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説明: 説明: ber117

 

自民党は立党の精神に帰れ

2010.7.5

 

<目次>

 

第1 自民党はどういう政党か

第2章 平成22年の新綱領

第3章 自民党立党時の精神
日本精神いう背骨を立てよ

 

 

説明: 説明: ber117

 

はじめに

 

 本稿は、自民党とはどういう政党であるかを明らかにし、自民党は立党の精神に帰ることが必要であり、そのために自民党に日本精神という背骨を立てよ、と訴えるものである。

 

 

第1章 自民党はどういう政党か

 

私は、インターネット等で発言するようになってから、この12年間、自民党については腐敗・堕落を厳しく批判してきた。自民党は、昨年(平成21年〔2009〕)8月の衆議院選挙で歴史的な大敗を喫し、政権を明け渡した。その後、党の再建に努めているようだが、執行部の姿勢に不満を持つ元閣僚級の政治家が離党するなど、再生が進んでいるようには見えない。  

民主党の支持率は、鳩山政権末期に激しく低下したが、鳩山・小沢W辞任で菅政権に変わるとV字回復した。しかし、日をごとに支持率は下がりつつある。一方、この間、自民党は国民の多くの支持を集めることはなく、低迷している。自民党は、長年の放漫経営で借金が膨らみ、党の財政が深刻な事情にあると聞く。私は、自民党は本気で再建しないと、四分五裂にいたる恐れがあると思う。
 一体、自由民主党とは、どういう政党か。政党の理念、政策は、党の綱領に表現される。そこで、自民党の綱領を改めて読み、現在の自民党はいかなる理念、政策を掲げる政党であるかを確認したい。結論を先に述べておくと、私は自民党が再生し得るとすれば、立党の精神に帰ることだと思う。また同時に、立党の時点で不足していたもの、欠けていたものを確認し、強化・改善することも必要だろうと思う。
 なお、政党の理念、政策は、党の綱領に表現されると述べたが、民主党には政党としての綱領がない。そのため、民主党の基本的な考え方は、不明である。国民も党員も誰もわからない。反自民というだけで寄り集まった集団だからだろう。党の内外に示すことのできる綱領さえつくることのできない政党が、国政を担っているというわが国の現状には、ぞっとするものがある。

自民党は昭和30年(1955)11月に結党された。当時の「立党宣言」、綱領、党の性格・使命・政綱が、同党のサイトに掲載されている。
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/rittou/index.html
 結党50年を迎えた平成17年(2005)11月、自民党は「立党50年宣言」を出し、新たな綱領・理念を発表した。
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/houshin/index.html
 これらを読むと、自民党は昭和30年以来、一貫して立党時の考え方を保持し、それを踏まえたうえで、時代と状況に応じて、自らを改革していく政党であることが分かる。
 こうした自民党が平成22年1月に採択したのが、「平成22年(2010年)綱領」である。
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/houshin/index.html
 新綱領は、昨年の衆院選での敗北と下野を受け、党の再生を賭けて、基本方針を立て直したものだろう。発表当時、マスメディアが報じたが、私は本年5月までよく読んでみることがなかった。参院選まであと約2ヶ月になっても低迷を続ける自民党の状態を見て、今の綱領はどうなっているのか、と関心が湧いたのである。

 「平成22年(2010年)綱領」はいかなる内容か。それは、自民党の立党時、50年時の綱領とどう違うのか。まず22年綱領を読解し、次に「立党宣言」等、過去の文書にさかのぼって検討してみたい。ページの頭へ

 

 

第2章 平成22年の新綱領

 

「平成22年(2010年)綱領」

 

 「平成22年(2010年)綱領」(以下、新綱領ともいう)は、平成22年1月24日に発表された。現在の自民党の自己規定であり、また基本方針である。民主党を中心とした政権に代わる政権を希望するならば、自民党を中心とする連立政権以外は現実的でない。自民党を支持する人も、支持しない人も、同党が現在どういう考えの政党であるか、新綱領を通じて知った上で、いま一度同党について判断するのがよいだろう。
 新綱領は、自民党のサイトに掲示されているほか、「新しい綱領 新たな出発〜夢と希望と誇りを持てる国・愛する日本をめざして」というパンフレットに掲載されている。パンフレットには、自民党総裁の谷垣禎一氏の「新たな綱領策定にあたってーー党再生の基礎として」という巻頭言がある。自民党は、平成21年総選挙での歴史的大敗により政権与党の座を降りた。谷垣氏は、自民党の総裁として、党再生に取り組むに当たり、自民党とはいかなる政党かを示すために、新しい綱領を作ったことを述べる。新綱領は「わが党の理念、政治姿勢、基本的政策、目指す国家像」を示すものであり、「党再生の基礎となるもの」だという。

