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  国際関係

                       

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説明: 説明: 説明: ber117

 

■尖閣を守り、沖縄を、日本を守れ

2012.12.26

 

<目次>

はじめに

第1章 尖閣国有化と中国の策動

(1)尖閣国有化と中国の反応

(2)中国の出方を読んで対抗策を打つべし

(3)習近平主導体制への備えを

(4)中国は軍の意向が党を通じ国家を動かす

(5)中国の侵攻から尖閣を守れ

第2章 中国の主張に根拠なし

(1)中国外相らが国連で日本が尖閣を盗んだと主張

(2)1960年代の中国製地図では尖閣は日本領

(3)琉球帰属を正式に認める史料が明代に

(4)CIAが尖閣は日本領と大統領に報告

(5)アイク、ケネディは尖閣を日本領と認識

(6)中国が依拠するカイロ宣言には署名がない

(7)海外メディアが日本の主張を掲載

(8)まだ発信力が足りない    

第3章 尖閣を守る具体的方策を実施すべし

(1)尖閣には軍事的な観点が必要

(2)中国への対抗の仕方は南シナ海に学べ

(3)尖閣の守りに自衛隊を

(4)米国の「空海戦闘」戦略に応じた防衛努力を

(5)井上成美の国防構想に学ぶ

(6)米国の専門家の見方も参考になる

第4章 中国の無法暴虐に挫けるな

(1)中国の罠にはまるな

(2)中国公船に対抗せよ

(3)中国海軍の示威に屈するな

(4)中国は沖縄をも狙っている

(5)沖縄に独立宣言をさせる

(6)ハワイの領有も主張できると発言

(7)米上院が「安保適用」を決議

(8)中国の「旧敵国条項」悪用に備えよ

第5章 国を守りつつ、日本の再建を急げ

(1)尖閣が占領されて奪還するというシナリオ

(2)領域警備法の制定を急げ

(3)集団的自衛権の行使を可能とせよ

(4)専守防衛という誤った概念を改めよ

(5)憲法を改正せねば、日本は滅ぶ

結びに〜24年衆院選から憲法改正へ

 

 

説明: 説明: 説明: ber117

 

はじめに

尖閣諸島をめぐる問題は、日本の興亡盛衰に係る重大問題である。私は近年、平成18年(2006)に「中国の日本併合を防ぐには」、19年(2007)に「核大国化した中国、備えを怠る日本〜日中戦後のあゆ」、21年(2009)に「中国の『大逆流』と民主化のゆくえなど、軍事大国・中国の台頭に対応するためのわが国のあり方について、しばしば書いてきた。

だが、わが国の再建は進まず、むしろ混迷は深まってきている。そうしたなか、平成22年(2010)9月7日、尖閣沖中国漁船衝突事件が起こった。この事件に関しては、平成23年(2011)1月21日、拙稿「尖閣諸島、6月17日に備えよう」を書いた。事件の1年後にはこれへの補説を書いた。その後、尖閣諸島を巡る問題は、一層深刻さを増している。

本稿は、平成23年から24年にかけて、私が尖閣問題についてインターネット上に載せた主な掲示文をまとめたものである。尖閣を守ることは、沖縄を守り、日本を守ることである。日本を守るため、日本人は今、何をなすべきか。ここ2年数か月の日中関係の展開を振り返りながら、われわれは何をなすべきかについて述べたいと思う。

 

 

第1章 尖閣国有化と中国の策謀

 

(1)尖閣国有化と中国の反応

 

平成22年(2010)9月7日、尖閣諸島沖で中国漁船衝突事件が起こった。わが国政府の対応は実に弱腰で、世界に恥をさらした。実はその事件が起こる前、中国人の国際団体「世界華人保釣連盟」が、平成23年(2011)の6月17日に尖閣諸島を占拠するという計画を発表していた。事件は、その計画の実施に向けた行動だったと考えられる。23年3月11日、東日本大震災が起こると、「世界華人保釣連盟」は計画を中止すると発表した。中止を発表したのは、東日本大震災で日本に国際社会の同情が集まっており、その中で計画を強行すれば、国際社会から非難を受ける。それを避けるために中止としただけである。状況を見て中止を取り消し、決行ということがあり得る。今後、数年という期間で考えると、状況は何ら変わっていない。

わが国の政府も当然、中国人国際団体の動きは知っている。別に情報機関が探索しなくとも、インターネットで世界に公表されているものだからである。だが事件後も、野田政権は尖閣諸島防衛のため積極的な対策を実施せず、尖閣の奪取を図る中国の侵攻を防ぐことは難しい状況が続いた。
 そうしたなか、24年(2012)4月17日石原都知事(当時)が尖閣諸島を購入する計画を発表した。尖閣を守るための英断だった。国民有志から寄せられた寄付金は、約14億6千万円、約10万件にも上った。石原都知事の尖閣購入計画に対し、中国では反発が起こった。すると、それまで尖閣の国有化に消極的だった民主党政権は、7月になって尖閣の国有化方針を発表した。それで中国の反発を抑えられると考えたのかもしれないが、中国側の反発はさらに強くなった。

8月15日香港の中国人活動家が尖閣諸島の魚釣島に上陸した。沖縄県警等が現行犯逮捕したが、公務執行妨害罪等に問わずに強制送還した。中国国内では、各地でわが国の尖閣領有に反対するデモが行われた。こうしたなか、わが国政府の対応を批判する地方議員ら10名が19日に魚釣島に上陸した。この行動は同日中国に伝わり、反日デモは上海等20都市以上に拡大した。暴徒化した者たちが日本車を破壊したり、日本料理店を襲撃したりした。デモはその後も拡大を見せた。

9月11日、わが国政府は地権者と売買契約を締結した。尖閣の3島を一括して購入した。地権者は以前、政府に売ると中国にわたる恐れがあるとして、政府には売らない意思を明らかにしていた。石原氏であれば信用できると判断し、都に売ることを決めていると地権者の弟・栗原弘行氏が語っていた。都の購入は地権者の栗原國起氏と合意ができていたはずだった。ところが一転して政府が20億5千万円で購入することを地権者が承諾した。地権者の栗原國起氏は事業に失敗し、約40億円にのぼる負債があるという事情が判明した。

一方、政府側については、ジャーナリストの青山繫晴氏によると、外務省が「(尖閣に)施設を作ることなどすれば、中国との友好関係に問題が生じる」と秘書官などを通さずに直接野田総理大臣に強行に言った。野田総理が迷っていると、岡田副総理が「外務省の言うことを聞かないと大変なことになる」と総理に進言した。野田総理は、当時民主党代表の再選を目指しており、それを支える岡田副総裁の意向を無視できなかった。中国のいうとおりの3原則すなわち、@尖閣に上陸させない、A資源・環境調査をしない、B建造物を構築しないという条件を丸呑みにすることを野田総理が了承したということらしい。野田政権による尖閣国有化は、野田氏の首相再選のために、中国に追従するものかと疑われる点があったのである。(関西テレビ「ニュースアンカー」平成24年9月5日放送)

石原都知事が尖閣購入計画を発表した約1か月後の5月13日、野田首相が北京で温家宝首相と会談した際、温首相は、尖閣諸島に関し、「(中国の)核心的利益と重大な関心事を尊重することが大事だ」と発言したと伝えられる。「核心的利益」とは、中国にとって安全保障上譲ることができない国家利益をさす。中国首脳が尖閣を「核心的利益」と公言したのは初めてである。非常に重大な発言である。いよいよ尖閣諸島を奪取する意図を明確に示したものと受け止めねばならない。

野田政権は、7月になって尖閣国有化の方針を発表した。わが国政府が尖閣の国有化を決めると、以後中国政府は日本に対して激しい反撃を行ってきた。史上最大規模の反日デモ、各種の日中交流イベントの中止等である。これに対し、日本国民の多くから政府の弱腰を批判する声が上がった。すると野田首相は9月26日、「尖閣で妥協しない」と宣言した。だが、ほとんど言葉だけに終わった。中国首脳が尖閣を「核心的利益」と呼び、尖閣奪取の意思を明らかにしているのに、尖閣を守るために積極的に有効な施策を打とうとしなかった。ただ中国を刺激しないようにという態度に見える。だが、そういう事なかれ主義の姿勢は、事態を悪化させるだけである。政府が購入して国有地となった以上、早く尖閣防衛策を速やかに実施しなければならない状況となっている。
 そうしたなか、平成24年12月16日、約3年3か月ぶりで、衆議院総選挙が行われた。民主党から自民党への政権交代が起こった。安倍晋三氏を首班とする内閣は、尖閣諸島防衛のため、積極政策を決断し、即実行すべきである。日本の漁民が安全に操業できるようにするための避難港や灯台の整備、尖閣諸島の現地調査の実施、気象観測所の建設、携帯電話のアンテナ塔設置、外国漁船の違法操業への警備強化、領海侵犯罪の制定等の施策が求められる。また、自衛隊の領域警備であれば法整備だけでできる。海上保安庁の警察力強化と違い、時間も予算もかからない。無人島でも自己完結的に行動できる組織は、自衛隊しかない。自衛隊員の常駐は、実効支配を大きく強化させる方策である。

尖閣はわが国固有の領土であり、これを守る意思を行動で示すことが、尖閣侵攻を抑止する効果がある。また同盟国の米国に対してはわが国が尖閣を守る意思があることを伝える効果がある。中国では沖縄も中国の固有の領土だという主張が出てきている。尖閣を守ることは、沖縄を、そして日本を守ることにつながる。そのことをよく理解し、領土と主権をしっかり守っていかねばならない。

 

関連掲示

・拙稿「尖閣諸島、6月17日に備えよう

 

(2)中国の出方を読んで対抗策を打つべし

 

 野田政権の尖閣購入に先立つ9月9日、中国の胡錦濤国家主席は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、野田首相との立ち話で、次のように語ったという。新華社が報じたものである。
 「中日関係は釣魚島(尖閣諸島の中国名)問題で厳しい局面を迎えている。日本側のいかなる島の購入計画も不法かつ無効で、中国は断固反対する。日本側は事態の重大さを十分認識して誤った決定をせず、中国側とともに両国関係発展の大局を維持してほしい」と。
 わが国の固有の領土に関し、政府が地権者から土地を買うのは、純然たる国内問題である。これを「不法かつ無効」だという胡主席の発言は、ひどい内政干渉である。
 だが、中国の傍若無人ぶりは強まる一方である。中国外務省の洪磊報道官は同9日の記者会見で、尖閣国有化決定について「必要な措置をとって、国家の領土・主権を守り抜く」と発言した。対日経済制裁や各種交流の停止、尖閣周辺海域での国家海洋局監視船の行動拡大や軍事演習などが検討された。10日には中国政府は尖閣諸島周辺を中国の「領海」とする基線を発表し、中国外務省が日本非難の声明を出すなど、中国は対日強硬姿勢を強めた。

尖閣を国が持とうが、都が持とうが、個人が持とうが、中国には関係ない。中国は確実に尖閣奪取を進めてくる。時間は限られている。わが国政府が尖閣を守るための具体的な措置を至急進めなければ、わが国の領土と主権が侵される。
 24年11月第18回中国共産党大会で習近平氏が共産党総書記に指名され、党の最高指導者に昇進した。石平氏は、これに先立って次のように書いた。
 「来年3月の全国人民大会では習氏はさらに国家主席に就任する予定である」「中国政府は『尖閣が中国の領土・核心的利益』だと主張してきた手前、日本側の尖閣の土地購入の実行に対して『習近平政権』は強硬姿勢に打って出るしかない。さもなければ、国民と軍部から猛反発を食らって誕生したばかりの新政権がいきなり、つまずくことにもなりかねないからだ。それを避けるために習近平政権はおそらく必死になって日本側の動きを封じ込めようとするのであろう」と。そして、石氏は「ありもしない『領土問題』を外国に突きつけられた以上、『撤退』はない。そして、彼我の力の対比や日米同盟の現状と今後の変化などの要素から考慮すると、今のうちに決着をつける方向で動いた方が日本にとって有利である。日本が国家として“尖閣決戦”にどう立ち向かうか。そろそろ『覚悟』を決めるときであろう」と述べている。(産経新聞24年8月31日号)

(3)習近平主導体制への備えを

 

 平成24年11月中国で第18回共産党大会が行われ、中央委員会第1回総会で習近平が総書記に選出された。習氏は中央軍事委員会主席にも就任し、党と軍を掌握する立場となった。25年春、胡錦濤氏から国家主席を受け継ぐ予定である。国家主席の座に就けば以後、10年間は、習体制が続くことになるだろう。
 
21年(2009)12月15日、天皇陛下が当時国家副主席だった習氏と会見された。外国の賓客が陛下と会見する場合、1カ月前までに文書で正式に申請する「1カ月ルール」と呼ばれる慣例がある。ところが、1ヶ月をきっていながら、中国政府は会見を強く要請した。小沢一郎氏の圧力を受けた鳩山由紀夫首相が「特例」として実現を羽毛田宮内庁長官に指示し、会見が実現したものである。私はこの事件を天皇陛下特例会見ゴリ押し事件と呼んでいる。習氏は、小沢一郎氏らを通じて、天皇陛下とのご会見を無理やり実現した人物である。その習氏がいよいよ中国のトップの座に就こうとしている。
 習氏が総書記に就任する以前、24年8月には既に中国における政策の策定・調整の主導権は、胡錦濤国家主席から習氏に移っていた。そして、尖閣問題で中国の一連の強硬な対抗策を主導してきたのは、習氏だった。

9月19日習氏は、国家副主席として、中国を訪問したパネッタ米国防長官に対し、尖閣問題への不介入を要求した。日米を分断し、日本を孤立化させる狙いがあるものと考えられる。またわが国政府による国有化を「茶番」と断じた。習氏は尖閣問題で外交の前面に立つことで、自分の存在感を強め、権力基盤を一層固めようとしたものだろう。
 習氏は、人民解放軍の軍内保守派に支持基盤をもつ。対日協調路線を取る胡錦濤氏は、日本製品の不買運動や大規模な反日デモの展開には否定的だったが、習氏はこれを容認し推奨してきた。国連に対し東シナ海の大陸棚延伸案を正式に提出することも習氏が決定した。習氏は、尖閣周辺海域を中国の排他的経済水域(EEZ)と正式宣言することに道を開き、日本と共同で資源開発する可能性を封印した。中国メディアの反日キャンペーンや、尖閣周辺海域に監視船などを送り込んだことも含め、すべて習氏が指示してきたものと見られる。習主導体制が本格化すれば、中国の尖閣に係る姿勢は、より強硬は物となるだろう。
 習氏は故習仲勲副首相を父とし、太子党すなわち中国共産党の高級幹部の子弟等で特権的地位にいる者たちのリーダーである。太子党と対立するのが団派、すなわち共産主義青年団出身者のグループである。その首領は、胡錦濤主席である。
 習氏は大学卒業後、北京の中央軍事委本部に勤め、その後の地方党・政府勤務でも各地で軍の分区書記を兼務してきた。軍とのつながりが強い。胡氏が共青団出身で軍との関係が浅いため、軍権掌握に苦労してきたのとは対照的だ。
 習氏は、また上海出身者による上海派の首領・江沢民のグループに連なっている。習氏は「ミニ江沢民」と呼ばれ、江氏同様、思想面では強硬派である。習氏は、21年秋、新疆ウイグル自治区で発生した騒乱事件で武力鎮圧を主張、温家宝首相ら穏健派と対立したと伝えられる。
 日本に対しては、胡主席は江沢民政権の反日民族主義政策を改めようとしたが、軍部は東シナ海の油田開発や尖閣諸島問題などで強硬策をとるよう圧力をかけてきた。江前主席が推挙した習氏が国家主席となると、対日政策は江沢民時代に逆戻りするだろう。既にそれが始まっているわけである。

(4)中国は軍の意向が党を通じ国家を動かす

 

中国共産党は、日中戦争、国共内戦の中から権力をつかみ取った。毛沢東は「鉄砲から権力が生まれる」と言い、政策の根本を軍事に置いていた。中国共産党政権は、戦争の中で軍の力によって成立した政権であり、そのため政権に対する人民解放軍の影響力は大きい。

 防衛大学教授の村井友秀氏によると、共産党は最高権力機関であるが、軍の最高機関である中央軍事委員会は、共産党の最高機関である政治局と並立する。軍と党が並立し、党の下に政府(国務院)が存在し、政府は党の決定を実行する機関に過ぎない。

 中央軍事委員会は、10人の軍人と2人の文民で構成されている。文民の2人は現状、胡錦濤国家主席と習近平副主席である。軍人の委員の内訳は、副主席2人、国防部長、総参謀長、総政治部主任、総後勤部長、総装備部長、海軍司令官、空軍司令官、第二砲兵(ミサイル)司令官である。文民である胡氏と習氏は軍事の専門家ではないから、軍事に関する議論では軍人が強い影響力を持つ。革命第一世代の毛沢東やケ小平は、実戦で軍隊を指揮した経歴があり、軍人に対しても強いカリスマ性を持っていた。これに比べ、江沢民や胡錦濤氏には軍歴がなく、軍人への影響力は限られる。中央軍事委における決定は、軍人の強い影響下でなされる。

