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  国際関係

           

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ユーロとEUの危機

2012.2.13.

 

<目次>

1.エモットの予測

2.サルコジの再選危し

3.ドイツ次第の状況

4.浜矩子氏の提案

5.中国経済急減速の影響も

6.EUの混迷に備えよう

7.国家再建を急げ

 

 

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1.エモットの予測

 

ヨーロッパでは戦後統合が進められ、1999年(平成11年)には単一通貨ユーロが導入された。
 ユーロが作られる前、ヨーロッパの各国は通貨の発行権を持ち、各国の中央銀行が自国の通貨の発行量や金利の調整を行っていた。ところが、ユーロを採用した国では、実質的に、自国の意思だけでは通貨政策・金利政策を決定できなくなった。
 ユーロ採用国は、財政政策を自国の判断で行う権限は持っている。国債発行、政府支出拡大等を行うことができる。ただし、毎年の財政赤字をGDPの3%以下に抑え、公的財務残高をGDPの60%以下に抑えなければならない。その枠内で財政政策を行うとしても、財政政策は本来、金融政策と連動しなければならない。ところが、各国は金融政策については権限を持たない。ドイツ・フランクフルトに本拠を置くECB(欧州中央銀行)に委ねている。フランクフルトは、ロスチャイルド財閥発祥の地である。
 こうしたヨーロッパ諸国を襲ったのが、2008年(平成20年)の世界経済危機である。リーマン・ショックは、発信源のアメリカ以上にヨーロッパ諸国に大きな打撃を与えた。アメリカのサブプライムローンやCDS等を多量に買って保有する銀行・金融機関が多かったからである。ユーロ採用国は世界経済危機による深刻な状態から抜け出ようとしているが、自国の判断で金融政策を行えないため、有効な景気対策を打てない。これがユーロ圏の構造的な問題である。

リーマン・ショックで打撃を受けたヨーロッパでは、ギリシャの財政悪化がさらに事態を深刻化した。平成24年(2012)1月29日現在、アイルランドやポルトガル、スペインなど財政難に苦しむユーロ導入国の国債価格が下落している。EU第3の経済規模を持つイタリアが財政危機に陥り、昨23年11月IMFの監視下に入った。今年(24年)1月13日米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、ドイツとともにEUの二本柱をなすフランスの国債の格下げを発表した。一方のドイツは、自国の負担が増す安全網拡充やユーロ共同債の導入を拒み続けている。欧州債務危機が深刻化し、出口の見えないなか、ユーロの信用不安が世界的に強まっている。

先にユーロ圏の構造的な問題を書いたが、なによりEU最大の工業力と経済力を持つドイツが、ジレンマに陥っている。今日のドイツ経済は、中国に似た典型的な外需依存型経済である。そのため、経済危機による世界的な不況、需要の収縮によって、ドイツは深刻な打撃を受けた。だが、ドイツは自国の通貨政策・金利政策で対処することができない。EU・ユーロ圏の国々と運命をともにするしかない。これは独自の通貨をやめたことによる大きな弊害である。そしてドイツの工業力・経済力が低下するならば、EUも全体として失速することを免れない

 これから2月にはイタリア、3月にはギリシャ、4月にはスペインで国債の大量償還があり、欧州債務問題は一つのヤマ場を迎える。ユーロの信用不安が深刻化しているヨーロッパが、これを乗り切れるかどうか。リーマン・ショック以上の世界的な経済危機が発生した場合、わが国にもその影響は必至である。

 EUとユーロについてさまざまな専門家が予測を述べているが、わが国でも著名なイギリスのエコノミスト、ビル・エモット氏は、産経新聞 平成24年1月21日号のインタビューで、「ギリシャは今後6カ月以内にデフォルト(債務不履行)に追い込まれ、ユーロ圏を離脱しなければならなくなる。他の重債務国に危機が広がるのを防ぐため、同時にドイツがユーロ共同債導入に応じるだろう」と予測する。フランスの大統領選挙に言及し、「問題は4〜5月の仏大統領選で再選を目指すサルコジ大統領への影響だ。危機を抱えたまま選挙を迎えるのか、その前に抜本的な対策をとるのか。大統領の思惑を考えると3月に起きてもおかしくない」と語っていることが注目される。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120121/erp12012119460004-n1.htm

