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「太陽の時代」のギガトレンド

〜21世紀の産業革命を促進しよう

2010.8.28

 

<目次>

はじめに〜世界経済危機から「太陽の時代」へ

島田晴雄氏は「太陽経済の時代」を告げる

山崎養世氏が「太陽経済」を提唱
村沢義久氏の呼びかける「太陽エネルギー革命」

太陽が照らす共存共栄の道

結びに〜日本からアジア、世界へ

 

 

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はじめに〜世界経済危機から

「太陽の時代」へ

 

 2008年(平成20年)9月15日、リーマンショックが世界を襲った。瞬く間に世界は経済危機に陥った。情報通信技術を駆使して、莫大な利益を上げていたアメリカの投資銀行のうち、生き残ったものは商業銀行に転じた。金融界の混乱は実体経済にも及び、アメリカでは自動車産業のビッグスリーが経営破綻に至った。
 アメリカがグローバリズムの旗印のもとに世界に広めたのは、利益を最大化するための強欲資本主義だった。金融に関する規制緩和が明らかにしたのは、ひたすら利益を追い求める資本主義の本質である。人類は、ここで資本主義のあり方を根本的に見直し、社会に調和をもたらす新たな経済システムを創造しなければならない。
 世界経済危機は、地球環境の悪化の中で起こった出来事でもあった。経済的利益の追求が環境を破壊し、文明の根底を揺るがしている。人類は、生存と発展のために、自然との調和、また世界の平和を目指し、化石燃料をエネルギー源とする産業から脱却しなければならないときに来ている。とりわけ石油依存を脱却し、太陽光・風力・水素等のエネルギーを活用する産業への移行を、世界的な規模で加速・推進すべき段階に入っている。
 新しい流れは、「太陽の時代」へ、である。太陽光を中心としたクリーン・エネルギーを活用する方向へと、世界もまた日本も大きく動いている。この流れは、極めて大きなトレンドである。未来学者ジョン・ネイスビッツ風に言うと、メガトレンドを上回るギガトレンドである。ページの頭へ

 

 

1.島田晴雄氏は「太陽経済の時代」を告げる


 リーマンショック後の経済危機は、1929年の大恐慌以来のものと見られ、世界経済の行方は定かでなく、混沌とした状況が続いた。リーマンショックの約2ヵ月後となる08年(20年)11月26日、千葉商科大学学長の島田晴雄氏は、産経新聞の「正論」の欄に、「『太陽経済の時代』を拓こう」という意見を寄せた。
 私は、時代のトレンドにおいて、一つの道しるとなった文書と位置づけている。その全文を引用する。

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●産経新聞 平成20年11月26日

【正論】「太陽経済の時代」を拓こう 千葉商科大学学長・島田晴雄
2008.11.26 03:19
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081126/plc0811260319001-n2.htm

<金融危機の後に来るもの>
 世界経済の大混乱がつづいている。アメリカ発の金融危機はまだ最悪期を脱していないが、金融面での混乱が一段落しても、投資、生産、雇用、消費の萎縮(いしゅく)が実体経済をさらに縮小させていくだろう。しかし、経済はやがて回復する。政策対応に加え、価格が十分下がれば需要が喚起されるという原理が市場には組み込まれているからだ。
 その回復に2年かかるのか、あるいは5年かかるのか、それを予知するには現在の事態はあまりに錯綜(さくそう)しており不確実性が大きい。だが、世界の実体経済が回復してくるとき、その構図は現在の世界経済とはかなり異なったものとなる可能性が高い。
 異なった絵柄を構成するすくなくとも二つの大きな要因がある。ひとつはエネルギーであり、いまひとつは新興国の台頭である。石油に象徴されるエネルギー価格は1970年代中盤の石油危機で10倍となり、省力化を軸に経済の技術構造は大きく変わった。このところそれがさらに10倍−5倍も高まり、石油に代わる新たなエネルギー源の開発が本格化している。

