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説明: ber117

 

東日本大震災からの日本復興構想

2011.5.23

 

<目次>

はじめに〜日本復興のための提言

第1章 菊池英博氏の提言

(1)3年間100兆円の「平成ニューディール政策」

(2)参議院予算委員会での質疑応答

第2章 藤井聡氏の提言

(1)「日本復興計画〜『東日本復活5年計画』と『列島強靱化10年計画』」

(2)参議院予算委員会での公述

第3章 藤井厳喜氏の提言

(1)「日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!」

(2)提言の要点と考察

第4章 丹羽春喜氏の提言

(1)「政府貨幣発行特権の発動で防災列島の構築を」

(2)大胆な政策を裏づける経済学的な理論

結びに〜日本の復興は精神の復興から

 

 

説明: ber117

 

はじめに〜日本復興のための提言

平成23年(2011)3月11日東日本大震災が起こった。その後、2ヶ月以上経過するが、政府はまだ復興構想を示しておらず、復興政策を進める組織と責任担当者も決まっていない。私は、大震災からの復興は、21世紀日本の興亡を左右する極めて重要な、死活的な課題だと思う。だが現在の菅政権には、まったく対応能力がない。これこそ、日本の本物の危機である。

最初に私は、日本の一国民として、次のような構想を抱いている。期間は、10年。主な課題は下記の5つである。

最重要課題:

日本の精神的復興〜日本の復興は日本精神の復興から

緊急課題:

@東北の地域復興〜東北を建て直し、東北から日本をよみがえらせる

Aデフレ脱却で経済成長〜日本の富を生かし、積極財政を断行

B高度防災国家の実現〜迫り来る巨大地震に耐え、繁栄し得る日本を創る

Cエネルギーの転換〜太陽光中心に自然エネルギー活用で21世紀の産業革命を

 

これらの課題の主旨については、本稿の「第5章 日本の復興は精神の復興から」に書く。

東日本大震災からの復興に向けて、震災直後から有識者がさまざまな提言をしている。そのうち、経済の菊池英博氏と丹羽春喜氏、防災の藤井聡氏、総合政策の藤井厳喜氏の提言を掲載し、日本の将来を憂える人々、日本を愛する人々への参考に供したい。

 

1章 菊池英博氏の提言

 

最初は、経世済民のエコノミスト・菊池英博氏の提言である。
 私は3月28日のMIXI及びブログの日記に、大震災からの復興に関し、「政府・日銀が一体となって、大胆かつすみやかに、復興のための財政・金融政策を実施することが必要である。 そういう大胆・緻密な政策を打ち出せるエコノミストに、菊池英博氏と丹羽春喜氏がいる。今のところ、彼らから震災復興政策は発表されていないようである」と書いた。
 その後、菊池氏が大震災直後の3月23日に、参議院予算委員会の公聴会に招かれ、有識者として意見を述べていたことを知った。その内容を紹介したい。

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●時事通信 平成23年3月23日

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201103/2011032300791
震災対応、体制立て直しを=有識者が苦言−参院予算委

 参院予算委員会は23日、2011年度予算案について有識者から意見を聞く中央公聴会を開いた。有識者は東日本大震災や原発事故への対応に関して、政府内の指揮系統の乱れや制度、体制の不備を反省し、早急に立て直すよう求めた。
 森本敏拓殖大大学院教授は「政府の対策本部の活動が必ずしも統一的に管理されていない」と指摘。統制の取れた危機管理体制が必要だと訴えた。原発事故についても「東京電力という一企業に国家的な安全管理の責任を任せているという体質はおかしい」(森本氏)、「東電や経済産業省はちゃんとやったのか。それぞれが責任を果たすことが重要だ」(孫崎享元外務省国際情報局長)と苦言を呈した。
 また、藤井聡京大大学院教授は、環太平洋連携協定(TPP)に関し「被災地に諸外国からの安い農産品という第2の津波が来襲すれば、ますます壊滅的な被害を受けるのは必定だ」と語り、交渉不参加を表明すべきだと主張した。菊池英博日本金融財政研究所所長は、震災復興やデフレ脱却のために大規模な補正予算の編成が必要だと持論を展開。その財源は埋蔵金などで確保すべきで、増税には反対だと強調した。(2011/03/23-17:45
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 マスメディアは、この公聴会の内容を国民に詳しく伝えていないが、公聴会の録画が Youtube に掲載されている。
http://www.youtube.com/watch?v=u3Lu4a8JSHs
 開始後、1分26秒のところから15分間超にわたって、菊池氏の明快勝つ堂々たる公述を視聴することができる。
 菊池氏は、国会議員・官僚に対して、日本の財政危機は政策危機である、という持論をぶつ。財政危機説は「壮大な虚構」と指摘する。その発言は、痛烈である。すべて政府、財務省・内閣府が公表しているデータをもとにした見解だからである。
 菊池氏は、次のように言う。日本は平成10年(1998)からデフレである。自公政権は構造改革で国民を騙した。政権交代をしたのに、菅政権になってから、自公政権以上のデフレ政策が続いている。現在は「菅デフレ」である、と菊池氏は指弾する。
 公述における理論的な説明は、拙稿経世済民のエコノミスト〜菊池英博氏」に書いたものと同じ主旨である。
 公述の最後部分で、菊池氏は、東日本大震災からの復興政策を提案する。大意次のような提案である。
 「既に日本は平成恐慌に陥っており、平成ニューディール政策の実行が急務。提案したいのは、3年間で100兆円の緊急補正予算を組むこと。オバマは大統領になると、すぐ70兆円の緊急補正予算を組んだ。アメリカは債務国。それが思い切ったことをやった。日本は世界一の債権国だから、こんなことは幾らでもすぐできる。
 財源は、埋蔵金から50兆。建設国債を50兆ぐらい出してもいい。ゼロ金利国債、無利息国債(註 無利子国債)も出してもいい。日銀が国債を保有すればこれは無利息国債である。
 こういう3か年計画の初年度として、東日本大災害の緊急補正予算30兆を、今年の4月に是非組んでほしい。思い切ったことを一括して、しかもプラン、方向を出してする。これ国民望んでいること。ちまちまこそこそやっても駄目。金は幾らでもある」
 菊池氏は平成21年(2009)に、5年間で200〜220兆円の「日本復活5ヵ年計画」を提唱した。画期的な提言である。菊池氏は大震災後、この計画を変更し、3年間で100兆円という「平成ニューディール政策」を唱える。その初年度として30兆円を初動の資金とする。財源は国家埋蔵金、建設国債(内需創出国債)、無利子国債の3つである。
 「日本復活5ヵ年計画」に比べ、大震災復興の「平成ニューディール政策」は、期間が5年から3年、金額が200兆円規模から100兆円と変更されているが、基本的な考え方は同じである。
 国会議員には、菊池氏の公述と資料をよく理解し、国民の代表として責任を持って、復興政策のための緊急補正予算を策定してもらいたい。

(1)3年間100兆円の「平成ニューディール政策」

 

次に、3月23日に行われた参議院予算委員会公聴会における菊池英博氏の公述を掲載する。この公述録は参議院のサイトにて公開されているものである。

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■平成23年3月23日参議院予算委員会 公聴会 菊池英博公述人 公述禄

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0115/main.html

 おはようございます。御紹介いただきました菊池英博でございます。それでは、御指名でございますので、私から公述を開始させていただきます。
 まず、お手元にかなり欲張って多くの資料を用意しております。まず、この「消費税は0%にできる」という本がございます。それから、クリアフォルダの中にこの書類が入っておりまして、その一部、飛び出しているのがありまして、附箋が付いたところがございますが、この附箋が付いたのを引っ張り出していただきまして、これに基づいて公述をいたします。せっかくのチャンスでございますから、資料を多めに用意をいたしました。
 本日申し上げたいことは、かねがね私の主張でございますけれども、日本は財政危機ではございません。これは壮大な虚構です。そのことデータ基にしてお話しいたします。しかも、このデータは全て政府、財務省と内閣府が出しているデータを分析したものです。したがって、根拠もしっかり書いてございます。そういう意味で、このデータをここに用意しておきました。
 それから、その本のこのデータの中には「日本の財政の正しい考え方」という私の考え方をペーパーにまとめてございます。これは今御覧いただいておりますこの本の最後のところに書いてあるですが、これが私の考え方でございまして、ここをベースにしながら申し上げたいと思います。
 それで、私が消費税はゼロ%にできるというのは、何もゼロ%にしろということを申し上げているわけではないです。景気を振興させてもっとデフレを解消すれば、消費税に頼らないで財源は幾らでもあるということです。日本は財政危機ではございません。それから、財源も幾らでもあります。そのことを今日申し上げたいと思います。
 実は、私はこの参議院の予算公聴会にお招きいただきましたのは二度目でございまして、ちょうど十年前の二〇〇一年の三月十五日でございました。そのときにどんなことを言ったかなと思ってメモを出してみますと、そのときにこんなことを申していますね。
 日本の財政は総借入れから政府が保有している金融資産を引いた純債務できちっと見るべきなんだと、そうすれば日本は決して財政危機ではありません、財政危機を正しく把握するにはその純債務で見るべきですと。この時点、つまり十年前の時点で緊縮財政とかいう話がかなり出ていたですね。マスコミも盛んにはやしていましたが、これは全く間違いであると。それで、もしここでそういう緊縮財政をやりますと、結局、経済の成長が止まり、デフレが加速し、同時に財政赤字は拡大しますということを申し上げました。
 十年後の今日、実はそのとおりになっております。これは二〇〇一年からの小泉構造改革の結果です。必然的な結果です。意図的にされたです。本日もこの席上で、日本は財政危機ではない、緊縮財政を継続いたしますと日本は本当に財政危機どころか、日本経済が破滅に向かってしまうということをきちっと申し上げたいと思います。
 それでは、レジュメがございますので、時間の関係がございますので要所だけをお話しして、後ほど細かいところは御質問をいただければと思います。

 まず、テーマでございますが、日本は財政危機ではない、政策危機である。財政危機は壮大な虚構である。政権が交代したのに、菅政権になってから一段と国民だましが続いているということです。
 要旨は次の四点です。
 一、自公政権は構造改革で国民をだまし、意図的に税収が上がらない脆弱な経済にしてしまった。この政策理念の根拠が新自由主義、市場原理主義で、これは悪魔の経済学です。
 二番目、政権が交代したのに、菅政権になってから自公政権以上のデフレ政策が続いています。鳩山政権のときにはそうじゃなかったです。見直しが進んでいました。現在は菅デフレです。
 三番目、日本は財政危機ではございません。政策危機です。日本は既に平成恐慌に陥っております。平成ニューディール政策の実行が急務です。日本は世界一財源の豊富な国です。財源は幾らでもあります。埋蔵金も、ここにデータを用意してまいりましたが、五十兆はすぐ出ます。どこにあるか、きちっと用意してあります。
 四番目、経済を成長路線に復活させれば消費増税なしで社会福祉の財源は出てまいります。
 
