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橋下徹は国政を担い得る政治家か

2012.5.19

 

<目次>

はじめに〜国政への新風

第1章    橋下「大阪維新の会」の国家政策を検討

(1)坂本龍馬の「船中八策」と維新版との違い

(2)維新版八策の骨子は急ごしらえで羅列的

(3)教育改革は評価できるが、歴史認識と言動を改めるべき

(4)憲法改正案は自主防衛と非常事態規定を欠く

第2章 有識者の橋下氏への評価

(1)堺屋太一氏は「平成の信長」と評価

(2)佐々淳行氏は「100年に一人の政治家」と期待

(3)大前研一氏は「ビジョナリー・リーダー」だとして応援

(4)佐伯啓思氏は「維新」のジャコバン化を警戒

(5)藤井聡氏は「嘘つき」発言で最大限に警戒

(6)橋下氏の人物・資質をよく見極めよう

第3章 国民の期待と橋下氏の大きな課題

(1)「橋下徹総理」を63%が支持

(2)橋下氏は自分を批判する者を口汚く罵倒

(3)国政を担うには大きな課題が

結びに〜大阪で実績を積み、徳を磨け

 

 

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はじめに〜国政への新風

 

 橋下徹氏は大阪府知事として府政に優れた手腕を示し、全国的な注目を浴びた。平成23年(2011)11月には大阪ダブル選挙に勝利し、盟友の松井氏が知事、橋下氏が市長となった。本年(24年)1月に産経・FNNが行った世論調査で、日本のリーダーにふさわしい人物を説いたところ、橋下氏は断トツの21・4%を占めた。2月の同調査では、「大阪維新の会」の国政進出に「期待する」との回答が64・5%に達した。次期衆議院選挙にて国政に進出すべく、政治塾を開くと定員の8倍超える3,326人が応募した。大阪で候補者を立てれば、ほぼ全選挙区で議席を取ると見られ、維新の会は間違いなく国政に新風を吹き込むだろう。

 本稿は、橋下徹氏と大阪維新の会について検討し、橋下氏の課題を書く。最初に述べておくと、私は橋下氏の現状打破への情熱、改革への意思を高く買う者だが、橋下氏は基本的な姿勢、精神に欠けたものがあり、国家的な政策案や言動にそれが表れていると思う。橋下氏にはその点を自覚・認識して、改善・向上を図ってほしいと願っている。

 

1章 橋下「大阪維新の会」の国家政策を検討

 

(1)坂本龍馬の「船中八策」と維新版との違い

 

 「大阪維新の会」は、衆議院選挙の公約を「維新版・船中八策」(略称 維新八策)と称している。平成24年2月13日にたたき台が発表された。6月には完成版を発表するという。

 「船中八策」とは、坂本竜馬が維新の大策を示した文書の名前である。橋下氏らが選挙公約の名称に使用したことで、改めて大衆の耳目に入った。だが、私の見るところ、龍馬の「船中八策」と橋下氏らの「維新八策」は、その精神においてかなり大きな開きがある。私は、橋下氏の現状打破への情熱、改革への意思を高く買うが、氏には課題もある。その第一は基本的な姿勢、そして精神である。まずその点を見てみよう。

 坂本龍馬は、慶応3年(1867)6月9日、薩長による討幕を推し進め、天皇を中心とする新国家を創ろうと奔走した。前土佐藩主の山内容堂に大政奉還を進言するため、藩船で長崎を出航し、容堂の居る京都へ向かう。龍馬は洋上で、日本を一新するための大策を練り、後藤象二郎に提示した。これを海援隊の長岡謙吉が書き留め、成文化されたものが、「船中八策」と呼ばれる。

 「船中八策」として伝えられるのは、次のとおり。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一、天下ノ政権ヲ朝廷ニ奉還セシメ、政令宜シク朝廷ヨリ出ヅベキ事。

一、上下議政局ヲ設ケ、議員ヲ置キテ万機ヲ参賛セシメ、万機宜シク公議ニ決スベキ事。

一、有材ノ公卿諸侯及ビ天下ノ人材ヲ顧問ニ備ヘ官爵ヲ賜ヒ、宜シク従来有名無実ノ官ヲ除クベキ事。

一、外国ノ交際広ク公議ヲ採リ、新ニ至当ノ規約ヲ立ツベキ事。

一、古来ノ律令ヲ折衷シ、新ニ無窮ノ大典ヲ撰定スベキ事。

一、海軍宜シク拡張スベキ事。

一、御親兵ヲ置キ、帝都ヲ守衛セシムベキ事。

一、金銀物貨宜シク外国ト平均ノ法ヲ設クベキ事。

 