 

2.サルコジの再選危し

 

 本年(24年)4月22日にフランスの大統領選挙がある。フランスはドイツと並ぶEUの中核国家であり、ヨーロッパの経済危機の中で積極的にリーダーシップを発揮している。その大統領が、ニコラ・サルコジである。ユーロの信用不安が深刻化するなか、大統領選でサルコジは苦戦の模様であり、再選がなるかどうか注目される。

 サルコジはユダヤ人を母に持つハンガリー移民2世である。平成19年(2007)にフランス大統領になった。移民の子でユダヤ系の大統領の誕生は、多民族化するヨーロッパを象徴する出来事だった。

 サルコジは新保守主義者、新自由主義者で、自由競争を重視する。伝統的な保守のド・ゴール主義と違い、親米的でブッシュ子政権の政策とは親和性が高かった。その一方、移民政策では自身が移民2世でありながら、フランスのナショナリズムを堅持している。

 もともと単一通貨ユーロは、各国が通貨発行権を放棄し、独自の金融政策をできなくなるところに無理がある。ここまでユーロを維持してきたのは、フランスとドイツの協調による。また、サルコジの手腕によるところが少なくないだろう。

 「ニューズウイーク」日本語版2010年5月14日号によると、スペインの全国紙パイスが、サルコジの発言を聞いたというスペインのホセ・ルイス・サパテロ首相の話を匿名の情報源から聞いたとして引用し、それをさらに英ガーディアン紙が引用したという。

 スペインのパイス紙は、ギリシャに対する1100億ユーロの支援を決定した昨年5月7日のEU首脳会議で、フランスのサルコジ大統領が驚くべき脅しに訴えたと伝えた。同月12日にサパテロが、自ら率いる社会労働党幹部の集まりで脅しの詳細を明かしたという。

 パイスの情報源によれば、サルコジは「すべての国がギリシャ支援のために譲歩」することを要求。協力が得られなければ「ユーロ圏の一員であることを考え直す」と言ったという。「サルコジは拳でテーブルを叩き、ユーロを離脱すると脅した」と、サパテロとの会合に出席したある社会労働党幹部は言う。「ドイツのアンゲラ・メルケル首相はそれで折れざるを得なくなり、ギリシャ支援の合意ができた」と

 サパテロとの会合に出席した別の情報源はパイス紙に、「フランスとイタリアとスペインはドイツに対して共同戦線を張った。そしてサルコジは、(欧州統合に力を合わせてきた)仏独枢軸の解消も辞さないと迫った」と言う。さらに別の会合出席者は、サルコジはこうも言ったという。「この大事なときに連帯責任を負えない欧州なら、ユーロを維持する意味はない」と。

 CNNによると、サルコジは昨23年(2011)5月27日、地元テレビのインタビューで、平成13年(2001)にギリシャのユーロ圏加入を認めたのは「過ち」だったと発言。当時、ギリシャが示したのは実態にそぐわない数字であり、同国経済はユーロ圏加入の準備が整っていなかったというのがその理由だ。「われわれは今、そのつけを払わされている」とサルコジ大統領は述べた。またブルームバーグによると、昨年12月31日サルコジは、ラジオ・テレビ演説で、「欧州共通通貨ユーロが終われば、欧州の終わりを示唆する」と述べたという。

 サルコジは、大きな葛藤を抱えながら、ユーロを守ろうとしている。だが、ギリシャの財政危機に続くイタリア、スペイン等の財政危機は、ユーロの信用不安を増大している。ユーロの下落は、サルコジの支持率の低下を招いている。本年(24年)に入って、格付け会社S&Pがフランス国債の格付けを最上級のトリプルAから下げた。それによって、サルコジの再選は一層厳しいものとなりつつある。