<エネルギーを軸に再編成>
 世界経済はやがて新たなエネルギーを軸に再編成されるだろう。新興国群は現在、世界金融危機の深刻な打撃を受けているが、膨大な若い人口が内包する活力はやがて世界経済の多極化と新たな地政学的連携構造を生み出すにちがいない。数年後の世界経済回復のモメンタムにはこれらの要素が鍵となる。
 そのモメンタムを主導する主体は何か。日本はそうした構図の中でどのような役割を果たせるのか。1970年代中盤の石油危機以降の経験がヒントになる。中東石油への依存度がもっとも高かった日本は石油危機でもっとも深刻な打撃を受けたが、しかし、数年後には世界経済をリードする役割を期待されるまでに回復した。石油危機をバネに日本の産業界は技術革新と自己規制で徹底的な省力化をすすめ、労使は世界に比類のない弾力的な賃金決定でインフレ圧力を吸収した。この経験をこれからの日本の戦略にどう生かすかが問われている。
 エネルギーはこれまでいわば19世紀の石炭、20世紀の石油と、長い間、いわゆる化石燃料に依存してきた。これらはいずれも実は太陽光で育った植物や微生物が何億年も貯蔵された結果のエネルギー源である。人類は今や、太陽のエネルギーをこの貯蔵過程を経ずにすぐに利用可能とする技術を手にしている。
 地球表面の1・5%に降り注ぐ太陽光だけで67億人を支えるエネルギーになるとされる。石油価格の高騰を受けて、世界各国は太陽エネルギーを活用する技術の開発にしのぎを削っているが、現在のところ、太陽エネルギー活用の要素技術が利用可能な形でもっとも集中して存在しているのが日本である。
 ソーラー発電、太陽電池やリチウム電池などの蓄電装置、超伝導などの効率的な伝導装置、風力発電や地熱発電、さらには潮力発電や地下水の温度格差の利用、あるいはバイオマスのエネルギー化なども、ひろい意味では太陽エネルギーの利用である。これらの要素技術は、日本には、シャープ、三洋電機(パナソニック)、三菱重工、東芝、日立などの大企業から数多くのベンチャー企業まで多くの産業集積があり、また優れた技術者、研究者がいる。

<政府主導の戦略的対応を>
 しかし要素技術だけでは、太陽エネルギーの直接利用のメリットを十分生かすことはできない。石炭が蒸気機関と鉄道網を媒介して産業革命を実現し、石油が内燃機関と道路整備でモータリゼーション社会を実現したように、太陽エネルギーが電気自動車や産業、生活全般にわたって活用される経済・社会システムを構築する必要がある。
 また日本の技術や頭脳の集積を核として世界の能力を凝集し、研究開発を加速する必要がある。そのためには政府の戦略的主導と支援、産業界の全面的参加、世論の支持が欠かせない。こうした総合戦略があってはじめて、太陽エネルギーを存分に活用した豊かな太陽経済の新時代を拓(ひら)くことができるのである。
 中国が日本の効率的なエネルギー利用技術を活用できれば莫大(ばくだい)なメリットがあることは周知だが、インドの自然資源と日本の技術の融合はさらに大きな成果を生みうる。日本がこれらアジアの新興国群と密接な協力関係を築くことができれば、世界経済の新たな回復を主導し日本はもとより世界に大きく貢献することができるはずだ。
 現在の暗い時代の先に明るい未来を拓くため、産業界、政府、メディア、学界など皆が知恵と力を出し合い「太陽経済の時代」を実現する運動を起こしてはどうか。(しまだ はるお)
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 この島田氏の寄稿記事は、2008年(平成20年)11月26日に発表されたものだが、その月の4日にアメリカで大統領選挙が行われ、民主党のバラク・オバマが当選した。オバマは、共和党のジョン・マケイン候補との公開討論で、「自分が大統領になったら、太陽光発電、風力発電、電気自動車、これを大々的にやる。これが21世紀のニューディール政策になる」という主旨のことを述べていた。そして翌09年(21年)1月の就任演説では、「太陽と風と大地の力を利用して、車に燃料を与え、工場を動かそう」と呼びかけた。そして、オバマ政権のもと、アメリカはグリーンニューディール政策を開始した。島田氏の寄稿記事は、当時並行して日本でも準備されていた新しい動きを伝え、国民に賛同を呼びかけるものだった。
 島田氏は、先の記事の約半年後、09年(21年)5月6日にも、産経新聞の「正論」に意見を載せた。「『太陽経済』への流れ見据えよ」という記事である。そこで、島田氏は次のように書いた。
 「日本政府は4月10日、事業規模56兆円の追加経済対策を発表したが、その中で、太陽光発電の普及促進、低燃費車の買い替え補助、省エネ家電の購入補助などを盛り込んだ。これらは環境対応と新エネルギー開発を大きく促進する効果をもつだろう」
 「日本企業はこれまでも太陽光発電、燃料電池、蓄電池、電気自動車などすぐれた要素技術を発展させてきた。しかし、人々の生活や産業社会が太陽光によって快適かつ円滑に営まれる本格的な太陽経済を実現するためには、さらなる課題がある。日本が得意な電池や超伝導技術、またICTを駆使したスマートグリッドで世界をリードする。広い領海を利用して海洋バイオの開発を進める。それらの成果を人々や社会が太陽経済として享受できるよう総合的な誘導政策を設計することが必要だ」と。
 さて、島田氏は、先の二つの寄稿記事で、新しい経済のあり方を「太陽経済」と呼んでいるが、その言葉の定義を書いていない。
 「太陽経済」は、実業家で経済評論家である山崎養世氏の造語である。山崎氏は「太陽経済とは、技術と英知によって、人類が毎年の太陽の恵みで暮らすことを可能にする新しい経済」と定義している。次に山崎氏の意見を紹介しよう。ページの頭へ