政治局では胡氏は最大の影響力を持ってきた。したがって、軍人の強い影響下でなされた中央軍事委決定は、胡主席の意向として政治局内で強い影響力を及ぼしてきた。軍の意向が党の意向として国家を動かしているのが、中国の権力構造だと、村井氏は見る。

村井氏によれば、政府の一機関である外交部や国家海洋局も、政府を通じた党決定に従って行動する。「中国では、党と並ぶ権力を持つ軍が、党の下にある政府の一機関である外交部を無視することはあっても、外交部が軍の意向に逆らうことはあり得ない」、と村井氏は言う。(産経新聞平成24年6月7日号)

習近平氏は、こうした中国独自の権力構造を引き継ぎ、人民解放軍との強いつながりを持つ指導者として、胡錦濤氏の時代より、一層軍の意向に沿った政治を行うものと考えられる。

 

(5)中国の侵攻から尖閣を守れ   

 

 平成24年11月7日から14日に行われた第18回中国共産党大会は、10年に1度の指導者の交代を演出する機会だった。胡錦濤主席、温家宝首相は引退し、15日の中央委員会第1回総会で習近平が総書記に選出された。習氏は中央軍事委員会主席にも就任し、党と軍を掌握する立場となり、来年春、国家主席に就任する予定である。胡・温両氏は完全引退と報じられる一方、依然として江沢民氏が影響力を保持する状態が続いている。わが国の内閣に相当する政治局常務委員の7名のうち、4名は江沢民派が占めている。ナンバー1の習近平氏に近いのは1名のみ、胡錦濤派はナンバー2の李克強氏ひとり。江派4、習派2、胡派1という構成である。こうした中で、習氏がどのように指導力を発揮していくか注目されるところである。
 先の党大会は、胡温体制の終焉だった。大会で胡錦濤主席は、2020年までにGDPと国民一人あたりの収入を倍増するという目標を発表した。その一方、格差の拡大と腐敗の深刻さを挙げ、その解決に取り組む姿勢を表明した。特に党内にはびこる腐敗体質について、「この問題がうまく解決できなければ、党を致命的に傷つけ、ひいては党も国家も亡びてしまうことになる」と、胡氏が公言したことは重要である。「党も国家も亡びてしまう」という一言は、予言的な発言として歴史に刻まれるだろう。
 石平氏は、次のように述べる。「過去の10年間にわたって、胡錦濤政権が推進してきた諸政策はほとんどが失敗に終わってしまい、いわば『胡温新政』たるものは、単なる黄粱一炊(こうりょういっすい)の夢に過ぎなかった。そして、10年間にわたる胡政権の失敗と不作為の結果、中国社会全体はかつてないほどの危機に瀕しているのである」と書いている。(産経新聞平成24年11月8日号)
 マルクス・レーニンの理論によって建設される社会主義国家は、知識人による官僚集団が権力を独占し、労働者・農民を支配する国家を生み出す。旧ソ連では革命後、権力を掌中にした共産党官僚が特権をほしいままにし、「新しい階級」「革命貴族」となった。また、勢力を東欧に広げ、大国が小国を支配する覇権体制を築いた。旧ソ連・東欧の共産党支配体制は、まさにその権力構造ゆえに、崩壊した。私は、旧ソ連の特権階級以上の存在になっているのが、中国の共産党及び人民解放軍の幹部だと思う。彼らは、中国における「新しい階級」であり、「革命貴族」である。この革命の成果を簒奪した貴族階級は、強大な権力を利用して、人民の労働が生み出した富をむさぼり、汚職をほしいままにしている。彼らがその意識と行動を変えない限り、「党も国家も亡びてしまう」のは避けられない。だが、歴史上、特権階級が自らの意識と行動を変えて、自らの特権を否定して国家体制を改革した例はほとんどない。

 習近平氏が指導する中国に関し、今後の10年は、特権階級の腐敗がとめどなく深刻化して国家そのものが衰退・分裂するか、共産主義を脱却するための民主化が進むか、共産党支配を維持するためのファッショ化が進むか、それともまだ予測しがたい。このうち最も危険なのは、ファッショ化による覇権主義的な対外行動である。

 この点で私が気になるのは、習氏が毛沢東を賛美している点である。習氏は、北朝鮮が韓国を侵攻した朝鮮戦争を、「侵略に立ち向かった正義の戦争」と断じてはばからない。22年10月朝鮮戦争参戦60周年行事で、老兵を前に「帝国主義侵略者が中国人民に強いた反侵略戦争の勝利」と「中朝両国軍の団結」を謳歌し、称賛した。
 習氏は、これまで毛沢東思想を強調することによって、毛思想の影響が濃厚な軍を中心にした勢力の支持を固めてきた。習氏を推してきた軍部は、国内の経済的・社会的危機の中で、発言力を強めている。習氏が権力を掌握すれば、指導部への軍の影響力はこれまで以上に強まるだろう。
 中国では、現状への不満から民衆の間に毛沢東崇拝が復活しつつある。その度合いはまだ分からないが、共産党政権は、民衆の毛沢東崇拝のエネルギーを、愛国主義の中に吸収して、政権の基盤強化に利用し、対外侵攻を不満のはけ口にする可能性がある。またそれによって、一気に体制のファッショ化を進めるおそれがある。

24年11月の共産党大会で、胡錦濤主席は海洋権益を守ることを強調した。中国は増強する海軍力を以て、わが国を含むアジア太平洋地域、さらには中東・アフリカにも覇権を広げようとしている。領土や資源を獲得するとともに、国民の不満や怨嗟を党ではなく海外に向けさせ、支配体制を継続させようとするものである。習近平氏は、この方向へと中国を進めようとしている。

習近平主導の中国に対し、わが国は領土と主権を守る覚悟と備えが必要である。そのための対応の要が尖閣諸島である。尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守るために、具体策を積極的に実施する必要がある。ページの頭へ

関連掲示
・拙稿「中国の『大逆流』と民主化のゆくえ

 

 

第2章 中国の主張に根拠なし

 

(1)中国外相らが国連で日本が尖閣を盗んだと主張

 

 平成24年9月27日、中国の楊潔チ外相(註1)と李保東国連大使は、国連総会の一般討論演説の場で尖閣諸島の領有権を主張し、日本が尖閣諸島を「盗んだ」という表現を計7回使用した。「強盗の論理と同じ」「マネーロンダリング(資金洗浄)のようだ」とも表現した。また日本を「植民地主義的」と7回も形容した。国連総会という国際社会で重要な会議の場で、日本を盗人呼ばわりする中国の姿勢は、異様である。安保理常任理事国でありながら、安保理の品格を落としめる発言であり国連総会という各国の首脳・閣僚クラスが一堂に会する場で、これほど粗暴な言葉が連発されたことは過去に例がない。

中国外相・国連大使の演説に対し、わが国の国連代表部の児玉和夫次席大使は、演説に反論する答弁権を行使し、日本の尖閣諸島領有の歴史を詳細に説明した上で「日本の固有の領土」であることを主張した。李国連大使が激しく反論すると、日本は2度目の答弁権行使で、「歴史的事実と国際法に基づき、尖閣諸島は日本の固有の領土だ」と主張した。このように即反論したことは良かった。

先の中国代表の国連演説に先立つ9月13日、李保東国連大使は尖閣の周辺海域を中国の「領海」とした海図を潘基文事務総長に提出した。これに対し、日本の国連代表部は反論書簡を事務総長宛てに出した。国連は同月26日までに、この海図を公表するとともに、日本側の反論文書を公表した。反論文書は中国の海図等の提出について「まったく受け入れられず、法的にも無効」とし、「歴史的事実に照らし、国際法に基づく日本固有の領土であることは疑いがない」と主張しているという。

演説にせよ資料にせよ、中国の言われっぱなし、出されっぱなしにしてはならない。精力的に反論を展開すべきである。

註1 楊潔チのチは「簾」の「广」を「厂」に、「兼」を「虎」に。

 

(2)1960年代の中国製地図では尖閣は日本領 


 尖閣を固有の領土とする中国の主張には、まったく根拠がない。中国は、昭和46年(1971)まで日本の尖閣諸島の領有に一度も抗議を行わなかった。国際法上、中国の権原は認められない。中国は尖閣諸島の最初の発見者ではない。発見したのは琉球人である。中国政府が用いる林子平の「琉球三省並三十六島之図」(1786)の記述は日本が尖閣諸島を中国領と認めていた根拠にはならない。中国が尖閣諸島に実効支配を行った歴史的事実は存在しない。そのうえ、中国政府自身が尖閣諸島を日本領と認めていた。

平成24年8月、中国広東の企業幹部・林凡氏が、中国版ツイッター「微博」で、「尖閣諸島は日本領土」と発言した。林氏によると、人民日報は昭和28年(1953)1月8日付の紙面に掲載した記事で「琉球群島は台湾の東北に点在し、尖閣諸島や先島諸島、沖縄諸島など7組の島嶼からなる」と表記していた。1967年版の中国当局監修の地図は、台湾を中華人民共和国の一部とし、中国と尖閣諸島の間に国境線を引いて、尖閣諸島は日本領であることを示して、魚釣島等と日本名が書いてあると林氏は指摘した。この書き込みは、翌日には当局によって削除された。

中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは、昭和43年(1968)、国連アジア極東経済委員会(エカフェ)が、この地域に石油、天然ガス等の埋蔵資源があると発表した後のことである。林氏掲示した1967年版の地図は、その前に発行されたものである。1960年に中国で発行された世界地図にも、尖閣諸島が日本名で明記してある。この地図は、中国の「地図出版社」発行の世界地図で、「釣魚島」という中国側の呼称を使わず、日本側の呼び名に従って「尖閣群島」と記載し、沖縄の一部として扱っている。

 

(3)琉球帰属を正式に認める史料が明代に

 

尖閣周辺に資源があると分かると、台湾に次いで中国も領有権を主張するようになった。

昭和46年(1971)12月の中国外務省声明では、「釣魚島などの島嶼は昔から中国の領土。早くも明代にこれらの島嶼はすでに中国の海上防衛区域の中に含まれており、それは琉球に属するものではなく台湾の付属島嶼だった」と根拠らしきことを述べていた。だが、それを示す史料は示されていない。
 そのうえ、平成24年(2012)長崎純心大准教授・石井望氏の調査で、シナでは明代に大正島を琉球に帰属すると正式に認めていたことを示す史料が存在することが明らかになった。石井氏によると、尖閣諸島の大正島について、1561年に琉球王朝へ派遣された明の使節、郭汝霖(かく・じょりん)が皇帝に提出した上奏文に、大正島は「琉球」と明記されていた。石井氏は「中国が尖閣を領有していたとする史料がどこにもないことは判明していたが、さらに少なくとも大正島を琉球だと認識した史料もあったことが分かり、中国の主張に歴史的根拠がないことがいっそう明白になった」と述べている。(産経新聞平成24年7月7日号)
 中国政府が尖閣は中国領だとどんなに声高に主張しようとも、根拠のない主張は絶対に成り立たない。ウソ・捏造に過ぎない。わが国は、事実を事実として、繰り返し、繰り返し主張していけば、相手は支離滅裂ぶりを自国民に知らせ、また国際社会に露呈することになる。

 

(4)CIAが尖閣は日本領と大統領に報告

 

 尖閣諸島に関する中国政府の主張には、まったく根拠がない。そのことを明らかにする資料が、米国からも出てきた。
 平成24年9月28日、尖閣諸島をめぐって作成されたCIAの報告書が報道された。ジョージ・ワシントン大国家安全保障記録保管室に保管されていたものである。この報告書は、日米両政府が沖縄返還協定を調印する直前の昭和46年(1971)5月に作成された。当時の中華民国(台湾)が、米国の尖閣諸島を含む沖縄の施政権に注文をつけたのを受け、CIAが調査を行ったものだという。文化大革命の担い手だった紅衛兵向けに中国で昭和41年(1966)に刊行された地図を例に挙げ、「尖閣諸島は中国の国境外に位置しており、琉球列島、すなわち日本に属していることを示している」と指摘し、42年(1967)年8月に北京で刊行された一般向け地図帳でも「尖閣諸島は琉球列島に含まれる」と表記されていると報告しているという。先に触れた中国版ツイッターに掲載された地図と同時期のものである。
 CIAの報告書は、「尖閣海域に埋蔵資源の存在が明らかになった後、中華民国が領有権を主張し、これに中国共産党政権が続いて問題を複雑化させた」と指摘し、歴史的にも国際法上も日本固有の領土であるとする日本の主張について「説得力があり、尖閣諸島の領有権の根拠を示す責任は中国側にある」「尖閣諸島への中国のいかなる行動も、米国を日本防衛に向かわせるだろう」と結論付けているという。
 沖縄返還協定調印の時の米国大統領は、リチャード・ニクソンだった。ニクソンは、昭和46年(1971)6月に、尖閣諸島の日本への施政権返還を決断した。前月の5月に作成されたこの報告書が、大統領の判断材料の一つになったと見られると報じられる。
 米国政府は、尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用対象としている。すなわち、米国が日本に返還した尖閣諸島は日本の施政権下にあることを、米国は認めている。その裏付けとなるものの一つが、このCIAの報告書だといえるだろう。

 

(5)アイク、ケネディは尖閣を日本領と認識

 

米国は現在、尖閣諸島について、施政権と領有権を区別し、施政権が日本にあることは認めているが、領有権については判断しないという姿勢を取っている。つまり、尖閣が日本の領土だと認めているわけではない。領土問題については「中立」の立場を取っている。

  米国が初めからこういう姿勢だったわけではない。そのことを示す資料が出てきた。平成24年10月8日に産経新聞が伝えたもので、アイゼンハワー、ケネディ両大統領が尖閣の主権の日本への帰属を明確に認めていたことを示す米議会の公式報告書が明らかとなった。両大統領のこの記録は米国議会調査局が平成13年(2001)11月、上下両院議員の法案審議用資料として作成した「中国の海洋領有権主張=米国の利害への意味」と題する報告書に掲載されたという。これは重要な事実である。米国は、1950年代から60年代にかけて、アイクとケネディの時代には、大統領が日本に主権があると認めていたのである。

この報告書は「1945年から71年までの尖閣諸島の米国の統治」という項で、昭和26年(1951)の対日講和会議に加わったダレス国務長官が、尖閣を含む琉球諸島に日本が「残存主権」を有するとの考えを示したと記している。残存主権とは「米国がその主権を日本以外のどの国にも引き渡さないこと」を意味するという。その上で報告書は、アイゼンハワー大統領が昭和32年(1957)6月の日米首脳会談で尖閣を含む琉球諸島の残存主権をめぐり、岸信介首相に対して「米国が統治する一定期間は米国がその主権を執行するが、その後には日本に返還される」ことを告げ、その点を確認したと明記している。 さらに、「1962年3月には、ケネディ大統領が沖縄についての大統領行政命令で、『琉球は日本本土の一部であることを認め、自由世界の安全保障の利害関係が(尖閣を含む沖縄に対する)日本の完全主権への復帰を許す日を待望する』と言明した」と記している。続いてすぐ後に、「米国は尖閣諸島を琉球諸島から区分する言動はなにも取っていないため、この『残存主権』の適用は尖閣を含むとみなされる」と念を押しているという。
 ところが、その後、米国は態度を変えた。先の報告書は、沖縄返還時のニクソン政権が先行するこれら2政権の政策を変え、尖閣諸島の施政権は沖縄と同一に扱いながらも、尖閣の主権は区別し、「中立」を唱えるようになったと述べ、その理由として「中国への接触」を指摘しているという。ここでいう主権は領有権を意味する。ニクソンから、沖縄については領有権と施政権を認めるが、尖閣については施政権は認めるが領有権については判断しないという態度に変ったのである。現在も米国政府はこの態度を取り続けている。
 これは私の想像だが、第2次世界大戦後、米国は超大国として世界的に影響力を振るうため、各国が結託して米国に立ち向かって来ないように、各国が領土問題で争って互いに牽制し合うように、仕向けたようなところがある。日本とソ連の間の北方領土はその一例である。日本と中国の間についても、領土問題でけん制し合うように考えたのかもしれない。
 それはさておき、米国が過去に尖閣に関して日本の主権を認定した意味は大きい。わが国としては、アイクとケネディが尖閣の主権は日本にあると認めていたことを、広報宣伝に活用していくべきだと思う。

 

(6)中国が依拠するカイロ宣言には署名がない

 