 では、各項目に入ってまいりますと、まず一番、主なところをずっと読んでまいります。小泉構造改革による数々の国民だまし、何とこれが菅政権になってから復活しているです。
 まず第一に、デフレは一九九八年から始まっております。これはGDPデフレーターという指標で取るのがデフレの指標として正しいのでございますが、御案内のとおりです。これは一九九八年からずっと続いています。既にもう十五年目を迎えています。
 デフレなのに緊縮財政を取った、それから金融緩和だけでデフレが解消できると、これが小泉構造改革だったわけですが、これでは、金融だけで解消できないということは、もう立証されました。ところが、今でもマネーだけを解消すればいいなんという説があるですね。これは自民党さんにもありますし、民主党さんにも実はあるです、一部。ただ、これは過去の小泉構造改革十年間でマネーを緩めただけじゃ駄目だということはもう立証されています。
 それから、二番目。需要が減少をしているのに供給サイドの問題と称して労働法の改悪、解雇を自由にしましたね。大手企業はというと収益は激増、中小企業は倒産とか撤退は増加する。地方はシャッター通り、ゴーストタウンです。それで、経済規模が縮小したと。百兆円の国民の預貯金が実は国内を圧縮して海外に出ております。まさに本当に驚くべきことです。これはデータもございます。
 三番目。実質GDPの増加の国民だまし。名目減少で実質が増加する、つまり名目GDPが減少をしていて、ところが実質的GDPが増加しているからこれは経済成長ですなんというのが、ずっとこのことが言われてきたです。今でも言われています。これは全くのでたらめです。
 実質成長といいますのは、そこに書きましたとおり、名目GDPからGDPデフレーターを引いたものなんですよ。GDPデフレーターがマイナスでしょう。マイナス、マイナスはプラスになるですから全くごまかしもいいところですが、今でも続いているですよ。その結果、ごまかされた結果、名目GDPはどうかといえば、一九九七年は五百十三兆ありました。二〇〇九年は四百七十五兆、これは更にこのまま行きますともう一挙に四百兆に向かいます。
 四番目。日本は民間も政府も投資不足なんです。投資が既に回収超過です。ところが、公共投資は更に落とそうとしている。しかも、民間に対して投資を創造しようというインセンティブがありません。
 五番目、ああ、六番目ですね、公共投資の乗数効果。これは一以下だといって内閣府のモデルがあります。これは全く偽装モデルです。どこが偽装されているかもデータはございますから。これは本当に恐るべきことなんですね。私はここまで、政府が客観的なモデルまで改ざんしているとは思いませんでしたけれども、この辺のことをきちっと指摘されたのは宍戸駿太郎先生という方で、たしかここでは、私、テレビで拝見いたしましたら、自見庄三郎さんという今は大臣をやっていらっしゃる方が何か指摘をされておられたと記憶しておりますが、そのことでございます。
 それから、七番目。歴史的に数値目標というもの、財政改善の数値目標は全部失敗しております。日本では今、三度目の失敗に向かっているですね。
 一回目の失敗は、九七年の橋本財政改革。これは、五年で財政赤字をGDPの三%以内にしようという計画を立てたですね。しかも、これは法律を作ったですよ。これが大失敗だった。だから、竹下元総理が法制化したことが失敗だったなとおっしゃったそうです。これは自民党さんのある政治家の方から教えていただきました。ところが、今、自民党さんでは法制化しようという動きがありますね。これは大変なことですよ、法制化されることは。これはよく反省していただきたい。
 それから、二度目の失敗は、二〇〇二年から基礎的財政収支の均衡策、これを取ってきて、小泉構造改革で税収が上がらない日本にしちゃったですから。経済は結果ですから。全て失敗です。
 三度目、まさに菅さん、菅総理になられてから、二〇一〇年の六月に基礎的財政収支を二〇二〇年に均衡すると、そういうまた数値目標を立てられましたね。ところが、経済情勢、財政赤字の度合いは、その二〇〇二年の小泉構造改革が始まるときよりも悪くなっていますから、これは今の、構造改革のときのデフレ以上のデフレが菅デフレです。
 それから、アメリカでも実は数値目標をやって二回失敗しているですよ。御存じと思いますが、一回はレーガン、一九八五年、二回にはパパ・ブッシュ、一九八九年からで失敗した。だから、パパ・ブッシュはその後落選しましたね。クリントンになりました。
 それで、この中の最大の国民だましが財政危機だということです。そこで、それをちょっとデータで見ていただきたい。
 レジュメのところに附箋が付いておりますね。この附箋のところをちょっと開けてくださいますか。附箋を開けていただきますと、ここに表がございます。これは、一番上に書いてありますとおり、純債務で見た日本の財政というデータでございます。先生方は予算委員の方ですから十分御案内かと思いますので、やや釈迦に説法のようなことがありましたらお許しください。
 まず第一に、このデータ、上にありますのが、左側が粗債務、財務省が出す財政の数字です。それから、右の方が金融資産、これは内閣府が毎年出しています。大体一年半ぐらい遅れますけれども、確報を出しております。
 問題は、まず第一に、粗債務の中身なんです。ここにあります債務、見ていただきますと、合計のところに九百十九兆ってありますね。これは財務省が出しました二〇一〇年十二月末、昨年末の数字でございます。この中身をよく見る必要があるです。まず、一般会計と特別会計に分けて考えますと、上の方の長期債、これは一般会計です。六百二十八兆。それから、下の借入金、財投債、政府短期証券は特別会計、二百九十一兆。ざっと三百兆が特別会計です。
 特別会計って一体何だろうかと。御案内のとおりですが、その下を御覧ください。図解してみますとこうなるですよ。特別会計の内訳というのは、実は国家が投融資活動をやっているですよ。それで、二つに分かれます。一つは財政投融資特別会計と外国為替特別会計です。財政投融資特別会計はざっと二百兆ありまして、ここで借入金と財投債で調達した資金を政府系の金融機関を通して一番右にある企業とか個人、地方自治体、外国政府などに貸し付けているわけです。だから、元利金はこういう最終借入人が返してくれるです。
 それから、その下、政府の短期証券。これはざっと百十兆ありますが、ここで集めた国民のお金を外国為替特別会計に入れまして、そこでドルを買って、ほとんどがアメリカの国債を買っております。ざっとこれで、目減りして九十五兆になっていますが、つまり百兆のものが国民から召し上げられてアメリカの国債を買う形になっている。それで、結局返してくれる。この元利金を返済してくれるのはアメリカの政府であり、一部日本の銀行に預金していますからね、そういうところなんですね。
 そうすると、これで御案内のとおり、特別会計の債務というのは、政府の債務であっても国民が負担しなければ債務ではありません。だから、これを入れて九百兆だ、さあ大変だ、増税だというのは全く国民だましもいいところです。これは自民党さんがもうこの十年間本当にやってきたことです。ところが、民主党さんになられてからもまだ改善されていないですよね。是非改善していただきたい。特に菅さんには積極的にこのことをおっしゃっていただきたい。菅さんは、大変だとか、何でしたっけ、G7へいらして、ギリシャのようになるとおっしゃったようですけれども、これは本当に最大の錯覚でございます。失礼でございますが、これは私、一国民として言わざるを得ません。
 ですから、一番上に参りますね、そうすると、特別会計というのは、そういうことで除くべきだと。そうすると、一番上の長期債務、六百二十八兆とあります。しかし、これも、その右の方を見ていただきますと、社会保障基金というのが二百兆ございます。これは、我々の年金ですとか、それから健康保険、こういうものの国民が拠出しているお金の集積したものです。この部分で国債も八十兆からかなり買っておりますから、資金が循環しておりますね。これ、ある程度必要なんですね。国民から取り上げますから、それによって国債に回すということは、資金循環ですから、これ必要なことなんです。
 そういうことを考えますと、長期国債六百二十八兆も実は二百兆ぐらいはそういうもので担保されておりますから、その差額が純債務で、四百兆ぐらいです。これは中央政府の債務です。ただし、地方政府の債務は百兆ぐらいございますから、実際には五百兆ぐらいあると思いますが。最近盛んに政府が、財務省なんかが発表するのは、債務をどんどんいろんなものを入れてかさ上げしているようですが、この実態を見ますと決してそんなに大したことではございません。これが要するに財政危機ではないという証拠です。
 それでは、どうしたらいいか。恐縮でございますが、二ページ目に行ってくださいますか。メモの二ページ目、よろしゅうございますか。この二ページ目を御覧ください。時間の関係がございますから、項目だけを読んでいきます。
 現在は政策危機なんです。財政のわな、金融のわなに落ち込んでいます。金利をゼロにしても借り手はありません。デフレ下での緊縮財政をやる。デフレが促進される。名目GDPは減る。経済規模も縮小する。数値目標によってまた財政危機だとあおる。またデフレが進みますね。経済はどんどん縮小していきます。
 それで、こういう時期でして、既に日本は平成恐慌に陥っておりますから、平成ニューディール政策の実行が急務でございます。その三番目、下へ行きまして、ニューディール政策として私が提案申し上げたいのは、三年間で百兆円の緊急補正予算を組んでいただきたい、きちっと計画を立てて。アメリカが、例えばオバマが二〇〇九年に大統領になりましたね。あのときに、すぐ二月に組んだのは七十兆円の緊急補正予算です。あれ、二年間です。今年ぐらいで切れるものですから、今いろいろ考えているですけど。いずれにしましても、アメリカは債務国で財政赤字の国ですよ。債務国ですよ、アメリカは。それが思い切ったことをやった。日本は世界一の債権国ですから、こんなことは幾らでもすぐできる。三年百兆というのは、そういうところのヒントからも得ています。
 それで、支出内容としては、その細かい点は時間の関係がありますので省略させていただきますが、まずやっぱり生活が第一、これで政権が交代したです。民主党さん最近生活が第一というのは看板から外されているそうですけど、とんでもない話です。生活が第一だから国民は民主党政権を選んだです。これを忘れないでいただきたい。
 それから、こういうふうに出しましたときには、法人税と所得税の最高税率は引き上げるべきです。それで、地方税もフラット税制を廃止していただくということが必要だと思います。
 その次のページに行きまして、財源でございますが、これはそこに書きましたとおりかなりございまして、埋蔵金から五十兆、それから建設国債を五十兆ぐらい出してもいいと思います。それで、財源の根拠になるものは、下にあるということがございます。
 最後に申し上げたいことは、日本財源十分あります。ですから、ゼロ金利国債というのも、無利息国債も出してもいいと思いますし、日銀が国債を保有すればこれは無利息国債です、御案内のとおりと思いますが。
 それで、最後に申し上げたいのは、こういう三か年計画の初年度として、初年度として、東日本大災害の緊急補正予算三十兆を今年の四月に是非組んでいただけないか。思い切ったことを一括して、しかもプランを、方向を出して、これ国民望んでいるです。ちまちまこそこそやってもこれは駄目です。金は幾らでもあるですから。その点を強く要望して、公述を終わらせていただきたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。
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(2)参議院予算委員会での質疑応答

 

公聴会では、菊池氏に続いて他の公述人2名が続いて発言した。その後、一括質疑が行われた。その部分から菊池氏の発言を抜粋にて掲載する。

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■平成23年3月23日参議院予算委員会 公聴会 質疑における菊池氏の発言(抜粋)

 
 「デフレのときにはマネーを緩めただけじゃ駄目だと。だから、デフレのときには、需要が足らない、それを補うには民間投資では駄目、したがって政府がデフレの投資をきちっとしなけりゃいけない、だから結局政府投資が必要なんです。ですから、私が申し上げたさっきのような形で、百兆円の三年間実行、毎年三十兆、それで政府がそういう方針をちっと出す。それと同時に、民間が投資をしやすいように、私の考えは、民間には投資減税をしたらいい、投資をして正規社員を雇ったら減税してあげますよというのが私はいいと思います。そういうことをきちっとやるのがよろしいと思います。」
 「私が申したような三か年計画で思い切って百兆出せというふうに言うかといいますと、生活に密着した公共投資、それから社会的インフラ投資、脱石油・新エネルギーの関連投資、それから低炭素、医療、介護、福祉、観光、IT、教育、科学技術等への集中投資」
 「三年百兆を出したところで、GDPデフレーターはようやく三年目ぐらいにプラスになるぐらいだと思いますよ。それで、今のデフレは本当に深刻なデフレで、国民は意識がまだ乏しいですよ。実は真綿で首を絞められているです。徐々に徐々に絞められて、もうそろそろ窒息ですよ。どおんと来て、ああいう震災が来ちゃって、事の重大性を何か我々にしっかり考えなさいよと言われているような気もいたしますけれどもね。
 いずれにしましても、今回のケースといいますか、長期的に見て、だから最初の百兆のうちの三十兆は四月早々に補正を組んでいただいて、そういうところ、まず東北地方の災害の復興、開発、これをきちっとしてプランを立てる。しかも、それによって住宅にしてもあるいは港湾施設にしても、先ほど藤井先生も御指摘でございましたが、そういう新しい次元に立って、そこから国づくりを新たにつくっていくだと、そういう視点でやっていくのが望ましいじゃないかと思います。」
(註 藤井氏とは藤井聡氏のこと。後日紹介する)
 「決して今回の復興財源だけじゃなくて、デフレ脱却財源ですね、これをどう考えるかという中でまず復興財源から入ると、こういうように私自身は考えたいと思っているわけです。
 それで、まさにこういうときには、何回も申し上げますけれども、やっぱり財源というのは、まず第一に本当に特別会計の中に財源がないのかどうか。(略)二〇〇九年度の特別会計、昨年の三月決算したのを見ますと、八十兆円埋蔵金はございます。これは社会保障を除いてですよ。そのうち幾つか何かすぐ使えないのもありますけれども、四、五十兆これもう法律を改正するだけで使えます。ですから、こういうものはまず危機に際してきちっと放出して、それをまず財源の第一にすべきじゃないかと思いますね。だから、増税ということをおっしゃる前にはまずこれをしっかりして、これが実は一番大切な、まあ何というでしょうか、財政規律のイロハじゃないかと思っているですが、そういうことをまずすべきだと思います。
 それから二番目には、確かにそれだけでも足りません。ですから、その次についてはやっぱり建設国債と、あるいは復興国債と名付けるか、いずれにしてもそういうものを出す必要があると。」
 「日本が今考えなければいけないことは、対外的には債権国なんですよ。純債権が二百七十兆あるですよ。それで、その収入だけで、利息、配当は十五兆から二十兆近く毎年来ているわけです。それ、国内がデフレだから、みんな使わないからまた海外へ再投資している。再投資すると、ドルになっちゃって円高になってみんな損しちゃう。まさにそういう物すごいジレンマに陥っちゃったですね。
 ですから、これを流動化して国内に使ってもらうためには、建設国債を出して日銀にやっぱり、まあ私は日銀の直引受けじゃなくて、先ほど大恐慌のときにアメリカがやったというような形ですね。つまり、今日例えば五兆出しましたよ、そうしたら日銀は市場に出ている既発債、既に発行している債を五兆買えばいいです。市場で資金がツーツーだったら金利は上がりませんよ。ですから、そういう操作をきちっとやっていけばいいじゃないか。
 それで結局、じゃ日銀の保有国債がかなり累増してくるかもしれません。しかし、日本経済全体から見ますと、対外的に債権があれば、日銀がその部分を国債として保有して市場に資金を出しているということは、対外債権を国内で一部流動化しているということなんですよ、流れでいいましてね。ですから、これはもっとやってもいいだと、私はこういうふうに考えております。」
 「この予算案につきましては是非早く通していただきたい。通した上で補正予算というものをしっかり考えていただきたいと思うです。それで、補正予算については、私も冒頭申し上げましたとおり、かなり三年百兆と大胆に申し上げましたけれども、その一年度としてさっき、繰り返しますが、東北震災についての具体化、そしてそれをどういうふうにしていくかです。(略)それで、補正予算の重要なことは投資を促進するということです。投資が足らないです。さっきからくどいほど申し上げて恐縮でございます、先生(ほそかわ註 質問した議員のこと)御案内のとおりで。ですから、そのためにやると。それはまず、デフレだから民間投資は出てこないですから、地方。地方はもう本当にゴーストタウンですよ。ですから、そこに対してどう投資するか。だから、公共投資も従来型のというよりは生活に密着した投資ですね。(略)橋でもいつ落ちるか分からない。今回でも東北の地方でもそういうのががつんと最初に落ちたかもしれない。そういったものを中心にしていく。ですから、投資中心の補正予算を組んでいただきたいというのが私の意見でございます。」
――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 以上が、公聴会における菊池氏の公述である。
 次に私見を述べたい。菊池氏は「日本復活5ヵ年計画」を変更し、3年で100兆円の「平成ニューディール政策」を提案しているが、その期間と資金で何をするか、が重要である。むしろ、為すべきことがあって、それに必要な財源を調達するのが、望ましい仕方である。
 私は、大震災の前であれば、5年で200兆円規模という計画で、デフレを脱却し、経済成長に転じることができたと思う。しかし、大震災により、東北地方が甚大な被害を受け、全国的にも製造業等に広範な影響が出ている。そこからの復興は、震災前からの課題に加わった新たな課題である。しかも、緊急を要する。それゆえ、期間は3年ではなく10年と設定し、まず東北の復旧に集中する時期(2〜3年)、さらに復興を進める時期(2〜3年)、それをきっかけに日本全体の復興を進める時期(4〜5年)と段階的に分ける必要があるだろう。
 またこの機会に新しい日本を建設するためのヴィジョンが求められる。菊池氏は質疑で「生活に密着した公共投資、それから社会的インフラ投資、脱石油・新エネルギーの関連投資、それから低炭素、医療、介護、福祉、観光、IT、教育、科学技術等への集中投資」と列挙しているが、まず新しい日本の大きな絵を描き、それをもとに重点事業や優先順位を決め、資源を配分するのがよいだろう。多くの分野の専門家や有識者の知見・発想を集め、それを吸収した上で、大きな絵を描いて国民にヴィジョンを見せ、それを実現するためのグランドデザインを示す人間の活躍が期待される。
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第2章 藤井聡氏の提言

 

菊池英博氏が意見を述べた3月23日参議院予算委員会の公聴会で、同氏に続いて、京都大学大学院教授の藤井聡氏が公述した。

藤井(聡)氏は、都市社会工学の専門家として、日本を地震等の災害に耐える強靭な国家にすることを、公聴会で提案した。菊池氏の提言を受けて、大規模な財政出動を行い、防災に重点を置いて日本を再建する計画を提案している。
 藤井(聡)氏は、TPP反対論を説く気鋭の経産官僚・中野剛志氏を、助教として京大の自分の研究室に招いた教授である。単なる工学の専門家ではなく、経済政策にも高い見識を持っている。
 

(1)「日本復興計画〜『東日本復活5年計画』と『列島強靱化10年計画』」

 

3月23日、藤井(聡)氏は 「日本復興計画〜『東日本復活5年計画』と『列島強靱化10年計画』」という緊急提案を発表した。公聴会での発言は、これをもとにしたものである。藤井(聡)氏は、自らのサイトに、この計画書を掲載している。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201101-201106/presentation/20110323fujiilab_plan.pdf
 最初に、計画書冒頭の「概要」を掲載する。