 

 

2.山崎養世氏が「太陽経済」を提唱

 

 山崎養世氏は「太陽経済の会」を設立し、2009年(21年)3月4日に一般社団法人として活動を開始した。山崎氏は同会の代表理事、島田氏は理事を務めている。
 島田氏は「太陽経済の会」について、「この会は、企業や産業人、政治家、官僚、メディア、研究者などの会員を糾合、もしくはネットワークし、太陽経済に関する情報を集積・分析し、政策や企業戦略に資する提言や研究を発表してゆく。活動は国内だけでなく、中国、インドあるいはアラブ諸国などとも密接に連携して進める。こうした組織の活動が発展し情報集積が進むと、知的な価値創出の凝集力と発信力が高まり、太陽経済実現の有力な核に育つ可能性がある。」と紹介している。(産経新聞「正論」2009年(21年)5月6日) 
 次に、「太陽経済の会」の設立趣意書を引用する。
 
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●「太陽経済の会」の設立趣旨

http://www.taiyo-keizai.com/organizational/index.html

 産業革命以降、続いてきた石炭経済、石油経済に終りが見えてきました。21世紀の半ばには石油が枯渇に向かうと予測されるのに、石油消費が増え続けるからです。しかも、化石燃料の消費で温暖化ガスが増え、異常気象が発生しています。氷河が溶け、大河が干上がり、地下水が涸れ、水と食糧不足が始まり、砂漠が広がり難民や内乱や戦争を誘発しています。CO2を出さない原子力発電も限界があります。管理や廃棄物処理が難しく、事故やテロや核兵器転用のリスクも無視できません。
 この21世紀には石油経済から「太陽経済」へ、新しい産業革命が始まります。太陽経済とは、技術と英知によって、人類が毎年の太陽の恵みで暮らすことを可能にする新しい経済です。太陽からのエネルギーを活用し、資源とエネルギーを節約し、水と食糧を確保して、人類は自らを救い、人間性を守ることが可能になります。
 太陽経済は電気が中心です。太陽光や風力、水力、海水熱などで発電します。その電気で、水を分解してできる水素もクリーンな燃料です。
太陽経済は平等です。埋蔵が限られる石油と異なり、太陽は世界中を照らします。石油は使えば使うほど値上がりしますが、風力や太陽光発電は普及すればするほどコストが下がります。
 太陽経済は、節約して豊かになる、節約経済でもあります。例えば、電気自動車は必要エネルギーが大きく減ります。家電や住宅、オフィス、工場も、省エネ・省資源型に変えられます。携帯電話やパソコンや自動車からは、貴重な金属資源が回収できます。
 また日本は世界の農村と農民を助け、水と食糧問題を解決する力もあります。優れた農業関連技術とインフラ整備、砂漠緑化や淡水化や浄水化などで最先端の技術があります。我々が世界で活躍し、日本の技術と社会の仕組みが世界の標準にならなくては、宝の持ち腐れです。
 まず日本社会が真っ先に太陽経済に変わらなくてはいけません。国民が主役です。個人と企業が実行する、地域で取り組む、そして政府が太陽経済を強く後押しすることが不可欠です。
 私たちは日本で太陽経済を実現する大きな共同体を創り上げたいと思います。知恵を出し合い、お互いに高め合って、世界に発信します。埋もれた技術や努力を発掘し、政策を提言し、様々な結びつきを作ります。実践が日本各地で始まり、世界に広がり、人類の共有財産として活かされることを目指します。
 できることから、できるひとから、太陽経済の輪を広げるために、我々は活動します。エネルギーの枯渇、水と食料の不足、争いと戦争の恐怖から解放されるために。日本が尊敬される国家として繁栄するために。