●新綱領の「現状認識」


 新綱領は、「現状認識」と1〜3までの文章で構成されている。「現状認識」は1300文字以上に及ぶ長文である。展開に沿って、内容を見てみよう。
 「現状認識」は、次のように始まる。「我が党は、『反共産・社会主義、反独裁・統制的統治』と『日本らしい日本の確立』―の2つを目的とし、『政治は国民のもの』との原点に立ち立党された。」と。
 まず自民党は、「反共産・社会主義、反独裁・統制的統治」と「日本らしい日本の確立」という2つを目的として立党されたことを述べる。かぎかっこがついている文言は、過去の立党宣言等に、同じ表現はない。今日の時点で立党の目的を再確認して表現したものとなる。
 続いて「平成元年のベルリンの壁の崩壊、平成3年のソ連邦の解体は、この目的の1つが達成されたという意味で、我が党の勝利でもあった。」と述べる。第1の目的である「反共産・社会主義、反独裁・統制的統治」は達成されたという認識を示す。そして、「そこに至るまでの間、共産主義・社会主義政党の批判のための批判に耐え、我が党は現実を直視し、日米安全保障条約を基本とする外交政策により永く平和を護り、世界第2の経済大国へと日本を国民とともに発展させた。」と続ける。
 私見を挟むと、確かに東西ドイツは統一され、ソ連は崩壊したが、わが国が位置する東アジアでは、共産中国や北朝鮮の国家体制が依然として存続している。そして、わが国はこれらの国々と重要な外交課題を持っている。しかし、「現状認識」はその点の認識を書いていない。日本国内の現状認識に重きが置かれている。内向きであり、かつ現在の政治情勢に指向している。
 「現状認識」は、次に「日本の存在感が増すにつれ、国際化のなかで我々は多くのものを得た反面、独自の伝統・文化を失いつつある。長寿国という誇るべき成果の反面、経済成長の鈍化と財政悪化からくる財政諸機能の不全に現在も我々は苦しんでいる。少子化による人口減少は国の生産力を低下させると言われる。」と、今日の日本の問題点を挙げる。
 そして、わが国の課題を述べる。「我が国は、これ等の現実を明るく希望ある未来に変えるため、少子化対策とともに、教育の充実と科学技術開発に国民資源を注力することにより生産性を向上させ、長寿人口の活用と国民資質の向上、国際化への良き対応により、経済成長が達成でき、国民生活の充実が可能なことを世界に示さねばならない。」
 次に、自民党立党のもう一つの目的である「日本らしい日本の確立」に論点が移る。
 「我々は、日本国及び国民統合の象徴である天皇陛下のもと、今日の平和な日本を築きあげてきた。我々は元来、勤勉を美徳とし、他人に頼らず自立を誇りとする国民である。努力する機会や能力に恵まれぬ人たちを温かく包み込む家族や地域社会の絆を持った国民である。家族、地域社会、国への帰属意識を持ち、公への貢献と義務誇り持って果たす国民でもある。」として、日本国民としての自己認識を示す。天皇、勤勉、自立、絆、帰属意識、公等の言葉を並べて、自らを規定している。
 そして、「これ等の伝統的な国民性、生きざま即ち日本の文化を築きあげた風土、人々の営み、現在・未来を含む3世代の基をなす祖先への尊敬の念を持つ生き方の再評価こそが、もう1つの立党目的、即ち『日本らしい日本の確立』である。」とする。
 ここで「日本らしい日本の確立」とは、日本国民の「生き方の再評価」だという。しかし、伝統的な国民性や生き方を「再評価」することが、即、日本らしい日本の「確立」とはならない。再評価から確立へといたるには、再評価した価値を実現するための行動が必要である。また日本という国のレベルで「確立」するには、制度・機構・施策等の改善が必要となるだろうが、その点について、ここでは具体的でない。

次に、「現状認識」は、現在の自民党の決意を述べる。
 「我が党は平成21年総選挙の敗北の反省のうえに、立党以来護り続けてきた自由と民主の旗の下に、時代に適さぬもののみを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求め、国際的責務を果たす日本らしい日本の保守主義を政治理念として再出発したいと思う。」
 ここで、自民党は「日本らしい日本の保守主義」を政治理念とする保守政党であることを明言する。自由民主党はその名のごとく、自由主義と民主主義を基本的な思想とする政党だが、立党以来、革新(左翼)ではなく保守の政党であることは明らかである。しかし、「保守」という用語は、立党宣言等で使われていない。新綱領で初めて使われた。ここに新綱領の特徴の一つがある。保守政党でありながら、リベラル志向の政治家が増えてきた自民党が、日本的な保守の政党として自らを立て直そうとする意思の表れだろう。
 ここで、保守とリベラルについて詳しくは、拙稿日本的な保守の役割と課題〜右翼・左翼・リベラル等との対比を踏まえてをご参照願いたい。

 わが国でいうリベラルは、修正的自由主義である。修正的自由主義としてのリベラルは、社会民主主義と親和する。自民党にはこの意味のリベラル派が多くなっている。またその一方、もともとのリベラリズムは、古典的自由主義である。その流れを汲むのが新自由主義であり、市場原理主義である。自民党の中には「リベラル」という言葉のもとに、これらの自由主義が混在している。