 大統領選挙の世論調査では、サルコジは、社会党のフランソワ・オランドにリードを許している。オランドは昨年逮捕された社会党の有力候補ストロスカーンに代わっての出馬だが、支持率を伸ばしている。最近の仏調査機関の調査結果では、オランド30%、サルコジは前回から2.5ポイント減の23.5%と、差が拡大した。一方、ユーロ離脱、フラン復活、保護主義政策、移民制限等を唱える国民戦線の女性党首娘のマリーヌ・ル・ペンが、17%の支持を集めたという。

 仮にオランドが勝った場合、社会党はEU創設の礎を築き「欧州統合の父」と呼ばれるミッテラン元大統領以来、欧州統合を進めてきた政党だから、統合方針に変わりはない。だが、サルコジの新自由主義的な政策を否定して社会民主主義的な政策を推進するから、ヨーロッパにおけるフランスの外交は変化するだろう。それがドイツとの関係や各国の財務危機への対応、ユーロの信用維持、さらにはEUの結束にどのように波及するか。フランス大統領選の行方は、ヨーロッパはもちろん、日本・世界に影響を与えるものとなるだろう。

 

3.ドイツ次第の状況

 

 平成24年(2012)1月31日現在、ユーロ圏の諸国は欧州債務危機を解決しようと、協議を重ねている。参加国に財政均衡を義務付ける財政協定、重債務国を支援する欧州金融安定化基金(EFSF)の拡充、創設が予定されている欧州安定メカニズム(ESM)の支援能力拡大といった安全網拡充、ユーロ圏全体で共同債を発行して資金を調達し、財政健全国が財政悪化国を支える「ユーロ債」構想等が方策として議論されている。

 これらのうち、財政協定は3月のEU首脳会議で署名し、平成25年(2013)の発効を目指している。内容は、協定違反国に対して最大でGDPの0.1%の制裁金を科す、毎年度の構造的財政赤字をGDP比0.5%未満に抑えることを憲法などに明記する、法整備を怠るとEU司法裁判所の判断に基づき制裁金を科すなどの案が伝えられる。

 協定案は英国を除くEU加盟26か国が概ね合意しており、実現するだろう。だが、資金の提供や共同債の発行のように、自国が他国を助けるために負担を増やすことは、簡単に引き受けられる話ではない。助けると言っても、フランスは国債を格下げされ、イタリアはIMF監視下、スペインは失業率20%、特に若者は40%とEUで最悪。多少優良な国は経済規模が小さく、大きな手助けにはならない。危機対応を支えられる唯一の国は、事実上ドイツだけである。

 そのドイツは、メルケル首相が財政規律の強化と金融取引課税の導入を主張し、自らの負担が増す安全網拡充や共同債の導入は拒み続けている。ドイツの世論も首相を支持している。ドイツの国民は、ギリシャなど放漫財政の国をなぜ自分たちが助けねばならないのか、と否定的な意見が多い。メルケル首相に、ドイツ国民を他国の債務危機を救うために自己犠牲的な献身を訴え、説得できるだけの主張があるようには見えない。またもしメルケル首相が積極支援を打ち出したら、支持率は低下し、政権は不安定になるだろう。

 EU諸国は、統一ヨーロッパという理想にとらわれ、また市場の機能への期待を膨らませすぎて、資本の論理と国家の論理の違い、市場経済と国民経済の違いを軽く考えてしまったのだろう。私は、統一ヨーロッパの実現には懐疑的で拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」にそのことを書いたが、ヨーロッパ人が統合を試みるなら、範囲をヨーロッパ先進国クラブに止めて時間をかけて統一機構を確立し、その後に参加国を厳選して増やした方が、よかっただろう。また経済については、単一通貨の創設を急がず、各国経済の統合を深く進めてから、通貨統合を進めた方がよかっただろう。ドイツ・フランスとギリシャ・ポルトガルでは、経済格差が大きく、一つの通貨で結びつけるのは、土台無理がある。ロスチャイルド家やビルダーバーグ・クラブに参加する欧州の所有者集団・経営者集団に方針があるか分からないが、国家間の位相で見る限り、欧州債務危機が多国的に進行するなか、ドイツがどこまで耐え堪え得るか、ドイツ次第の状況と思われる。