 尖閣諸島は中国の領土ではない。中華人民共和国は、台湾は中国の一部であり、尖閣諸島は台湾に属するので、尖閣諸島は中国の領土であると主張している。しかし、台湾は中国の一部ではないので、尖閣諸島も中国の領土でもない。
 平成5年(1993)、江沢民は世界に向けて「一つの中国白書(One China White Paper)」を7か国語で発表し、台湾が中国に属する理由を説明した。白書は、アメリカのルーズベルト大統領、イギリスのチャーチル首相、蒋介石の3人によって共同署名されたカイロ宣言に基づいて、台湾は中国に返還されるべきだとしている。だが実際は、カイロ宣言には誰も署名はしておらず、蒋介石の署名すらないものである。
 チャーチルは、カイロ会談において、台湾を中国に返すことに反対していた。英国議会でソーレンソン議員の質問に対してカイロ宣言の存在を公然と否定した。ソーレンソンは、チャーチルに対し、ルーズベルト、チャーチル、蒋介石、スターリンの4か国の元首が共同署名したカイロ宣言に基づいて台湾を中国に返還するべきだと主張した。だが、それは共産党に騙され、スターリンもカイロ会談に出席したと思い込んでの発言だった。アメリカ国務省は、カイロ宣言はなかったと公に発表している。
 平成12年(2000)、江沢民は、先の白書を修正した。「3か国の元首によって共同署名されたカイロ宣言」を「3か国の政府が共同で発表したカイロ宣言」と書き直した。署名への言及をやめたのである。

 台湾人の評論家・黄文雄氏は、以前から「カイロ宣言」には米英中三国の指導者の署名がないと指摘している。たとえば、『捏造された日本史』(日本文芸社)では、「署名のあるカイロ宣言の公文書を見たことのある人など一人もいないのである」「この宣言は正確に言うと宣言ではなく、正しくは公告(Proclamation)というべきである」「チャーチル首相は、国会ではっきり宣言の存在を否定している」と。
 黄氏は、同書でもう一つ重要なことを述べている。「ポツダム宣言」の第8条に、「カイロ宣言の条項は履行する」と書いているが、これは「存在しないものについて実行することになる。また、チャーチル首相はポツダム宣言には署名しなかったのである。だから、日本が署名したポツダム宣言は、文章として不完全である…日本は国家として公式に、虚構の上に立つカイロ宣言は否定しなければならない…」と。
 黄氏の論を、論理的に徹底すると、「ポツダム宣言」は無効であるということになる。なぜならば、「ポツダム宣言」は、存在しない「カイロ宣言」の条項の履行を含み、署名も揃っていないからである。こうした不完全な文書によって、日本軍の降伏と、連合国による占領政策が行われたのである。わが国はポツダム宣言を受諾したので、その点はおくとしても、黄氏が提言するように、日本はカイロ宣言については、国家として公式に否定すべきである。

 

(7)海外メディアが日本の主張を掲載 

 

 尖閣諸島を巡り、ニューヨーク・タイムズ(電子版)のオピニオン欄に、平成24年9月19日「日本が不法に編入した」との台湾の研究者の投稿が掲載された。同紙のニコラス・クリストフ記者は「中国(の主張)に分がある」とコラム記事に書いた。クリストフ氏が「日本の学者は反論を」と促すと、10月2日ニューヨークの日本総領事館は、川村泰久首席領事名で「重要な誤りがある」との反論を投稿した。「尖閣諸島は日本固有の領土。歴史的にも国際法上も疑いがない事実だ」と述べ、過去に「中国が尖閣諸島を日本領と認める数々の証拠がある」とした。
 中国の英字紙、チャイナ・デーリーは9月末、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストに「釣魚島は中国に帰属している」「日本が横取りした」との広告を掲載した。我が国は、中国の国際的な反日虚偽宣伝の情報を収集し、即座に反論を行わねばならない。尖閣諸島を巡っては、中国代表の国連演説に反論するなど、一定の情宣活動をしている。その影響もあってか、徐々に欧米メディアを中心に日本側の主張を掲載するようになってきたという報告がある。「日本会議国民運動関連情報」平成24年10月18日版は、海外のメディアが徐々に日本側の主張を掲載するようになってきたことを伝えている。各国紙面例を転載する。

◆フランス:ル・モンド紙、10月12日
 「国際法的観点からの日本の尖閣諸島に対する領有権の正当性が、中国の歴史的領有権の主張よりも優先されるべき」

◆タイ:ネイション紙、10月6日
  「中国は、周辺海域への海軍艦艇によるパトロールや暴力的な反日デモの容認という方針を転換すべき」

◆デンマーク:ポリティケン紙、9月29日
 「対日批判を声高に主張すればするほど、領有権に係る主張を実現することができない非力な共産党としての姿をさらけ出してしまう可能性もある」

◆スイス:ノイエ・チャルヒャー・ツァイトゥンク紙、9月28日
 「尖閣諸島を巡る日本、中国、台湾の間の紛争は、国際法的に見れば日本の側に分がある」

◆イギリス:ファイナンシャル・タイムズ・アジア版、9月26日
 「中国、台湾の主張の弱点の一つは、1960年代後半に国連の測量調査で豊富な石油資源があるのではないかと判明するまで、中国・台湾は日本の領有権主張に異議を唱えなかったことである」

◆フランス:ル・モンド紙、9月25日
 「大国中国が平和的でなくなりつつあることにより、太平洋地域からインド洋に至るアジアの全域において、ほぼすべての国の共通の懸念となり、諸国を連合させる脅威として認識されつつある」

 

これらの記事は、国際法上、日本の報道に分がある、国有化した日本政府の判断の背景には中国政府との摩擦を最小限にしようという目的があった、中国側の対応は、各国共通の懸念であり、反日暴動は中国のためにならない、日本が中国に冷静な対応を求めていることは評価できる、といった内容が目立つと報告される。
 ただし、上記には肝心の米国のメディアの掲載例がない。わが国の政府は発信力を高め、米国の有力紙がわが国の主張を掲載するとともに、そのメディアの見解としてわが国の主張に理解を示す報道がされるように、積極的に働きかけをしなければならない。

(8)まだ発信力が足りない

 

 私は、尖閣諸島に関して、中国に対するわが国の外交当局の反論を評価するが、発信力がまだまだ足りないと思う。単に同じ主張を繰り返すのではなく、中国の主張を虚偽と暴き、日本の主張の正当性を示す資料を駆使して、積極的に発信しなければいけない。
 米国を舞台とする中国の反日虚偽宣伝は、戦前からの常套手段である。雑誌『ライフ』の昭和12年(1937)10月4日号に、中国・上海で線路に取り残された赤ん坊が泣き叫ぶ写真が載った。この写真は、米国の反日世論を一気に高めた。だが、この写真は、シナ系米国人の創作写真だった。昭和12年12月の南京事件についても、中国(当時は中華民国)は米国を中心に事件を捏造・誇張して伝えた。虚偽の事件が南京大虐殺となり、東京裁判で日本断罪の材料に使われた。こういう方法は、戦前も今も変わらない。平成9年(1997)、シナ系米国人アイリス・チャンの著書『ザ・レイプ・オブ・南京』が米国でベストセラーになった。同書は旧日本軍が南京入城の際、シナ人を虐殺したとする根拠不明の写真を多数載せた。それがカリフォルニア州議会の対日非難決議につながった。だが『ザ・レイプ・オブ・南京』が発刊されたとき、わが国の政府は、反論をせず、訂正要求もしなかった。それどころか虐殺があったということを前提にした釈明をするような外交を行った。また、平成19年(2007)、南京事件を題材にした映画がハリウッドを中心に7本制作され、世界各地で上映されてきた。これに対しても、わが国政府は有効な対抗措置を取っていない。
 中国の虚偽宣伝に対し、日本は史実を踏まえた正確な情報を海外に発信すべきである。わが国政府が積極的にそれを実行しさえすれば、確実に国際社会で理解者を増やしていくことができる。尖閣諸島についても南京事件についても、慰安婦問題についても、同じである。敢然と虚偽を否定し、堂々と事実を発信することが、日本の領土を守り、日本人の誇りを守るために、今こそ必要である。

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第3章 尖閣を守る具体的方策を実施すべし

 

(1)尖閣には軍事的な観点が必要 

 

 尖閣問題には、軍事的な観点を持つことが必要である。戦後の日本人の大多数は、学校教育で軍事的な知識を習得したり、訓練を受けたりする機会のないまま社会人となっている。防衛大学以外の大学、自衛隊以外の組織では、軍事的な教養を身に着ける機会はほとんどない。そのため、日本人で国際関係を政治的・経済的・文化的観点に軍事的な観点を加えて見ることのできる人は、ごく限られている。だが、今日、日本と中国との関係は、軍事的な観点を抜きに考えることはできない。
 平成22年(2010)9月7日に、尖閣諸島沖中国漁船衝突事件が起こった。その直後にジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「週刊新潮」平成22年9月30日号に、次のように書いた。
 「中国は1992年に南シナ海の西沙、南沙、東沙、中沙諸島の全てを自国領だと宣言した。事実とかけ離れた中国領有権の主張は、同年に米国がフィリピンに保有していた大規模な海軍、空軍の両基地を閉鎖し、撤退したその軍事的空白の中で展開された。ASEAN諸国は怒ったが、中国は力を誇示して、或いは実際に軍事力を行使して、有無を言わさない。
 中国外交のこの手法は現在も変わらない。基本的型として、彼らは史実も現実も無視し、中華帝国的版図を宣言する。漁民或いは漁民を装った軍人を、中国領だと主張する島々や海に進出させる。元々の領有権を保有する国々が船を拿捕したり漁民を捕らえると、それを口実に軍事力を背景にして相手を屈服させるのだ。
 こうして中国は95年初頭までに南沙諸島の実効支配に取り掛かった。現在、南シナ海、特に西沙諸島周辺海域には中国海軍の軍艦が常駐し、『銃撃』も辞さない構えを取り続けている。南シナ海の現実から東シナ海の近未来図を読み取ることができる」と。
 尖閣事件から2年以上経過したが、この間、中国は南シナ海での侵攻とよく似た仕方で、じわじわ尖閣へ、沖縄へと触手を伸ばしてきている。

 中国は、地図を90度回転させ、大陸側を下にして太平洋側を上に見ると、日本列島、沖縄、南西諸島、台湾ですっぽり蓋をされたような状態になっている。軍事的に、これを第1列島線という。そして、横須賀、小笠原諸島、グアム島を結ぶ線を第2列島線という。中国が太平洋に出ようとする場合、ロシアの存在もあるので、津軽海峡や北方領土の付近からは軍艦を進めることができない。沖縄本島と宮古島の間から出るしかない。そこに中国にとっての尖閣諸島、南西諸島、そして沖縄の軍事的な重要性がある。逆に、日本や米国にとっては、中国が太平洋に覇権を拡大するのを防ぐためにも、尖閣諸島、南西諸島、沖縄は、重要な地域である。

 尖閣諸島は台湾有事の際、米軍が台湾に接近するルートにある。また、日米両国に死活的な重要性を持つ中東やインド洋から太平洋への海上輸送路の途次にも位置している。それゆえ、尖閣が中国の実効支配下に入ると、日本が従来の海上輸送路から切り離され、在日米軍基地の機能も骨抜きになりかねないという見方をする専門家が米国に居る。また中国が尖閣を実効支配すれば、そこにレーダー基地をはじめ、さまざまな軍事施設をつくる。そうなれば、沖縄本島の米軍および自衛隊基地、施設にとって面倒な存在となり、米軍の台湾防衛作戦を阻害することにもなる。その意味で、尖閣防衛は、中国海軍の東シナ海や太平洋への進出を牽制するのに役に立つという見方をする日本の専門家もいる。

 

(2)中国への対抗の仕方は南シナ海に学べ


 国際政治学者で防衛大学校名誉教授の西原正氏は、「中国への対抗の仕方は南シナ海に学べ」と主張する。
 西原氏は。中国について、「今後は、徐々に軍事的手段を用いて、さらに威嚇を強めてくる可能性がある。南シナ海の領土紛争におけるやり方がそうである」と言う。「中国は紛争相手で実効支配力の弱い国には、武力を行使して屈服させる。昭和49年(1974)、当時の南ベトナムが戦争で疲弊していたとき、中国は南部ベトナム領のパラセル(西沙)諸島を攻撃し、駐屯していた南ベトナム兵を殺害して、同諸島を自国支配下に置いた。また、平成23年(2011)6月には、ベトナムが進めていた海底油田の掘削のための調査用ケーブルを、中国の監視船が切断した。24年(2012)4月には、フィリピンの公船がスカボロー礁で中国漁船を違法漁業のかどで逮捕した際、中国は大きな監視船を多数繰り出しフィリピン側を屈服させた」。

だが、尖閣の場合、もっと重要な点がある、と西原氏は指摘する。「尖閣が中国の実効支配下に入れば、中国はそこにレーダー基地をはじめ、さまざまな軍事施設をつくるであろう。そうなれば、沖縄本島の米軍および自衛隊基地、施設にとって面倒な存在となり、米軍の台湾防衛作戦を阻害することにもなるのである。その意味で、尖閣防衛は、中国海軍の東シナ海や太平洋への進出を牽制するのに役に立つ。長い目で見て、尖閣要求に日本が譲歩することは、中国の『琉球列島』要求に繋がり、やがて、太平洋での米中海軍力のバランスを中国側有利に傾けかねない」と。
 西原氏は、日本は中国が南シナ海でやってきたことから学ぶべきことがある、として5つの教訓を挙げる。その教訓は、中国の侵攻の仕方とマレーシア、フィリピン、ベトナム、インドネシア等の東南アジア諸国の対抗の仕方から得られるものである。西原氏が教訓とするのは、次の5点である。

一、「力の空白」を作らない。海上保安庁、自衛隊による警戒、守りを怠らず、そして十分な装備を配備することが重要である
二、接岸およびヘリポートの施設を造って、自衛隊を常駐させ、同時に釣りなどの場とすること。時には首相のような要人が現地を訪れることが必要である
三、日米同盟の強化は言を俟たない。米国が尖閣を日米安保条約の適用範囲としたことは日本側に極めて有利になっている
四、中国の恐喝的報復への対応策を講じておく。また中国の脆弱点を予め研究して、効果的に使えるように用意しておく
五、尖閣防衛の力をつけつつ、位負けせずに、武力衝突を避ける道を探る。ASEAN側が中国との間で協議してきた相互自制の行動規範なども参考になる
(産経新聞平成24年6月8日号)

 簡潔な表現だが、尖閣問題に軍事的な観点を持って、深く受け止めるべき教訓と言える。政府は、これまでの対応を猛省し、西原氏の挙げる五つの教訓に照らして、わが国の現状と課題を確認し、尖閣防衛の対応を急ぐべきである。

 

(3)尖閣の守りに自衛隊を


 帝京大学教授・志方俊之氏は、平成24年4月、民主党・田中直紀防衛大臣のもとで、防衛大臣補佐官に就任した。素人以下の防衛大臣のもとで、よく補佐官の仕事を受けたものだと思うが、6月に田中氏が解任され、森本敏氏が防衛相に就任すると、志方氏はわずか2か月余で補佐官を退職した。
 退職後、志方氏は、次のような主張を書いた。

「海空軍力の増強を背景にした中国の『尖閣盗り』は、日米同盟の一瞬の隙を突いて行われるであろう。その時が来るまでは、人民解放軍の独特の政治戦略である『三戦(法律戦、世論戦、心理戦)』を駆使してくることだろう。
 『法律戦』では、東南アジア諸国などと領有権を争う南シナ海の南沙(スプラトリー)、中沙、西沙(パラセル)の諸島をまとめて、『三沙市』なる行政区を設けたように、『釣魚(尖閣の中国名)市』を設置する手続きを取ることが考えられる。『世論戦』では、今回行われたように、主要都市で暴徒化しないように制御しつつ反日デモを組織し、メディアで全世界に見せる。『心理戦』では、日米安保体制を弱体化させるためなら、ありとあらゆることをしてくるであろう。『戦わずして勝つ』という古くから伝わる孫子の兵法である」と。
 補足すると、米国国務省の見方では、法律戦は「国際法及び国内法を利用して、国際的な支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する予想される反発に対処すること」、世論戦は「中国の軍事行動に対する大衆及び国際社会の支持を築くとともに、敵が中国の利益に反すると見られる政策を追求することのないよう、国内及び国際世論に影響を及ぼすこと」、心理戦は「敵の軍人及びそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理作戦を通じて、敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させること」である。
 この中国の法律・世論・心理の三戦をよく分析し、これに対抗することが、わが国の防衛において非常に重要である。国防は、軍事力の強化だけでなし得るものではなく、政治・外交・教育等、総合的な取り組みがされてこそ、最後の手段としての軍事力の行使が生きるのである。
 志方氏は、尖閣諸島の防衛は自衛隊抜きでは為し得ないと見ている。海上保安庁法、外国船舶航行法が改正されたことは大いに評価できるが、「海保による警察行動では不十分になった場合、海自の海上警備行動へ途切れずに移行できるよう、現場だけでなく首相官邸の情報共有と指揮統制能力をかねてから鍛えておくことも欠かせない」と志方氏は主張する。そして、自衛隊については、直ちに取り組むべきことを3点挙げる

@「自衛隊の態勢も、南西諸島各島に小規模な沿岸監視チームを常駐させて強化する。ある離島が外敵に占領されたら間髪を入れず逆上陸作戦ができるよう、西方普通科連隊を本格的に海兵隊化し、水陸両用の装甲車両を導入する」
A「海自では、陸自の水陸両用装甲車両を搭載して発出できる新型ヘリ搭載護衛艦を建造し、配備すること、空自では、南西航空団の2個飛行隊化を繰り上げ実施すること、そしてF35戦闘機導入のペースを加速することである」
B「統合レベルでは、南西諸島防衛の統合任務部隊を常設化し、同部隊の米軍との警戒監視や偵察活動における日米共同訓練を恒常化することが喫緊の課題である」
(産経新聞平成24年9月19日号)