 そういう実態を踏まえてのことか、「現状認識」は、次に自民党のいう「自由」を確認する。
 「我々が護り続けてきた自由(リベラリズム)とは、市場原理主義でもなく、無原則な政府介入是認主義でもない。ましてや利己主義を放任する文化でもない。自立した個人の義務と創意工夫、自由な選択、他への尊重と寛容、共助の精神からなる自由であることを再確認したい。」と。
 そのうえで、次のように言う。「従って、我々は、全国民の努力により生み出された国民総生産を、与党のみの独善的判断で国民生活に再配分し、結果として国民の自立心を損なう社会主義的政策は採らない。これと併せて、政治主導という言葉で意に反する意見を無視し、与党のみの判断を他に独裁的に押し付ける国家社会主義的統治とも断固対峙しなければならない。また、日本の主権を危うくし、『日本らしい日本』を損なう政策に対し闘わねばならない。」と。
 この部分は、前段の「自由」の理念に基づいて、民主党のバラマキ政策や独裁的な政治手法、日本の主権を危うくし、日本の伝統・文化を損なう姿勢との対決を表明するものだろう。
 最後に「現状認識」は、次のように結ぶ。
 「我が党は過去、現在、未来の真面目に努力した、また努力する自立した納税者の立場に立ち、『新しい日本』を目指して、新しい自民党として、国民とともに安心感のある政治を通じ、現在と未来を安心できるものとしたい。」と。
 ここでは、自民党は「納税者の立場」に立つという。ここまでの部分で税金とその使用に関する主張がないので唐突な感じを与えるが、「納税者の立場」に立って、新しい日本を目指し、安心感のある政治を通じて、現在と未来を安心できるものとしたいとして、「現状認識」は終わる。

 以上、「現状認識」を数箇所に区切って、文章の展開を追ってみたが、このように解析してもなお、全体の趣旨を明瞭につかめないところがある。直前に引用した結尾の部分にしても、自民党の立場は「納税者」と立場をともにすることに集約されるのか。自民党が目指すものは、現在と未来の「安心」に収斂するのか。目指すべき日本とは「安心できる日本」なのか。主張が明確に浮かび上がらないまま終わっている。
 一般に「現状認識」という題目は、現状認識を書くものであって、それを踏まえた方針や決意は、題目を改めて書くことが多いだろう。この点でも、新綱領の「現状認識」は、十分推敲された文章とは言えないだろう。

●新綱領の「党の基本的性格」

 

自民党新綱領は、「現状認識」に続いて、三つの文章が並ぶ。すなわち「1.我が党は常に進歩を目指す保守政党である」「2.我が党の政策の基本的考えは次による」「3.我が党は誇りと活力ある日本像を目指す」である。
 これらの文章には題名がなく、「現状認識」とどういう関係にあるのか、つかみにくい。「現状認識」の一部のようでもあり、別の部分のようでもある。
 新綱領を掲載したパンフレット『新しい綱領 新たな出発〜夢と希望と誇りを持てる国・愛する日本をめざして』には、綱領立案の中心となった政権構想会議座長の伊吹文明氏による「解説」が載っている。「解説」によると、新綱領は「現状認識、党の基本的性格、政策の基本的考え、目指すべき国家像の四部構成」になっているという。それゆえ、先ほどの三つの文章のうち、1は「党の基本的性格」、2は「政策の基本的考え」、3は「目指すべき国家像」に当たる。こういう見出しがないため、前半の「現状認識」と後半の1〜3との結びつきがわかりにくい。人によって感じ方が違うだろうが、私には洗練された文章構成とは思えない。

 まず「党の基本的性格」は、次の通り。

「1.我が党は常に進歩を目指す保守政党である
(1)正しい自由主義と民主制の下に、時代に適さぬものを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求める
(2)勇気を持って自由闊達(かったつ)に真実を語り、協議し、決断する
(3)多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる」

 ここで自民党は、自らを「保守政党」であると規定する。保守といっても守旧ではない。「常に進歩を目指す保守政党」だという。これを具体的に述べるのが、(1)だろう。「時代に適さぬものを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求める」というのがそれである。そして、「正しい自由主義と民主制の下に」という条件を説明したのが、(2)(3)と思われる展開となっている。
 この「党の基本的性格」は、自民党を「常に進歩を目指す保守政党」という一点で規定している。しかし、立党時の「党の性格」では、国民政党、平和主義政党、真の民主主義政党、議会主義政党、進歩的政党、福祉国家の実現をはかる政党という六点で規定していた。また立党50年の「新理念」では、真の自由主義・民主主義、自主国防と世界平和の実現に貢献する政党、地球規模の共生をめざす政党、責任政党、日本の伝統と文化を尊重・発展をめざす政党、国民政党という六点で規定していた。
 過去の規定では六点だったものを、新綱領ではただ一点にしている。しかも「保守政党」という過去にない表現で規定している。これはこの一点への集約なのか、一点のみの強調なのか。それとも過去の規定からの自己変革なのか。過去と現在の関係が明瞭でない提示の仕方である。

●新綱領の「政策の基本的考え」


 自民党新綱領は、自らの基本的性格は保守政党だとしたうえで、「政策の基本的考え」を示す。

「2.我が党の政策の基本的考えは次による
(1)日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定を目指す
(2)日本の主権は自らの努力により護る。国際社会の現実に即した責務を果たすとともに、一国平和主義的観念論を排す
(3)自助自立する個人を尊重し、その条件を整えるとともに、共助・公助する仕組を充実する
(4)自律と秩序ある市場経済を確立する
(5)地域社会と家族の絆・温かさを再生する
(6)政府は全ての人に公正な政策や条件づくりに努める
  (イ)法的秩序の維持
  (ロ)外交・安全保障
  (ハ)成長戦略と雇用対策
  (ニ)教育と科学技術・研究開発
  (ホ)環境保全
  (へ)社会保障等のセーフティネット
(7)将来の納税者の汗の結晶の使用選択権を奪わぬよう、財政の効率化と税制改正により財政を再建する」

