対象とされている。臓器狩りの目的は、臓器の売買による利益の獲得である。薄氏は「臓器狩りの黒幕」といわれ、臓器狩りの大元は、江沢民氏につながっているという見方もある。その中間に、周氏がいると考えられる。王氏が米側に渡した内部資料には、薄氏が監禁中の生きた法輪功学習者の臓器摘出を指示する録音テープや内部極秘資料、周氏が率いる中央政法委が法輪功や民主活動家の弾圧を命じる内部通達などが含まれていると伝えられる。

 中国の薄煕来事件は根が非常に深く、またいくつもの問題につながっている。事件の名称もより適当な名称に変わるだろう。中国共産党指導部の重要情報を入手した米国政府は、この事件を対中外交に利用するだろう。今後、事件及び米中関係がどういう展開をするか見守りたい。ページの頭へ

 

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・拙稿「中国の『大逆流』と民主化のゆくえ

 

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