 これら3点に関して、私見を述べると、まず陸上自衛隊の一部を海兵隊化し、水陸両用の装甲車両を導入することは、重要なポイントだと思う。尖閣諸島などの離島を守るには、陸自が上陸して防衛にあたらねばならないが、上陸には海自の協力が必要である。しかし、緊急出動は、陸海ともに行動できる能力を持った部隊が行くのが早い。その部隊には水陸両用車が必須である。また陸海空の統合部隊を作るのもよいと思う。部隊南西諸島のどこかの島に基地を置き、統合部隊を配備して、ミサイルや戦闘機で即時対応できるようにする。これによって、中国に対する抑止力は格段と高まるだろう。なお、これらの方策は志方氏の独創ではなく、例えばこれらを含む国土防衛策を、田母神敏雄氏は著書『田母神国軍』(産経新聞出版)で発表している。
 ただし、装備の充実には、時間もかかるし費用もいる。今すぐできる方策を打たないと態勢不十分なところを中国に衝かれる。領域警備の緊急立法が望ましいが、これも今の内閣と国会では時間がかかる。そこで、尖閣諸島に自衛隊員を陸上配備するのがよいと思う。国有地の防衛に自衛隊を充てるのだから、法的問題はないだろう。内閣総理大臣が、自衛隊法76条に基づく防衛出動を発令すれば、さらによい。要は、国家指導者の覚悟次第である。


 

(4)米国の「空海戦闘」戦略に応じた防衛努力を

 

 中国は、南シナ海をチベットや台湾と並ぶ「核心的利益」と位置付けている。「核心的利益」とは、中国にとって安全保障上譲ることができない国家利益をさす。事実上自国の領土とみなす考え方である。中国は日本列島、沖縄、南西諸島、台湾を結ぶ線を第1列島線、横須賀、小笠原諸島、グアム島を結ぶ線を第2列島線という。中国は第1列島線の内側を自国が支配する能力を確保しようとしている。南シナ海でのベトナム、フィリピン等への攻撃的態度は、このことを示すものである。それだけではない。中国は第1列島線を越えて第2列島線との間にも支配能力を広げようとしている。その中核に位置するのが、尖閣諸島である。中国首脳は尖閣を「核心的利益」と呼ぶようになっている。
 米国国防総省は平成23年11月、こうした中国の動きに対抗するため、「空海戦闘(エア・シー・バトル)」と呼ばれる新戦略を発表した。拓殖大学大学院教授で野田政権の防衛大臣を務めた森本敏氏は、この構想について、「情報機能や海空軍中心の長距離攻撃力の重視を含むものと予想され、在日米軍の装備・配備や普天間飛行場移設問題に影響を与える可能性もある。それは必然的に、米軍と自衛隊に相互運用性の強化を促すだろう。そして、その成果は、日本がいかなる防衛努力と役割分担を果たすかで決まる。米国が日本にさらなる防衛努力を求めるのも、そのためだ」と述べている。

新たな対中戦略を展開するには、予算がいる。だが米国は、厳しい財政状況にあり、国防予算の削減を迫られており、効果的な資源配分が検討されていくだろう。わが国は、この米国の新対中戦略「空海戦闘」にどのように対応するかを決断せねばならない。

森本氏は、次のように言う。「日本は地政学的に、中国と米国の中間に位置しているが、日本の選択肢は明確であり、米国と協力してこの地域と国家の安定と繁栄を維持すること以外にはない。それだけに、日本としては、米国防予算の大幅削減とASB構想から導き出される結論を考えておくべきである。それは、海兵隊をグアム、ハワイ、豪州、ASEAN、沖縄などに分散配置して地域全体の抑止を維持しつつ、海空軍の長距離攻撃能力を展開して南シナ海や東シナ海に進出する中国の接近・領域拒否戦略に対応できる態勢を取るということである」と。

森本氏は、わが国の役割を強調する。「沖縄を含む南西諸島方面は第1列島線を越えてくる中国を阻止する前線地域であり、ASB構想に伴う日米間の相互運用性を強化するため、この地域の防衛態勢を強固にするのは日本の役割である。とりわけ、日米両国で基地、施設の共同使用を拡大しつつ、基地インフラを確保し、情報、警戒、監視の機能を強めることは、日本の重要な役割である。緊急時における米軍への支援・協力を充実することもまた、待ったなしであり、そのために、周辺事態法の改正や日米韓の防衛ガイドラインの策定に速やかに着手すべきである。同時に、東アジア諸国と協力して、非軍事的な緊急事態すなわち災害救援、人道支援、平和構築、能力・人材養成、海洋安定−などのための多国間協力演習、訓練を沖縄周辺で進めて多国間協力体制を強化することも欠かせない」と。

そして、次のように述べる。「いずれにせよ、アジアに張り出してくる中国と、国防費削減に苦しみつつ新たな対中戦略を進めようとする米国の間にあって、日本が独自の防衛戦略を確立して、南西方面の防衛態勢を強化することは喫緊の課題になりつつある」と。(産経新聞平成24年12月7日号)
 米国の国防費削減について補足すると、米国は連邦債務上限引き上げ法に基づき、今後10年間で4870億ドル(約38兆4700億円)の削減を行う。議会の動向によっては、平成25年(2013)からさらに6千億ドルの国防費が削減される可能性もある。だが、米政府のドロニン国家安全保障担当大統領補佐官は「この地域(註 アジア太平洋地域)における米軍戦略に影響は与えない」と語っている。国防費削減は欧州からの陸軍撤退などで実現する方針という。パネッタ国防長官は、アジア太平洋地域において「米軍の圧倒的なプレゼンス(註 駐留・駐在)」を維持すると述べている。議会は国防費削減に圧力を加えつつも、アジア太平洋地域での米政府の方針を援護する姿勢は変わらないと伝えられる。

 

(5)井上成美の国防構想に学ぶ

 

 東洋学園大学教授の桜田淳氏は、「尖閣諸島は、日本や米国が奉じる開放性や法の支配の論理と中国共産党政府が体現する排他性と恣意性の論理が衝突する最前線」と見て、「南西諸島は、開放性と法の支配の防衛線」であると説く。そして、“最後の海軍大将”井上成美(しげよし)の国防構想を提示し、これを現在の対中戦略に関して充分参考に値するものと評価している。
 まず井上について私が紹介すると、井上は非戦派として知られ、日独伊三国同盟に頑強に抵抗、対米開戦に突き進む動きを阻止しようとし、開戦後は早期終結のために尽力した。“非戦派”といわれるゆえんである。もちろん軍人である以上、ただの平和主義者ではない。非凡な軍人だったがゆえに、“非戦派”だったのである。井上は早くから情報の重要性を理解し、作戦計画は正確な情報に裏づけられていなければならないと考えていた。
 井上は、日本には希な戦略的思考をもつ軍人だった。彼の対米戦争の予測は、一切の希望的観測を排した、冷徹な研究・分析に基づくものだった。昭和16年(1941)1月、井上は『新軍備計画論』という計画書を出した。その骨子は、将来の戦争では、航空機・潜水艦の発達により、主力艦隊同士の決戦は絶対生起しない。日米戦争の場合、太平洋上の島々の航空基地争奪が必ず主作戦となる。ゆえに、巨額の金を食う戦艦の建造など中止し、従来の大艦巨砲思想を捨て、新形態の軍備に邁進する必要がある。米国と量的に競争する愚を犯してはならない、というものだった。
 計画書が書かれた10ヶ月後、日本は真珠湾攻撃で対米戦争に突入。わが国は一時優勢に戦いを進めたものの、物量に勝る米国の巻き返しに遭った。井上の予測したとおり、米国による物資封鎖、わが国の連合艦隊の全滅、陸海軍の無条件降伏、そして「日本国全土ノ占領」等が現実となってしまった。
 終戦後、井上の計画書は米国海軍の手に渡った。そして「もし日本がこの計画を基礎に動いていたら日米戦は起こらなかっただろう」と言わしめた。
 さて、桜田氏はこうした井上が練っていた国防構想を次のように提示する。
「井上の構想は、『西太平洋上にある日本統治下の島々を徹底して堅牢な『要塞』にした上で、そこを拠点に配備された航空兵力を主軸にする』というものであった。要するに、対米開戦後、米海軍太平洋艦隊が西太平洋に進出してきたら、その都度、基地所属の航空兵力で叩くという仕方である。
 こうした仕方で戦況を膠着させれば、米国の戦争継続の意志は次第に萎えてくるから、その局面を見計らって対米講和に持ち込む。それが井上の構想の「肝」であった。この構想に従えば、海上兵力の主軸と考えられた戦艦や巡洋艦のごときは不要の存在になる。『不沈空母』としての島々を維持することが、対米戦略の基本であるからである」と。 
 井上の構想は、採用されなかった。井上は職を賭し、生命の危険を承知の上で、『新軍備計画論』を書いた。そして、時の海軍大臣及川古志郎に手渡したが、極秘扱いとされて実施に移されなかった。
 桜田氏は、井上の構想を現下の対中戦略に援用するならば、次のようになるだろうと、述べる。
 「第一に、南西諸島の島々が占領される事態を防ぐという考慮の下、南西諸島の然るべき島々に先々には12式地対艦誘導弾を含む装備を持つ陸上自衛隊部隊を配置することによって、この辺りの海域を徘徊する中国海軍部隊を牽制する。
 第二に、戦闘機を軸にした航空優勢を維持しつつ、空対艦誘導弾を備えた航空部隊も相応の規模で配置する。日本の海上防衛戦略が外に進出する性格を持たない防御的なものである限りは、井上の構想は現在でも充分に参考に値するのではないか。
 要するに、日本の対中戦略の基調は、中国海軍を外洋海軍ではなく沿岸海軍のままにさせておくということである」と。(産経新聞平成24年10月30日号)
 注目すべき提言である。桜田氏は「日本にとっては、尖閣諸島に絡む政策対応は、ただ単に領土や眼前の海洋権益を護持することだけではなく、日米両国を含む大勢の国々の常識としての開放性と法の支配の価値を尊重することへの考慮に結び付いている」という。日本には、単に自国の国益のためだけではなく、国際社会のルールと秩序を守るために、南西諸島を中国から防衛すべき責任があるという主旨のことを説いている。これも併せて注目したい点であり、日本が米国の積極的関与を求める論拠と成り得る主張である。

関連掲示
・拙稿「合理的判断で非戦を貫く〜井上成美
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(6)米国の専門家の見方も参考になる 

 

 米国には、尖閣問題について鋭い分析を行っている専門家がいる。彼らの見方は、米国の政府や議会で影響を与え得るものであるとともに、わが国の専門家の見方を補強し、日本人に警告を発するものともなっている。

ヴァンダービルト大学日米研究協力センター所長のジェームス・アワー氏の見解である。アワー氏は、米海軍将校として駆逐艦などを指揮し、海上自衛隊幹部学校への留学経験も持つ。国防総省日本部長などを歴任し日米同盟関係の維持、強化に貢献してきた。
 アワー氏は、米国の立場に立って、日本人に向けて次のように語る。「中国が尖閣諸島の領有権を石油資源の可能性が浮かんできた1970年代まで主張しなかったことは周知の事実であり、当時、中国側には尖閣諸島をはっきりと日本領として描いた地図も存在したと聞いている。しかし米国政府は伝統的に他の諸国の領土紛争には中立を保つ。だから尖閣の主権がどの国にあると公式に断定することはできない。尖閣諸島の保有に関しては日本自身が覚悟をせねばならないだろう。尖閣の主権をあくまで主張するならば、それを守る決意があることを示さなければならない。そのために戦う覚悟を示してこそ、初めてその領土への主権に正当性が得られるとさえいえるだろう」と。(産経新聞平成22年9月23日号)
 また、次のように日本の防衛政策について助言している。 尖閣諸島は日本の領土であるとの「日本の主張の正当性に問題はない。それは堅固なものであり、歴史と法律に基づいている。問題があるとすれば、南西諸島地域における日本の防衛能力が現時点で比較的に弱いという点だ」「日本政府は尖閣周辺の沿岸警備(海上保安)能力と同時に、恐らく警察力も増強することを計画している。取るべき尤(もっと)もかつ正当な措置だが、それだけでは抑止力として多分、不十分だ」 南西諸島地域に「十分に強力な不断のプレゼンスを持つことが緊要だ」「不断のプレゼンスは、南西諸島の主要な島への兵力常駐と、哨戒活動の継続、定期演習の大々的宣伝とが相まって達成できる」「例えば、能力ある陸上自衛隊大隊(ヘリコプター支援付き)を人が住む沖縄南方の大きめの島に常駐の分遣隊の形で分散配置すること、1個もしくは2個の固定翼機の航空自衛隊飛行中隊(できればヘリ能力保有)を沖縄南方の南西諸島の1島以上に駐留させること、適度の規模の海上自衛隊小艦隊を海自航空機部隊とともに哨戒、対潜水艦作戦の任務に当たらせることだ」。「もし信頼に足る日本の防衛能力が南西諸島地域に存在していれば、『トモダチ作戦』に見られたように、これらの日本の兵力を補完する米国の能力はいや増すだろう」「目標は、尖閣をめぐる中国との戦いではなく、日本が主導し米国が支援する、格段に信頼できる防衛能力により中国の無責任な行動を抑止することにある」と。(産経新聞平成24年10月12日号)
 明快かつ具体的な助言である。外交・安全保障に携わる政府関係者、国会議員だけでなく、広く日本を憂える国民が傾聴すべき助言である。

またアワー氏は、日米両国のあり方について、次のように主張している。
 「中国が南シナ海の海域や海底を支配すれば、最も控えめにみても、ASEAN(東南アジア諸国連合)の事実上すべての加盟国と同じように、日本の国家安全保障上の利益や中東の産油国も、重大な影響を受けるだろう。もし、日米両国が中国の発言や攻撃的な行動に対して、弱すぎる対応をした場合、日米両国政府は、見て見ぬふりをすることによって南シナ海に対する中国の主権を既成事実として受け入れたのだ、と将来、中国に主張されるというリスクを負うことになるだろう」
 「日米両国は、中国が言葉だけでは相手を尊重しないということをわきまえるべきである。そして、航行の自由の権利を確実なものにするために、頻繁かつ定期的な南シナ海の通行を実施するとともに、日本の石油の生命線が通っているのをはじめ、世界の貿易の3分の1が経由している地域が、中国によって支配されるのを阻止するに当たり、東南アジアの国々と結束すべきである」と。(産経新聞平成24年12月15日号)

 

アワー氏に続いて米国の専門家の見方を紹介する。主に産経新聞の古森義久記者の伝えるところによる。

 米議会国家安全保障特別委員会顧問等を歴任した中国の軍事戦略の研究者、リチャード・フィッシャー氏は、次のように語っている。「領有権紛争での中立という公式な立場は別として、どの米国政権にとっても中国による尖閣支配は台湾喪失にも近い重大な戦略的マイナスとなる」と。そして、「尖閣は台湾有事の米軍の『接近』のルートにあるし、日米両国に死活的な重要性を持つ中東やインド洋から太平洋への海上輸送路の途次にも位置している。その尖閣が中国軍の支配下に入ると、日本が従来の海上輸送路から切り離され、在日米軍基地の機能も骨抜きになりかねない」と警告する。中国側の当面の戦術については「実際の軍事衝突なしに中国内部での反日行動や外交上の激しい言葉という威嚇により、日本側に尖閣領有権を放棄させることが目的だ」と見る。また、日本の対応については「日本は防衛面でも強固な態勢を保たねばならない。中国の威嚇に動揺し、譲歩をすれば、さらなる攻勢や侵略を招くだけだ」と指摘している。同氏は、米国にとっての最悪の事態は「日本が反日デモなどに脅かされ、尖閣の主権で譲歩を始めて、中国の進出や侵略を許し、抵抗をしないままに、尖閣を失っていくというシナリオかもしれない」とも語っている。 (産経新聞平成24年10月2日号)

次に、米国議会調査局で長年、尖閣問題について研究してきた「戦略国際問題研究所(CSIS)」上級研究員ラリー・ニクシュ氏の見方である。

 ニクシュ氏はまず中国の今後の出方について「軍事力での尖閣攻略という方法はまだその能力を有さないこともあって、ここ数年は実行に移すことはないだろうが、一つの選択肢として当然考え、そのための軍備強化を図ってはいるだろう」と言う。そして、日本が当面、最も警戒すべきなのは「中国政府が軍人ではない工作員を『愛国活動家』というような形で組織し、100人から数百人単位を小艦艇で尖閣に上陸させ、テントを張ったりして立てこもらせ、日本側の実効支配を否定してみせる作戦だろう」と見る。尖閣に不法上陸した中国の工作員が一部、武装している場合、日本側が果たして武力を使ってでも排除できるかどうか、「日本の政治指導部には深刻なジレンマを突きつける」と述べている。(産経新聞平成24年10月7日号)