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 平成23年3月11日に起こった東日本大震災は、「被災地域の国民・法人・自治体」のみならず、「日本経済」そのものに、どの先進諸国も未だ経験したことの無い激甚なる被害をもたらした。
 しかも、その巨大地震は、いつか必ず起こるであろうと危惧されている首都東京を直撃する「首都直下型地震」の発生確率(30年以内の発生確率が70%)に影響を及ぼした可能性も否定できない。そして今回の巨大地震と同規模の「東海・南海・東南海地震」の危機が改めて認識され、巨大津波に耐えうる防災対策の見直しの議論が改めて始められているものの、その30 年内の発生確率は50%〜87%もの水準に達していることが知られている。この度の東日本大震災の傷が癒えぬ間に、首都東京、東海や西日本の諸都市に、今回の大震災と同様、あるいはそれ以上の深刻な被害をもたらす巨大地震が連発すれば、文字通り我が国は「瀕死の重傷」を負うことにすらなりかねない。
 本緊急提案は、こうした、我が国が今まさに置かれている「国難」的状況を冷静に見据え、東日本大震災で大打撃を受けた東日本が「復活」を遂げるための短期集中的な復興・復旧事業の基本方針を「東日本復活5年計画」としてとりまとめると共に、巨大地震を中心とした様々な国家的危機にも負けない強靱(レジリエント)な日本をつくるための諸事業の長期的方針を「列島強靱化10年計画」としてとりまとめるものである。特に、東日本復活においては、被災者に対する就労支援型の救済を図る「東日本ふるさと再生機構」(仮称)の設立を提案する。
 そしてこれらの合計10ヶ年日本を強靱なる国家への「復興」を図る計画のための財源を、

■日本銀行の積極的な買いオペレーションを促す日銀・政府間の適切な協調(アコード)の下、
■年間数兆円から、最大で20兆円規模の「国債発行」を行う、

ということを基本として調達する。そしてその財源を、初期5ヶ年では「東日本復活5年計画」に重点的に配分する一方、後期5ヶ年では「列島強靱化10年計画」に集中配分する。ただし、その際、適正なインフレ率(2.5〜3.5%程度)の上限を予め設定しながら、必要に応じて各種の対策(金融政策や税政の見直し等)を裁量的に展開することを前提とする。
 こうした諸対策を通して、日本の持続的な繁栄を期するものである。
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 計画は、A4で16ページ。関心のある方は、全文を読まれるようお勧めする。
 

(2)参議院予算委員会での公述

 

3月23日参議院予算委員会の公聴会では、開始後、19分7秒のところから約15分間にわたって、藤井(聡)氏の気迫に満ちた熱烈な提言を視聴できる。大震災後の日本をどう建て直すか、菊池氏の公述と合わせて、多くの人に視聴をお勧めしたい。両氏の公述は、通しで見ると約33分である。魂を揺さぶられる時間となるだろう。
http://www.youtube.com/watch?v=u3Lu4a8JSHs
 藤井(聡)氏は、自分の公述録をサイトに掲載している。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/index.php/b4/job/121-sanngiin.html
 続いて、その内容を転載にて紹介する。

 

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■平成23年3月23日参議院予算委員会 公聴会 藤井聡公述人 公述禄

 〔藤井(聡)氏による註〕 〜〜を記載した部分は、事後的に適宜付与した見出しである

〜〜日本は復活する〜〜
 この度は斯様な機会を頂戴いたし、誠にありがとうございます。
 ただいま菊池先生が公述なさいました大規模の財政出動、この財政出動のお話をお聞きしながら、私の方からお話したいと考えておりましたのが、先ほど菊池先生がおっしゃった大規模な財政出動の中身、この部分をこの度の大震災をうけて申し上げたいと考えております。そしてこの度の東日本大震災において犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げると共に、被災地の方々に、改めて、お見舞い申し上げたく存じます。
 言うまでもありませんが、今何よりも、なすべきことは、被災地の方々に対する救助、救援であります。そしてそれと同時に、我々日本人は、この国難の危機を回避するための方途を、全力で、考えはじめねば、なりません。
ところが、ともすれば、日本はこの瀕死の重傷から、立ち直ることができないのではないか、という様な、漠とした不安、ある種の絶望感をお持ちの方も、少なくはないのではないかとも感じております。
 しかも、地震の専門家は、30年以内に、今回のこの大震災の被害をさらに上回るとさえ言われる東海・南海・東南海の各地震が起こる確率が50〜87%もあることを明らかにしています。
 さらに、この度の大震災の「何倍もの被害」をもたらすであろう、「首都直下型地震」が30年以内に起こる確率が、実に「70%にも上る」ことを明らかにしています。
 折しも日本は、かつて世界第2位であった一人あたりのGDPが、長年のデフレ不況のためにいつのまにか20位前後にまで凋落し、経済大国の地位そのものがぐらつき始めているところでありました。その弱り目に祟り目と言わんばかりに、この度の、巨大震災が、襲ったのであります。そして、さらなる巨大地震の影にも、おびえている、それが、今日の、日本の、ひ弱な、悲しい姿であります。
 しかし、それらを全て踏まえてもなお、私は、確信していることがございます。それは、ここでうろたえず、状況を冷静に判断しつつ、なすべき対策を行うことさえできれば、この国難の危機を回避し、必ずや、我が国は復活できる、ということであります。そして、どのような「国難」をも乗り越えられる様な「強靱な国家」になることができるのだということであります。
では、そのためには、どういう対策が必要なのか。今からそれについてお話いたしたいと思います。

〜〜「強靱さ」を目指した復興を〜〜
 そもそも、我々日本人は、先の大戦の敗戦後の時代を「戦後」と呼び、「列島改造論」に象徴されるような、「豊かになる!」とのビジョンを掲げ、今日まで努力を重ねて参りました。そして、豊かさの頂点を極めたバブルが崩壊した後もなお、「豊かさ」に変わる、新しいヴィジョンを持てないままに、今日に至っております。
 しかしその間、日本経済はデフレのために凋落し続け、失業率も自殺者数も飛躍的に伸びてしまいました。そんな時代に、高度成長もバブルも知らない新しい世代が求めているのは、今や既に「豊かさ」ではなく、「生き残ること」そのものとなっていったのです。それと同時に多くの国民が、リストラや倒産の影におびえております。ここでもまた、多くのの人々が「豊かさ」ではなく「生き残ること」を求めているのです。
 そんな時代のただ中に起こったのが、今回の大震災でありました。そして、この大震災によって、今や、自分自身のみでなく、街や村、そして、日本そのものが「生き残ることができなくなるのではないか」との漠とした不安に、日本中が、決定的に被われることになったのであります。
 つまり、我々が、求めているのは、かつて求めていた「豊かさ」では、既にないのです。今必要なのは「何があっても亡びない、永続的な繁栄を続けうる、強靱さ」なのであります。言うならば、「豊かさ」を追い求めた「戦後復興の時代」が、かの3月11日に決定的に終焉したのです。
 そして、我々は今、「強靱さ」を目指した、「震災復興の時代」のただ中に、生きることとなったのであります。だからこそ、「豊かさ」を求めた「列島改造論」に変わる、新しいヴィジョンとして、数々の巨大震災をも乗り越えることの出来る「強靱さ」つまり英語で言いますところの「レジリエンス」、この「レジリエンス」を求める、「列島強靱化論」を、ここに、強く、提案申し上げる次第であります。
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 一点私見を述べると、藤井(聡)氏は「数々の巨大震災をも乗り越えることの出来る強靱さ」を「レジリエンス」と言っているが、「レジエンス」は resilience、回復力のことをいう。困難な状況や病気の後で、強壮、健康、幸福を早く回復する能力が「レジリエンス」である。この場合は、災害から早く立ち直れる強靭さという意味になるだろう。

 公述を続ける。

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■平成23年3月23日参議院予算委員会 公聴会 藤井聡公述人 公述禄(続き)

 

〜〜日本復興計画〜〜 

お手元にお配りしておりますのが、「日本復興計画」の資料でございます。

さて、この「列島強靱化論」でありますが、その内容を、「日本復興計画」という「緊急提案書」にまとめております。委員の先生方にはお配りいたしておりますが、国民の皆様も、当方「藤井聡」のホームページにて、公表しておりますので、是非、ご覧ください。

この緊急提案は、二つの計画から構成されております。

一つは、「東日本復活五年計画」、もう一つは、「列島強靱化十年計画」であります。

つまり、5年をかけて東日本を復活し、10年をかけてどんな危機をも乗り越えられる強靱な国家をつくりあげる、それを目指すわけであります。

 

〜〜ふるさと再生〜〜 

まず、前半の「東日本復活五年計画」でありますが、これは、東日本の産業、経済、社会を5年で蘇らせることを目指すものです。

そのためには、国、自治体、民間等の日本の総力を挙げた復興活動が不可欠であります。一日も早い居住環境、生産基盤の復旧を、急がねばなりません。そしてこの復興が目指すべきヴィジョンは、「ふるさとの再生」であります。東日本は、我が国日本のふるさとの象徴であります。だからこそ、日本の永続的な繁栄を企図する以上、この「ふるさと」は、絶対に取り戻さなければならないのであります。

さて、この「ふるさとの再生」にあたっては、「直接的な救済」はもちろんのこと、「就労支援型の救済」を行うことが重要であると考えます。つまり、例えば食料や物資を直接援助する、という形の救済に加えて、救済のための事業を興し、雇用を創出し、その雇用の機会を、被災者の方々に提供申し上げるわけであります。これによって力強い、ふるさとの再生を目指すのであります。

そして、そうした雇用の機会を創出する一つの仕組みとして、「東日本ふるさと再生機構」の設立、これを提案いたしたいと思います。例えば、この機構を、東日本の復活までの時限付きのものとして、国が主体的に出資する法人として、様々な復興事業を推進していくわけであります。

なお、こうして創出された、例えば、数万規模の雇用機会を、被災者の方々に加えて、ふるさと再生を願う、全国の若者達をはじめとした皆様に提供することも考えられます。

 

〜〜財源論〜〜

さて、国や自治体、あるいは、上記のような機構が行う諸事業のためには、総額で、何十兆円という予算が必要となります。しかし、今の日本には、そんなオカネはない、とお考えの方もおられるかもしれません。

しかしそれは、既に菊池先生がお話になったように、完全なる「事実誤認」であります。菊池先生がおっしゃった通り、デフレ下にある我が国では、資金需要が冷え込んでおり、銀行では、皆さんの預貯金の内、150兆円以上ものオカネについて貸し付ける相手が民間に見あたらず、その結果、国債しか運用方法がない、というような状況になってしまっているのであります。

そのせいもあり、長期金利は低くなっております。しかも、我が国の国債は「自国通貨建て」で、かつ、「9割以上が内債」という事実を踏まえますと、いわゆる「破綻」という状況からは、完全に、程遠い状況にあるというのが我が国の実態なのです。

言い換えますなら、我が国は、今「国債による財源調達」が完全に、可能な状況にあるわけです。

ただし、国債発行によって、少なくとも一時的に、金利が上昇するリスクがあることは否定できません。しかし、そうしたリスクは、日本銀行との協調すなわちアコードを行うことで、回避可能であります。つまり、国債発行と共に、日銀が国債を市中から買い取るオペレーション、積極的な金融政策を同時並行で行うことが望ましいわけであります。

なおその際には、適正なインフレ水準に収まるように、各種の金融政策等によって適宜、裁量的に調整していくことが必要となる点も、申し添えておきたいと思います。

その他、子ども手当等の所得移転のための財源を、被災地に移転する方法や、被災地への所得移転を促進するための、寄付金税額控除や被災地特別減税等も考えられます。

 

〜〜TPP〜〜

さて、こうした復興活動を進める一方で、どうしても避けねばならない事が1つあります。それは過激な自由貿易の推進するTPPであります。

そもそもTPPは、デフレ下で余っている「過剰な供給分」を、海外への輸出に振り向けようとするものでした。しかし、大震災の今、国内の「過剰な供給分」を振り向ける対象は、海外ではなく、「被災地」であることは明白であります。さらに、東北地方は日本の食糧供給地帯であり、今回のTPP加入によって、さらに壊滅的なダメージを受けることもまた、明白であります。

したがって、この被災地に、「TPP参加による諸外国からの安い農産品」という第二の津波が襲来すれば、ふるさとの再生どころか、ますます壊滅的な被害を被ることは必定なのであります。

そもそも、せっかく農地を復旧しようとしても、「TPPによってどうせ将来、使えなくなるだ」という気分が支配的になれば、復興に向けた士気が、ガタ落ちになることは、これはまた明白であります。だからこそ、被災した農業地帯が「復興」に専心できるように、「TPP交渉不参加の決定の明言」が、是が非でも必要とされているのであります。

こうした理由から、政府が東日本の復興を目指すというのなら、それとは逆方向のTPP参加は、絶対に避けなければならないのであります。


〜〜列島強靱化10年計画〜〜
 さて、以上の東日本復活5年計画と平行して、日本の永続的な繁栄を期する「列島強靱化10年計画」を強力に推進することを提案いたします。
 もちろん、初期数年間は東日本復活に注力する必要がありますが、その復活の程度に応じて生ずる余力を結集し、日本全体の強靱化を図るわけであります。
 まずは、100兆円前後もの被害をもたらすと言われている首都直下型、東海・南海・東南海地震への対応が、急務であります。それと同時に、最悪で70兆円もの被害が懸念されている首都を直撃する大洪水への対策も不可欠です。例えば、現在中止されている八場ダムをはじめとしたダム事業や、スーパー堤防事業が、「洪水対策」としても重要な意味を持つことは、工学的に、明白であります。しかも、各地域のダムによる水力発電は、これからの「電力計画」の観点からも、重要なものとなるでしょう。
 なお、原子力政策の見直しは、今回の事故の結果を科学的に分析した上で、冷静に議論されるべきであることは、一言、申し添えさせていただきたいと思います。
 さらには、物流網、エネルギー・電力系統網については、平常時において過剰に効率化することを差し控え、過剰に効率化することを差し控え、まさかの被災時を想定した、二重化 等が必要となるでしょう。例えば、東海側の大地震を想定した、日本海側の交通インフラの強化などが、必要とされるわけであります。なお、そうしたインフラが日本海側の、平時の発展に資するものであることは、言うまでもありません。
 この様な、インフラシステムの強靱化に加えて、産業構造そのものの「強靱化」も不可欠であります。まさかの被災時に、どのようにして事業を続けていくのかという計画、いわゆる、BCP(ほそかわ註 事業継続計画)の策定が、企業、自治体、国といったあらゆるレベルで必要とされています。ついては、BCP策定の義務化も視野に納めた立法的議論が必要と考えられます。
 さらに、エネルギーや食料といった基本的な物資については、「まさか」の時を平時から想定し、可能な限り自給率を高めると共に、備蓄量を一定確保することも必要でしょう。