 「政策の基本的考え」の(1)に新憲法の制定、(2)に主権の護持を掲げていることを私は支持する。憲法については、「日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法」としている。新綱領は、立党の第2の目的に「日本らしい日本の確立」を挙げているが、この目的のもとに、自民党は新憲法の制定を目指すと理解できる。憲法の制定は主権の行使であり、主権の護持とも関係する。自民党は「日本らしい日本の確立」のために新憲法の制定を政策の基本的考えの第一に挙げる政党である。この点をはっきり出したところに、新綱領の特徴の一つがある。
 続く(3)から(6)は、つながりがとらえにくい。(3)の自助自立・共助・公助という考え方は、日本社会の伝統的な原則を表している。人間の個人性と集団性の統一による人倫を、端的に表現しており、私は賛成である。だが、(3)と(4)(5)(6)はどういう関係にあるか。(6)の「全ての人に公正な政策や条件づくり」という考えにも私は賛成である。だが、そのもとに並んでいる(ロ)外交・安全保障や(ホ)環境保全は「公正」とどういう関係にあるのか。よくつかめないところがある。
 「政策の基本的考え」の最後となる(7)に、自民党は財政再建を挙げる。これは、過去の綱領にない課題である。現在の自民党が、わが国の財政は重大な問題を抱えていると認識していることを示す。私も同感だが、表現には難点がある。「将来の納税者の汗の結晶の使用選択権を奪わぬよう」という文言は、もっと平易に表現できるのではないか。この表現を読んで、これは自分たちの世代のことを考えているのだとすぐ理解できる若者は、相当優秀である。

 立党時、この「政策の基本的考え」に当たるものは、「党の政綱」だった。「国民道義の確立と教育の改革」「政官界の刷新」「経済自立の達成」「福祉社会の建設」「平和外交の積極的展開」「独立体制の整備」の六つの項目が並んでいた。また立党50年の時には「新綱領」という題目のもとに、「新しい憲法の制定を」「高い志をもった日本人を」「小さな政府を」「持続可能な社会保障制度の確立を」「世界一、安心・安全な社会を」「食糧・エネルギーの安定的確保を」「知と技で国際競争力の強化を」「循環型社会の構築を」「男女がともに支え合う社会を」「生きがいとうるおいのある生活を」という10の項目が並んでいた。
 立党時と立党50年の間には半世紀の歴史があった。政策の一部を時代に合ったものに変えたのは当然だろう。しかし、立党50年の平成17年から新綱領の22年までの間は、5年しか経っていない。新憲法の制定を第一に掲げる点は同じだが、それ以外の政策がこの5年でかなり変化している。重点政策の取捨選択や組み換え、練り直しは必要だろうが、過去の取り組みをどのように総括したからなのか。どういう展望のもとに、今回の「政策の基本的考え」を打ち出したのか。ここでも、とらえにくい。
 とはいえ、こういう検討は、綱領があるからできることであって、自民党は立党の時点から今日まで、政党としての綱領を掲げている。これに対し、民主党には綱領そのものがない。だから、検討の仕様もない。これは、民主党の致命的な欠陥である。
 
●新綱領の「目指すべき国家像」

 

自民党新綱領は「政策の基本的考え」に基づく政策を通じて「目指すべき国家像」を、3で打ち出す。

「3.我が党は誇りと活力ある日本像を目指す
(1)家族、地域社会、国への帰属意識を持ち、自立し、共助する国民
(2)美しい自然、温かい人間関係、「和と絆」の暮し
(3)合意形成を怠らぬ民主制で意思決定される国と自治体
(4)努力するものが報われ、努力する機会と能力に恵まれぬものを皆で支える社会。その条件整備に力を注ぐ政府
(5)全ての人に公正な政策を実行する政府。次世代の意思決定を損なわぬよう、国債残高の減額に努める
(6)世界平和への義務を果たし、人類共通の価値に貢献する有徳の日本」

 これらの項目に、私は概ね賛成である。また、こうした「誇りと活力ある日本像」は、立党目的の「日本らしい日本の確立」にいう「日本らしい日本」の姿を目指すものとして共感できる。
 ただ、3の6項目と、2の「政策の基本的考え」の7項目の関係が、よく整理されていないと思う。3の(1)は2の(3)、3の(2)は2の(5)と結びつくだろうが、3の(3)は2の中に結びつくものがなく、1の(1)が最も関連がある。また3の(4)は2の(3)(6)と結びつきそうだが、明確でない。3の(6)は2の(1)(2)と関係するのだろうが、2では最上位に置かれたものが、3では最下位に置かれている。
 このように、新綱領は、全体の構成が弱く、推敲と整理が不十分という印象を私は覚える。