 フィッシャー氏の見方もニクシュ氏の見方も、わが国には似たような見方をしている専門家がいる。そうしたわが国の専門家の見方が、根拠のない思い付きや極端な発想ではないことを、両氏の見方は裏付けていると言えよう。
 次に、米国の中国海洋研究所所長ピーター・ダットン氏の見解である。ダットン氏は、「日本側の国有化はそれ自体、さほど大きな措置ではないが、中国はその動きを利用して、これまでの政策を変え、中国の主権主張により尖閣には領有権紛争が存在することを日本側に認めさせる決意を誇示する方向へと進んだ」「中国政府は自国民が尖閣取得を強く望むようになったと認識し、そのために日本に譲歩をさせることへの圧力が高まったと感じている」と言う。中国は、「日本に対し軍事力を直接ではなく間接に使い、他の経済や政治、外交の手段と組み合わせて多様で総合的な威圧をかけるという方法を当面はとっていく」と見る。日本側の対応については、「中国が直接の軍事攻撃を考えていない以上、海上保安庁の船艇で恒常的に警戒するという現在の方法が当面は最適だろう。事実上の尖閣付近の日本側領海での常時駐留ということになる。尖閣諸島自体への自衛隊配備は中国への挑発になりすぎるため、いまは控えることが賢明だと思う」と述べている。(産経新聞平成24年12月1日号)

 こうしたわが国の同盟国である米国の軍事専門家や中国研究者がどのように尖閣問題を見ているか、政治家や外交関係者は、良く参考にすべきだろう。
 次に、米国の中国研究の権威でジョージ・ワシントン大学教授であるロバート・サター氏の見解である。サター氏は、「米国やその他の中国周辺諸国にとって今回の事件の最大の教訓は、中国側が日本の尖閣国有化という平和的で、さほど重大でもない措置に対し、それを侮辱とみなし、無法で異常な行動を爆発させたという、中国の国家としての予測不可能性である。全国百二十余の都市での反日のデモや暴動の組織と扇動、そして貿易面での報復措置など中国政府の行動はみな暴力的で違法だという基本を認識すべきである」と語っている。
 サター氏は「21世紀の主要国が取る行動とは思えない」と中国を批判し、「世界でも最重要な地域の中心となる世界第2の大国が公式には『平和的発展』を唱えながら、これほど無法な暴力行動に出たことは、南シナ海でのフィリピンへの軍事的威嚇と合わせて、各国の中国への信頼を喪失させ、中期、長期の対中姿勢にも重要な変化をもたらすだろう」と予測する。(産経新聞平成24年10月18日号)
 サター氏の見解の要は、中国の対日行動について「核心は違法だ」ということにある。全くその通りで、尖閣諸島を東京都が買おうが、政府が買おうが、日本の国内問題であり、国内法に基づいて行われている合法的な契約行為である。これに対し、中国政府が日本政府を批判するのは、内政干渉である。もともと日本国籍の人間が所有していた土地であり、それを政府が賃借していたのである。そうした土地を最終的に政府が購入して国有地としただけである。ところが、中国政府は、反日デモや暴動を組織化して扇動し、貿易等で報復措置を打ってきた。サター氏が明確に指摘するように、「中国政府の行動はみな暴力的で違法」である。わが国とともに、米国や東アジア・東南アジア諸国は、この点の認識をしっかり共有すべきである。それが、「暴力的で違法」な中国政府に共同して対抗し、アジア太平洋の平和を守ることにつながる。そのために、わが国政府は、尖閣問題について、わが国は歴史的にも国際法上からも我が国の固有の領土であり、民間人から政府が購入し、国有化することに、一切問題のないことを明確に、国際社会に発信していくべきである。

日米の専門家の見解によっても明確になるのは、アジア太平洋地域で米中はかつてない緊張関係に入りつつあることである。その主たる要因は、中国の海洋進出である。わが国は、こうした国際情勢をよく理解して、独立主権国家としてあり方を早急に回復・整備しなければならない。具体的には憲法の改正、自主防衛力の強化、集団的自衛権の行使、尖閣諸島の防備が課題である。そして、米国や東南アジア諸国、オーストラリアと協力して「南西の守り」を固めるべきである。

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第4章 中国の無法暴虐に挫けるな

 

(1)中国の罠にはまるな    

 

 わが国は、中国の侵攻から尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守るために、いかにすべきか。

 まず基本的な姿勢として、わが国は中国に対し、外交において相手の罠にはまらないようにしなければならない。

 わが国政府が平成24年9月11日に尖閣諸島の国有化を決めると、以後中国政府は日本に対して激しい反撃を行っている。史上最大規模の反日デモ、各種の日中交流イベントの中止、軍人による主戦論の鼓吹、国連総会での露骨な日本批判等に対し、わが国の一部には動揺が見られる。だが、ここで中国の圧力に屈すれば、相手の術中にはまるだけである。注目すべきは、さきほどのような激しい反撃の一方で、中国はわが国に「平和的対話によって問題を解決しよう」「日本側は交渉によって争議を解決する軌道に戻るべきだ」等と言って、わが国府に交渉に応じるよう求めてきていることである。中国の外交パターンには、強く圧力をかけて相手を脅し、相手が弱気になったところで、交渉の席に着かせて、無理やりな交渉で目的を達するというやり方がある。
 石平氏は、9月27日の産経新聞「China Watch」に「おそらく中国政府は今後、政治・経済・軍事のあらゆる面で圧力をかけながら、日本政府に『交渉に応じろ』と迫ってくるのであろう。日本に対する揺さぶりはさらにエスカレートする可能性さえある。それに対して日本は『領土問題は存在しない、だから交渉に応じることはない』との立場を毅然として貫いていくべきだ。『罠』にはまってはいけないのである」と書いた。
 この記事以降も、中国政府は、様々な形で圧力をかけてきている。そのことについて石氏は10月11日の記事では、中国の反撃攻勢を振り返って整理し、分析を行っている。
 「胡錦濤指導部が主導したこの一連の対日攻勢の主な目的は当然、日本側に圧力をかけ、尖閣国有化からの撤退を強いることにあったはずだ。だが蓋を開けてみたら、それらはすべて、目的を達成できないまま中途半端に終わってしまったのではないか」と石氏は言う。野田首相は9月26日、「尖閣で妥協しない」と宣言したが、石氏は、これに対し、中国政府は激しい批判は展開したものの、さらなる「対抗措置」を取ることがなかったと指摘する。
 「野田首相の発言をもって、中国側の発動した史上最大の対日攻勢はまったくの徒労に終わってしまった。虚勢を張る以外に何もできないという中国の『張り子の虎体質』がそれで、白日の下にさらされた」と石氏は断言する。
 また、「日本側が毅然とした姿勢を貫くことさえできれば、中国は結局、日本を制するための決め手を何も持っていないのだ。一連の日中間攻防の経緯からは、中国は脅威ではあるが恐れるに足らずとのこと、そして現在は機能している日米同盟が実に重要で大きな効力を発揮していることなどを、われわれは十分に学んで認識しておくべきであろう」と述べている。
 そして、9月27日の記事で述べたことと同じ主旨の主張を繰り返して述べている。すなわち、「今後、中国政府は監視船による日本の領海侵入を常態化させて圧力をかけながら、日本側を領土問題に関する協議の席に引っ張りだそうとする戦術に転じていくだろうが、前回指摘したように日本政府はその罠に引っかかって領土協議に応じるようなことはあってはならない」と。(産経新聞平成24年10月11日号)
 わが国は、尖閣問題に関して毅然とした態度を貫き、わが国の立場を国際社会に向けて強力に発信し、わが国の正当性と中国の無法さを知らしめていくことが必要なのである。
 ところが、わが国には、中国の罠に半ばはまりつつある政治家がいる。たとえば、日本維新の会代表(当時)の橋下徹氏は、9月27日竹島について「歴史からみて日本固有の領土だ」としながら、「竹島について日本が韓国に『(ICJに)出てこい』と呼びかけるなら、尖閣についても、領土問題なしという主張はできない」と発言した。橋下氏は、竹島について韓国との共同管理を目指すべきだと発言し、「主権領有についてではなく、漁業、海底資源など周辺海域の利用の問題」「尖閣も同じ。しっかりとルールを作るべきだ」と述べた。橋下氏は、日本の固有の領土だが韓国に実効支配されている竹島と、日本の固有の領土でありわが国が施政権を行使している尖閣の状況の区別がついていない。竹島は不法に実効支配されているから、国際司法裁判所に提訴するのである。これに比し、尖閣は日本の施政権下にあるのだから、実効支配を強化することが課題である。橋下氏の尖閣についてわが国の領有権をあいまいにし、中国と周辺海域の共同管理をめざすかのような発想は、自ら中国の罠にはまりにいっているようなものである。仮に尖閣周辺を共同管理にした場合、次に中国が尖閣の奪取へと歩を進めてくるのは、明らかである。わが国の尖閣国有化をきっかけに無法暴虐ぶりをむき出しにしてきた中国に対し、これを厳しく批判しかつ断固として対抗措置を取ることなく、共同管理の方向に向いている橋下氏は、未だ国益をかけた外交を指揮できる政治家では到底ない。

(2)中国公船に対抗せよ

 

 わが国は、尖閣諸島周辺で活発な動きを見せる中国公船に、有効な対応策を実施しなければならない。

 平成24年9月中国の漁業監視船や海洋調査船が、尖閣諸島周辺のわが国領海内に、多数、出没するようになった。尖閣固有化に対抗する動きである。中国公船の動きは段々レベルを上げてきている。これらの中国公船と中国海軍はどういう関係にあるのだろうか。防衛大学校教授の村井友秀氏による解説が参考になる。(産経新聞平成24年6月7日号)

村井氏によると、中国では昭和39年(1964)に、「国防と国民経済建設に服する」機関として国家海洋局が創設された。制度上は政府の管轄下に置かれながら、海軍が実質的に管理してきた。昭和57年(1982)に国連海洋法条約が採択されると、中国は海上保安機関を強化した。1990年代に、国土資源部国家海洋局中国海監総隊、農業部漁業局、公安部公安辺防海警総隊等を組織した。

 国家海洋局中国海監総隊は、国家海洋局の命で、中国の管轄海域を巡視し、中国の海洋権益に対する侵犯、海洋資源と環境を損なう違法行為を発見し排除することを任務とする。海軍が実質的に管理し、海軍の予備部隊として、平時は違法行為を取り締まり、戦時は軍に編入されることになっているという。海洋調査船「海監」を保有する。

 「海監」の最新鋭である「海監50」は、排水量3300トンでヘリ搭載仕様であり、海上自衛隊の艦艇でいえば、きりクラス護衛艦の規模である。

 農業部漁業局は、漁業監視船「漁政」を保有する。海軍の潜水艦救難艦を改造した「漁政311」やヘリコプターを2機搭載できる「漁政310」等を持つ。「漁政」は南シナ海でインドネシア、ベトナム、フィリピンの漁船、巡視船や海軍の艦艇を威嚇し発砲している。公安部公安辺防海警総隊を海警という。海警は海軍のミサイルフリゲート艦を改造した巡視船を保有する。

 これらのことから分かるのは、中国の海上保安機関の船は改造された軍艦であり、海上保安機関は中国海軍と共同行動を取る組織だということである。なお、村井氏の説明では、海監は組織の名称であり、海監の保有する海洋監視船を略して海監とも呼び、同様に漁政も組織の名前と保有する監視船をともに漁政と呼んでいる。

 中国が尖閣侵攻に踏み切る場合、中国の海上保安機関は、中国海軍と一体となって、軍事行動を取るだろう。現在の海監・漁政の動きは、そのための偵察や準備と考えられる。これに対し、わが国は、海上保安庁と海上自衛隊の連携が進んでおらず、海上の警察力及び防衛力を総合的に機能させることができない状態にある。侵攻作戦は、相手の準備が整っていないうちに襲うのが、定石である。わが国の西方防衛は、累卵の危きにある。防衛体制の整備を急がねばならない。

 胡主席と習副主席は軍事専門家ではなく、中央軍事委での軍事に関する議論では軍人が強い影響力を持つ。毛沢東やケ小平は文民指導者であると同時に実戦で軍隊を指揮した経歴があり、軍人に対してもカリスマ的な影響力を持っていた。江沢民氏や胡錦濤氏には軍歴がなく、軍人への影響力は限られる。

 他方、政治局では胡氏は最大の影響力を持つ。したがって、軍人の強い影響下でなされた中央軍事委決定は、胡主席の意向として政治局内で強い影響力を持つ。つまり軍の意向が党の意向として国家を動かしているのである。

 

(3)中国海軍の示威に屈するな

 

 わが国は中国公船にしっかり対応する体制を整えることができていない。そうした状況において、平成24年10月16日、中国海軍の艦艇が初めて日本西端の接続水域を通過した。与那国島−西表島間の海域で、与那国島の南南東約49キロ付近と伝えられる。尖閣国有化に対抗し、侵攻・略奪をもくろむ中国政府が、武力による示威行動を行ったものと受け止め、警戒したい。
 中国の指導層には、好戦的な意見と慎重な意見があるのだろうが、好戦的な部分に注目すると、中国共産党機関紙「人民日報」は、24年7月13日の記事で、わが国政府の尖閣国有化方針を非難し、「国と国との関係は子供の遊びではない」「(挑発が)度を越せば、釣魚島問題を制御できなくなる危険性がある」「日本の政治家たちはその覚悟があるのか」「国の核心的利益について、中国は半歩でも退くことはない」などと、強硬な論を張り、武力行使も辞さない姿勢を示した。
 同年9月に入ると、人民解放軍から、自衛隊が尖閣諸島に出動した場合、軍事行動を辞さないとする発言が相次いだ。中国系香港紙「文匯報」によると、北京で9月15日、将軍5人の座談会が開かれ、徐光裕少将(軍防化指揮工程学院の元副院長)は「海上自衛隊が釣魚島(尖閣諸島の中国名)の12カイリ内に入るか、中国の民間船舶を攻撃すれば、断固として軍事行動を取る」と述べ、他の4人も主戦論を展開したという。また軍関係の研究機関・中国政策科学研究会の彭光謙少将は同月14日のシンポジウムで、「自衛隊が釣魚島に上陸すれば、一線を越えたことになる。軍はいつでも使命を履行できる」と述べたという。
 対外的には、強硬な発言をすることで日本人を威嚇し、領土を守る意思を挫こうとするものだろう。また国内的には、政権内での軍の発言力を強め、政府中枢に圧力をかける意図もあるだろう。今回の中国海軍艦艇の接続水域通過による武力による示威行動は、こうした好戦的な部分が具体的な形を取ってきたものと理解し、尖閣防衛の体制整備を急がねばならない。現状では、わが国独自の防衛体制整備ができておらず、米軍の協力に頼らざるを得ない。
 こうしたなか、10月22日陸上自衛隊と在沖縄米海兵隊による沖縄県の無人島を使った離島奪還訓練が予定されていた。しかし、実施直前にオバマ政権は統合演習の中止を決めた。中国を刺激しないためという理由らしい。相手を刺激しないために訓練を取りやめるというのは、誤ったメッセージを発することになる。そのためか分からないが、同月24日中国海洋調査船が尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)において事前通報とは異なる範囲で調査活動を行った。25日には中国の海洋監視船「海監」4隻が尖閣沖の日本領海に侵入した。その後も中国公船が領海侵入を繰り返している。

中国は尖閣周辺の海域を自国の領海や管轄区域のように振る舞う行動を常態化させ、わが国を屈服させようと狙っているものだろう。こうした中国の圧力に屈せず、自らの領土を守り抜く意思を強くし、尖閣防衛のための具体的措置を早急に進めるべきである。米国頼みの状態を続けていれば、中国には攻め取られ、米国には裏切られという最悪の事態に立ち至るだろう。

(4)中国は沖縄をも狙っている   

 

 シナ系評論家の石平氏は、平成24年9月13日産経新聞「China Watch」に、「尖閣問題で日中関係がぎくしゃくしている中、中国の一部の軍人や学者が突如、「沖縄は実は中国領だ」という奇妙なことを言い出した」と書いた。人民解放軍の現役少将で国防大学戦略研究所の金一南所長、復旦大学日本研究センター副主任の胡令遠教授、中国対外経済貿易大学国際関係学院の王海浜副教授らが、「琉球は中国領だが、日本がそれを不法占領している」と説いているという。石平氏は、中国国内から「琉球が中国領だ」という暴論が展開されたのは初めてのことだというが、私は、すでに22年(2010)の初めには、中国でそういう主張広がっているという情報を得ていたので、今回が「初めて」とはいえない。「初めて」と言えるのは、軍の高官や大学教授という高いレベルの人間が言い出したことだろう。
 石氏は、「本来なら関係性の薄い解放軍の現役軍人と大学の教授がほぼ同じ時期に同じ主張を展開し始めたことの背後には、中国共産党政権の影が感じられる。解放軍将校と大学の教授の両方に影響力を行使し彼らに同じことを言わせることができるのは、当の共産党政権以外にはないはずだ」と言う。この点はそうに違いないだろう。
 石氏は言う。「中国が欲しがっているのは、決して尖閣諸島だけではないことは明々白々だ。彼らはすでに、日本の沖縄に対する野望をむき出しにしている。おそらく中国からすれば、沖縄を名実ともに『中国の属地』にしてしまえば、中国の海洋制覇戦略の最大の妨げとなっている米軍基地をかの地から追い出すこともできるし、日本本土を完全に中国の軍事力の脅威下に置くこともできよう。そうすると、『琉球の中国属地化』の次にやってくるのは、すなわち『日本の中国属国化』なのである」と。そして、次のように主張している。「われわれはまさにこのような意味合いにおいて中国の考える『沖縄工作』の真意と狙いを理解しておかなければならない。このような国家存亡の危機にどう対処するのかが、まさにわれわれにとっての重要課題となるのである」と。