〜〜「コンクリートから人」〜〜
 最後に、当方からの公述を終えるにあたり、どうしても申しあげなければならないことがございます。
 今回の予算の中でも、かつての選挙でマニフェストに掲げられていた「コンクリートから人」への方針は、踏襲され、公共事業が大きく削られたままであり、かつさらに公共事業費が削られようとしています。もちろん、この度の地震・津波は、例えば日本一とも言われた堤防ですら、軽々と乗り越える程の巨大な破壊力を持ったものでした。しかし、ほとんど報道されておりませんが、「堤防によって津波から守られた街」があった事も、事実なのであります。
 さらには、公共事業関係費によって進められた「リスクコミュニケーション」という取り組みの中で、「津波から逃げるべきだ」、ということを人々に地道に伝え続けた事で、あの津波から逃げることができ、助かった人々がおられたことも、事実であります。
 したがいまして、「コンクリートから人へ」といった、公共事業を削減する方針がなければ亡くならずに済んだ方々が、多数おられたであろうことは間違いないのであります。
 それを思いますと、かえってお亡くなりになる「人の数」が増えしてしまうような、「コンクリートから人へ」なるスローガンに基づくような予算編成などは、断じて許すことができないのであります。
 さらに言いますなら、そのような、実際には破滅的であるものの、一定の集票効果が見込めるような軽薄で耳あたりがよい甘い「スローガン」を、「国民の生命と財産をまもるべき政治に直接・間接に関わる人々」には、もう二度と、口になさらないでいただきたいと、強く、祈念せずにはおれません。今国会で議論されております予算案におきましても、是非とも、その点、最大限のご配慮を賜りますよう、一専門家として、声を大にして、申し上げたいと思います。

〜〜政治決断を〜〜
 いずれにしても、東日本、そして、日本そのものの復活は、冷静に考えれば考えるほどに、十二分に可能であることが見えてまいります。
 そのための財源は、我が国の中に、確かにあるのです。そして、技術立国日本には、その技術力も、十二分にあるのです。それを思えば、東日本、そして、日本の復活のために今、足らないものは、政治決断だけなのであります。すなわち東日本を復活させんとする政治決断なのであり、日本を強靱な国にせんとする政治的決断こそが今強く求められているのであります。
 是非とも、東日本が復活し、日本が度重なる巨大震災を含めた様々な国難をも乗り越え得る強靱な国になるための政治決断を下されんことを、改めて、お願い申し上げまして、わたくしの公述を終えたいと思います。
 ありがとうございました。
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 以上が、参議院予算委員会公聴会における藤井(聡)氏の公述である。主旨は「東日本復活5年計画」で短期集中的な復興・復旧事業を行なう。また、「列島強靭化10年計画」で東海、東南海、南海地震や首都直下型地震に備えて強靭な日本をつくる。これらを並行して行うというものである。
 私はこの提言に概ね賛同する。首都直下型地震は30年以内で発生確率が70%、東海・南海・東南海地震は30年内で発生確率が50%〜87%と言われる。これらの巨大地震に耐え、日本が存続し、繁栄を維持していくためには、防災を強化し、災害に強い日本を創ることが急務である。
 国家としての防災強化を行うためには、資金がいる。藤井(聡)氏は、菊池英博氏が提言する大規模な財政出動に賛同する。財源は「日本銀行の積極的な買いオペレーションを促す日銀・政府間の適切な協調(アコード)の下、年間数兆円から、最大で20兆円規模の国債発行を行なう」とする。この財源を、初期5ヶ年は「東日本復活5年計画」に重点的に配分、後期5ヶ年は「列島強靱化10年計画」に集中配分する。その際、適正なインフレ率(2.5〜3.5%程度)を設定してコントロールするというが、わが国の経済は巨大なデフレギャップがあり、この規模の財政出動でインフレになる可能性は低いと私は思う。ここでいうデフレギャップとは、単なる需給ギャップではなく、現在稼動している生産力と潜在的な生産力の差である。
 さて、日本復興の活動を進める一方で、どうしても避けねばならないものがTPPだと藤井(聡)氏は言う。東北地方は日本の食糧 供給 地帯であり、TPPに加入すれば、さらに壊滅的なダメージを受ける。被災地に諸外国からの安い農産品という第二の津波が襲来すれば、ますます壊滅的な被害を受ける。被災した農業地帯が復興に専心できるように、TPP交渉不参加の決定の明言を、と藤井氏は強く政府に求めている。私は同感である。
 このTPPに関する主張は、『TPP亡国論』の著者・中野剛志氏の主張でもあるだろう。また、上記計画のうち、経済政策の部分は、中野氏の手腕が相当発揮されているのではないかと推測する。TPP参加の危険性は、東北地方に被害をもたらすに留まらない。日本経済そのものに甚大な被害をもたらす。この点は、後で載せる関連掲示をご参照願いたい。
 藤井(聡)氏は言う。「東日本そして、日本そのものの復活は冷静に考えれば考えるほどに十二分に可能である事が見える。そのための財源はわが国の中に確かにある。そして技術立国日本にはその技術力も十二分にある。東日本そして日本復活にいま足りないのは『政治決断』だけである。すなわち東日本を復活させる為の政治決断、日本を強靭な国にするための政治決断こそが強く求められている」と。これも、まったく同感である。
 私が、「列島強靭化計画」にぜひ加える必要があると思うのは、太陽光を中心とした自然エネルギーの活用による「21世紀の産業革命」である。藤井(聡)氏の計画には、「エネルギー・食料の『自給率』および『一定の備蓄量』の確保」という項目があり、「『列島強靱化』のため、国民生活にとって最も重要なエネルギーと食料については一定の『自給率』と『備蓄』の確保を図る。」と書かれてはいる。だが、それをどのように実現するかが盛られていない。私はエネルギーに関しては、太陽光、風力、地熱、潮力、小水力、バイオマス等の自然エネルギーを積極的に活用し、「21世紀の産業革命」を進めるべきと思う。電力の約3割を依存している現在、原発を一気に全廃することはできない。大震災における原発事故を機に、今こそ自然エネルギーの活用を推進し、原発への依存を段階的に減らしていかねばならない。日本列島周辺に大量に埋蔵されている石油より環境負荷の少ないメタンハイドレートの開発を本格的に進めることも必要である。また常温核融合の実用化を急ぎ、もっと安全に原子力を利用することも推進すべきである。このことを大震災からの復興において、社会的インフラ再建、住宅建設、都市建設、地域再開発等に組み込み、復興構想の柱の一つとすることを提案する。ページの頭へ

参考資料
・藤井聡著『公共事業が日本を救う』(文春新書)
 氏の「日本復興計画」のもとになる主張が書かれている。
関連掲示
・拙稿「TPPはトロイの木馬〜中野剛志氏」

http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110125
・拙稿「TPPの狙いは金融と投資〜東谷暁氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110330
・拙稿「『太陽の時代』のギガトレンド〜21世紀の産業革命を促進しよう

 

第3章 藤井厳喜氏の提言

 

国際問題アナリストの藤井厳喜氏は、東日本大震災からわずか10日後である3月21日に、「日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!」と題した提言を、自らのサイトにて発表した。
 藤井(厳)氏は、日本の危機を打開する方法として、丹羽春喜氏の「救国の秘策」を支持してきた。私は、藤井(厳)氏を通じて丹羽氏を知った。藤井(厳)氏は国際問題の専門家だが、憲法の改正、国防の充実、領土問題の解決、外国人参政権反対、夫婦親子別姓反対等のために活動する国士である。
 藤井(厳)氏は「日本経済大復興計画」で、主権国家・日本のあり方を根本とし、政治・経済・社会・エネルギー等、幅広い見識をもって提言をしている。その紹介をし、その後、私見を述べたい。

(1)「日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!」


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■藤井厳喜氏の「日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!」

http://www.gemki-fujii.com/blog/2011/000719.html
日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!
投稿日:2011,03,21

要旨:
 3・11東日本大震災・大津波・原発事故で、荒廃した日本経済を建て直す為に、以下の四大政策を提言する。

1.国家の通貨発行権を活用した、もしくは日銀の国債直接引き受けによる20兆円以上の大規模公共投資
2.円高阻止の協調介入の必要なし:短期の円高を利用し、必要資源を大量に調達せよ
3.東京一極集中から東日本と西日本の均衡ある発展を実現する国土計画
4.新エネルギー開発による段階的脱原発化

本文:

1.国家の通貨発行権を活用した大規模公共投資

▲震災・津波・原発事故の2つの天災と1つの人災によって、東北地方は巨大な経済損害を受けた。このままに放置すれば、平成23年度のGDPは大きな落ち込みを記録する事になるだろう。
▲日本銀行による復興国債の直接引き受けが検討されているが、白川日銀総裁はこれに反対している。災害復興を目指す国家財政に必要な政策ではあるが、この手法では先行き財政的手詰まり状態に陥る事は明白である。
 日銀引き受けではあるが、国家の借金が急膨張する訳であり、早くも与謝野大臣らの財政再建派が、日銀の大量国債引き受けに関して強力な反対の声をあげている。
▲国債の引き受け手が日銀という国家機関であるにしても、国債引き受けは確かに国家財政の帳簿上の赤字を増大させる。これは必ず時間差を経て増税の要求に結び付く。
 これでは国家再建の為の大規模公共投資は不可能である。
▲この難問を解決する唯一の決定的な方法は、国家の通貨発行権を活用して、日銀が必要な額の通貨を発行し、この財源を行政府(財務省)に贈与する事である。(丹羽春喜先生の十年来の提案)
 国家の通貨発行権を生かした大規模公共投資を行なえば、今年(2011年)後半には、GDPをプラス成長に転換する事が可能である。
▲そもそも通貨発行権は、国家に与えられた特権である。
 国家の信用のもとに通貨が発行され、国民は国家を信頼するが故にその通貨を利用して経済活動を行なっている。
 現在の国家組織の役割分担の中では、主に中央銀行である日本銀行が、通貨発行の役割を担っている。しかし、日銀にのみ通貨発行権がある訳ではなく、行政府・財務省にも部分的に通貨発行権はあり、現在の500円玉以下の硬貨は、財務省の責任により発行されている。元々、国家に与えられた通貨発行権を日銀と財務省が共有しているのである。
 大事な事は、通貨発行権は、日銀という一組織にのみ与えられた特権ではなく、本来、主権独立国家が保有している権利であり、組織上、これを主に統括しているのが日本銀行であるという当たり前の事実である。
▲日本銀行は、この国家の通貨発行権を活用し、10兆円単位の財源を創出し、これを行政府(財務省)に与え、これをもって国家経済復興の為の大公共投資を行なえば、財源は無制限に存在する。
恐らく10兆円では不十分であり、数年間、継続して、累積的には数十兆円の国家の通貨発行による公共投資が必要であろう。
▲行政府と日銀は、共に、主権国家を構成する二つの機関に過ぎない。
 日銀が通貨を発行し、この財源を行政府に与えるというのは、右手が創ったものを、左手に与えるようなものである。日銀(右手)と行政府(左手)は共に国家(人体)の一部分である。
 これを考えれば、震災復興資金を日銀が通貨発行によって賄うというのは極めて自然な、寧ろ当然成すべき政策である。日銀による国債の直接引き受けでもよい。
▲このように考えれば、行政府が日銀に対して、国債を引き受けてもらい、借金をしているから、これを返済する為に国民に増税をしなければならないというのは、誠にバカげた考え方である。
 これは、需要が供給を上回っているような国家においては、増税という形で国民の需要を減少させる為に必要な政策かもしれない。しかし日本国においては、正に事態は逆であり、供給が需要を上回っているのであるから、通貨の信用を維持する為に、増税をする必要は存在しないのである。
▲極端な通貨発行がハイパーインフレにならない為の保障が日本国には存在する。
 それは、公共投資に従って生じる厖大な需要に応えて行なう国民の生産活動である。
 日本経済においてはそもそも、供給が需要を上回っており、このデフレ・ギャップ(供給マイナス需要)の為に、長期的な不況が発生していた。
 有効な需要さえ創出すれば、日本国民が本来の勤勉さを発揮し、生産活動に従事し、潜在的な供給力を現実の供給力に変える事によって、需給はバランス状態に入る。つまり、インフレを起こす事無く不況を脱出する事が出来るのである。
インフレが発生するのは、需要に供給が結び付かない場合である。日本国においてはそもそも供給力が過剰の為に生じた長期不況であったから、震災復興という巨大な需要を政府の公共投資で現実のものとしさえすれば、経済は力強く復活する事が出来る。
▲眼前に甚大な被害を受けた被災地が存在する。
 そこには、復興の為の厖大な需要が存在する。しかし民間の資金にのみ依存するならば、とてもこの復興を速やかに成し遂げる事は出来ない。国家が大規模な公共投資を発動して初めて、速やかな災害からの復興が可能となる。可能となるばかりではなく、それが新たな経済成長のエンジンとなり、21世紀後半に向けて、新しい日本の国の形を創る事も出来る。
 しかし、もし国家が表面上の財政困難を理由に、大規模公共投資を行なわないならば、地域の復興は不可能とは言えないが極めて緩慢であり、東北諸県の県民の不幸は極めて長期化するであろう。いくつかの地域においては、復興は不可能となり、そこには永久の荒廃地が誕生するであろう。
▲日銀が、10兆円単位の国債を直接引き受ける場合でも、この国債は、この際「永久国債(超長期債)」として扱うべきである。
 限られた期限内に返済を迫られる国債として扱うと、これが必ず増税の必要と結びついて来る。そうすれば、国民の有効需要を奪ってしまう結果となる。これを防ぎ、順調な経済復興を実現する為には、あくまで「国債」という形にこだわるならば、10兆円単位の国債は、期限を定めて返済する必要のない、「永久国債(超長期債)」として、全く別枠の会計として取り扱うべきである。
 このようにすれば、巨額の国債は、国家の通貨発行権の活用と極めて近い形となる。

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 藤井氏は、4月5日「日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!(2) 補足:財源篇」として、具体的財源に関する補足をブログに掲載した。
 これを補足としてここに挿入する。

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▲政治家が柔軟に対応しさえすれば、復興の為の政府財源はいくらでも生み出す事が出来る。
 その為には以下の様な手法がある。

(1)
 日銀が特別財源の為の通貨を発行し、これを行政府(財務省)に贈与する。
(2)
 日銀が、「無期限債(超長期債)」として国債を引き受け、政府に財源を与える。
 この場合、復興目的の無期限債に関しては、当然「無利子」とし、従来の国債のアカウントとは全く別の会計として扱う事とする。
(3)
 上記のような形で日銀の協力が得られないとすれば、財務省が「通貨発行権」を行使し、「財務省紙幣(政府発行紙幣)」を独自に発行して、復興投資財源とする。
 この場合、「5万円札」「10万円札」のような従来発行されてこなかった高額紙幣として発行する事が、日銀券との混乱を防ぐ為にも望ましいであろう。

 以上、3つの手段とも、国家のもつ通貨発行権を活用するものであり、インフレさえ起こさなければ、発行額については特に限界を設ける必要はない。
 需要不足によるデフレ不況に苦しんできた日本経済を一挙に活性化させるには、これらの手段のいずれかを実行するしかないであろう。
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 藤井厳喜氏の「日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!」に戻る。

 

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■藤井厳喜氏の「日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!」(続き)