 

4.浜矩子氏の提案

 

 欧州経済事情に詳しいエコノミスト、浜矩子(のりこ)同志社大学大学院教授は、昨年23年暮れに出した著書『EUメルトダウン』(朝日新聞出版社)で、「ユーロ圏は、今、間違いなく発足以来の危機の場面を迎えている」「このままで行けば、ユーロ圏は間違いなく消滅する」と述べている。

 浜氏は、『文芸春秋』平成21年(2009)10月号に「1ドル50円時代を覚悟せよ」と題する論文を載せた。副島隆彦氏は、それ以前から「1ドル=60円以下」の時代が来ると予測していたが、それより厳しい予測である。浜氏は現在の円高傾向はドル暴落の前触れに過ぎないとする。浜氏によると、現在の円高は急速なドル安により起きている。戦後の米国経済は海外からの膨大な借金で貿易赤字の問題を覆い隠し、借金をテコに国内消費を支えるという「粉飾経済」に似た状態を続けてきた。その化けの皮が剥げはじめた証が、ドル独歩安だ。ドルの価値は米国経済の実力に見合うレベルにやがて下落する。適正な水準は「1ドル=50円」がいいところだろう、と浜氏は見る。

 そして、昨年10月の時点で、浜氏は「ユーロ相場がきりもみ状態だ。ユーロ安はどこまで進むか」「1ドル=50円なら、その時、1ユーロ=70円。概ねこんな感じが妥当なところかなと思う」と書いた。「ただし、これはユーロがゼロ円になってしまわない場合の話だ。現下の混迷の果てにユーロ消滅の時が来るようであれば、その時の通貨的風景は、また一味違ったものになって来る」とも述べ、ユーロ消滅の可能性まで示唆した。

 先に引いた近著『EUメルトダウン』は、「このままで行けば、ユーロ圏は間違いなく消滅する」と予測している。本書で浜氏は、「経済格差がある中での通貨統合には、いかにもやっぱり無理がある。当初から分かり切っていたこの問題が、つわものどもの熱き夢、無謀な夢、悲しき夢が一巡したところで、改めて統合欧州の眼前につきつけられている」と言う。

 ヨーロッパでは、1980年代から経済統合先行で行くか、通貨統合先行で行くか、長く論争が続いた。通貨先行組は「通貨を統一してしまうことで、強制的に国々の経済実態を収斂・平準化の方向に誘導しようという発想だった。通貨が一つになれば、物価や金利もおのずと一定水準に収斂していくだろうと考えたのである。だが、これはやはり基本的に誤謬だったと思う」と浜氏は述べる。

 浜氏は「ユーロ圏が発足した時の15か国のEU、そして11か国のユーロ圏であれば、困っている誰かのために奉加帳を回すことに、さほどの抵抗はなかった」と言う。奉加帳とは寄進帳のことである。「独仏伊とその周辺国でこぢんまりと始まった欧州統合は、今やロシアの勢力圏と境界を接するところまで広域化している」。それなのに「かつての小振りな金持ちクラブだった時のルールを基本的にそのまま踏襲していこうとしている。それが今日のEUであり、ユーロ圏だ。これでは彼らが今直面している難局を乗り越えていくことが出来るはずはない」と浜氏は断じる。

 そこで浜氏は、改革案を提示する。ユーロ圏のことを、しばしばユーロランドと言う。ユーロランドは、「通貨統合のテーマパーク」だった。だが「設計思想も趣向や仕掛けも相当に古い。出発点においてかなり時代遅れとなったテーマパークだったのである。この辺りで、誰にとっても納得性が高いテーマパークへの変更が行われてしかるべきところだろう。設計変更のポイントは何か。それは、一言で言えば進化なのだと思う」と浜氏は言う。そして「三つほど可能性があると思う」と私案を語る。