 もし尖閣が中国に奪取されたら、中国は次に沖縄を狙ってくる。沖縄を奪取したら、さらに日本全体を狙ってくる。だから、尖閣を守ることは、沖縄を、そして日本を守ることになる。
 中国は、これまでチベットや新疆ウイグルを併呑し、自治区としている。わが国が将来、中国の属国化されていった場合、日本全体が中国の実質的な自治区にされてしまう恐れがある。チベット、ウイグルでは、固有の文化を破壊し、宗教を弾圧し、虐殺・虐待を行い、民族的にも弱小化する政策を強行している。日本は、その二の舞にならないように、中国からの日本防衛を真剣に推し進めなければならない。

 

http://ic.mixi.jp/p/eeee89b0509d089af4b5ed86e710d3c7ff8dad830a/50d587d8/diary/1874008136_44.jpg

 

 平成19年末から翌年にかけて、中国で作られたという2050年の東アジアを予想する地図が話題になった。その地図には、日本の西半分(愛知県・岐阜県・石川県より西)は「東海省」、東半分は「日本自治区」と書かれている。地図の出所については、国際政治経済学者の浜田和幸氏が当時、雑誌「SAPIO」に次のように書いた。
 「私が初めてこの手の地図を目にしたのは、騒ぎになるよりも前、今から2年ほど前である。中国に駐在していた経産省の知り合いの官僚が帰国したので、久しぶりに会って話をしたのだが、『中国外務省の役人からこんなものを渡された』と見せられた地図に込められた禍々しい野心に、強い衝撃と怒りを感じたことを今もよく覚えている」
 浜田氏の解説によると、出生率の低下で日本の人口はどんどん減少する。そこで、列島の西半分に溢れ出た中国人を1億人単位で移住させ、「東海省」として中国の一部とする。少数民族となった日本人を、東半分に強制移住させ、「日本自治区」として、これも中国の版図に組み込む、というのである。この地図が中国外務省の作成したものか、他に作成者がいるのかは不明だが、アジアの覇権を目指す中国共産党の戦略が背景にあるものだろうと思う。
 日本を東海省と自治区に分けるのは、民族を分断し、対立させて統治する伝統的な手法である。その前に、民族統合の象徴である皇室をなくそうとするだろう。中国による属国化、分断統治を避けるには、日本人は日本精神を取り戻し、皇室を中心に団結しなければならない。
 ところで、私は、拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題」にて、エマヌエル・トッドの移民論を踏まえて日本の移民問題を論じ、中国人移民受け入れによる日本のシナ化への警告を発している。
 尖閣そして沖縄の奪取と移民の送り込みは、別個に行われるものではなく、一個の目的のもとに有機的に推進される計画と考えたほうがよい。軍事力と人口力を組み合わせて、ある地域を支配する仕方は、チベットでもウイグルでも実施している方法である。
 領土問題と移民問題を同時に意識したうえで、領土防衛を考える必要がある。繰り返しになるが、もし尖閣が中国に奪取されたら、中国は次に沖縄を狙ってくる。沖縄を奪取したら、さらに日本全体を狙ってくる。だから、尖閣を守ることは、沖縄を、そして日本を守ることになる。日本国内に中国人移民が増えていればいるほど、彼らは、本国が動くとき、それに呼応した動きを日本国内と行うと想定しておかねばならない。

(5)沖縄に独立宣言をさせる    

 

惠隆之介氏は、中国は沖縄に独立宣言をさせると警告する。惠氏は沖縄出身の元海上自衛官で、作家、拓殖大学客員教授である。惠氏によると、沖縄の仲井真知事は中国の「帰化人」であり、元の姓は蔡である。稲嶺前知事も「帰化人」であり、元の姓を毛である。「帰化人」というと本人が日本国籍を取得したという意味にもなるから、渡来人と言った方が良いだろう。仲井真知事の場合は、14世紀の終わりに琉球王国に渡来した福建人、つまりシナ人の子孫ということである。県知事がシナ人の子孫であり、中国に対し、先祖の国という意識を持っているならば、政治判断にゆがみを生じる可能性がある。

惠氏は、中国の策謀を次のように分析する。―――沖縄を取れば尖閣は付録で付いてくる。中国は沖縄に独立宣言をさせる。観光客と称して工作員を多数送り込み、親日派の首長を確保して発言を封じる。その時、わが国は何をできるか。内政干渉になるからと米国も手を出せないーーー

恐るべきシナリオである。惠氏の分析を受けて私見を述べるならば、沖縄の独立は、中国による直接的な侵攻・略奪ではない。沖縄県民の意思として行われるよう工作される。武力による戦争ではなく、諜報戦が行われている。独立宣言は、日本の国内法では非合法的な仕方であっても、中国は即座に沖縄独立に支持を表明するだろう。その途端に国際問題になる。今日、国際社会は、民族自決の検束によって独立運動を容認し、本国の武力介入に反対する傾向がある。中国は国連安全保障理事会の常任理事国であり、わが国は敵国条項の対象である。非常に厳しい展開となるだろう。
 もし沖縄が事実上、中国の支配下に入ったら、日本は窮地に陥る。シーレーンの防衛が困難になり、のど元に手をかけられた状態になる。中国による日本支配、日本併合へと進みかねない。
 ところで、琉球独立運動を煽動している有識者に、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏がいる。佐藤氏は、琉球新報に連載している「ウチナー評論」第248回(平成24年10月27日号)で、沖縄の現状は「民族紛争の初期段階」、ここで重要なのは「独自言語の回復」。それは「共通の歴史の記憶を呼び起こすから」と述べ、オスプレイの沖縄からの撤去、日米地位協定の抜本的改定、米軍基地の辺野古移設阻止が「焦眉の課題」と説く。独自言語等による文化の振興で、沖縄の「東京の中央政府」及び米国政府への交渉力が増すという。
 佐藤氏は、昨年交通事故で亡くなった言語学者・東京外国語大名誉教授の半田一郎氏に見出されて琉球語を学習した。だが、言語・文化への理解は、分離・独立の煽動ではなく、多様性の共存に生かすべきである。外務省のラスプーチンなどという異名を取り、ロシア外交に非凡な能力を発揮したといわれる佐藤氏だが、その外交センスは巷間称えられるような優れたものではない。一体、佐藤氏は沖縄を中国に盗らせるつもりなのか。そして沖縄を、日本をチベットやウイグルのようにするつもりなのだろうか。こういう一見保守のようでいて、日本の安全保障の根本をとらえそこなっている知識人に惑わされてはならない。
 中国による沖縄支配を防ぐには、どうすればよいか。私は沖縄県民の中国に対する意識の改革が最重要の課題であると思う。本土への不満と中国への幻想が結びついたとき、沖縄はチベットやウイグルと同じ道に迷い込む。また、わが国は、中国の諜報活動から沖縄及び日本を防衛するため、刑法の通牒利敵条項の復活、スパイ防止法の制定を早急に行うべきと考える。

(6)ハワイの領有も主張できると発言

 

 わが国が尖閣そして沖縄を守るには、唯一の同盟国である米国の対中外交・対中戦略をよく把握する必要がある。

 ヒラリー・クリントン国務長官は、平成24年11月過去に南シナ海の領有権問題を中国と協議した際、中国側が「ハワイ(の領有権)を主張することもできる」と発言したことを明らかにしたという。

 産経新聞平成24年11月30日号の記事から引用する。「クリントン米国務長官は11月29日、ワシントン市内で講演した際の質疑応答で、過去に南シナ海の領有権問題を中国と協議した際、中国側が『ハワイ(の領有権)を主張することもできる』と発言したことを明らかにした。長官は『やってみてください。われわれは仲裁機関で領有権を証明する。これこそあなた方に求める対応だ』と応じたという。

 協議の時期や詳細には言及しなかったが、20日の東アジアサミット前後のやりとりの可能性もある。仲裁機関は国際司法裁判所(ICJ)を指すとみられる。(略)

 クリントン長官は、中国と周辺国の領有権問題について、領有権の主張が地域の緊張を招くような事態は『21世紀の世の中では容認できない』と述べ、東南アジア諸国連合(ASEAN)が目指す『行動規範』の策定を改めて支持した。また、領有権問題は『合法な手段』で解決されねばならないと強調した。さらに、領有権問題は北極や地中海でも起こりかねず、米国は『グローバルパワー』として放置できないと明言。中国が『できる限り広範囲』の領有権を主張する中、法に基づく秩序維持のために『直言していかねばならない』と語った」

 中国共産党の論法なら、歴史的に一度も領有したことのない領域のどこでも、本来は中国領と主張できる。オマエのものはオレのもの、オレのものはオレのもの、という無法者、ならず者の論法である。

 クリントン国務長官は、中国で沖縄は中国領だという主張が出ていることの重大性を理解しているだろう。24年7月から、人民解放軍の現役少将で国防大学戦略研究所の金一南所長、復旦大学日本研究センター副主任の胡令遠教授、中国対外経済貿易大学国際関係学院の王海浜副教授らが、「琉球は中国領だが、日本がそれを不法占領している」と主張している。

 先に書いたが、石平氏は、「本来なら関係性の薄い解放軍の現役軍人と大学の教授がほぼ同じ時期に同じ主張を展開し始めたことの背後には、中国共産党政権の影が感じられる。解放軍将校と大学の教授の両方に影響力を行使し彼らに同じことを言わせることができるのは、当の共産党政権以外にはないはずだ」と言う。そして「中国が欲しがっているのは、決して尖閣諸島だけではないことは明々白々だ。彼らはすでに、日本の沖縄に対する野望をむき出しにしている。おそらく中国からすれば、沖縄を名実ともに『中国の属地』にしてしまえば、中国の海洋制覇戦略の最大の妨げとなっている米軍基地をかの地から追い出すこともできるし、日本本土を完全に中国の軍事力の脅威下に置くこともできよう。そうすると、『琉球の中国属地化』の次にやってくるのは、すなわち『日本の中国属国化』なのである」と述べている。

 中国は尖閣諸島だけでなく、尖閣の次は沖縄を狙っている。沖縄を奪取したら、さらに日本全体を狙ってくる。だから、尖閣を守ることは、沖縄を、そして日本を守ることになる。このことは、米国にとっても重大な意味を持つ。沖縄には米軍基地がある。沖縄から米軍が撤退した後、沖縄が中国領になれば、米国はアジア太平洋における拠点を失う。沖縄が中国の手に落ちると、アジア太平洋における軍事的なバランスが大きく崩れる。わが国の外交関係者は、米国の国務長官及び国務省幹部と、中国の領土的野心、覇権主義的な行動について、しっかり話し合い、連携を強めるべきである。

 

(7)米上院が「安保適用」を決議

 

 米国政府は、尖閣諸島について対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用対象としている。米国によるオバマ政権では、ヒラリー・クリントン国務長官が、そのことを明言し、政府の姿勢は以後、一貫している。米国については、議会の動向も把握する必要がある。

米国上院議会は平成24年11月29日の本会議で、尖閣諸島が日本の施政下にあることを認め、日米安全保障条約第5条の適用対象であることを明記した条項を、2013会計年度(12年10月〜13年9月)国防権限法案に追加する修正案を全会一致で可決した。
 国防権限法は国防予算の大枠を定めるもので、外交関連の修正条項が加えられる例が多いが、今回のように他国の領有権をめぐる問題に言及するのは異例とのことという。修正案は、元海軍長官の知日派として知られる上院の重鎮ジェームズ・ウェッブ議員(民主党)が主導し、共和党の元大統領候補ジョン・マケイン議員ら超党派の議員が共同提案した。ウェッブ議員は「日本の施政権を脅かす試みに米国が毅然と対抗する姿勢を示した」と意図を説明している。
 追加条項は、尖閣諸島海域を含む東シナ海を「アジア太平洋すべての国に利益をもたらす重要なシーレーン」と位置づけ、「航行の自由」を守ることが米国の国益にかなうとした。その上で「米国は尖閣諸島の究極的な主権について特定の立場をとらないが、日本の施政下にあることを認識している」とし、中国を念頭に、「第三者による一方的行動は、尖閣諸島における日本の施政権を認めるという米国の判断にいかなる影響も与えない」との文言も明記した。東シナ海での領有権をめぐる問題は、外交を通じた解決を支持し、武力による威嚇や武力行使に反対と表明し、日米安保第5条が尖閣諸島に適用されるとの米政府の立場についても「(同)条約に基づく日本政府への約束を再確認する」とした。
 この上院の決議は、尖閣は日米安保の適用対象との立場を明確にしているオバマ政権と歩調を合わせることで、中国をけん制し、超大国として事態の沈静化に貢献する意図を明確に示す狙いがあると見られる。米政府・議会が歩調をそろえて日本の立場を後押しする意図も感じられる。また、中国の新指導者・習近平総書記が尖閣問題や南シナ海の領有権問題で強硬路線を取る可能性が高いことへの対応でもあるだろう。法案は下院との協議を経てオバマ大統領の署名で成立する。
 わが国としては、唯一の同盟国である米国で、政府に続いて議会でも、尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用対象であることが明確にされることは、心強い。ただし、米国はニクソン政権以降、尖閣諸島の施政権が日本にあることは認めているが、領有権が日本にあるとは認めていない。「特定の立場をとらない」としている。明らかに中国に配慮している。また、尖閣が日米安保の適用対象と明言されても、そのことは無条件で、アメリカが尖閣防衛のために行動することを意味しない。わが国が自国領土を自ら守る決意を行動で示して初めて、米国に行動を期待できる。日米安保は片務的である。第5条で米国は日本防衛の義務を負うが、日本は第6条で基地を提供するのみである。尖閣諸島は無人島である。米国民は、日本の無人島を守るために、米国兵士が血を流してまで戦うことを理解できないだろう。日本人が自ら守る行動を示さない限り、アメリカ人が命を懸けて尖閣諸島を守ることはないと考えるべきである。

 

(8)中国の「旧敵国条項」悪用に備えよ

 

産経新聞平成24年12月12日号に、東京特派員の湯浅博氏が「日米安保は無効? 国連の『敵国条項』かざす中国の危険」という記事を書いた。この記事は、私が長年書いてきた懸念に触れている。戦勝国が、国連憲章の旧敵国条項を悪用する可能性への懸念である。

「国連=連合国」は、第2次大戦の戦勝国が作った軍事同盟である。設立は日米戦争中から進められた。軍事同盟であるから「敵国」と戦うための同盟である。そこで、「国連憲章=連合国憲章」には、「旧敵国条項」が定められている。
 この条項は、第2次世界大戦中に連合国の敵国であった国々に対し、地域的機関などが、安全保障理事会の許可がなくとも、経済的・軍事的に強制行動を取り得ること等が記載されている条項である。第53条と第107条である。条文には明記されていないが、旧敵国とは、日本、ドイツ、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランドの7か国を指すと考えられてきた。
 わが国は、「国連=連合国」に加入後、その一員として誠実に役割を果たし、経済復興後は、巨額の分担金を払って、組織を支えてきた。しかし、半世紀以上もの間、一貫して「旧敵国」の地位のまま、現時点でも条文の上では、そうである。アメリカも中国も、ロシアもフランスも、いざとなれば自由に日本に攻め入ってもいいということを堂々と決め、それを半世紀以上も、そのままにしてきたのである。
 昭和45年(1970)の第25回国連総会以来、わが国は、たびたび総会などの場で、国連憲章から「旧敵国条項」を削除すべしとの立場を主張してきた。ようやく平成7年(1995)12月、第50回国連総会において憲章特別委員会の検討結果を踏まえて、削除へ向けての憲章改正手続きを開始する決議が採択された。
憲章の改定には3分の2以上の賛成が必要なために、決議によって条項を死文化することにしたものである。しかし、そこから17年もたっているが、削除は実行されていない。旧敵国条項は未だ存在している。わが国は、「連合国=国連」に対する旧敵国という地位に置かれたままである。それゆえ、第2次世界大戦の戦勝国が、この条項を悪用して、日本に対する敵対的な外交や武力侵攻を行う可能性があるのであるーーそこに私の懸念がある。