2.円高阻止の協調介入の必要なし:短期の円高を利用し、復興の為の大量資源調達を行なえ

▲日銀・財務省は、主要先進国の協力を得て、円高阻止の協調介入を行なった。
 国益に全く相反するパニック行動としか言いようがない。
▲日本の生産設備が大きく傷つき、GDPが下降せざるを得ない状況にあっては、放っておいても円高は終息し、円安の方向に向かう事は明白である。
 日本の輸出力が阻害される一方、災害復興の為に、大量の資源輸入を必要としている。資源の大部分はドルで調達するのだから、需給関係に任せていれば、自ずと円安ドル高となる事は、火を見るよりも明らかである。
▲一時的な円高は、日本企業が海外にもつ資産を国内に還流させる動き(リパトリエーション)が生じるのではないか、との思惑から起きた。
主に投機資金の為に生じた一時的現象である。
▲日本は災害復興の為に、大量の資源を必要としている。
 一時的な円高は「不幸中の幸い」であり、資源を安価に大量に調達する最高のチャンスが現在与えられている。
 日本経済の潜在力がもたらした一時的な好条件である。この天与の好条件を十二分に利用し、国家も企業も資源(特に原油を中心とするエネルギー・鉱物資源・食糧)を可能な限り、調達すべきである。直ぐに日本国に輸送しなくても、先物等も利用して、円が強い内に、可能な限りの資源調達に手を打つべきである。
▲日本経済のダメージの実態が明らかになれば、円が極端な円安方向に動く可能性もある。
 「1ドル=120円」程度の円安まで想定しつつ、今後の国家経済の運営を考えなければならない。加工貿易を行なう日本にとって、そして大規模な経済復興を遂げなければならない日本にとって、安価な資源調達は決定的に重要である。
 悪条件の中の唯一の好条件が、円高であると言ってもよい。「地獄に仏」の円高といっても良いだろう。これをフル活用しなければならない。
▲輸出産業に有利な円安は、放っておいてもやってくる。
 この時に資源コストが高くなっていれば、企業の利幅は当然、小さいものとなってしまう。円高で、調達した資源で製造したものを、円安で売ってこそ、大きな利益を上げる事が出来る。また国内の復興の為にも安価な資源調達は決定的に重要である。

3.東京への一極集中から、東日本・西日本の均衡のとれた国土発展へ

▲日本列島を本州・中央の糸魚川・静岡構造線を境として、東日本と西日本に分けると、現在、日本の経済的中心は、あまりに東日本に傾いている。
 これは人口分布に最もよく表れており、東日本の人口が、約8000万人。これに対して西日本の人口は、約4000万人に過ぎない。東日本の人口が西日本の2倍である。この主な理由は、東京への一極集中であり、首都圏への過剰な国家機能の集中である。
 現在の危機は、この東日本と西日本の極端なアンバランスを改善する好機である。人口分布で言えば、東日本6000万人、西日本6000万人の東西の均衡のとれた国土に編成し直さなければならない。
▲もし今回のマグニチュード9の地震が首都圏で起きていれば、機能は完全に喪失していただろう。
 また、福島原発の事故が更に拡大し、首都圏が放射能汚染されれば、どの様な事になっていたであろうか。日本国は東京という頭部を失い、国家機関の中枢がマヒ状態に陥っていたであろう。国会を始め、中央官庁が機能マヒに陥り、日本国そのものが全く機能し得ない状態に陥ってしまったに違いない。
 災害が起きた時に、その災害対策を発令すべき国家の神経中枢がマヒしてしまう事になる。この恐怖を誰もが認識している内に、かねてから議論されてきた首都機能の分散は元より、産業再配備による東日本と西日本の、そして大都市と農村の均衡の取れた日本の国土発展を実現すべきである。
 大規模な国土計画の実行は、このような天災が起きた直後にしか行なう事は出来ない。「災い転じて福となす」の諺にもあるように、この天災を奇貨として、従来、絵にかいた餅に過ぎなかった首都機能の分散と国土の均衡発展を実現すべきである。好機は現在をおいて他にはない。
▲企業レベルで見ても、東日本の本社機能が万が一、災害により壊滅状態に陥った場合でも、西日本の支社がこれにとって代われるようなリスク分散を今こそ実行すべきチャンスである。
 また西日本に一極集中した企業があるとすれば、東日本に適度なリスク分散を成すべきである。
 これは、東京への過度の集中を是正し、首都圏に経済空間の余剰が生じた時のみに可能となる。 東から西への約2000万人の異動を伴う、国土再構築は、インフラの整備を含めれば、厖大な有効需要の創出となり、これが災害復旧の公共投資に更に上乗せした形で、日本経済を内需主導型で成長させるエンジンとなる。
▲平安時代までの日本は、西日本中心であった。
 東日本はフロンティアであり、新興地域であったに過ぎない。鎌倉幕府の開幕以来、このバランスに変化が生じ、東日本に徐々に国の重心が移って来た。明治維新以降は、東京への一極集中が進み、第二次大戦後の高度成長は、寧ろ、東京への一極集中を過度に推進してしまった。東日本でも、首都圏を除く、北関東・東北地方は、過疎に悩まされて来た。この歴史を踏まえて、西日本を大復活させる事により、東西の均衡のとれた日本が誕生する事になる。
 例え国家の一地域において、決定的な災害が起ころうとも、他の地域が有機的に機能し、その損害を補う事によって、災害地の復興が可能となる。あらゆる富と生産設備と頭脳が一か所に集中していれば、その一か所が決定的な災害に見舞われた時、国家は、復活する事が出来ない。一地域における災害が、国家そのものの衰退という結果を生む事になる。
▲リスク分散はこの為にどうしても必要である。
 リスク分散は同時にコストの増大をもたらす。逆に言えば、東京への一極集中はリスクを無視した短期的な高率至上主義によってもたらされたものである。今後はコストを十分に踏まえた上でのリスク分散こそが、国家としての真の安全保障であるという原則に、政財界指導者は目覚めなければならない。それは同時に、過疎過密問題を解決する絶好の新政策ともなる。
 例えば国会に関しても、西日本の岡山や広島で年間何日間かを開催できる状況としておけば、首都東京が大災害に見舞われた場合でも、いつでも国家の緊急事態に対応する事が出来る。中央政府の諸官庁も西日本の主要都市に分散して配置しておけば、東京が壊滅した場合でも、いつでも大阪以西に緊急に機能を移動させる事が出来る。西日本においても、京阪神に一極集中が起きないように、寧ろ、主要中核都市を均衡発展させる政策を取るべきである。
▲又、この際、「地方主権」などという考え方が如何に国益に反し、現実にそぐわないかを再認識すべきである。
 もし、「道州制的地域主権」なるものが実現していたらどうなるだろうか。「東北州」の災害には他の道州は全く有機的にこれを救済する事が出来なくなってしまう。主権とは即ち、独立国家であり、独立財政であるから、国家としての一体性を原則として否定する事になる。
 「東北州」が一主権地域ならば、今回の大災害に対して、単独で災害復旧に立ち向かわなければならない事になる。如何に、地域主権という考えが、現実にそぐわないかは、この一事例をもってしても即座に了解できるであろう。
▲「日本国は、主権国家として一体であり、地方の自主性を重んじながら、国家機能を分散させ、リスクに備える」という考え方と、「道州制的地域主権」とは似て非なるものであり、実は真っ向から対立する国家観なのである。
 日本国民全体が、皇室という尊い存在の下、1つの歴史的な有機体として繋がりを持ち、相互に助け合い、各地方は均衡を持って発展してゆく、というのが真の国家経営のあり方である。
 またそれは、日本国の歴史が我々に教える国家発展の基本でもある。

4.新エネルギー開発による段階的脱原発化 

▲福島における原発事故は、現在のところ、最悪の事態を免れてはいる。
 大震災と大津波は自然災害であるが、原発事故は自然災害が引き金となってはいるが、基本的に人災である。最悪の事態が起きる前に、日本は現在の核分裂に基づく原子力発電所を段階的に廃棄し、新エネルギーの開発によって、これを代替すべきである。
 原発については、様々な考え方があり、私自身もかつては原発容認派であり、寧ろ最近は「原発推進もやむをえず」との立場を取って来た。しかし、他の国はともかく、いつでもどこでも予測不可能な大震災の起きる可能性のある日本の国土にとっては、現在の原発はあまりに危険すぎる。
▲日本の原子力発電所を各国と対比した場合、相対的に安全であったのは事実であろう。
 しかし、マグニチュード8.5の地震には耐えられても、マグニチュード9とそれに付随して起きる大津波には耐えられなかったというのが現実である。どこにどの程度のマグニチュードの地震が起き、それがどの程度の震度となり、あるいはどの程度の津波被害をもたらすか等を、完全に予測する事は出来ない。
 安全基準は常にある程度の常識の範囲内で行なわざるを得ない。歴史的にマグニチュード9の地震が、過去になかったとすれば、それを想定しないのが経済合理性というものである。しかし、何百年に一度、千年に一度の想定外の大地震はいつでも起きる可能性があり、現実に今日の東北ではそれが起きてしまった訳である。
M9の地震や大津波に耐えうる原発を創る事は可能であろう。
 しかしそれでも、M9以上の地震や津波には耐えられないであろう。そうである以上、原子力発電所が日本にとってはあまりに危険であり、不向きな発電方法である事は確かである。
 地震や津波の想定とは、所詮、人間の都合で行なう事であり、もっとハッキリ言えば、企業は常にこれを採算性と照らし合わせて行なっている。安全性最優先ではないのである。地震の絶対ないテキサスや、フランスやドイツならば原発は作ってもよいかもしれない。それは各国それぞれが独自の判断で行なえばよい事だろう。
 日本に原発が向いていないからと言って、地震も津波も台風も来ない自然条件をもった国が原発を全廃すべきである、とは言えない。しかし、日本国に関して見れば、まさに想定外の地震災害が起き、それによって原発の安全神話は完全に崩れてしまったのである。
▲今日までのところ、原発事故に起因した被爆による死者ないし患者は、一人も出ていない事になっている。
 そうであり続ければ結構な話だが、今後、被ばくによる様々な被害者が続出して来ると思われる。
 死者が今のところ発生していないにしろ、かなりの放射線漏れがあり、防災対策員を中心にかなりの被爆者が発生している。これは明らかに電力会社が公言していた「安全」の約束が破られた事を意味している。これに対する社会的責任は誠に重大であると言わなければならない。
▲電力供給は、公共性の高い事業であり、電力会社は、自由競争を免除されて、独占的な立場を享受している。
 それは事業の安全と電力の安定供給の為に与えられた特権的な立場である。その特権的な立場にも関わらず、今回、東京電力は、電力の安定供給が出来ず、安全性を保つ事が出来なかった。その社会的責任は実に甚大である。
 また、原発災害の対策の為に、国家機関がどれほどの費用を負担しなければならなかったのか。 この費用負担に対しても東京電力は全面的に責任がある。企業のあり方そのものの変革が必要である。
▲そもそも原発に関しては、「絶対安全」が謳われ、「安全神話」が造られてきた。
 何故なら、万が一、本格的な原発事故が起きた場合、その被害があまりに膨大な為である。
 今回の福島原発の事故でも、本格的なメルトダウンが発生していれば、首都東京も含む、東日本のかなりの部分が危険地域となり、数百万人の被害者が発生していた可能性がある。また事故が巨大となれば、日本国民そのものの生存が危うくなる可能性もあった。更に事故が巨大になれば、日本国一国の問題ではなく、放射能汚染が地球のかなりの地域にまで拡がり、被害を拡大した可能性もある。それ故に、原発に関しては絶対安全神話が人為的に作られて来たのである。
▲今回、我々は、日本の、もしかすると人類の「最後の日」を垣間見た訳である。
 この恐怖感に我々は素直に反応すべきであると思う。
 そもそも、絶対安全でなければならない技術は使ってはならないというのが原則である。何故なら、人間の作るものに絶対安全は有り得ないからだ。人間の作るものに絶対安全はない。事故が起き、技術が破綻した場合でも、その被害が限られているから、我々は絶対安全でない技術を使い続けているのである。
 例えば旅客機は、「絶対安全」ではない。しばしば墜落事故を起こす事を我々は知っている。しかし、旅客機が墜落した場合の最大の被害は、乗客と乗員の全員死亡である。(それが原発の上に落ちない限りは…。)
 火力発電所が事故を起こしても、その最悪の結果は想定内である。環境の破壊もあるが、それも限られたものである。しかし、現行の原発の事故に関しては、最悪の事態は、地球環境事体の汚染であり、日本人そのものの生存すら危うくなる可能性がある。このような(絶対安全を前提としなければならないような)技術は、使ってはならないというのが、本来の技術哲学である。
▲人類は、スリーマイルアイランドの事故とチェルノブイリの事故と福島第一原発の事故を経験した。
 各国の判断は、各国国民に任せるとしても、少なくともこの地震列島に住む我々が、これ以上、原発に電力供給を依存し続けていく事は許されないだろう。それは又、我々の子孫に対する責任であると同時に、他の国々に対する責任でもある。国土を核汚染して取り返しのつかないような災害をもたらす事を、日本国を愛する全ての人々は許してはならない。
▲日本に全く地震が無く、津波も台風も無く、ウラン鉱石が豊富であるならば、日本が原発に依存する事にも、ある程度の合理性は存在する。
 しかし日本の地理的条件は全くそうではない。
また、原発に対する代案がなければ原発廃絶を訴える事は、あまりに無責任な主張であろう。しかし現在、バイオマス、常温核融合、その他の再生可能な自然エネルギー、又、従来の火力発電や水力発電の効率化や節電などの新テクノロジーが既に目白押しであり、国内の発電量の約3割から4割(原発の発電量)をこれらの新しい電力源で代替させる事は、十分に可能である。それどころか、国家の通貨発行権を元にした新エネルギーの実用化は、日本が世界に輸出する新テクノロジーとして、有望な成長産業である。
 原発推進者自身が認めるように現在の核分裂型の原子炉は、本格的なクリーンで安全なエネルギー源が誕生するまでの過渡期の発電形態に過ぎない。
▲現在、最も革新的なものとしては常温核融合の可能性も大きく拡がっており、それ以外にも、様々なコスト的にも成立可能な代替エネルギーが開発されている。
 これらの普及を阻んでいるのは、寧ろ、現在既に存在しているエネルギー利権である。例えば、植物から取れる安価なアルコール燃料が普及すれば、ガソリンの売上が減少するので、石油会社はこれを阻もうとする。原子力発電にとって代わる安全で安価な常温核融合発電がもし可能であったとしても、既存の電力会社の利益構造がそのような新テクノロジーの発展を阻む事になる。
 要は、如何に合理的で、市場性のある新エネルギーでも、既存の利権構造に阻まれれば、社会に普及する事が出来ないという問題である。今や、このような社会の安全と進歩を阻む旧利権体制を一掃して、国民に安全で安価なエネルギーを供給する体制を打ち立てなければならない。
▲しかし、これには大きな困難が伴う。
 独占的な9電力体制によって守られている電力会社は、巨大な利権機構であり、官僚組織である。
 まして原子力発電は、「めちゃめちゃに儲かる」商売なのである。彼らは政治家と学者とマスコミに対して、巨大な支配力を行使している。
 独占事業をやっている電力会社が本来、マスコミでPRをする必要は全くない筈だが、彼らはPRに厖大な費用を費やしている。原発を中心に電力会社に対する批判を封じ込める為である。今回の福島原発の事故に際しても、テレビ等の解説に登場した学者のほとんど全ては、原発擁護・推進派であり、電力会社の息のかかった御用学者である。
▲更に、この悲劇を増幅しているもう1つの事実がある。
 それは、反原発を唱える人々の主力が、リベラル左派の反体制派であった事である。日本の国益を重視し、日本の文化伝統を愛する立場からの反原発論者は極めて少数派であった。
 その結果、マスコミの中で展開される図式としては、「体制派=原発推進派」VS「反体制派=原発反対派」という不毛の対立図式しか存在しなかった。そこで一般に、国益や伝統を重視する人々の間では、原発に対する批判がタブー視されてきた傾向がある。一言論人として、そのような無言のプレッシャーは私自身も常に感じて来たところである。
▲ハッキリ言えば、保守的な言論人であって、脱原発の立場を明確に打ち出すのは、極めて難しい状況にあった。
 多くの雑誌やマスコミが、電力会社の広告料に依存している以上、ましてこの不況下で、マスコミの広告料が減少傾向にある中、電力会社の主張に相反するような言論を展開する事は、特に保守派の言論人にとっては、致命傷になる可能性がある。多くの言論人はこの事を無言の内、了解しており、このタブーにだけは触れないように、巧みに振舞ってきたと言えるだろう。
 このような国家と民族の未来を破壊する旧利権構造は最早、完全に過去のものとしなければならない。私自身の反省を込めて、そう訴える。
▲話がやや、個人的なレベルに逸脱してしまった感があるが、国家の通貨発行権を軸とした新公共投資の大きな柱として、新エネルギー開発を大胆に推し進めるべき時である。
 日本国民は、智恵と工夫の民族であり、一端、新しい課題が与えられれば、これを技術的に克服する事は決して難しくはない。日本人本来の創造性を信じて、新たな一歩を前に踏み出すべき時である。私自身は勿論、技術者ではないが、原発にとってかわる様々な新テクノロジーについては、常に関心をもって、これを見守っている。
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 以上が、藤井(厳)氏の「日本経済大復興計画: 禍転じて福となそう!」である。