 〜Save Humanity〜 人類を救い、人間性を守る。この志を実行することが、当会の目的です。
 
 太陽は、地球に降り注ぐエネルギーの5000分の1で人類の必要消費が賄えるうえ、世界の人口増加とともにこれからますます重要になる食糧生産などにも不可欠です。
 「太陽経済」とは、このエネルギーの利用とその周辺に生まれる新しい経済であり、「太陽・水・緑」をキーワードに、単なる発電にとどまらず、さまざまな技術と制度との組み合わせによって、電気自動車の普及や農業による地域活性化、リサイクルといった社会システムを含む概念となっています。
 また「太陽経済社会」とは、太陽経済によって経済と環境が両立し、地域格差が小さく、少ない資源で効率的な生活が送れる社会を指しており、循環型社会、環境社会、共生社会などと共通するコンセプトです。
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 山崎氏は「太陽経済の会」の発足に先立ち、『日本復活の最終シナリオ 「太陽経済」を主導せよ!』(朝日新聞出版、2009年2月刊)を刊行し、太陽経済の実現による日本復活のシナリオを発表している。本書は同会の設立趣旨と同じ方向を示す意見を詳しく述べたものである。その内容については、後に改めて紹介したい。ページの頭へ

 

3.村沢義久氏の呼びかける「太陽エネルギー革命」

 

 山崎養世氏が「太陽経済」を主唱する一方、太陽光発電と電気の新技術による「太陽エネルギー革命」を提唱しているのが、村沢義久氏である。村沢氏は経営学者、環境学者である。山崎氏と村沢氏の主張は、かなり重なり合っている。山崎氏は経済政策を多く提案し、村沢氏は科学技術的な検討結果を提示している。両氏が示す方向性は、同一である。私はそれを「太陽の時代」へ、と称する。

 次に村沢氏の著書『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』(文春新書、2009年3月刊)から、氏の提言の要旨を紹介する。

村沢氏は、これまでの文明を「燃やす文明」ととらえる。

 「我々のこれまでの文明は、CO2や有害物質を撒き散らし、資源を枯渇させる文明であった。その原動力となったのは、1700年代末から1800年代半ばに起こった産業革命であった。その本質は『化石燃料革命』であり、それは人類が過去100万年続けてきた『火を使う文明』すなわち『燃やす文明』の集大成であった。

 200年前から始まった、化石燃料を『燃やす文明』が資源を枯渇させ、CO2を撒き散らしている。産業革命以来続けてきた化石燃料産業が、環境と資源の枯渇という二つの制約から、いよいよ限界が見えてきた」と言う。

 「燃やす文明」に対し、村沢氏が提唱するのが、「燃やさない文明」である。

 村沢氏は、「化石燃料に頼らない文明、さらに言えば『燃やさない文明』を興せば、この問題は一挙に解決できるのではないか。これが21世紀に必要とされる発想の大転換である。本書が提言する21世紀の産業革命は、身近なソーラー・ハウスから始まって、電気自動車、さらには大規模ソーラー・パークなどを含んでいる。それは、これまでの産業のあり方から180度発想を転換した『太陽の産業革命』とも言えるものであり、『燃やさない文明』への幕開けを告げるものである」と説く。

 「太陽の産業革命」とは、太陽エネルギーの活用を中心とした産業革命である。

 「21世紀の人類は、最近非常に強力な切り札を手に入れた。それが太陽光発電と電気の新しい応用技術の組み合わせである」「この組み合わせこそが、200年前の『燃やす産業革命』の呪縛から人類を解放し、新しい『燃やさない産業革命』への扉を開く鍵となる」と村沢氏は言う。