 冒頭に書いた湯浅氏は、その可能性について書いている。習近平主導体制の中国による悪用の可能性である。

 大意を示すと、次のようになる。

――中国の習近平総書記は、就任時の11月15日、復古調の「中華民族の復興」を掲げた。習氏の「中華民族の復興」発言は、楊潔チ外相(註1)が9月の国連総会で述べた異様な罵(ののし)りの演説に通じる。外相は日本による尖閣国有化に関連し、日清戦争末期に「日本が中国から盗んだ歴史的事実は変えられない」と述べた。「この時、中国側が歴史カードを使ったのは、国連そのものが日独を封じる戦勝国クラブとして発足したことに関係する。国連憲章には日本を敵国と見なす「敵国条項」が残されたままである」「中西輝政氏は、中国がこの敵国条項を『日米安保を無効化する“必殺兵器”と考えている可能性が高い』と見る」「国連憲章の53条と107条は、旧敵国が侵略行動や国際秩序の現状を破壊する行動に出たとき、加盟国は安保理の許可なく独自の軍事行動ができることを容認している」「日本の尖閣国有化を憲章の『旧敵国による侵略政策の再現』と見なされるなら、中国の対日武力行使が正当化されてしまう。中国はこの敵国条項を援用して、日米安保条約を発動しようとする米国を上位の法的権威で封じ込めようとする策謀だ」「中国は国際法上、尖閣が日本の領土であることを覆すことが困難とみたか、国連憲章の盲点を突いて武力行使を正当化しようとする」「習新体制が日本に『華夷秩序』を強要しようとするなら、日本は同盟国と結束して中国を断固抑止する決意を固めたい」―――

 私は、中西氏の洞察は、おそらく当たっていると思う。楊外相が国連総会で日本による尖閣国有化について、日清戦争末期に「日本が中国から盗んだ歴史的事実は変えられない」と述べたことは、単に国連総会の場を使ったプロパガンダではない。周到な研究と計画あってのものと見て、わが国は外交的な対抗策を講じるべきである。

 

註1 楊潔チのチは「簾」の「广」を「厂」に、「兼」を「虎」に。

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第5章 国を守りつつ、日本の再建を急げ

 

(1)尖閣が占領されて奪還するというシナリオ   

 

わが国の現実はどうか。現時点(平成24年12月23日)で尖閣諸島には、灯台も避難港もない。気象観測所も携帯電話のアンテナ塔もない。自衛隊員などの公務員は駐在していない。尖閣諸島は、石油と天然資源が眠っている広大な海に囲まれた無防備な無人島である。

 こうした現状にあって、もし中国が尖閣奪取を目指して侵攻してきたら、どうなるのか。さまざまな予測があるが、国防を担う防衛省・自衛隊は、どう考えているのか。

尖閣沖中国漁船衝突事件後、防衛省は22年12月に新たな「防衛計画の大綱」を策定した。大綱は、脅威認識として島嶼部攻撃をはじめ各種の事態を列挙したが、国を挙げての対応策については「平素からの関係機関との連携を確保」と記しただけだった。自衛隊と海保、警察の協力強化の方策は何ら提示されていないというウソ寒いものである。
 防衛省は、大綱策定の直後、自衛隊の警戒監視・機動展開態勢などの強化策を検討するにあたり、尖閣諸島が中国に占領されるシナリオを作成した。この対中有事シナリオは、中国人偽装漁民が尖閣に不法上陸して、中国が簡単に占領。中国軍は宮古島・石垣島に武力侵攻。そこでようやく防衛出動が発令され、自衛隊が奪還作戦を行うというものである。何も考えていないよりは良いのだが、内容はまことに心もとない。だが、日本国憲法と現在の自衛隊法、そして「防衛計画の大綱」のもとでは、こうしたシナリオにならざるを得ないのだろう。

シナリオの内容を少し詳しく見てみよう。

 

<第1段階>

 漁民を装った中国の海上民兵が白昼堂々と尖閣諸島に不法上陸する。中国はすかさず「漁船が難破した」と国際社会にアピールする。人民解放軍の政治戦略である三戦すなわち法律戦、世論戦、心理戦のうちの世論戦である。

わが国は、沖縄県警の警察官が尖閣に乗り込み、入管難民法違反の現行犯で偽装漁民を逮捕する。海上保安庁の巡視船も周辺海域に展開する。

<第2段階>
 これに対抗して、中国は国家海洋局の海洋調査船「海監」を派遣する。わが国は、海監は大型・高速化が進み、海保の巡視船では排除できないと判断し、海上警備行動発令により海上自衛隊の艦艇や航空機が出動する。
 中国は「日本が不当な軍事行動を仕掛けてきた」と主張して、世論戦を行う。これは同時に、宣伝や威嚇によりわが国の抵抗意志をくじくことを目的とした心理戦でもある。

<第3段階>
 中国はここで海軍艦艇を投入してくる。海自の艦艇などは武力衝突に発展するのを懸念し、海域を離脱する。警察官も偽装漁民を残し尖閣から撤収する。これによって尖閣は中国に占領されたことになる。
 中国軍は宮古島・石垣島に武力侵攻する。これは米空母の介入を防ぐための行動でもある。この段階に至って、内閣総理大臣は自衛隊に防衛出動を発令する。海自・空自の艦艇や航空機を集結させ、米軍も展開。陸自部隊は奪還作戦に入る。

 

防衛出動は、自衛隊法第76条に次のように定められている。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

第七十六条  内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成十五年法律第七十九号)第九条 の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。

 内閣総理大臣は、出動の必要がなくなつたときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

防衛出動は、一種の軍事行動と解される。ただし、戦時国際法上の宣戦布告には該当せず、自衛権を行使することはできても、交戦権は認められない。

尖閣諸島は無人島だが、宮古島・石垣島には、日本国民が居住している。宮古・石垣が攻撃される段階にならないと、自衛隊に防衛出動命令は出ないと防衛省は認識している。出たとしても判断が遅れれば、事態は遥かに深刻になる。住民の生命と安全が重大な危険にさらされる。住民を人質に取られた状態で、奪還作戦をどこまで実行できるのか、外交と軍事を一体的に展開して中国に対抗できるのか、課題は多い。

陸海空3自衛隊は23年11月統合演習を行ったことが、24年5月に明らかになった。自衛隊は尖閣諸島が中国に占領されたと想定し、詳細な奪還作戦を策定していた。防衛省の尖閣占領シナリオを具体化させ、対処要領をまとめたものという。
 事態は、平時の不法行動、武力攻撃予測事態、武力攻撃事態と認定しての着上陸作戦の3段階をたどると想定。まず中国側は漁民を装った海上民兵が尖閣に不法上陸する。これをきっかけに中国海軍が尖閣周辺海域に艦艇を派遣し、水陸両用・空挺部隊が展開する。中国の戦闘機が九州周辺の日本領空に波状的に侵入する。これに対し、自衛隊は、陸自部隊の統合輸送・機動展開、防空作戦、対艦攻撃、自衛隊と米軍の施設防護、尖閣での着上陸作戦の5つの作戦で応戦する。統合演習では、中国の弾道ミサイルの命中精度向上を踏まえ、陸海空3自衛隊の「統合運用」による迎撃能力の強化策も検証したという。
 自衛隊による単独作戦を想定しているが、日米安保条約第5条が適用されれば、米軍が参加し、より強力かつ重層的な作戦が可能になるとみられる。
 ただし、問題点もある。尖閣占領が民兵上陸に端を発するならば、海上保安庁や警察が初動対応を担うが、自衛隊との連携強化は進んでいない。陸自部隊を展開させるには、海自・空自の輸送力強化が不可欠である。無人偵察機の導入も検討されよう。
先島諸島は、宮古島にある航空自衛隊 レーダーサイト以外は、自衛隊がまったく駐留していない「軍事空白域」となっている。弾薬・燃料も常備されておらず、事前集積拠点の確保策も詰める必要がある。これらの問題点は、日本国憲法とそれに基づく現在のわが国の法制度の欠陥によるものである。

 そういう厳しい条件のもとであっても、国防の現場は、真剣に中国の尖閣侵攻に備えている。奪還作戦の遂行は、生命を賭したものとなる。自衛隊法は第52条に服務の本旨として、次のように定める。「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め、もつて国民の負託にこたえることを期するものとする」。そして、第53条に「服務の宣誓をしなければならない」と定める。それに基づいて、自衛隊員は、次のような宣誓を行う。
 「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」
 ここに「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」とあるように、自衛隊員は生命を懸けて、国土・国民の防衛に当たっている。我々国民は感謝と敬意を以て、その志を受け止めねばならない。

それとともに、早急に防衛体制を整える必要がある。私は、領域警備法の制定、集団的自衛権の行使、専守防衛から戦略守勢への転換、憲法の改正を断行しなければならないと考える。次にこれらの課題について私見を述べる。

(2)領域警備法の制定を急げ

 

尖閣を守るため、わが国は領土と主権を守るための法整備を至急断行する必要がある。

平成24年8月29日に海上保安庁法と外国船舶航行法は、一応の改正がなった。海上保安庁法の改正で、海上保安官に離島での陸上警察権を与えた。尖閣に不法上陸する外国人らを海上保安官が警察官に代わり捜査・逮捕することができるようになった。また、外国船舶航行法の改正で、巡視船艇が違法船舶に立ち入り検査なく退去命令を発することができるようになった。だが、海上保安官の権限を拡大しただけでは、領土・領海は守れない。相手が民間人の間はいいが、軍隊が攻めてきたときは、海上警察では対抗できない。そこで、早急に行うべきものが、領域警備法の制定である。

自衛隊には、わが国の領土・領海を不法に侵害する行為を排除する領域警備規定が付与されていない。そのため、現状では外国軍が領土・領海を侵犯したとき、わが国はまともに自国を守ることが出来ない状態である。普通の国では、領域警備は軍隊が担う。領域警備は治安維持ではなく、国防を目的とする防衛作用である。自衛隊法を改正し、自衛隊に領域警備の任を与える必要がある。また武器使用を国際法規に準拠させるよう改める必要がある。自衛隊は自衛隊法82条に海上警備行動が定められており、発令の前例はある。ただし、93条により権限は警察官職務執行法・海上保安庁法の準用と規制されている。自衛官の武器の使用は警察官に係る規定に準ずるとされており、海上警備行動では限界がある。中国の動きに対し、首相は戦後初の防衛出動を命じる覚悟をしていないと、いざとなってから検討するのでは、後手に回る。そこで領域警備法を制定し、いわば防衛出動を常時発令した状態にしておかないと、日本への侵攻に即応できない。

現状では自衛隊は法規上、領域警備ができないため、侵攻を未然に防ぐことはできず、占領されてから出動するしかない。領域警備については、下記のサイトが参考になる。
http://www.drc-jpn.org/AR-6J/furusawa-j02.htm

要所を抜粋にて転載させていただく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆領域警備の概念

 領域警備については、明確に定義付けされたものはないが、一般に、武装工作員、武装工作船や偽装工作船等(不審船)による無差別殺人、破壊を企図したテロ行為等の武力攻撃に至らない急迫不正の侵害に対する自衛権の行使と言われる。
 国防は、国家国民の生命財産を守ると共に、主権・国益を守ることである。そして、領域は、国家の主権の及ぶ範囲を示す。従って、領域への軍事的又は準軍事的侵害に対しては、一般に国家は軍事的対処を行い「領域自衛行動」を発動する。また、密輸、密漁、密入国の犯罪行為に対しては警察的対応を行い「秩序維持行動」を行使する権利を有している。領域警備の及ぶ範囲は、領土領海の主権の確保から、排他的経済水域の主管的権益の保護に及び、更には国際法における追跡権の及ぶ公海まで含むと解することが出来る。

◆領域警備についての我が国現行法の基本枠組み

(1)領域警備の責任
 領域警備についての明確な規定は我が国には存在しないし、定義や性格、防衛行動か警察行動かの区分も不明であり、従って、領域警備について総合的に調整指揮機能を司る機関が定かではない。領域警備は、形式的には警察作用の枠組みとして捉えられており、従って第一次的には警察機関・海上保安庁が責任を持ち、現行法では自衛隊には領域警備の任務はない。警察力の限界を超える場合には、「特別の必要がある場合」として補完的立場として自衛隊が対処する。ただし、最近の隊法改正により工作船の可能性が高い不審船等については、不測の事態に備えて当初から自衛隊の艦艇を派遣する措置がなされる。(略)

(3)領域警備に関する自衛官の権限
 (略)自衛隊法では自衛隊の行動は限定列挙方式のため、法律で列挙されていることのみを実施することになっており、明記されていないことは実施できないことになっている。従って、自衛隊は、仮に目の前で海賊行為や領海侵犯が行われていても、海上警備行動や治安出動が命令されなければ、監視と治安機関への通報以外何も出来ない。

◆今後の課題

 領域警備は我が国と外国の接点に位置する自衛行動であり、平時有事を問わず国際関係に微妙に影響を及ぼすものである。これまで述べてきたように、この分野についての我が国は、政治的、法的に曖昧であり、態勢も諸外国に比較して欠落しており、我が国の安全保障体制に大きな不安を残しているのが現状である。領域警備を考える上での今後の課題について列挙する。

@自衛隊法3条に領域警備を自衛隊の任務に付加
 領域警備について国家としての対処方針を明確にし、領域における我が国の主権を確保堅持する自衛隊の責任と権限を明確に与えることが重要である。これにより平時から有事に至る時系列的に、また、国土・領空・領海及び領域に至る国家主権の及ぶ地理的な範囲の安全保障について自衛隊の役割を明確にする事が出来る。武装工作船、武装工作員の活動は、武力攻撃に至らないが軍事的色彩の濃い破壊活動であり、海上のみならず同時多発的に沿岸、陸上でも活動が考えられる輻輳した事態である。従って法秩序破壊勢力に対する警察作用と同時に外国からの浸食攪乱に対しての防衛作用として捉える必要がある。
 また警職法、海保庁法の準用規定のみでは、現場における自衛隊の法的執行及びその迅速な処理に限界があり、より法的に強力に対処できる法の制定が必要である。自衛官の執行権限の明確化は、領域警備の現場での実行上重要な意味がある。
 国連海洋法条約で軍艦は公海上における海賊船等の臨検、拿捕が出来るが、我が国の場合、国内法の規定がないために実施できない等自衛隊の行動に制約がある。

A領海法に包括的な無害でない通行と罰則規定等の付加
 工作船と推測される不審船を漁業法或いは船舶法違反容疑で追跡しなければならない疑問を解消するためにも、領海内の無害でない通航に対する法的根拠の確立が必要である。またスパイ防止法(秘密保護法)の制定による領域内の情報収集活動を牽制する根拠を明らかにし、立ち入り検査等によって事実の確認や資料の没収、域外退去等の強制措置をとれるようにすることが独立国として重要である。更に、海洋資源保護法の制定により、東シナ海領域における中国の調査活動、探査活動等を取り締まる体制とする。国連海洋法条約の直接適用による退去要請だけでは、国家の主権行使としての効果が期待できない。

B海上保安庁法25条の改正を行い、平時においては現状の活動としても、装備、人材等の資源を、有事に自衛隊と共に効果的に発揮出来る体制を整備する。

(ほそかわ註 現行25条は「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定めている。これをBの主旨で改正する必要がある)

C情報収集体制の充実
 広大な領域を効果的効率的に警備するには、早期警戒のための情報収集が重要であることは論を待たない。偵察衛星、広域監視システムの整備充実と警備情報に即応できる艦船、航空機と特別に訓練された専門集団が必要である。また多様な不法侵害に対して国民の関心を喚起し、民間の領域警備についての自警システムの構築も考慮する必要がある。(略)
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わが国の政府は、国防に関する施策に非常に消極的な姿勢を続けてきた。現行憲法でできることさえ、やっていない。現状は領域警備の法整備ができていない。尖閣を守るには、領域警備法の制定が急務である。

現状では海上保安庁が対応できない場合は、海上警備行動に基づいて自衛隊が行動するのだが、海保と同じ警察行動しかとれない。先に触れた自衛隊の尖閣奪還作戦は、現行法のもとでの計画ゆえ、内容が弱い。領域警備法を制定し、幅広く行動ができるようにする必要がある。そして、海保と海自との連携を強化し、海上警備行動が発令される前の段階でも、警戒にあたる海自艦艇などに対し、外国船を抑止するための武器使用権限を与えるべきである。特に平時から常に自衛隊が海保、警察を支援できる法体系を整え、武器使用基準も定めることが、国の総力を結集するための領域警備法の要であり、海上警備行動、治安・防衛出動に至るまで自衛隊が間断なく対処できる法的枠組みとなると思う。

自衛隊の領域警備は法整備だけででき、海上保安庁の警察力強化と違い、時間も予算もかからない。自衛隊員の常駐は、実効支配を大きく強化させる方策である。無人島でも自己完結的に行動できる組織は、自衛隊しかない。

ただし、領域警備を法制化し、自衛隊を領域警備に当てても、なお独立主権国家の国家安全保障としては、周辺諸国に大きく劣る。防衛力を高めることによってのみ、尖閣奪取を狙う侵攻戦争への抑止力となる。そこで次の課題となるのが集団的自衛権の行使、専守防衛から戦略守勢への転換、そして国家安全保障を充実するための憲法改正である。続いてこれらの課題について書きたい。