次に、氏の提言に関する私見を述べたい。

 

(2)提言の要点と考察

 

藤井(厳)氏の提言は、経済政策、社会政策、エネルギー政策の三つにまとめられる。私が特に賛同する部分につき、要点をまとめ、私見を述べたい。

@日本復興のための経済政策

 藤井氏は「国家の通貨発行権を活用した大規模公共投資」を提案し、併せて「円高阻止の協調介入の必要なし:短期の円高を利用し、復興の為の大量資源調達を行なえ」と説く。
 特に注目したいのは、下記の点である。
 「震災・津波・原発事故の2つの天災と1つの人災によって、東北地方は巨大な経済損害を受けた」。日本銀行による復興国債の直接引き受けは「国家財政の帳簿上の赤字を増大させる。これは必ず時間差を経て増税の要求に結び付く。これでは国家再建の為の大規模公共投資は不可能である」「この難問を解決する唯一の決定的な方法は、国家の通貨発行権を活用して、日銀が必要な額の通貨を発行し、この財源を行政府(財務省)に贈与する事である。(丹羽春喜先生の十年来の提案)」
 「日本銀行は、この国家の通貨発行権を活用し、10兆円単位の財源を創出し、これを行政府(財務省)に与え、これをもって国家経済復興の為の大公共投資を行なえば、財源は無制限に存在する。恐らく10兆円では不十分であり、数年間、継続して、累積的には数十兆円の国家の通貨発行による公共投資が必要であろう」
 「日本経済においてはそもそも、供給が需要を上回っており、このデフレ・ギャップ(供給マイナス需要)の為に、長期的な不況が発生していた」「そもそも供給力が過剰の為に生じた長期不況であったから、震災復興という巨大な需要を政府の公共投資で現実のものとしさえすれば、経済は力強く復活する事が出来る」と。
 上記のように、藤井(厳)氏は、大震災後、丹羽春喜氏の提案を財政上の難問を解決する「唯一の決定的な方法」と提唱している。藤井(厳)氏は平成17年刊行の『「破綻国家」 希望の戦略』(ビジネス社)以来、丹羽氏の「救国の秘策」を支持している。大震災後、改めて丹羽氏の提案を支持しているわけである。ただし、丹羽氏は、政府が主体であり、政府が政府貨幣の発行特権を発動、発行特権のうち必要額分の権利を日銀に売るという方式を説いている。藤井(厳)氏が、日本銀行が国家の通貨発行権を活用するというのとは、そこは違う。次に、藤井(厳)氏は通貨発行権の活用により、10兆円単位の財源を創出し、数年間で数十兆円の公共投資を行うとするが、丹羽氏の「救国の秘策」は600兆円規模の財源で日本経済を復興させ、同時に政府の債務も半分に削減する大胆な案である。政府貨幣発行特権は、特定の復興事業の財源調達のためよりも、その事業を含む日本経済全体の復興のために大規模に発動すべきものだろう。
 ところで、藤井(厳)氏は、今回の提言で、次のようにも書いている。
 「あくまで『国債』という形にこだわるならば、10兆円単位の国債は、期限を定めて返済する必要のない、『永久国債(超長期債)』として、全く別枠の会計として取り扱うべきである。このようにすれば、巨額の国債は、国家の通貨発行権の活用と極めて近い形となる」と。
 また、藤井(厳)氏に4月5日に氏の計画への補足として次のような見解をブログに掲載した。
「▲政治家が柔軟に対応しさえすれば、復興の為の政府財源はいくらでも生み出す事が出来る。
 その為には以下の様な手法がある。

(1)
 日銀が特別財源の為の通貨を発行し、これを行政府(財務省)に贈与する。
(2)
 日銀が、「無期限債(超長期債)」として国債を引き受け、政府に財源を与える。
 この場合、復興目的の無期限債に関しては、当然「無利子」とし、従来の国債のアカウントとは全く別の会計として扱う事とする。
(3)
 上記のような形で日銀の協力が得られないとすれば、財務省が「通貨発行権」を行使し、「財務省紙幣(政府発行紙幣)」を独自に発行して、復興投資財源とする。
 この場合、「5万円札」「10万円札」のような従来発行されてこなかった高額紙幣として発行する事が、日銀券との混乱を防ぐ為にも望ましいであろう。

 以上、3つの手段とも、国家のもつ通貨発行権を活用するものであり、インフレさえ起こさなければ、発行額については特に限界を設ける必要はない。需要不足によるデフレ不況に苦しんできた日本経済を一挙に活性化させるには、これらの手段のいずれかを実行するしかないであろう。」
 藤井(厳)氏は、21年(2009)刊行の『どんと来い! 大恐慌』(ジョルダンブックス)では、政府貨幣発行論は反対論が多く(特に日銀)、実現可能性が低いとし、永久国債の発行を第一の策としていた。藤井氏は、丹羽氏の「救国の秘策」の支持者だが、並行して永久国債の研究を行っている。丹羽氏も新規国債の発行という方法もあることは認めている。その場合は、高橋是清が行ったように日銀の直接引き受けをすべしとする。ただし、この方法では、国の債務がさらに増えるので、財源創出と債務削減を同時に実現できる政府貨幣発行特権の発動を提案している。この新規国債を永久国債とする場合、無利子国債とする方法もある。だが、償還という負担はあり、100年から200年程度で償還するための積立は必要である。
 それゆえ、私は丹羽氏の「救国の秘策」が上策と考える。またこの秘策を使うのであれば、大震災からの復興だけでなく、日本経済全体の復興というより大きな課題に使うのがよいと思う。だが「救国の秘策」はまだ国家指導層に理解が進んでいない。そこで、大震災からの復興という緊急課題のために急遽資金を調達するには、震災復興国債の発行が適当と思う。その国債の発行においては、財源を明らかにして発行すべきである。この点は、先に紹介した菊池英博氏の提案を基本とする。菊池氏の提案でやり、それでうまく復興を達成できればよし。もし財政が行きづまったら、最後の奥の手として丹羽氏の秘策を打つ、という方針がよいと思う。

A日本復興のための社会政策

 藤井(厳)氏は「東京への一極集中から、東日本・西日本の均衡のとれた国土発展へ」と提案する。特に注目したいのは、下記の点である。
 「現在、日本の経済的中心は、あまりに東日本に傾いている」。東京への一極集中で、首都圏に国家機能が過剰に集中している。「現在の危機は、この東日本と西日本の極端なアンバランスを改善する好機である」「もし今回のマグニチュード9の地震が首都圏で起きていれば、機能は完全に喪失していただろう」「首都機能の分散は元より、産業再配備による東日本と西日本の、そして大都市と農村の均衡の取れた日本の国土発展を実現すべきである」。そうすれば「例え国家の一地域において、決定的な災害が起ころうとも、他の地域が有機的に機能し、その損害を補う事によって、災害地の復興が可能となる。あらゆる富と生産設備と頭脳が一か所に集中していれば、その一か所が決定的な災害に見舞われた時、国家は、復活する事が出来ない。一地域における災害が、国家そのものの衰退という結果を生む事になる」と。
 日本の生存と発展のため、東京への一極集中を改め、国家機能を分散することに、私は賛成である。単に分散するだけでなく、副首都として機能する都市を定め、具体的に建設すべきだろう。産業再配備による東日本と西日本の均衡の取れた国土発展にも賛成である。この点も合わせ考えると、副首都は関西に置き、東京の周辺でも機能をある程度分散するのがよいと思う。都市と農村の均衡の取れた国土発展は、これとは別の課題であろう。災害に耐える日本を創るためにも、食糧危機の時代に備えるためにも、食糧自給率を高める必要がある。そのために、農業を振興し、農業の労働人口を増やしていけば、構造改革後、疲弊した地方都市に活力を回復することにつながるだろう。これによって、東京と他の大都市の格差、また大都市と中小都市の格差を縮小することもできるだろう。
 藤井(厳)氏は、別の点でも注目すべき提案をしている。
 「この際、『地方主権』などという考え方が如何に国益に反し、現実にそぐわないかを再認識すべきである。もし、『道州制的地域主権』なるものが実現していたらどうなるだろうか。『東北州』の災害には他の道州は全く有機的にこれを救済する事が出来なくなってしまう」「『日本国は、主権国家として一体であり、地方の自主性を重んじながら、国家機能を分散させ、リスクに備える』という考え方と、『道州制的地域主権』とは似て非なるものであり、実は真っ向から対立する国家観なのである」「日本国民全体が、皇室という尊い存在の下、1つの歴史的な有機体として繋がりを持ち、相互に助け合い、各地方は均衡を持って発展してゆく、というのが真の国家経営のあり方である。またそれは、日本国の歴史が我々に教える国家発展の基本でもある」と。
 私は、地域主権には反対である。地方分権の推進であれば賛成だが、自主憲法の制定の出来ていない状態で、分権に走ると重大な問題を生じる。拙稿「友愛を捨てて、日本に返れ〜鳩山政治哲学の矛盾・偽善・破綻」に次のように書いた。
 「近代国家の主権とは、一国の政府が他の国に対して持つ自立的な統治権である。また、主権は、国内において領土・国民に対する最高の権限である。もし『地域主権』を実現し、個々の地方自治体の持つ権限こそが主権だとすれば、政府はその自治体に対して主権を持たず、政府の権限は、その地域については、自治体の権限より下になる。そのような政府は、独立主権国家の政府ではない。それゆえ、『地域主権の実現』は、独立主権国家を否定することになる」「『地域主権の実現』は、主権の分散である。外国人参政権付与は主権の分譲である。主権の分散と分譲は、わが国の国家としてのあり方を、劇的に変える。その結果、生まれるのは、『地域主権国家』という新しい形態の国家ではなく、『主権喪失国家』という国家の残骸である」
 「国家統治権と地方自治権が、最も強い緊張関係に置かれるのは、他国による侵攻、内乱・騒擾、大規模自然災害等の場合である。わが国では現状、国民に国防の義務がなく、憲法に非常事態条項がない。こうした憲法のまま、地方分権を極端に進めたならば、万が一の危機のときに、国家分裂に陥りかねない。私は地方分権を進める前に、わが国が独立主権国家として体制を確立することが、絶対不可欠だと考える。この手順を誤ると、日本は崩壊するおそれがある」と。
 今回の大震災は、国家はどうあるべきかを日本人が真剣に考える機会ともなったと思う。藤井(厳)氏の先の提案において、皇室の下、国民全体が繋がり、助け合い、均衡を持って発展すべきことを書いているのは、全く同感である。国家的な危機において自ずと現れる日本精神を、日本人が自覚し、積極的に日本精神を復興することこそ、東北復興、日本復興の最重要課題である。日本人が精神的に復興すれば、日本は立ち直る。逆に精神的に低迷すれば、日本は天災人災の中で自壊・衰亡する。いま日本はそのぎりぎりの地点にある。目覚めよ、日本人。日本精神を取り戻そう。