 私見を挟むと、もともと地球の生命は、太陽のエネルギーを受けて発生した。人類の文化は、太陽エネルギーを受けて生長する植物を栽培することで、大きく進歩した。都市が発展し、高度宗教や哲学が誕生し、知識が蓄積された。こうして発達した文明が飛躍的な変化を遂げたのは、ヨーロッパで近代化が進み、科学革命、ついで産業革命が起こったことによる。動力は馬力や水力から蒸気力に替わり、石炭が利用されるようになった。これにより動力革命・エネルギー革命が起こった。さらに交通革命を引き起こした。人類は19世紀後半から電気を利用するようになり、石油を主要な燃料にした。

 村沢氏は言う。「振り返れば200年以上にわたって、『化石燃料革命』は我々に豊かな生活を提供してくれたが、地球上に60億もいる人類が同じような生活を望み、何十億台の自動車が走り回ることになれば、地球環境そのものが限界を迎え、悲鳴を上げることは明らかである。誰もが感じている『行き詰まり感』の本質はここにあると考える。

 そのアルマゲドンを避けるために、様々なエコ活動が展開されているが、それらは資源を節約し、CO2排出を削減するという手立てであり、後ろ向きの『化石燃料革命』の延命策でしかない。ならば、『燃やす文明』を止めるしかないわけだが、繁栄を豊かさは維持したい。かくして世界各国はCO2排出の権利を奪い合うことにもなっている」と。

 そこで村沢氏は、「21世紀の産業革命は、クリーンなものでなくてはならない。これが絶対の課題である。そして、その中核をなすのが持続可能なエネルギーの開発である」と人類の課題を確認する。

 では、どのようなエネルギーが「21世紀の産業革命」の中核となり得るか。村沢氏は「根元的かつ抜本的な解決策はないものか、この10年、その問いをずっと思案し続けてきた」と言い、著書『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』で様々なアプローチについて検討している。村沢氏によると、バイオ・エタノールは効率が悪く、しかも食料生産と競合する。水素はコストが高すぎ実用化まで時間がかかる。そして、「あらゆる可能性を探ってみて、行き着いた答えは、太陽光と風力をエネルギー源とする電気社会であった」と述べる。「『太陽で電気を作れば無尽蔵かつクリーン』。実に身近なところに解決のキーがあったのだが、これは単なる思いつきやひらめきではなく、最近の技術的ブレークスルーによる必然の方向である」と言うのである。

 私見によれば、化石燃料ももとは太陽のエネルギーである。太陽が育てた植物や動物等が何億年もの時間の中で、人類が利用可能な資源に変化したのである。言い換えれば、遠い昔に地球に降り注いだ太陽エネルギーが凝縮されたものが、化石燃料である。産業革命後の人類は、こうした過去に蓄積された太陽エネルギーを利用して、経済活動をしてきたのである。そして、今日人類は、技術の進歩により、太陽エネルギーを直接、大規模に利用できるようになった。それによって、新たな産業革命が始まっている。村沢氏は、それを「太陽の産業革命」というわけである。

考えてみれば、風力発電のもとになる風も太陽のエネルギーによって起こるものであり、潮力発電のもとにある潮流も太陽エネルギーで起こる。バイオ・エタノールのもとになる植物は、言うまでもなく太陽エネルギーで育つ。それゆえ、こうしたクリーン・エネルギーを、総括的に太陽エネルギーと呼ぶことが可能だろう。なかでもやはり地球に毎瞬降り注いでいる太陽光を直接大規模に利用することができれば、エネルギー問題とそれに伴う環境汚染の問題は、概ね解決に向う。

 村沢氏は太陽エネルギーの活用につき、具体策を提示している。日本の環境対応の「旗印となるのが、『耕作放棄地ソーラー化』プロジェクトである」と言う。耕作放棄地は33万haある。その全部を大規模太陽光発電に使うと、「ざっと100兆円」のプロジェクトとなる。「このプロジェクトを10年でやるとすると年間10兆円(GDPの2%)」である。「年間10兆円規模の投資によって日本の総発電量の半分をソーラー発電し、年間4億トンのCO2(日本の総排出量の30%)の削減を目指す。障害は多いし、時間はかかるが、純国産のエネルギー源を確保し、CO2を削減、更に『21世紀の産業革命』において世界のリーダーとなる。一石三鳥、実行しない理由はない。これ以上の実体経済に対する活性化策もあるまい」と村沢氏は主張している。