 

(3)集団的自衛権の行使を可能とせよ 

 

尖閣を守るには、集団的自衛権の行使を可能にすることが必要である。集団的自衛権は、国連憲章に盛り込まれている権利である。自衛力を持つことは、自然権である。国連憲章は、個別的自衛権と集団的自衛権をともに国家の固有の権利と認めている。集団的自衛権について、「国際法上は保有するが、憲法上、行使できない」というこれまでの政府の立場はおかしい。内閣法制局の官僚による詭弁的な解釈を改め、集団的自衛権を行使できるとする必要がある。法の制定ではなく、解釈変更という広義の法整備である。尖閣をめぐり、日中紛争となる可能性があり、展開によっては、日米安保第5条により米軍が出動する事態が想定される。その際、わが国が集団的自衛権を行使できない状態であれば、日米は緊密な共同作戦を行えない。仮にわが国が集団的自衛権を行使できないことによって米軍が損害を受け、犠牲者が出た場合、米国世論は日本への不満を高めるだろう。集団的自衛権の行使は、政府の解釈変更によって可能にできる。政府は速やかに権利行使を決断すべきである。
 従来の政府解釈は、日本も主権国家である以上、集団的自衛権は国際法上、他の国と同様、集団的自衛権を有しているとしながらも、その行使は、憲法第9条の下に許容されているわが国を防衛するために必要な最小限度の範囲を超えるものであって許されないというものである。
 この政府解釈では、何のために集団的自衛権が国際社会で認められているのか、一般の国民には理解できないだろう。わが国が集団的自衛権の行使にかかわるのは、現状アメリカだけである。それを具体的に考えて初めて、生きた意味を持つ。
 政府解釈による集団的自衛権とは、アメリカが第3国から武力攻撃を受けた場合、日本が直接攻撃されていないにもかかわらず、アメリカのために反撃を加えることができる権利という意味になる。これは、アメリカの戦争に巻き込まれるという意識が強い。しかし、集団的自衛権には、日本が第3国から武力攻撃を受けた場合、アメリカが直接攻撃されていないにもかかわらず、これを自国への攻撃とみなして、日本のために反撃を加えてくれる権利という意味もある。これは、日本はアメリカという同盟国を持っているという意味になる。そのことを政府は、明確に打ち出していない。自国と他国の間に、上記の両方の権利が成立するところに、本来の集団的自衛権が機能する。
 自国の防衛に協力してもらうには、他国の防衛にも協力しなければならない。それがいやなら、他国と同盟を結ばず、自国だけでやっていくしかない。それには当然、憲法を改正し、自主防衛を整えなければならない。しかし、それもいやだということになると、あれもいやこれもいやという幼児のような状態である。大人の社会では、通用しない。他と持ちつ持たれつの対等の付き合いも出来ず、他に頼らず自立することも出ないような人間は、大人の社会では相手にされない。大人の社会とは、日本を取り巻く現実の国際社会のたとえである。
 集団的自衛権の行使について、私は憲法を改正し、憲法の条文に明記するのがよいと考える。ただし、行使について、憲法改正は必須の条件ではない。権利を保有するが、行使はできないという内閣法制局の解釈を改めれば、行使は可能となる。現在の国会の議員構成では、いかに憲法改正の気運が高まっても、憲法改正には3年半以上かかる。その見通しを踏まえると、憲法改正の前に、まず集団的自衛権の行使を実現することが必要である。中国の侵攻から尖閣諸島を守り、沖縄を守るには、集団的自衛権が行使できるようにしなければならない。行使は政府が解釈を変えれば、それで実現できる。安倍首相は、断固解釈変更を決断すべきである。

 

関連掲示
・拙稿「集団的自衛権は行使すべし

 

(4)専守防衛という誤った概念を改めよ

 

 平成23年8月に発表された23年版防衛白書「日本の防衛」は、尖閣沖中国漁船衝突事件をめぐる対応や南シナ海での領有権主張を念頭に、中国の対外姿勢を「高圧的」と明記した。また、各国政府機関や軍に向け多発しているサイバー攻撃に対する脅威認識を表明にした。
 具体的な対応について述べる「実効的な抑止と対処」の節では、対中シフトが見られる。これまで北朝鮮を念頭に、まず弾道ミサイル、ゲリラや特殊部隊の攻撃への対応を挙げていたが、周辺海空域の安全確保、島嶼部攻撃への対応に替わった。明らかに、中国による尖閣諸島等への侵攻を警戒したものだ。だが、具体的にどう守るのか、対中防衛のための機動展開や警戒監視等の態勢整備が伴っていない。

わが国は、専守防衛という間違った防衛思想から脱しなければならない。専守防衛は、軍事用語の戦略守勢とは異なる。戦略守勢は、全般的にみれば守勢であるが、戦術的な攻撃を含んでいる。敵から攻撃を受けた場合は、敵基地に反撃するし、明らかに攻撃を受けることが予測される場合は、先制攻撃することも含まれる。もともと防衛白書では、戦略守勢を使っていた。ところが、昭和47年(1972)、田中角栄首相が、戦略守勢の本来の意味を否定し、受身の防御をもって「専守防衛=戦略守勢」だと歪曲した。以後、この政治的というか、むしろ媚中外交のために作られたというべき、専守防衛という言葉が、わが国の防衛を自縄自縛している。専守防衛については、拙稿「核大国化した中国、備えを怠る日本〜日中戦後のあゆみ」の第2章に詳しく書いたので、参照願いたい。
 22年9月、菅首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」は、首相に報告書を提出し、専守防衛・武器輸出三原則・集団的自衛権の憲法解釈の見直しを提起した。画期的な問題提起だった。だが、菅内閣では、この見直しはされず、同年12月に出された「防衛計画の大綱」は、従来の方針に基づくものとなった。23年版の防衛白書は大綱の主旨に基づくもので、具体的に日本を守る方策を欠く。
 中国は、ウクライナから購入した空母「ワリヤーグ」を完成させ、24年9月就役させた。11月には艦載戦闘機「J−15」の着陸試験に成功した。まだ、課題は多く、機動部隊を組んで実際に稼働するまでには数年かかると見られる。中国は計画的に空母の生産を続け、機動部隊を構築していくだろう。
 わが国は、専守防衛という間違った防衛思想を捨て、日本を守ることのできる防衛力を整備しなければならない。

(5)憲法を改正せねば、日本は滅ぶ

 

領土を守るには、国のあり方を根本的に改める必要がある。それは憲法の問題に帰着する。わが国は憲法に大きな欠陥があるため、領土をしっかり守れない状態になっている。尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守るために成し遂げねばならない最大の法整備上の課題は、憲法の改正である。

大東亜戦争の敗戦後、連合国の中心となった米国は、日本を弱体化し、再び日本が米国及び連合国の脅威とならないようにすることを、占領政策の目的とした。それまでの日本のあり方を変えた。日本弱体化政策の要が憲法だった。日本国憲法を起草したのは、GHQである。草案は英文で書かれ、それを日本側で翻訳したという、米国製の翻訳憲法が、現行憲法である。

この憲法は本来、GHQが占領政策を実行するための法的基盤を整えるものだった。即ち、占領基本法として押し付けたものである。さらに、それは占領政策の効果を、占領期間を超えて、固定化・持続化しようとするものだった。そこには、日本を敵国とする、国連の敵国条項と同じ精神が流れている。また、この憲法は、半植民地憲法と呼ぶべき出生の秘密を持っている。日本の主権を制限し、日本を米国の従属国・被保護国的な地位に置こうとするものだった。すなわち、日本国憲法は、@米国製の翻訳憲法、A占領基本法、B半植民地憲法という3つの特異な性格を持っている。そしてそれ故に、現行憲法は、日本を弱体化させ、亡国に導く亡国憲法なのである。

日本国憲法の制定後、60年以上にも及ぶ長期間、この憲法が日本の政治、行政、防衛、教育等の法的枠組みとして存続してきたことによって、今日の亡国の危機が生み出されている。

現行憲法は、前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの生存と安全を保持することを決意した」と書いてある。その関連で第9条に戦争放棄・戦力不保持・交戦権の否認が規定されている。「平和を愛する諸国民」というが、中国(チベット・ウイグル・南シナ海等)、韓国(竹島等)、北朝鮮(拉致等)を見れば、世界の現実は全く違うことが明らかである。

憲法が国防を規制し、戦力としての軍を持たず、交戦権を否認するようにして、他国に生存と安全を依存せしめている。そのため、ひとりでに国家が崩壊するような仕組みになっている。国防だけではない。日本人が持ってきた国家観、歴史観、道徳を否定し、教育の根本を抜き去り、家族を個人に解体する。この憲法は、日本を亡国に導く亡国憲法である。

とりわけ本稿の主題に係る領土の主権の問題に関しては、第9条の束縛が、日本を危うくしている。第9条は「戦争の放棄」という題の章に置かれた条項である。しかし、一国の憲法に定める必要があるのは、安全保障であって、安全保障の内容として、戦争や戦力に関する規定を置くべきものである。独立主権国家は、固有にして自然の権利として自衛権を持つ。自衛権の具体化として軍隊を持ち、必要に応じてこれを行使する。ただし、その戦力は、他国を侵攻する戦争には用いず、自国の防衛と国際平和の実現のために使用する。このように定めるのが、一国の憲法にふさわしい規定であると私は考える。

現行憲法の第9条は、こういう規定ではない。 日本はポツダム宣言を受諾して降伏した。軍隊を武装解除し、連合国軍の占領統治を受けた。占領下の日本は、軍事的保護の下に置かれた。マッカーサーは、日本は侵略戦争を起こした国家であるとして一方的に断罪し、再びこの国がアメリカをはじめとする連合国の脅威とならないように、弱体化しようとした。 マッカーサーは、武装解除・被保護の日本をなるべくその状態に近い形で、占領終了後も持続しようと図った。非武装化は、日本の主権を否定し、国家でなくしてしまうことに等しい。そこまでは、できない。そこで、日本の主権を制限するために置かれたのが、第9条である。ここにいう主権の制限の核心は、強い軍隊を持たせないようにすることである。そこに、第9条の最大の目的があると私は思う。

第9条による国防への規制は、外交にも重大な影響を与えている。日米関係や首相の靖国神社参拝、慰安婦問題など、日本の外交は、とめどなく弱腰であり、外国の言いなりになってきた。こうした外交の問題も、国防の問題と関係している。軍事力の裏付けがないと、外交政策を強く推し進めることはできない。外交で相手に軽く見られないようにするには、軍事力が必要である。経済力や技術力だけでは、独立主権国家として国益を追求する外交はできない。

私たちは、憲法を改正し、本当に日本と日本国民のためになる憲法を作る必要がある。それが日本の再建の要であり、領土と主権を守ることになる。

 日本人は、まず自分の手で憲法を作り、独立主権国家としてのあり方を根本的に整え、また自分で自分を守るという気概を持たねばならない。それを実行しなければ、日本は自ら崩壊するか、他国に侵攻され、さらには併呑されるかしかない。これは日本人一人一人の運命にかかわる課題である。ページの頭へ

 

関連掲示

・拙稿「日本国憲法は亡国憲法――改正せねば国が滅ぶ

・拙稿「憲法第9条は改正すべし

・拙稿「国防を考えるなら憲法改正は必須

・拙稿「日本再建のための新憲法――ほそかわ私案

 

 

結びに〜24年衆院選から憲法改正へ

 

 平成24年12月16日、衆議院総選挙が行われた。憲法改正を目指す自民党が大勝し、憲法改正に消極的な民主党が大惨敗した。

 次期総理となる自民党の安倍晋三総裁は、12月17日、党本部で記者会見し、憲法改正の要件を定めた憲法第96条の改正について、「日本維新の会とみんなの党も基本的に一致できるのではないか」と述べ、連携を模索する考えを示した。憲法改正について安倍氏は、「発議のために必要な3分の2の議席は(公明党と合わせ)衆院では確保したが、参院ではほど遠い」と述べ、96条改正に賛成の立場を示している維新、みんなの協力を得たいとの考えを示した。これに対し、維新幹事長の松井一郎大阪府知事は記者団に、96条改正を自民党が提案した場合は「賛成する」と明言したと伝えられる。
 12月16日に行われた衆院選では、当選者の多くが憲法改正に賛成し、また集団的自衛権行使に賛成している。わが国は憲法改正、国防強化の好機を迎えつつある。
 毎日新聞社は12月17日、衆院選の全候補者アンケートを基に、当選した新議員の回答を再集計した。定数480人のうち473人が回答し、回答率は98.5%だった。憲法第9条改正は、72%の342人が賛成。改憲の発議に必要な「衆参両院の3分の2」のうち、衆院側の条件を満たすことになる。また、集団的自衛権の行使を認めていない政府の憲法解釈について「見直すべきだ」と答えたのは370人で78%を占め、「見直す必要はない」(82人)の17%を大きく上回った。
 毎日の記事によると、平成21年(2009)衆院選の当選者の回答では、9条改正は反対が51%と過半数で、賛成は34%。集団的自衛権の憲法解釈を「見直す必要はない」が50%で、「見直すべきだ」の37%を上回っていた。しかし、自民党が大勝した今回、衆院の新議員の志向は前回選挙と大きく変わっていると指摘している。
 共同通信社も、12月17日、衆院選当選者のうち立候補者アンケートで回答を寄せていた議員について分析した。定数480人のうち94.6%に当たる454人が回答していた。分析によると、憲法第9条改正派は75.6%に当たる343人で、改正発議に必要な480議員の3分の2以上だった。9条改正派の内訳は、憲法の「全面的改正」が45・6%、「9条を含め部分改正」が30・0%だった。また、自民党圧勝や日本維新の会の議席増を受け、集団的自衛権行使については、容認派が81.1%を占めたという。
 これら2社のアンケート結果をまとめると、憲法第9条の改正に賛成が、毎日では72%、共同では75.6%、集団的自衛権の行使については、毎日で「見直すべき」が78%、共同で「容認」が81.1%となる。
 2つのアンケートの欠陥は、96条の憲法改正規定の改正について、調査していないことである。だが、既に衆議院だけであれば、憲法改正、集団的自衛権行使が可能な状況となったことは分かる。憲法改正の発議には、参院でも3分の2以上の賛成が必要である。参院は定数242ゆえ、162以上がラインとなる。現状は、自民・維新・みんなを中心に憲法第9条改正に賛成の議員を推計すると、最大で95人程度と思われる。来年夏参議院議員の半分が改選されるが、仮に改選後121人のうち衆院選同様75%を改正賛成派が占めたとしても、90人。これも仮に非改選の議員の47人が賛成として、合計137人。まだ25人足りない。それゆえ、来夏の参院選挙だけでは、憲法第9条改正の実現はかなり難しい。その3年後の選挙で現状の傾向が継続していれば、その時初めて実現が可能になると思われる。
 憲法というものは、国民のためのものであって、国民のために不都合な点があれば、改めていくのは当然である。憲法のための国民ではなく、国民のための憲法である。

しかし、戦後の日本人は、マッカーサーから押し付けられた憲法を変えることを恐れている。今なお日本人は見えないもののマインドコントロールを受け、自主規制をかけている。今こそ、こうした呪縛から目覚め、独立主権国家・日本にふさわしい憲法を制定する必要がある。それなくして、わが国は中国による尖閣諸島への侵攻を始め、北朝鮮、国際テロリズム等の脅威から、国の主権と独立、国民の生命と財産を守ることができない。

憲法改正を成し遂げて初めて、日本人は自らの意思で自らの国のあり方を決めることができる。そこに日本再建の鍵がある。それには、国民の団結が必要である。日本国民が、自分の国のことを真剣に考え、自ら国を守る意思を持つことが、尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守る道である。

もし日本人が団結してこの道を進めなければ、西日本は東海省、東日本は日本自治区と描く中国の地図のような姿に、日本がなってしまうかもしれない。その時、日本は国家としては消滅し、1000万人単位でシナ人が移住し、中国共産党が日本を支配し、日本の文化や伝統は破壊され、中国に併合され、シナ化が進んでいくだろう。

そういう未来を避けるため、日本人は日本精神を取戻し、日本の再建に邁進しなければならない。ページの頭へ

 

参考資料

・古森義久著『「無法」中国との戦い方』(小学館)

・関岡英之著『中国を拒否できない日本』(筑摩書房)

・石平著『中国大逆流 絶望の「天安門20年」と戦慄の未来像』(KKベストセラーズ)

・田母神俊雄著『田母神国軍』(産経新聞出版)『本当は強い日本』(PHP)

・田母神俊雄+一色正春著『日本を守りたい日本人の反撃』(産経新聞出版)

 

関連掲示

・拙稿「尖閣諸島、6月17日に備えよう

・拙稿「中国の日本併合を防ぐには

・拙稿「核大国化した中国、備えを怠る日本〜日中戦後のあゆみ

・拙稿「『フランス敗れたり』に学ぶ〜中国から日本を守るために

・拙稿「中国の『大逆流』と民主化のゆくえ

・拙稿「トッドの移民論と日本の移民問題

 

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