 案その一が「ユーロ圏の複数リーグ化」、その二が「ERM大復活」、その三が「ユーロ圏への複数金利の導入」である。 第一の「ユーロ圏の複数リーグ化」とは、「ユーロ圏をメジャー・リーグとマイナー・リーグに分割する」という発想。「ちょっと調子を崩してメジャー・リーグでのプレイが難しくなったら、ひとまずマイナー・リーグに降格して調整に入る。調子が戻ったら、またメジャーに戻ってくればいい」。両リーグとも同じユーロを使うが、リーグによってユーロの価値を変えるようにするという案である。

 第二の「ERM大復活」とは、「ユーロを止めてかつてのEMSに戻ること」だと言う。「単一通貨方式がもたらす諸問題を排除しながら、統合された通貨圏としての形は残す」という発想である。

 EUの前身であるECの時代に、EMS(欧州通貨制度)という通貨制度があった。一種の固定通貨制度である。EMSには独特の為替相場メカニズムがあり、それをERMと呼んでいた。ERMでは、参加国の通貨相互に平価(=中心レート)が設定された。各国は、一つの共通尺度で測った自国通貨の価値を常に一定の範囲内に保持する。また他のすべての参加国の通貨との間でも、自国通貨の価値を一定レベルに保持しなければならなかった。浜氏は、ユーロを止めて、こういう一種の固定通貨制度に戻す案を提示する。

 第三の「ユーロ圏への複数金利の導入」とは、通貨は一つだが金利は多数という状態を許すようにしてはどうかという案である。「各国それぞれ身の丈に合った金利を採用する余地が残るよう、工夫ができないものか」と浜氏は模索する。

 ユーロランドの設計変更には、三つの可能性があるとして、浜氏は、これら「ユーロ圏の複数リーグ化」「ERM大復活」「ユーロ圏への複数金利の導入」を提案する。複数リーグ化と複数金利はユーロを維持する場合の案であり、ERMの復活はユーロを止めるというもっと踏み込んだ案である。今後、欧州債務危機が本格的な段階になったとき、ユーロがどうなるか。ユーロの将来はユーロ圏諸国の対応いかんにかかっている。浜氏の提案が具体的に検討される時が来るかもしれない。

 

5.中国経済急減速の影響も

 

 欧州債務危機が最も大きな影響を受けるのは、中国だろう。中国は典型的な外需依存型経済であり、最大の貿易相手先は欧州である。それゆえ、欧州諸国の需要が減ると、中国経済は強い打撃を受ける。欧州債務危機のわが国への影響は、欧州から直接来る大波以上に、中国経由で来る大波の方が高くなるだろう。

 平成23年(2011)は、猛進する中国が大きな壁にぶつかった年となった。内政では、経済成長で壁にぶつかった。インフレの進行と不動産バブルの崩壊開始によって、高度経済成長は終わりを迎えた。外政では、覇権外交で壁にぶつかった。米国のアジア太平洋外交に圧され、中国は東南アジアで孤立化しつつある。シナ系日本人の評論家・石平(せき・へい)氏は、これを「中国神話の崩壊」と呼ぶ。石氏は、産経新聞平成23年12月22日号で、中国の動向を大局的に把握し、23年を「中国神話の崩壊の年」と位置付けた。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111222/chn11122211110004-n1.htm

 石氏は、次のように言う。「今まで中国は通貨(元)の乱発をもって高い投資率を維持し高度成長を牽引してきたが、このようなゆがんだ成長戦略が生んだのはインフレの高進と不動産バブルの膨張だった。そして昨年来、政府はインフレ抑制のために金融引き締め政策を実施してきた結果、全国の中小企業は深刻な経営難に陥ってしまい、企業の『倒産ラッシュ』が起きた。その一方、金融引き締めの中で不動産市場は急速に冷え込み、それが秋頃からの不動産価格の急落につながった」「今後、不動産バブルの本格的崩壊に伴って経済の減速はよりいっそう進むだろうと思われる」と。