 そして、村沢氏は、次のように提案している。

 「環境を保護し温暖化を抑えながら、新たな産業を育て実体経済の成長を推進し、同時に眼前の危機をも打開する。その方法がようやく見えてきた」「今こそ日本経済は産業大革命を目指し、国家的なレベルでアクションを起こすべきときではないか」と。

 

 島田晴雄氏、山崎養世氏、村沢義久氏の三氏の主張を概観した。三氏は共通して、太陽光を中心としたクリーン・エネルギーの活用は、わが国の政府が推進すべきとしている。政府が「戦略的主導と支援」(島田氏)をし、「太陽経済を強く後押し」し、「国家レベルでアクションを起こす」ことを求めている。

 私は、三氏の主張に基本的に同意する。わが国は「太陽の時代」に向けて、国家戦略を策定し、政府の主導のもとに、官民を挙げて長期計画を実行すべきである。そして、この取り組みは、大きな需要を生み出すことにより、現在の需要不足によるデフレからの脱却を可能にし、かつ日本が新しい文明を創造する道を切り開くものとなる、と考える。(ページの頭へ)

 

4.太陽が照らす共存共栄の道

 

先に触れた山崎養世氏は、著書『日本「復活」の最終シナリオ 「太陽経済」を主導せよ!』で、太陽経済の実現を目指すだけでなく、アメリカからアジアへと世界経済の重心が移動する潮流をとらえ、日本は「日中印の共存共栄関係を作れ」と主張している。

 私は、「21世紀は、日本を中心として東洋・アジアの文明が興隆する」「世界平和の実現のためには、日中の協力が不可欠」「中国の環境問題を解決できなければ、人類は自滅に至る」「中国の改革には、民主化とともに伝統的な思想・文化の復興が必要」「日本は、中国共産党に追従せず、インドへの協力・連携を拡大すべし」「日本人が日本精神に目覚めることに、日本と人類の存亡がかかっている」等を持論とする。

 それゆえ、山崎氏の「日中印の共存共栄関係を作れ」という主張にも注目している。氏の著『日本「復活」の最終シナリオ 「太陽経済」を主導せよ!』から該当する部分を抽出し、編集を加えながら紹介したい。

まず山崎氏は、日本の将来を次のように予測する。

「日本では少子高齢化が進み、今後、人口が減少していきます」。このままでは国内市場は縮小の一途。企業は海外に出て国内の産業は空洞化し、雇用が失われる。貿易黒字はなくなり、税収も落ち込む。「食糧やエネルギーの自給率が低いままに経済が衰えれば、食糧や資源を輸入できなくなって日本人は生きていけなくなります」と。

そこで山崎氏は、日本人が生き延びていくためには、第一に「戦後のアメリカ一辺倒の経済システムを根本的に変革くしなくてはならない」と言う。

 「明治維新は西洋への開国でした。第2次大戦後はアメリカに開国して日本は発展しました。いまはアジアに向けた『第三の開国』が必要です。日本は戦後営々として築いてきたアメリカ中心の経済体制を根底から改め、目をこれから世界経済の中心となるアジアに向け直さなければなりません」「それをやらない限り、日本は次の100年を生きていくことができないでしょう。逆にそれをすれば、いまは停滞している日本の社会と経済に新たな成長と飛躍が始まるでしょう」として、山崎氏は「第三の開国」を提唱する。

 アジアへの開国と氏が言うとき、主たる対象は、中国とインドである。山崎氏は言う。

 「これからの世界経済に占めるアメリカ、ヨーロッパのシェアは低下し、代わって伸びていくのは、中国・インドというアジアの大国と予想されます」「ところが、中国やインドの経済成長も、実は大きな危機に直面しているのです。それは資源とエネルギー、さらには、水と食糧の限界です」「中国やインドは多くの問題を抱え、変革を必要としています。最大の問題は(略)エネルギー、環境、食糧、水、そして格差解消です」と。

 たとえば、「中国が日本やアメリカと同じ程度の自動車保有率に達したら、今の世界の石油産出高では、それだけで足りなくなってしまう」。だから、中国が石油依存の経済に猛進すれば、世界全体が石油危機に陥ることになる。同時にそれは、地球環境を格段と悪化させることにもなるだろう。