 新綱領はそれだけでは、よく理解できないところがある。そのためかどうか分からないが、新綱領の理解を助けるものとして、伊吹文明氏の「解説」がある。「解説」で伊吹氏は、綱領の全体について、補足・説明を加えている。関心のある方は、ご一読をお勧めする。確かにこれを読めば、綱領が言わんとするところの理解は、一定程度得られる。ただし、私が先に述べた印象は「解説」を読んでも解消しない。綱領自体の構成が弱く、推敲と整理が不十分という印象がぬぐえない。綱領というものは、解説などなく、理念や思想が強く直接伝わってくるものでなければ、ならない。そうでなければ、多くの人々の心を動かすものとはならないだろう。
 伊吹氏は「綱領は、いわば政党の憲法」だと言う。そして、新綱領に従って、自民党は党の運営をし、政策を取捨選択し、党員が協力・努力するよう呼びかけている。
 新綱領は平成22年1月24日の自民党の党大会で、満場一致で決定されたという。自民党の党員の人たちは、新綱領に満足しているのだろうか。自民党を支持する人たちは、党の理念や政策、目標を自分の心に明確に抱くことができているのだろうか。
 自民党には、昭和30年の立党宣言等による綱領、平成17年の立党50年宣言等による綱領がある。こうした従来の綱領に比べ、平成22年の新綱領は何が変わったのか。伊吹氏は言う。「経済が大きくなり、国民生活が向上し、国際化が進み、長寿化を達成し、少子化が避けがたい日本国の現状、変化を見据え、如何なる政治理念で我が党は国民に貢献できるか、現時点での基本方針を述べたのが大きく変わった点」だと述べる。そして、「今までの綱領を増補という位置付け」と言ってよく、「今までの綱領の精神を受け継ぎ、時代に合わぬところを補い、未来に備えたと理解してほしい」と言う。
 「増補」とは、過去の綱領を破棄して、新しい綱領に代えたということではない。過去の綱領からその精神を受け継ぎ、内容を補足・補充したということになる。増補改訂であれば、前のものを全体的に書き換え、書き足したものとなるが、そうではないわけである。しかし、増補といいながら、一部を継承して一部を棄捨している。増補した後の全体像は何なのか、それを端的につかむことは出来ない。過去の綱領を読み、新綱領と読み比べないとつかめないし、それらを通しで読んでも、確固としたものはつかめない。
 平成21年9月政権を民主党に奪われた自民党は、解党的な出直しをするという方針を発表した。本気で出直しをするのであれば、「増補」ではなく増補改訂をし、一個の文書で全体が理解できるものにすべきだったと思う。
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第3章 自民党立党時の精神

 

●自民党の「立党宣言」


 自民党はもともとどういう考えをもって結成されたのだろうか。昭和30年、左右の社会党が統一し、護憲、再軍備反対の勢力を形成した。これに対抗するため、自由党と日本民主党の保守合同が実現し、同年11月15日自由民主党が結成された。この時、米ソ冷戦に照応する形で、自民党対社会党という55年体制が、わが国に生まれた。
 以後、自民党は、わが国の政治を約半世紀にわたって担った。敗戦後、独立を回復してからのわが国の内政・外交は、自民党政治のもとでほとんどが行われた。こうした自民党の政治の根底にあるのは、昭和30年に発した立党宣言、また綱領、党の性格・使命・政綱に盛られた思想や政策だった。

 自民党の「立党宣言」は、次のようなものである。
 「政治は国民のもの、即ちその使命と任務は、内に民生を安定せしめ、公共の福祉を増進し、外に自主独立の権威を回復し、平和の諸条件を調整確立するにある。われらは、この使命と任務に鑑み、ここに民主政治の本義に立脚して、自由民主党を結成し、広く国民大衆とともにその責務を全うせんことを誓う。
 大戦終熄して既に十年、世界の大勢は著しく相貌を変じ、原子科学の発達と共に、全人類の歴史は日々新しい頁を書き加えつつある。今日の政治は、少なくとも十年後の世界を目標に描いて、創造の努力を払い、過去及び現在の制度機構の中から健全なるものを生かし、古き無用なるものを除き、社会的欠陥を是正することに勇敢であらねばならない。
 われら立党の政治理念は、第一に、ひたすら議会民主政治の大道を歩むにある。従ってわれらは、暴力と破壊、革命と独裁を政治手段とするすべての勢力又は思想をあくまで排撃する。第二に、個人の自由と人格の尊厳を社会秩序の基本的条件となす。故に、権力による専制と階級主義に反対する。
 われらは、秩序の中に前進をもとめ、知性を磨き、進歩的諸政策を敢行し、文化的民主国家の諸制度を確立して、の大業に邁進せんとするものである。
 右宣言する。
 昭和三十年十一月十五日」