 中国では欧州向け輸出の伸びは、昨23年9月以降、10%以下に減速しており、今年はさらに下がると予想されている。リーマン・ショック後、内需拡大のために打たれた自動車・家電の消費促進策等は昨年終了し、手が尽きている。高速鉄道追突事故の影響で路線建設など国内投資が縮小している。今年(24年)は欧州債務危機の影響が本格化し、1〜3月期の経済成長率は7%台に落ち込むとの見方が大勢を占める。ここで経済成長率とは、実質GDPの成長率を言う。

 それが7%台に落ち込むことは、中国において重要な意味を持つ。中国共産党は「保八」つまり成長率8%を保つことを至上命題としている。貧富の差が拡大、失業者が増加し、各地で暴動が頻発する中国では、成長率が8%より落ちると、政権は不安定になる。だから、「保八」が政権維持のために必須なのだ。

 IMFは、今年(24年)の中国の実質GDP成長率を1月段階で8・2%と予測していたが、1月6日、欧州債務危機が深刻化して最悪の事態を迎えた場合、4%台に急降下する懸念があるとの見通しを発表した。4%台となれば、中国では倒産・失業者が増加し、社会不安が激化するだろう。リーマン・ショック後、世界経済を牽引してきた中国経済が急減速すれば、世界的な景気後退が起こり、日本にも大きな影響が出るだろう。欧州債務危機のわが国への影響は、欧州から直接来る大波以上に、中国経由で来る大波の方が高くなるだろうと予想されるのである。

 

6.EUの混迷に備えよう

 

 EUは本年(24年)1月30日、非公式首脳会議を開き、欧州債務危機の打開に向け、財政協定について最終決定した。3月の首脳会議で署名し、各国議会の承認を得て来年(2013年)の発効を目指す。英国は不参加で、チェコが参加見送りを表明した。27か国中、2か国が抜けたことで、結束に乱れが出た。

 首脳会議は、財政赤字削減の参加国への義務づけ、違反した時の制裁金等で合意はしたが、差し迫る債務危機を克服する方策は見いだせていない。とりわけギリシャの債務削減交渉について決着しておらず、混迷が続いている。週内に、民間投資家による債権50%放棄とEU等による第2次支援実施に向けた交渉を妥結するよう求めたにとどまった。債務超過に陥った国を支援する欧州安定メカニズム(ESM)の規模も確定していない。ヨーロッパが第2次世界大戦前以来の経済的危機にあることが、一層明確になった。

 2月1日日本経済新聞の社説は、ドイツの存在にポイントを置いた見方を述べている。「新条約で財政の自由を縛り、加盟国に「財政赤字ゼロ」を義務づけるという考え方は、健全な財政を維持できているドイツの強い主張に基づいて導入した。その合意の見返りに浮上したのが、強大化するドイツへの警戒心である」「ユーロ危機を克服するには、最上級の国債格付けを維持するドイツが議論を主導するほかない。だが、ドイツへの欧州各国の警戒が高まれば、域内の経済の安定は再び遠のいてしまう」と書いている。

 全国紙の中で最も経済記事が充実しているのは、産経(産業経済新聞)だが、産経の1日の社説は、「これでは欧州連合(EU)の危機意識を疑わざるを得ない」と切り出す。「足元の危機であるギリシャの債務削減交渉自体が依然として決着をみていないからだ」と述べ、「ESMの融資力拡充は先送り」されたとして、懸念を表す。「このままでは市場の納得は得られまい「何よりも欧州自身が身を削る覚悟を示さなければ、日米や新興諸国の協力も得られない」と、EU首脳に早急に具体的処方箋を示すよう求めている。