B日本復興のためのエネルギー政策

 藤井(厳)氏は「新エネルギー開発による段階的脱原発化」を提案する。特に注目したいのは、下記の点である。
 「原発事故は自然災害が引き金となってはいるが、基本的に人災である。最悪の事態が起きる前に、日本は現在の核分裂に基づく原子力発電所を段階的に廃棄し、新エネルギーの開発によって、これを代替すべきである」「日本に全く地震が無く、津波も台風も無く、ウラン鉱石が豊富であるならば、日本が原発に依存する事にも、ある程度の合理性は存在する。しかし日本の地理的条件は全くそうではない」「現在、バイオマス、常温核融合、その他の再生可能な自然エネルギー、又、従来の火力発電や水力発電の効率化や節電などの新テクノロジーが既に目白押しであり、国内の発電量の約3割から4割(原発の発電量)をこれらの新しい電力源で代替させる事は、十分に可能である。それどころか、国家の通貨発行権を元にした新エネルギーの実用化は、日本が世界に輸出する新テクノロジーとして、有望な成長産業である」「日本国民は、智恵と工夫の民族であり、一端、新しい課題が与えられれば、これを技術的に克服する事は決して難しくはない。日本人本来の創造性を信じて、新たな一歩を前に踏み出すべき時である」と。
 私は藤井(厳)氏の基本的な考えに賛成である。現在の日本の原発には危険性がある。だが、発電量の約3割を依存している以上、一気に全廃はできない。緊急点検をし、地震・津波への耐性を高め、大きな問題のあるところは使用停止にする。そのうえで、太陽光を中心とした自然エネルギーの活用を推進し、原発への依存を段階的に減らす。また同時に、原子力のもっと安全に活用できる技術の開発を進めるべきだと思う。
 私は拙稿「『太陽の時代』のギガトレンド〜21世紀の産業革命を促進しよう」にて、島田晴雄氏、山崎養世氏、村沢義久氏の三氏の主張を紹介した。三氏は共通して、太陽光を中心としたクリーン・エネルギーの活用は、わが国の政府が推進すべきとしている。政府が「戦略的主導と支援」をし、「太陽経済を強く後押し」し、「国家レベルでアクションを起こす」ことを求めている。
 私は今回の東日本大震災で原発事故が起こり、原発依存の危険性が認識された今こそ、太陽光を中心とした自然エネルギーの活用による「21世紀の産業革命」を推進すべきと思う。私は先の拙稿に次のように書いた。
 「わが国は『太陽の時代』に向けて、国家戦略を策定し、政府の主導のもとに、官民を挙げて長期計画を実行すべきである。そして、この取り組みは、大きな需要を生み出すことにより、現在の需要不足によるデフレからの脱却を可能にし、かつ日本が新しい文明を創造する道を切り開くものとなる、と考える。
 人類の文明は、西洋から東洋へと中心を移動しつつある。欧米諸国は、長期的に衰退に向かい、アジア諸国が興隆している。この文明の地理的変化の中で、日本は、固有の文明を発揮し、東洋・アジアの隆盛を人類全体の調和と発展に役立つように仕向けていく役割がある。日本にとって、太陽エネルギーの活用とそれによるアジア、そして世界の共存共栄は、実現すべき大きな課題である。
 『太陽の時代』が始まっている。
 『日の丸』を国旗とする日本から、新しい人類の文明が生まれようとしている。わが国は政府・国民を挙げて、『太陽の時代』のギガトレンドを押し進めていくべきである」と。
 この「『太陽の時代』のギガトレンド」を押し進める「21世紀の産業革命」は、実行のために当然、財源が要る。藤井(厳)氏は「国家の通貨発行権を元にした新エネルギーの実用化」を言っているが、こういう大規模な、人類史的な課題を実行するためにこそ、丹羽春喜氏の「救国の秘策」が有効だろう。丹羽氏は「600兆円計画マニフェスト」を、単に日本経済の再興を行うだけでなく、人類文明の調和的発展をめざす政策として提唱している。丹羽氏は、その秘策の実行によって、「わが国経済の膨大な『生産能力』が、全人類のために真に貢献しうるようになる。それは、まさに『人類文明の黄金時代』の到来となる」「人類文明は、そして、言うまでもなくわが国も、輝かしい飛躍的興隆の時代を迎えうるのである。21世紀は、必ず、そのような『黄金の世紀』となりうるであろう」と説いている。
 ただし、丹羽氏は経済的な面を言っているに過ぎない。私は日本という国は、もっと大きな意味でこれから迎える「人類文明の黄金時代」を実現する可能性を持った国であり、それを実現する条件も多くそろっている国だと思う。だが、最も肝心な条件が欠けている。それは、日本人が自己本来の精神を取り戻し、団結することである。日本人が日本精神で団結し、天地大自然の法則に沿って知恵と力を発揮すれば、上記のこと以上の大変化、大転換さえ、実現できる。それが日本という他に比類ない歴史・伝統・国柄を持った国である。

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4章 丹羽春喜氏の提言

 

第1章の菊池英博氏の提言紹介の冒頭に、私は3月28日の日記に、東日本大震災からの復興に関し、「政府・日銀が一体となって、大胆かつすみやかに、復興のための財政・金融政策を実施することが必要である。 そういう大胆・緻密な政策を打ち出せるエコノミストに、菊池英博氏と丹羽春喜氏がいる」と書いたと記した。
 丹羽春喜氏は、月刊『正論』平成23年6月号で、拓殖大学学長の渡辺利夫氏と対談し、大震災からの復興策を語った。次に、その内容を紹介する。

(1)「政府貨幣発行特権の発動で防災列島の構築を」


 『正論』平成23年6月号は、「『震災後』を生きる」という緊急特集を組んだ。特集の一つが、丹羽氏と渡辺氏の対談「政府貨幣発行特権の発動で防災列島の構築を」である。
 対談のリードは、次のように述べる。「未曾有の災害に見舞われた東日本。まずなすべきは『大風呂敷』と呼ばれた後藤新平にならった壮大なグランドデザインの作成である。その財源は国債発行や増税ではなく、『デフレギャップ』という財産を生かす政府貨幣発行特権の発動でまかなうべきである」と。
 政府貨幣発行特権の発動とは、丹羽氏の説く「救国の秘策」である。この秘策については、拙稿「『救国の秘策』がある!〜丹羽春喜氏1」にて紹介した。
 対談相手である渡辺氏は、開発経済学やアジア経済研究を専門とするエコノミストである。対談は著名な経済学者が丹羽氏の提言に賛同し、その提言を論壇でアピールするものとなっている。
 本稿で、対談における丹羽氏の発言を紹介するに当たり、まず東日本大震災からの復興に関する丹羽氏の提言の要旨を示す。次にその提言の裏づけとなる経済学的な理論・見解を整理して掲載する。必要に応じて、渡辺氏の発言を補助的に引用することとする。

●東日本大震災からの復興はできる、その財源はある

 丹羽氏は、東日本大震災からの復興に関し、次のように述べている。
 「今回の被害が50兆円あるいは100兆円にのぼるとしても、僕は大震災を出発点として、日本経済をもう一度、輝かしい繁栄と成長の軌道に載せることは決して不可能ではないと思います。冷静に経済学的に解釈したらそれは十分可能です。東北地方であれだけダメージを被りましたが、日本経済の規模から見れば致命的なダメージまでは行っていません」
 「もし素晴らしいグランドデザインができれば、それを実現していく力は、日本に十分あるですから、まずは政治家には頑張ってもらわないといけない。高橋是清の時分には、日本にどれだけ生産能力に余裕があるかということは計算するすべがありませんでしたが、現在は少なくとも私自身が1970年から去年までの40年間にわたるデフレギャップの推計をちゃんとやっています。確かに大震災のダメージは大きいですが、デフレギャップという形で、日本にはまだまだ生産能力の余裕はたっぷりあるです。復興事業でどれだけのことをやっても大丈夫だという数字の裏づけを、政策担当者に十分インプットする必要があります。それを踏まえて後藤新平よりも遥かにダイナミックな復興計画をデザインすればいいです」

 後藤新平とは、関東大震災の時に、帝都復興院の総裁となって、大胆な復興計画を進めた政治家である。私は、4月5日の日記「関東大震災の時の帝都復興院」にて後藤について書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110405


 「復興のためには、一刻も早いグランドデザインとそれに伴う経済計画を国民に示すことが大切だと思います。絶対にしてはならないのは、線香花火のようなその場かぎりの、けちけちした、細切れ的計画です。そんな計画では結局ドブにカネを捨てることになります。10年、20年後を見据えた威風堂々たるグランドデザインとそれを実現するための威風堂々たる経済興隆計画を早く提示してほしいものです」
 「日本は20年間で7000兆円を失い、不況から一向に脱却することができていない。そこに今回の東日本大震災です。われわれは今こそデフレギャップという形でのマクロ的生産力の余裕という宝を生かし、政府の貨幣発行特権という『打ち出の小槌』財政財源をうまく利用して復興事業に取り組むべきなんです。そうすれば、増税もなく、国債の大量発行に伴うクラウディング・アウトという副作用もなしに、日本経済そのものを輝かしい繁栄の軌道に乗せることができるはずなんです」
 「中国に『錬金術』があるのならば、わが方には『国(政府)の貨幣発行特権』の発動という『打ち出の小槌』財源がある。わが日本も、中国などには負けない威風堂々たる復興と経済成長を実現しようじゃないですか。これこそが、現在の国難からわが国を救う唯一の方途でしょう」
 以上が、対談における丹羽氏の東日本大震災からの復興に関する提言の要旨である。

 政府が持つ貨幣発行特権の発動には、担保は必要なく、返済も利払いも必要ない。将来の増税も必要ない。なぜそんな夢のようなことが言えるのか。わが国は巨大な生産力を持ちながら、その60〜70%しか稼働していない。潜在的なGDPと現実のGDPの間に、巨大なギャップがある。このデフレギャップの存在が、政府貨幣発行特権の発動を可能にする真の財源である。発動においては、政府紙幣を印刷する必要はなく、電子信号による入金だけでよい。日銀券を大量増刷する必要もない。
 丹羽氏は、平成18年にこうした政府貨幣発行特権の発動による「600兆円計画マニフェスト」を政府関係者に建言した。具体的には、国(政府)が所有している無形金融資産のうちの650兆円ぶんを50兆円値引きし、600兆円の代価で政府が日銀に売る。それによって、600兆円を調達する。同時に日銀も資産内容がいちじるしく改善される。600兆円のうちの250兆円程度を、3〜5年間に投入して、大々的な総需要拡大政策を実施し、わが国の経済を一挙に再生・再興させる。残りの350兆円を用いて、国の長期債務残高の半分に近い350兆円を、数年のあいだに償還する。経済成長の回復にともなう税収の大幅な増加とあいまって、わが国家財政を根本的に再建するというものである。詳しくは、拙稿「『救国の秘策』がある!〜丹羽春喜氏1」をお読みいただきたい。

 渡辺氏との対談では、丹羽氏は600兆円ではなく、「何百兆円」という言い方をしている。金額は、必要な額に設定できる。700兆円でも、800兆円でも問題ない。国家指導者から、東日本大震災からの復興のためのグランドデザインが示されれば、それに応じた金額にすればよい。日本が持つ莫大な財源を生かすならば、東北、そして日本の復興を日本人は威風堂々と進めることができる。私は、国家埋蔵金の供出や無利子国債、永久国債の発行等も有効な財源調達方法と認める者だが、丹羽氏の政府貨幣発行特権の発動を上策と考える。この方法を理解する政治家、有識者、国民が増えるならば、日本は世界史上、比類ない方法で、復興と発展を実現できるだろう。

(2)大胆な政策を裏づける経済学的な理論


 次に、対談において丹羽氏が提言の裏づけとして述べている経済学的な理論・見解を整理してみたい。7点挙げる。
 
 第1に、内閣府のいうデフレギャップについて。
 丹羽氏は次のように語っている。「内閣府の出す数字を僕は信用していません。内閣府が2月下旬に、現在の日本経済におけるデフレギャップを発表しました。それがなんとたったの3.8%なんです。ということは資本設備と労働力と合わせて96.2%で稼動しているということになる。本当にそうなら、ものすごく景気のいい状態ですよ。あの高度経済時代でも5%や6%のデフレギャップはあったです。日本経済はバブルが弾けてずっと停滞が続き、サブプライムローン不況やリーマン・ブラザーズ暴落が追い打ちをかけた。こういうひどい状況の中でデフレギャップが3.8%ということはありえません」と。
 丹羽氏によれば、本当のデフレギャップとは、単なる需給ギャップではない。需給ギャップは、生産量を調整して在庫を少なくすれば、ギャップを小さくできる。景気が悪くて需要が少なく、それに応じて供給を少なくすれば、需給ギャップは小さいけれども、不況なのである。だから、需給ギャップが小さいということだけを見ていると、そのギャップを包んでいるもっと大きな本当のデフレギャップを見失う。本当のデフレギャップは、潜在的なGDPと現実のGDPの差を言う。内閣府の出している数値は、本当のデフレギャップを隠し、国民を欺くものである。
 
 第2に、本当のデフレギャップについて。
 丹羽氏は、対談において独自に作成したデフレギャップのグラフを示す。1970年から2008年までのグラフは、拙稿「『救国の秘策』がある!〜丹羽春喜氏」に掲載している。今回の対談では、2010年までの推移が示されている。それによると、1970年を「完全雇用・完全操業」の状態とし、その状態を継続していた場合のGDPを、線で表す。これが潜在GDPであり、低め、中くらい、高めの三本の線で表す。グラフの一番下の線は、実際のGDPの推移を表す。つまり実質GDPである。左端の1970年の潜在値は1985年価格評価で176兆円。実際値は172兆円。その差はわずか4兆円である。これに対し、右端の2010年の場合、85年価格評価で見ると、「中」のケースで、潜在GDPは911兆円であるのに対し、実質GDPは487兆円。つまり差し引き、424兆円もの富が実現されずに失われているわけである。2000年価格評価だと、潜在値1020兆円、実際値545兆円で、差し引き479兆円となる。
 丹羽氏は、グラフを使って次のように言う。「完全雇用と完全操業に近い水準、具体的には97%の操業率で産み出されるあろう国内総生産を潜在GDPと表現しているのですが、それに比べて現実のGDPがうんと下のほうにはいつくばったままです。この差がデフレギャップです。より分かりやすく言えば、デフレギャップというのは本来の実力と現実の差のことです」と。これが、丹羽氏のいう本当のデフレギャップである。
 
 第3に、1990年からの20年間で失われた富について。
 丹羽氏は、先のグラフをもとに次のように言う。「最近では年間で4百数十兆円の潜在GDPが失われています。平成不況が発生した90年代のはじめから去年までを累積すると実に7千数百兆円の潜在GDPが空しく失われている。東日本大震災で失われた額と比べても桁違いに大きい。7000兆円ですよ。これが失われたことで日本国民が塗炭の苦しみを味わってきました。株は4分の1、不動産は3分の1、ゴルフの会員権にいたっては20分の1ですよ。大資産家も一般庶民もいろいろな形で苦しんでいるわけです。特に中小企業の苦しみはひどいですね。7000兆円を過去20年間で失ったのは明らかに人災です」と。

 

 第4に、財源調達に国債の発行は限界を迎えつつあることについて。
 渡辺氏は、対談において、東日本大震災からの復興には、「大きな、将来を託せるような」グランドデザインが必要だという。そして、グランドデザインを実現するための財源は「やはり丹羽さんの政府紙幣発行特権の発動に落ち着かざるを得ません」と言う。金融政策はゼロ金利をこれ以上下げることはできず、財政は「もう臨界点」であり、国債の発行は「限界を迎えつつあります」と言う。
 渡辺氏は、丹羽氏の提言を支持するに当たり、国債については次のように語る。「現在、国債はおよそ95%が家計貯蓄によって消化されていますが。この家計貯蓄によって購入された国債を運用しているのは金融機関です。家計貯蓄がどれくらいあるかというと、昨年では家計負債を引いた値が1077兆円です。他方、政府の負債は908兆円。今は家計貯蓄の方が政府負債より大きい。しかし今年、44兆円もの国債を発行しましたよね。これを4年続けると、176兆円になります。政府負債が908兆円ですから、単純にこれを足し合わせると、4年後には1084兆円になります。つまり家計貯蓄より政府負債のほうが大きくなってしまう。しかもこの間、家計貯蓄は減少していくに違いありません。そうすると国債を発行しても『入札未達』、つまり発行しても市場がこれを消化しきれなくなってしまうという危険性があります。その結果、国債価格が下落、長期金利が上昇して日本経済は一層低迷していかざるをえない。国債発行に頼ることはあと2、3年しかできませんね」と。
 丹羽氏は、これに対し、「だからこそ、政府の貨幣発行特権をうまく使って財源にするべきなんです」と応えている。
 一体、わが国はいくらまで国債の発行が可能なのか、国債発行の限度額については、いろいろ議論のあるところだが、ここでは立ち入らない。