 この宣言は紛れもなく、わが国の自由民主党の立党宣言である。しかし、自民党という前提で読んでいるから、そう理解するのであって、内容は、自由主義圏ないし資本主義圏であれば、どこの国の政党であっても当てはまる。ためしに宣言全体を翻訳して英文で読んでみるとよい。”Liberal Democratic Party” という党名は、他の国にもありそうな名前であり、宣言もまた日本以外の政党が、ほぼそのまま使えそうな内容である。
 こんなことを指摘した者が他にいるかどうか知らないが、ただ一点、「自主独立の権威の回復」という一句が、この政党は敗戦国であり自主独立を失った国家の政党であることを示している。逆に言うと、この一句に、わが国の自由民主党が、日本の政党である所以が凝縮しているのである。言い換えれば、「自主独立の権威の回復」という一点を失えば、自民党は、どこの国にもありそうな政党に変容してしまう。国家を自由主義化・民主主義化し、西洋化・近代化する政党になってしまうのである。
 自民党の立党宣言は、その文言の範囲では、日本の伝統・文化・国柄の復興を謳ってはいない。宣言が第3段に挙げる二つの政治理念も、「議会民主政治の大道」「個人の自由と人格の尊重」であり、左右の全体主義との対決を打ち出すのみである。前者は民主主義、後者は自由主義。併せて自由民主主義の理念を示すものである。
 平成22年の新綱領は、立党の目的は「反共産・社会主義、反独裁・統制的統治」と「日本らしい日本の確立」の2つとする。政治学の概念で言い換えれば、第1の目的は自由民主主義、第2の目的はナショナリズムである。立党宣言に限るならば、第1の目的は何に反対するかという仕方で自由民主主義を規定したもので明示的だが、第2の目的は暗示的である。日本的な保守としての色合いは、意外に薄い。そして、第2の目的は、先ほど指摘した「自主独立の権威の回復」という一点に係っているのである。

●自民党立党時の「綱領」と「党の性格」

 

次の部分に進む。ここでは、昭和30年立党時の自民党の「綱領」として、三つの文章が並ぶ。

「一、わが党は、民主主義の理念を基調として諸般の制度、機構を刷新改善し、文化的民主国家の完成を期する。
一、わが党は、平和と自由を希求する人類普遍の正義に立脚して、国際関係を是正し、調整し、自主独立の完成を期する。
一、わが党は、公共の福祉を規範とし、個人の創意と企業の自由を基底とする経済の総合計画を策定実施し、民生の安定と福祉国家の完成を期する。」

 三つとも○○の「完成を期する」という文章である。この場合の「期する」は「前もって決心する」とか「めざす」という意味だろう。「完成を期する」のは、「文化的民主国家」「自主独立」「民生の安定と福祉国家」である。ここでもわが国の独自性を感じさせるのは、「自主独立の完成」のみである。それ以外の目標や要素は、自由主義圏ないし資本主義圏で他の国でも多くの政党が掲げそうなものである。

 次に、「党の性格」という文章が続く。自民党はここで党の性格を、6点をもって規定する。「国民政党」「平和主義政党」「真の民主主義政党」「議会主義政党」「進歩的政党」「福祉国家の実現をはかる政党」の6点である。平成22年の新綱領では、党の性格規定は、ただ一つ、「常に進歩を目指す保守政党」というだけだった。これに比し、自民党は、立党時には次のように多面的または重層的に自己を規定していた。

「一、わが党は、国民政党である
 わが党は、特定の階級、階層のみの利益を代表し、国内分裂を招く階級政党ではなく、信義と同胞愛に立って、国民全般の利益と幸福のために奉仕し、国民大衆とともに民族の繁栄をもたらそうとする政党である。

ニ、わが党は、平和主義政党である
 わが党は、国際連合憲章の精神に則り、国民の熱願である世界の平和と正義の確保及び人類の進歩発展に最善の努力を傾けようとする政党である。

三、わが党は、真の民主主義政党である
 わが党は、個人の自由、人格の尊厳及び基本的人権の確保が人類進歩の原動力たることを確信して、これをあくまでも尊重擁護し、階級独裁により国民の自由を奪い、人権を抑圧する共産主義、階級社会主義勢力を排撃する。

四、わが党は、議会主義政党である
 わが党は、主権者たる国民の自由な意思の表明による議会政治もって堅持し発展せしめ、反対党の存在を否定して一国一党の永久政治体制を目ざす極左、極右の全体主義と対決する。

五、わが党は、進歩的政党である。
 わが党は、闘争や破壊を事とする政治理念を排し、協同と建設の精神に基づき、正しい伝統と秩序はこれを保持しつつ常に時代の要求に即応して前進し、現状を改革して悪を除去するに積極的な進歩的政党である。

六、わが党は、福祉国家の実現をはかる政党である
 わが党は、土地及び生産手段の国有国営と官僚統制を主体とする社会主義経済を否定するとともに、独占資本主義をも排し、自由企業の基本として、個人の創意と責任を重んじ、これに総合計画性を付与して生産を増強するとともに、社会保障政策を強力に実施し、完全雇用と福祉国家の実現をはかる。」

 平成22年の新綱領の「党の基本的性格」より、遥かにしっかり書かれている。ただし、これら「国民政党」「平和主義政党」「真の民主主義政党」「議会主義政党」「進歩的政党」「福祉国家の実現をはかる政党」の6点は、日本の政党に限らず、他の国の政党でも掲げることのできる自己規定ばかりである。
 平成22年の新綱領は「日本らしい日本の確立」を立党の目的の一つに挙げる。その目的は、立党時の「党の性格」では、明瞭ではない。立党宣言の「自主独立の権威を回復」や綱領の「自主独立の完成」は、党の性格規定には、表現されていない。戦後日本の政党としての独自性はなく、ましてや悠久の歴史と伝統を持つ日本の政党ならではの規定、一個の文明としての日本を担う政党だからこその自己規定は、見出せないのである。