 私の見るところ、EU首脳と言っても、ドイツの代表以外は、発言の裏付けが弱い。自国の経済力が劣るからである。欧州債務危機は、ドイツ次第という状況が、首脳会議の協議具合に現れている。各国のドイツへの依存と警戒心が絡み合い、今後一層複雑な展開を見せそうである。また、メルケルとサルコジは「メルコジ」といわれるほどよく連携してきたが、フランスで、4月の選挙の結果、誰が大統領になるかも、今後の展開に影響するだろう。2に書いたように、サルコジの再選は危い。オランドが勝った場合、独仏の連携がぎくしゃくする可能性がある。

 わが国は、EUで混迷が深まっていく場合を想定して、備えをしていく必要がある。

 

7.国家再建を急げ

 

 先に「ユーロ圏は、今、間違いなく発足以来の危機の場面を迎えている」「このままで行けば、ユーロ圏は間違いなく消滅する」という浜矩子氏の見解を書いた。

 浜氏は、「経済格差がある中での通貨統合には、いかにもやっぱり無理がある。当初から分かり切っていたこの問題が、つわものどもの熱き夢、無謀な夢、悲しき夢が一巡したところで、改めて統合欧州の眼前につきつけられている」と言う。

 産経新聞編集委員の田村秀男氏も、浜氏に似た見方をしている。平成24年2月6日の「日曜経済講座」で田村氏が書いていることを、ほそかわ流にまとめると、次のようになる。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120205/fnc12020512460001-n1.htm

 

 ―――「ギリシャの債務危機勃発から2年たった今、欧州共通通貨ユーロは解体の道に踏み出した、と言ってもよさそうだ」「ユーロが利益になる「北」と、重荷になる「南」にユーロ圏が分裂し修復できそうにないからだ」

 各国は「ユーロ加盟以来、強いユーロのおかげで、全員がそれぞれの財政規律とは無関係にドイツ並みの低金利借金で財政支出してきた」「2002年にユーロ建て国債が普及して以来、各国債利回り」は、ほぼ同じ水準(4%前後)で推移していた。だが、2008年9月のリーマン・ショックに直撃され、状況は一変した。「欧州の金融機関がバブル崩壊した米金融商品を大量に抱えていたため、信用不安はたちまち欧州に波及し、財政に問題のある国の国債が売られた」。ドイツ・フランスは国債利回りが低下した。イタリア・スペインはやや高めになり、イタリアは昨年後半、債務危機の目安になる7%を突破。ギリシャ・ポルトガル・アイルランドは利回りが急騰し、今やギリシャは18%以上、ポルトガルは16%以上になっている。

 「ユーロ危機の最大の勝ち組」ドイツは、ギリシャに対して財政主権を放棄し、EU当局に移譲するよう迫る。ギリシャはこの要求を拒絶する。「ギリシャが離脱すれば、ポルトガル、スペイン、さらにイタリアと連鎖しかねないが、ドイツは南欧抜きで再結束を図る覚悟のようだ」。「ドイツを中心とするユーロ圏北部と南欧の対立」は、修復できそうにない。ユーロは解体の道に踏み出したと言えそうだーーー。

 

 本年(24年)2月にはイタリア、3月にはギリシャ、4月にはスペインで国債の大量償還があり、欧州債務問題は一つのヤマ場を迎える。ユーロの信用不安が深刻化しているヨーロッパが、これを乗り切れるかどうか。リーマン・ショック以上の世界的な経済危機が発生した場合、わが国にもその影響は必至である。4月に行われるフランス大統領選挙の結果も、注目される。昨年8月米国は連邦債務の上限引き上げ法案を成立させ、かろうじてデフォルト(国家債務不履行)を回避した。だが、欧州債務危機が悪化すれば、米国財政に飛び火するかも知れない。危機は波状的に来る可能性がある。わが国の国家再建を急ぎ、国民の団結によって、これに耐え、これを克服できるような体制を築いていく必要がある。ページの頭へ

 

関連掲示

・拙稿「欧州債務危機とフランスの動向

・拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題

 

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