 山崎氏は、中国の動向について、次のように書く。中国では、「エネルギー価格の高騰に対する省エネ技術、鉱物資源逼迫に対するリサイクル技術、自然破壊に対する環境技術、さらにアメリカ型の格差容認ではなく、一億総中流社会を実現した政治と経済のシステム。そうした日本の得意とする分野に焦点が当たり始めているのです」「工業化のため『日本に学べ』を合言葉にしていた1980年代のように、中国にとって日本が必要である時代が戻ってきたのです」と。

 インドもまた日本をこれまで以上に必要とするようになるだろう。産業の発達による急速な経済成長は、日本が直面してきたのと同じ課題を、その国に投げかけるからである。

 山崎氏は言う。「中国・インドを中心として新興国が世界の経済を支える新しい時代に、日本は真に必要とされる国家にならなければなりません」「アジアの大国がこれらの問題の解決に取り組む中で、その力になっていくことが巨大なビジネスを生み、日本の安全保障も確保してくれる。つまり日本と日本人の生存につながっていく」と。

 そして、日本は中国・インドから真に必要とされる国になるには、太陽エネルギーの活用を措いてない。山崎氏の説く「太陽経済」の実現が、日中印の共存共栄を可能にすると山崎氏は洞察する。

 「太陽経済の時代にはおそらくアジア諸国、中でも日中印の三国が共同主役になれると思います。日本が技術やノウハウを提供し、中国とインドで実用化され普及する、30億人の人口を抱える広大なアジア世界が主役となる経済なのです」

 「太陽経済を日中印の共存共栄関係の基軸とし、中国やインドに不足している技術やノウハウ、社会保障などの社会制度も含めて、日本が中印に提供したり、日中印で共同開発する。それによって、中国とインドの高度経済成長を助け、日本自身の持続的経済成長にもつながる」

 だから、「今こそ、アジア世界の一員として、日本は持続可能な共存共栄モデルを築いていかねばなりません」と山崎氏は主張する。

 

日中印の共存共栄の道は、日本が現在抱えている諸問題の解決にもなると山崎氏は述べる。
 「日本には優れた技術、企業、社会制度があります。その一方で、国土と資源には恵まれず、少子高齢化で人口が減ります。社会は安定していますが、活力がありません。中国とインドは高い経済成長を続け、人口も国土も巨大です。その一方で、農村は貧しく、格差が広がり、さまざまな社会制度が未整備です。中印両国が不安定になれば、アジアの隣人である日本はもろに影響を受けます。このように日本と中印両国は対照的です。それだけに、協力すれば、弱点を補い、強みを生かす共存共栄関係になりうるのです」。そして、「お互いに困った問題を解決することがビジネスにつながる、この関係が築ければ日中印の三角形が世界経済の繁栄の軸になるでしょう」と。
 そして、アジアへの開国を「第三の開国」と呼ぶ山崎氏は、次のように主張する。
 「『第三の開国』を成功させれば、たとえ人口が減り、高齢化が進んで国内市場が縮小していったとしても、日本はその悪影響を跳ね除け、国家として安定的な成長軌道に乗っていけるのです。そしてそれによって中国やインド、アジア全域、さらに人類そのものが、成長の限界を乗り越えて未来に存続できるようになるのです」と。
 私が山崎氏の所論において最も注目するのは、「太陽経済」の実現は日中印の共存共栄だけでなく、人類全体のためにもなるという点である。
 「中国とインドの抱えているエネルギー、資源、環境、格差問題を解決することは、二つの国だけの話ではなく、人類全体の課題を解決する道でもあります。人類の生存の危機を救う知恵を、日本から世界に提供していく。(略)アジアの国々とともにその経済、その社会を変えていくことによって、人類全ての方向を変えていくのです」と山崎氏は述べる。「日本のため、中国のため、インドのため、それが日中印のためになり、人類のためになる」というわけである。これは日本自体が生き延びるための戦略でもある。
 「世界の人々が望んでやまない人類文明の危機への解決策を、優れた技術やそれをより効果的にする『すり合わせ力』によって供給していくことこそ、21世紀における日本の生存戦略といえるでしょう。アジアの経済大国がお互いに利益のある対等な枠組みをつくり、それによって自分たちだけでなく世界全体に、安定的に持続する国際関係を構築していく。孤立せず、多くの仲間を得、最終的に正しいことをお互いに追求していく。それが世界にとっての利益となり、日本にとっての利益となっていくのです」と山崎氏は説く。
 「世界中の人たちが生きるのに十分なエネルギーと食べ物を得られるよう、人々の人権が守られ、人間性が守られるよう、日本が貢献していく。日本経済の新たな成長の原動力はそこから生まれてきます」と、
 繰り返しになるが、山崎氏は「太陽経済」に移行する21世紀の世界の中で、日本が「『第三の開国』を成功させれば、たとえ人口が減り、高齢化が進んで国内市場が縮小していったとしても、日本はその悪影響を跳ね除け、国家として安定的な成長軌道に乗っていけるのです。そしてそれによって中国やインド、アジア全域、さらに人類そのものが、成長の限界を乗り越えて未来に存続できるようになるのです」と強調するのである。
 以上紹介した山崎氏の意見と提案は、示唆に富むものと思う。先に書いたように、私は、「21世紀は、日本を中心として東洋・アジアの文明が興隆する」「世界平和の実現のためには、日中の協力が不可欠」「中国の環境問題を解決できなければ、人類は自滅に至る」「中国の改革には、民主化とともに伝統的な思想・文化の復興が必要」「日本は、中国共産党に追従せず、インドへの協力・連携を拡大すべし」「日本人が日本精神に目覚めることに、日本と人類の存亡がかかっている」等を持論とする。
 日本の現状、中国の体質、中印を含むBRICSの動向、アメリカの余力等、検討すべき点はいろいろある。しかし、大局的な観点に立てば、太陽エネルギーの活用によって、日本は生き延びる戦略を立てることができ、かつアジア、そして世界に貢献することができると考えられる。太陽が日本を照らし、共存共栄の道へと導いているのである。ページの頭へ