 第5に、政府貨幣発行特権の発動の際の円高の可能性について。
 丹羽氏が説く政府貨幣発行特権の発動は、どれだけ発行しても政府の負債にはならず、担保は不要、利息の支払も不要、返済も不要で無制限に発行できる。丹羽氏はこの特権を、政府紙幣の発行も日銀券の大量増刷も不要という独創的な方法で行うことを提案している。これについて丹羽氏は次のように語っている。
 「そんなことをしたら、日銀券が紙くずになってしまうとか、通貨への信任が失われて日本人は円を使わなくなるとか言われますが、そんなことはありません。日本経済が今のようなゼロ成長から突然7%を超えるほどの成長率で、しかも10年間成長し続けるということがはっきりし始めたら、全世界から大量の資金が日本の証券市場などに雪崩れ込んできます。株価が上がるのはいいとしても、みんな円を買ってきますから、円高が暴走する危険性はあります」「円への信任が失われるのではなく、円への信任が高くなり過ぎて困るわけですが、これは食い止めなくてはいけない」「円高の暴走を防ぐためには、相当大規模にドルとユーロの買い支えをしなくてはいけない。このためにも、貨幣発行特権の活用による潤沢な財源を活用すればよい。その時にアメリカやヨーロッパ諸国などの外国の公債を政府と日銀が大量に買って、それと等価で国内の投資家が持っている日本の国債と交感すればいいです」「ちょっとプレミアムをつけるから、代わりにアメリカやヨーロッパの公債で運用しなさいよと誘導すればいい」「そうすれば国内で過剰流動性を発生させないで何百兆円という政府の借金を回収できるです。つまり円高の暴走を食い止めるのと、政府の借金を解消するのと一石二鳥でやれる。おそらく10年間で今の日本の政府の借金の半分ぐらいは解消できます」と。

 第6に、ハイパーインフレの可能性について。
 渡辺氏は、「政府マネーを無制限に発行していけばいずれは間違いなくハイパーインフレになるでしょう。そこにどうやって歯止めをかけるか」と丹羽氏に問う。
 丹羽氏は次のように答える。「簡単なことです。マクロのデフレギャップ、インフレギャップの発生状況を勘案して有効需要の発動状況を決めればいいです。そもそも国家財政の黒字と赤字は、マクロのデフレギャップ、インフレギャップとはまったく関係ない。その関係ないものでマクロの財政政策、金融政策が拘束されているです。それだけでなくて、このためものすごいダメージを日本経済は被っているわけです。そういう不条理から脱却して、デフレギャップとインフレギャップの発生状況をいつも勘案して、デフレギャップが大きければどんどん総需要拡大政策をやっていけばいいし、逆にインフレギャップが発生しそうになっていればブレーキをかければいい」「これがやれるようになってはじめて、ケインズ革命が本当の意味で完成するわけです」と。

 第7に、復興・繁栄をめざす政策の実現可能性について。
 丹羽氏は「日本は20年間で7000兆円を失い、不況から一向に脱却することができていない。そこに今回の東日本大震災です。われわれは今こそデフレギャップという形でのマクロ的生産力の余裕という宝を生かし、政府の貨幣発行特権という『打ち出の小槌』財政財源をうまく利用して復興事業に取り組むべきなんです。そうすれば、増税もなく、国債の大量発行に伴うクラウディング・アウトという副作用もなしに、日本経済そのものを輝かしい繁栄の軌道に乗せることができるはずなんです」と説く。
 そして、次のように言う。「ここで強調しておきたいのは、民間投資、貿易収支、一般政府支出を合わせた自生的な有効需要支出が倍になればGDPも倍になるという事実です。これは実証されています。わが国の現在の自生的な有効需要支出はおよそ200兆円です。その内の100兆円は一般政府支出です。ですから、この『自生的有効需要支出額』は政府の政策によって動かせる政策変数です。これを10年間で倍にすればGDPも否応なしに2倍になるですよ。政府の貨幣発行特権を発動して一般政府支出を増やせばいいですよ。そうすれば社会保障も充実し、国民の生活水準も飛躍的に向上し、防衛力も整備できます、発電所、変電所の建設とか、代替エネルギーの開発など、すぐできますよ」と。
 対談の相手である渡辺氏は「同感です」と首肯している。そして、丹羽氏の提言について、次のように言う。「理論的にも実証的にもこれだけ見事で整合的な枠を持ったプランをなぜ政府が本格的に採用しなかったのかと、まことに残念です。おそらくはいろいろな既得権益に阻まれてなかなか実現できないということだったと思います。われわれ論壇人としても丹羽さんのプランをぜひアピールしていきたいと思います」と。

 丹羽春喜氏は、東日本大震災からの復興はできる、その財源はある、と主張している。氏の経済的な理論・見解を、渡辺氏の対談から7点を挙げて、氏の提言の裏づけを見てきた。
 本章の結びに、丹羽氏が東日本大震災からの復興に関して述べていることを再度、要約にて掲載する。
 「今回の被害が50兆円あるいは100兆円にのぼるとしても、僕は大震災を出発点として、日本経済をもう一度、輝かしい繁栄と成長の軌道に載せることは決して不可能ではないと思います」「もし素晴らしいグランドデザインができれば、それを実現していく力は、日本に十分あるですから、まずは政治家には頑張ってもらわないといけない」「確かに大震災のダメージは大きいですが、デフレギャップという形で、日本にはまだまだ生産能力の余裕はたっぷりあるです」「復興のためには、一刻も早いグランドデザインとそれに伴う経済計画を国民に示すことが大切だと思います」「10年、20年後を見据えた威風堂々たるグランドデザインとそれを実現するための威風堂々たる経済興隆計画を早く提示してほしいものです」「日本は20年間で7000兆円を失い、不況から一向に脱却することができていない。そこに今回の東日本大震災です。われわれは今こそデフレギャップという形でのマクロ的生産力の余裕という宝を生かし、政府の貨幣発行特権という『打ち出の小槌』財政財源をうまく利用して復興事業に取り組むべきなんです。そうすれば、増税もなく、国債の大量発行に伴うクラウディング・アウトという副作用もなしに、日本経済そのものを輝かしい繁栄の軌道に乗せることができるはずなんです」「わが日本も、中国などには負けない威風堂々たる復興と経済成長を実現しようじゃないですか。これこそが、現在の国難からわが国を救う唯一の方途でしょう」
 以上である。

 丹羽氏については、以前拙稿で「救国の秘策」と活動の概要を書いたが、経済理論・政策提言を全般的に検討する拙稿を、MIXI・ブログに連載中(5月23日現在)である。(註 1) 

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(1)連載終了後編集し、「救国の経済学〜丹羽春喜氏2」としてマイサイトに掲載した。
参考資料
・丹羽春喜氏+渡辺利夫氏の対談「政府貨幣発行特権の発動で防災列島の構築を」(月刊『正論』平成23年6月号)
関連掲示
・拙稿「『救国の秘策』がある!〜丹羽春喜氏1救国の経済学〜丹羽春喜氏2

  

結びに〜日本の復興は精神の復興から

 

東日本大震災からの復興に向けて、菊池英博氏、藤井聡氏、藤井厳喜氏、丹羽春喜氏の提言を紹介した。

結びに、私自身の日本復興構想を述べたい。私は、日本の一国民として、次のような構想を抱いている。期間は、10年。主な課題は下記の5つである。

最重要課題:

日本の精神的復興〜日本の復興は日本精神の復興から

緊急課題:

@東北の地域復興〜東北を建て直し、東北から日本をよみがえらせる

Aデフレ脱却で経済成長〜日本の富を生かし、積極財政を断行

B高度防災国家の実現〜迫り来る巨大地震に耐え、繁栄し得る日本を創る

Cエネルギーの転換〜太陽光中心に自然エネルギー活用で21世紀の産業革命を

 

 次に、その主旨を書く。

 

最重要課題:日本の精神的復興〜日本の復興は日本精神の復興から

 

東日本大震災は、死者1万5千人以上、行方不明者約9千人(平成23年5月22日現在)という多大な犠牲者をもたらした。また、政府は道路・建物等の直接的被害を16〜25兆円と概算する。日本経済への影響は甚大であり、損失は100兆円とも見られる。まさに戦後最大の惨事であり、また国難である。

大震災の中で、被災地の人々は助け合いや思いやりを示し、その高い道徳性には、世界各国から賞賛の声が上がった。福島第一原発の事故現場で懸命に対応する自衛隊・消防・警察・電力会社関係者の献身的な行動は、海外の多くの人々を感動させた。天皇陛下は、国民に対しビデオでメッセージを語られ、また天皇・皇后両陛下は被災地の人々を慰問され、国境を越えて尊敬を集めた。

国家的な危機において自ずと現れるこうした日本の特質を、日本人が自覚し、自己に内在する日本精神を復興することこそ、大震災からの復興の最重要課題である。日本人が精神的に復興すれば、日本は立ち直る。逆に精神的に低迷すれば、天災人災の中で日本は自壊・衰亡する。日本はそのぎりぎりの地点にある。いまこそ日本人は、日本精神を取り戻そう。日本の復興は、日本精神の復興から始まる。

 

関連掲示

  基調

 

緊急課題

 

@ 東北の地域復興〜全国民が協力し、東北から日本をよみがえらせる

 

マグニチュード9.0の大地震と1000年に1度という巨大津波によって、東北地方太平洋地域は莫大な被害を受けた。壊滅的な状態になった自治体もある。約16万人の人々が避難生活を送っている。復旧・復興は困難で長い道のりとなる。被災地の人々の生活の再建が急がれる。住居・学校の整備、雇用の創出、社会的インフラの再建、地震・津波への防災の強化、農業・漁業・製造業等の復活、自然エネルギー利用による段階的な脱原発等が進められねばならない。

関東大震災は、首都を襲った大災害だった。死者・行方不明者は10万人を超えた。日本が潰れかねないほどの打撃だった。しかし、日本人はそこから立ち直った。昭和10年代には、アメリカを凌駕するほどの工業技術力を発揮した。大東亜戦争では、首都を含め全国主要都市を空襲で焼かれ、さらに広島・長崎には原爆を投下された。その人的・物的被害の大きさは、関東大震災・東日本大震災をはるかに上回る。それでも日本人は立ち上がった。敗戦後の復興と高度経済成長は、世界史の奇跡とさえいわれる。

日本人には、こうした不屈の生命力、強固な団結力がある。全国民が協力し、東北から日本をよみがえらせよう。

 

関連掲示

・本稿の第2章をご参照のこと

 

A デフレ脱却で経済成長〜日本の富を生かし、積極財政を断行

 

@の課題を実行するには、財源が要る。政府を始め与党・野党ともに、復興政策の財源を増税に求める意見がある。だが、日本は平成10年(1998)からデフレが続いている。こうした状態で増税をすれば、景気は冷え込み、ますます不況が深刻化することは、歴史的な事例を見れば明らかである。ここでなすべきは、デフレからの脱却である。日本は世界最大の債権国であり、日本人の富を活用すれば、デフレを脱却し大震災からの復興を実現することは可能である。

財源調達は、緊急的には国家埋蔵金の供出、建設国債(内需創出国債)、及び無利子国債の発行という方法がある。政府と日銀が一体となって財政金融政策を行うならば、日本経済を復活させることは出来る。さらに、国家指導層、及び国民の理解を形成できれば、政府貨幣発行特権の発動という「救国の秘策」がある。これは、潜在的な生産力の60〜70%しか発揮していないわが国の実態を把握し、潜在的なGDPと現実のGDPの間にある巨大なデフレギャップを生かす起死回生の政策である。

東日本大震災をきっかけに、これまでのわが国政府の経済政策の誤りを正し、真に国家国民の利益になる経済政策を断行するならば、日本はよみがえり、世界人類に調和ある繁栄をもたらすことが可能である。

 

関連掲示

・本稿の第1章、及び第4章をご参照のこと。

 

B高度防災国家の実現〜迫り来る巨大地震に耐え、繁栄し得る日本を創る

 

どんなに経済的に繁栄しても、大規模な天災人災が起これば、一瞬にして都市は損壊し、廃墟と化す。文明が進めば進むほど、被害は大きく、復旧は難しい。そのことを、東日本大震災は、日本人に示した。これを痛切な教訓としなければならない。

 東日本大震災は、天変地異の時代の序章に過ぎない。首都直下型地震は30年以内で発生確率が70%、東海・南海・東南海地震は30年内で発生確率が50%〜87%と言われる。これらの巨大地震に耐え、日本が存続し、繁栄を維持していくためには、防災を強化し、災害に強い日本を創ることが急務である。

現行憲法には非常事態規定がない。このことは、第9条が国防を規制していることと同根である。憲法を改正し、国防と防災を一体のものとして、日本を再建する。

政府の危機管理体制を高める。防災に重点を置いた国家構築、都市建設、地域開発を行う。東京への一極集中を止め、首都機能を分散する。非常時に備えたインフラを強化する。防災教育・避難救援訓練を推進する。国民の健康を増進し、医療依存の生活を改める。食糧・エネルギーの自給率を高める。

 

関連掲示

・本稿の第2章、及び第3章をご参照のこと。

 

Cエネルギーの転換〜太陽光中心に自然エネルギー活用で21世紀の産業革命を
 

私は、大震災を機に、太陽光を中心とした再生可能な自然エネルギーの活用を推進し、「21世紀の産業革命」を実現すべきと考える。原発に電力の約3割を依存している現在、原発を一気に全廃することはできない。今こそ自然エネルギーの活用を推進し、原発への依存を段階的に減らしていかねばならない。また常温核融合の実用化を急ぎ、もっと安全に原子力を利用することも、進めていくべきである。

人類は、生存と発展のために、自然との調和、また世界の平和を目指し、化石燃料をエネルギー源とする産業から脱却しなければならないときに来ている。とりわけ石油依存を脱却し、太陽光・風力・水素等のエネルギーを活用する産業への移行を、世界的な規模で加速・推進すべき段階に入っている。
 新しい流れは、「太陽の時代」へ、である。太陽光を中心としたクリーン・エネルギーを活用する方向へと、世界もまた日本も大きく動いている。「太陽の時代」が始まっている。 「日の丸」を国旗とする日本から、新しい人類の文明が生まれようとしている。わが国は東日本大震災を機に、政府・国民を挙げて、「太陽の時代」のギガトレンドを押し進めていくべきである。

 

関連掲示

・拙稿「『太陽の時代』のギガトレンド〜21世紀の産業革命を促進しよう

 

以上、四つの緊急課題を書いた。これらの課題は、私が以前から掲げている憲法の改正、国防の充実、家族の復権、道徳の回復、文明の転換等の基本課題と密接不可分のものである。基本課題については、マイサイトの「オピニオン」に骨子を掲載している。 基本課題は、大震災からの復興のための緊急課題を集中的に実行する中で、並行して推進し得る。特に最大の課題は、日本の精神的復興である。日本人が日本精神を取り戻すならば、他の課題は同時的かつ相関的に実現できると私は考える。日本を信じ、日本復興のために、立ち上がろう。

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関連掲示

・拙稿「日本の復興は日本精神の復興から〜東日本大震災による国難を乗り越えよう

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