●自民党立党時の「党の使命」

自民党立党時の文書は、次に「党の使命」という項目に入る。この文章は、新綱領の「現状認識」を上回る長文である。これも展開に沿って、内容を見てみよう。
 
 「党の使命」は、下記のように始まる。
 「世界の情勢を考え、国民の現状を省み、静かに祖国の前途を思うに、まことに憂慮にたえぬものがあり、今こそ、強力な政治による国政一新の急務を痛感する。
 原子科学の急速な進歩は、一面において戦争回避の努力に拍車を加え、この大勢は、国際共産勢力の戦術転換を余儀なくさせたが、その終局の目標たる世界制圧政策には毫も後退なく、特にわが国に対する浸透工作は、社会主義勢力をも含めた広範な反米統一戦線の結成を目ざし、いよいよ巧妙となりつつある」。
 昭和30年(1955)当時の世界情勢、及び共産主義国の対日工作を記している。
 そして、「国内の現状を見るに、祖国愛と自主独立の精神は失われ、政治は昏迷を続け、経済は自立になお遠く、民生は不安の域を脱せず、独立体制は未だ十分整わず、加えて独裁を目ざす階級闘争は益々熾烈となりつつある。」と日本の現状を述べる。

 私は、これに続く部分が重要だと思っている。
 「思うに、ここに至った一半の原因は、敗戦の初期の占領政策の過誤にある。占領下強調された民主主義、自由主義は新しい日本の指導理念として尊重し擁護すべきであるが、初期の占領政策の方向が、主としてわが国の弱体化に置かれていたため、憲法を始め教育制度その他の諸制度の改革に当り、不当に国家観念と愛国心を抑圧し、また国権を過度に分裂弱化させたものが少なくない。この間隙が新たなる国際情勢の変化と相まち、共産主義及び階級社会主義勢力の乗ずるところとなり、その急激な台頭を許すに至ったのである。
 他面、政党及び政治家の感情的対立抗争、党略と迎合と集団圧力による政治、綱紀紊乱等の諸弊が国家の大計遂行を困難ならしめ、経済の自立繁栄を阻害したこともまた反省されねばならぬ。」
 ここには、昭和20年8月の敗戦から30年11月までの約10年に及ぶわが国の歴史と実態が、端的に表現されている。そして、30年時点の立党宣言の「自主独立の権威を回復」、綱領の「自主独立の完成」という文言の意味が、ようやく明らかになる。「自主独立の権威を回復」「自主独立の完成」は、自民党の立党宣言・綱領において、唯一、日本の政党であることを示唆する文言であった。だから、「党の使命」におけるこの部分は、自民党の日本の政党としてのアイデンティティにおいて、非常に重要な部分なのである。なぜ立党50年の「新綱領」が「新しい憲法の制定を」を第一に挙げ、平成22年新綱領の「政策の基本的考え」が「日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定」を第一に掲げるかの理由も、ここにある。

 「党の使命」は、続いて決意を述べる。「この国運の危機を克服し、祖国の自由と独立と繁栄を永遠に保障するためには、正しい民主主義と自由を擁護し、真に祖国の復興を祈願する各政党、政治家が、深く自らの過去を反省し、小異を捨てて大同につき、国民の信頼と協力の基盤の上に、強力な新党を結成して政局を安定させ、国家百年の大計を周密に画策して、これを果断に実行する以外に途はない。」と。
 この大同団結が、保守合同による自民党の誕生だった。
 自民党の立党者は、ここで自らの信念と決意を述べる。「わが党は、自由、人権、民主主義、議会政治の擁護を根本の理念とし、独裁を企図する共産主義勢力、階級社会主義勢力と徹底的に闘うとともに、秩序と伝統の中につねに進歩を求め、反省を怠らず、公明なる責任政治を確立し、内には国家の興隆と国民の福祉を増進し、外にはアジアの繁栄と世界の平和に貢献し、もって国民の信頼を繋ぎ得る道義的な国民政党たることを信念とする。而して、現下政治の通弊たる陳情や集団圧力に迎合する政治、官僚の政治支配、政治倫理の低下の傾向等を果敢に是正し、国家と国民全体の利益のために、庶政を一新する革新的な実行力ある政党たることを念願するものである。」
 最後に、実行すべき六つの政策課題を掲げる。
 「わが党は右の理念と立場に立って、国民大衆と相携え、第一、国民道義の確立と教育の改革 第二、政官界の刷新 第三、経済自立の達成 第四、福祉社会の建設 第五、平和外交の積極的展開 第六、現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備を強力に実行し、もって、国民の負託に応えんとするものである。」と。
 「国民道義の確立と教育の改革」「政官界の刷新」「経済自立の達成」「福祉社会の建設」「平和外交の積極的展開」「現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備」。これら六つの政策課題のうち、第一の「国民道義の確立と教育の改革」と第六の「現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備」が重要である。平成22年の新綱領は、この第六を受け継いで、「政策の基本的考え」の第一に「日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定」を挙げているのである。そして、その裏づけは、先に私が「党の使命」において重要だと指摘した部分、「思うに」から「反省されねばならぬ」という部分にある。新綱領をもって、現在の自民党の理念・方針だと理解している人は、立党時の「党の使命」、とりわけ「思うに」から「反省されねばならぬ」という部分を熟読すべきだろう。