  

結びに〜日本からアジア、世界へ

 

日本は戦後、アメリカの価値観を押し付けられ、西洋文明を模倣して物質的な繁栄を追い求めてきた。敗戦によるドン底から復興し、高度経済成長を成し遂げた。しかし、政治的・軍事的にアメリカに従属し、主権と国防を制限されたままの日本は、アメリカによって金融的にも従属させられた。仕掛けられたバブルによって経済成長を挫かれ、深刻な不況に陥った。さらに1990年代後半から、アメリカの圧力のもと、新自由主義、市場原理主義を導入した。2001年(平成13年)4月に発足した小泉内閣は、構造改革を進めることにより、日本の経済を悪化させ、同時に日本の社会を悪化させた。家庭・学校・企業・地域で、人と人の信頼関係が壊れ、悲惨な事件が多発している。こうした日本を、世界経済危機が襲った。世界各国と同じくわが国も大きな打撃を受けた。ここにおいて、ようやくわが国のあり方が見直されるようになった。そして、日本的な価値観の再評価が行なわれつつある。日本の家庭・学校・企業・社会を立て直すには、日本的な価値観を取り戻し、人と人、人と自然の調和を再構築しなければならない。

 エネルギー面においては、わが国においても、石油を中心とした化石燃料に依存した産業のあり方を改めようとする動きが活発になっている。日本は、1975年(昭和50年)の第1次石油危機以降、世界最先端の省エネ技術を開発し、また環境を汚染しないクリーン・エネルギーの研究にも取り組んだ。その時代の日本人の努力が、いよいよ実を結ぶ時を迎えている。

 人類の文明は、西洋から東洋へと中心を移動しつつある。欧米諸国は、長期的に衰退に向かい、アジア諸国が興隆している。この文明の地理的変化の中で、日本は、固有の文明を発揮し、東洋・アジアの隆盛を人類全体の調和と発展に役立つように仕向けていく役割がある。日本にとって、太陽エネルギーの活用とそれによるアジア、そして世界の共存共栄は、実現すべき大きな課題である。

「太陽の時代」が始まっている。

 「日の丸」を国旗とする日本から、新しい人類の文明が生まれようとしている。わが国は政府・国民を挙げて、「太陽の時代」のギガトレンドを押し進めていくべきである。ページの頭へ

参考資料
・山崎養世著『日本復活の最終シナリオ 「太陽経済」を主導せよ!』(朝日新聞出版)
・村沢義久著『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』(文春新書)

 

 

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