 以上八策ハ方今天下ノ形勢ヲ察シ、之ヲ宇内万国ニ徴スルニ、之ヲ捨テ他ニ済時ノ急務アルナシ。苟モ此数策ヲ断行セバ、皇運ヲ挽回シ、国勢ヲ拡張シ、万国ト並行スルモ、亦敢テ難シトセズ。伏テ願クハ公明正大ノ道理ニ基キ、一大英断ヲ以テ天下ト更始一新セン

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 第一策は、大政奉還。第二策は、議会の開設。第三策は、官制改革。第四策は、不平等条約の改正。第五策は、憲法の制定。第六策は、海軍の増強。第七策は、首都の防衛。第八策は、金融改革である。

 大政奉還がなった後、わが国は、ほぼこの構想に合致する形で、改革と国家建設を進めた。第二策の後半にある「万機宜しく公議に決すべき事」とあるのは、近代日本の国是を示した「五箇条の御誓文」の「万機公論に決すべし」につながる。

 「船中八策」を語る人々があまり触れないが、私は八つの大策の下に書かれた一文の重要性を強調したい。龍馬は「苟(いやしく)も此の数策を断行せば、皇運を挽回し、国勢を拡張し、万国と並行するも、亦敢て難しとせず」と書く。ここで龍馬は「皇運」という言葉を使っている。この言葉は、後に教育勅語に「天壌無窮の皇運を扶翼すべし」と記された語である。天皇を中心とする日本国の運命、国運を意味する。龍馬は「皇運を挽回し、国勢を拡張し」と言う。これは、欧米列強の到来により、民族存亡の危機に直面し、不平等条約の締結を余儀なくされ、外交的にも経済的にも屈辱的な地位にあるところから、国権を回復することを目指すものである。そして、龍馬は「国勢を拡張し、万国に並行する」という。これは、国力を増強して、欧米列強に伍していける国家となることである。龍馬は、「船中八策」を断行すれば、これらは決して難しいことではないと確信をもって記す。

 そして、最後に「伏て願くは公明正大の道理に基き、一大英断を以て天下と更始一新せん」と締める。ここで龍馬は「道理」という言葉を使っている。「道理」とは、当代を代表する碩学・小堀桂一郎氏が『日本に於ける理性の傳統』で明らかにしたように、13世紀以来、わが国の思考において、最も重要な概念となっているものである。その思想史における重要性は、西洋における reason に匹敵する。「道理」は物事の根本理法であり、また社会の根本規範である。「道理」は、江戸時代を通じて様々な人士の思想の核として使われた。幕末の龍馬もまた「道理」という言葉を用い、「道理」をもって「一大英断」をなすべきことを、当時の指導層に請願する。

 「道理」は、わが国の歴史や国柄についても使われる。慈円は『愚管抄』で、一筋の血統で皇位が継承されていることが、わが国における唯一不変の「道理」であることを書き記した。それ以降も、わが国の「道理」の根本は、天皇を中心とする国柄の根本規範であり、その「道理」に則って進むことが「皇運」の隆盛をもたらす道であり続けている。坂本龍馬は、そういう認識を藤田東湖、横井小楠、由利公正、西郷隆盛、吉田松陰等と共有していた。そして、この「道理」に基づいて立案されたものが、「船中八策」なのである。

 現代日本人は、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』によって、坂本龍馬を知った。その後、様々な龍馬伝が書かれているが、全体的な傾向として、龍馬における尊皇心、愛国心が薄められた人物像となっている。だが、「道理」に基づく尊皇心、愛国心を共有しなければ、坂本龍馬の大志は、よくとらえられない。こういう見方をしている私には、橋下氏らの「維新版・船中八策」から龍馬に通じる精神が伝わってこない。橋下氏は、ぜひ坂本龍馬の精神に学び、維新八策を練り直してほしいと思う。

 

関連掲示

・拙稿「大義を世界へ〜横井小楠

 目次から09へ

・拙稿「国是を示し経綸を為す〜由利公正

 目次から10へ

 

(2)維新版八策の骨子は急ごしらえで羅列的

 