●自民党立党時の「党の政綱」
 

 「党の使命」は、最後に六つの政策課題を挙げた。これらについては、「党の政綱 」という文章において、具体的に説明される。

「一、国民道義の確立と教育の改革
 正しい民主主義と祖国愛を高揚する国民道義を確立するため、現行教育制度を改革するとともに教育の政治的中立を徹底し、また育英制度を拡充し、青年教育を強化する。
 体育を奨励し、芸術を育成し、娯楽の健全化をはかって、国民情操の純化向上につとめる。」
 これは今日の日本でも、ほとんどそのまま当てはまる。ということは、わが国の教育は、昭和30年以後、55年もの間、ほとんど改善されていないということである。平成22年の新綱領は、「日本らしい日本の確立」を挙げていながら、この政策課題においては、積極的でなくなっている。

「ニ、政官界の刷新
 国会及び政党の運営を刷新し、選挙制度、公務員制度の改正を断行して、官紀綱紀の粛正をはかり、政官界の積弊を一掃する。
 中央、地方を通じ、責任行政体制を確立して過度の責任分散の弊を改めるとともに、行財政の簡素能率化をはかり、地方自治制度の改革を行う。」
 これも今日の日本に、ほとんどそのまま当てはまる。半世紀以上もの間、わが国の「政官界の積弊」を一掃されず、行政制度の改革も進んでいないのである。そして、自民党自体が「政官界の積弊」そのものと化していたのである。

「三、経済自立の達成」「四、福祉社会の建設」「五、平和外交の積極的展開」については、わが国のあり方は大きく向上したので、北方領土の返還等、重要な残課題はあるが、全文の引用は省く。第六の「独立体制の整備」を次に引用する。

「六、独立体制の整備
 平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。
 世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するため、集団安全保障体制の下、国力と国情に相応した自衛軍備を整え、駐留外国軍隊の撤退に備える。」
 ここに「現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う」とある。重要なことは、わが国が主権を回復して間もない昭和30年という時点において、自民党は、憲法の改正と占領諸法制の改廃を、成し遂げるべき課題とし、さらに防衛力を整備し、米軍の撤退を想定し、自ら国を守る体制を築くことを課題としていたことである。自民党への支持・不支持に関わらず自民党に関心を持つ人たちには、先に強調した「党の使命」の重要部分を再度、熟読玩味することをお勧めする。
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結びに〜日本精神という背骨を立てよ


 平成22年の新綱領は、内容は不十分で形式は洗練を欠くが、党の目的の一つとして、「日本らしい日本の確立」を挙げた点で評価できる。しかし、言葉としてはそう挙げていても、自民党を立党した先人の決意や熱意を相当程度失い、立党の精神をなお見失ってはいないか。そして、それゆえに、今日の自民党は、自ら再建・再生する勢いを出すことが出来ないのではないか。
 自民党の立党の目的は、自由民主主義とナショナリズムに基づくものである。自民党立党時の文書において、自由民主主義の政党としての自己規定は明示的だが、どこの国の政党でもあり得るような内容であった。戦後のわが国は、アメリカに国防を規制され、国防を依存している。それゆえ、自民党は、ナショナリズムの要素を弱めて自由民主主義の方に偏すると、日本を対米従属の状態に置き続ける政党となる。もう一方の立党の目的であるナショナリズムは、暗示的だった。そのため、自民党の歴史においては、この要素が見失われがちだった。世代交代が進むにつれ、その傾向が強まっている。自民党内部でリベラル志向が増え、日本的な保守政党としての性格が薄まった。自民党には、わが国の政治を担う政党として、日本の再建、伝統・文化・国柄の復興をめざす日本的なナショナリズムが決定的に重要なのである。
 日本的なナショナリズムの核心にあるものが、日本精神である。近代的なナショナリズム以前から日本人が継承してきた精神である。その精神を維持・発達させてこそ、健全なナショナリズムが創造的に発揮される。 

自民党は、立党の精神に帰れ。そして、立党の時点で弱かった部分を強化し、日本の政党としての使命を自覚せよ。日本の再建、伝統・文化・国柄の復興を進める日本的な自由民主主義の政党として、再出発せよ。そのために、自民党の指導層は日本精神を学び、自民党の理念に、日本精神という背骨を立てよ。

いかなる組織も、理念や方針だけで、役割を果たせるものではない。最も重要なのは、そこに集う人間の精神である。とりわけ中心指導者の精神が、組織の興亡盛衰を決する。家庭でも企業でも団体でも同様である。私は、日本精神を大切にし、不退転の決意を持った指導者が起ち、自民党の再生を指導することを期待する。ページの頭へ


関連掲示

・日本精神については、マイサイトの「基調」をご覧下さい。

・拙稿「日本再建のための12の課題

・拙稿「日本的な保守の役割と課題〜右翼・左翼・リベラル等との対比を踏まえて

  

 

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