 橋本徹大阪市長率いる「大阪維新の会」は、2月13日「維新版・船中八策」の骨子を発表した。報道によると、骨子の表題は「日本再生のためのグレートリセット」「これまでの社会システムをリセット、そして再構築」とされ、「給付型公約から改革型公約へ〜今の日本、皆さんにリンゴを与えることはできません。リンゴのなる木の土を耕し直します」と方向性が記されている。そして、「維新八策の目的」として、次の箇条書きを骨子の冒頭に揚げる。

 

・決定でき、責任を負う民主主義

・決定でき、責任を負う統治機構

・自立する個人

・自立する地域

・自立する国家

・日本の一人勝ちの時代は終わった

・今の日本のレベルを維持するには国民総努力が必要

・国全体でのオペレーションから個々の創意工夫による活性化

・現役世代の活性化

 

 キーワードは、「決定」「責任」「自立」である。これらの用語は、新自由主義に傾いていた自民党時代の小沢一郎氏や、市場原理主義を導入・推進した小泉純一郎氏が掲げていたものに通じる。「一人勝ち」とか「レベル」とか経済的な観点が目立ち、日本の伝統・文化・国柄や精神に関することは盛られていない。敗戦後の日本の課題を意識した表現でもない。「目的」の政治的主張を一応保守と見ることにすると、基本的な姿勢は伝統尊重的ではなく経済優先的、依存従属的でなく自主独立的である。また自由主義的というより、新自由主義的である。すなわち経済優先的、自主独立的、新自由主義的な姿勢と考えられる。

 さて、この「目的」の下に、維新八策は、(1)統治機構の作り直し(2)財政・行政改革(3)公務員制度改革(4)教育改革(5)社会保障制度(6)経済政策・雇用政策・税制(7)外交防衛(8)憲法改正の8つを挙げる。これらは方策なのか、課題なのか、分野なのか、明瞭でない。「八策」と称するのだから、目的達成のための方策でなければなるまいが、(5)〜(7)は行為ではなく分野であり、よく整理されていない。

 とりあえずこれらを課題と呼ぶとすると、8つの課題のもとに、後に記す91にわたる項目が列記されている。この項目も施策なのか、目標なのか、理念なのか、それらが混ざっている感じがする。そこでとりあえず施策と呼ぶとすると、先ほどの「目的」をどう施策として具体化するのか、私にはよく読み取れない。

 まだ骨子だからかもしれないが、「維新版・船中八策」は骨子としても粗く、羅列的である。また未だ会の内部の議論が流動的なようで、骨格がよく見えない。私としては、細かい論評を控えているところである。本稿でも、個々の施策について逐一検討するつもりはない。これまでの印象としては、国政全体まで考えていなかった地域政党が、急に勢いを得て、国政を目指し、内政・外交に至るまで急ごしらえで一通りそろえようと背伸びしている感じがする。

 先に書いたように坂本龍馬は「船中八策」で、内政は大政奉還・議会開設・憲法制定等、外政は不平等条約の改正や海軍の増強等を挙げている。国家を再建し、積極外交・国防強化による国威発揚を目指したものである。これに比べ、橋下氏らの維新八策の骨子は、内政に関することがほとんどで、外交・安全保障に関することは、全体の1割も分量がない。橋下氏自身、これまで国家像や憲法・国防・国家経済等につき、どの程度考え、構想を練ってきたか疑わしい。

 また「維新版・船中八策」の作成過程は、理念より方法の方に議論が走っている気がする。中央進出をしようとする政党にまず必要なのは、マニフェストより綱領である。党の綱領の策定なく、選挙向けにマニフェストを出すという仕方は、民主党という前車の轍を踏むおそれがある。政権を取らんがための諸集団の寄せ集めと、大衆迎合的な選挙向けの政策の展示になると、いかなる政党も、日本を変える真の力には、成り得ない。

 以下は、骨子に関する報道記事。

 

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●産経新聞 平成24年2月21日

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120221-00000546-san-soci

橋下維新 これが「維新八策」だ! 骨子全文

 

 橋下徹大阪市長が率いる地域政党「大阪維新の会」が、次期衆院選の公約として策定する「維新版・船中八策」(維新八策)。たたき台として示された骨子の表題は「日本再生のためのグレートリセット」「これまでの社会システムをリセット、そして再構築」とされ、「給付型公約から改革型公約へ〜今の日本、皆さんにリンゴを与えることはできません。リンゴのなる木の土を耕し直します」と方向性が記されている。

 維新は大阪府議会や大阪、堺両市議会の所属議員らで協議を進めており、今月末の全体会議で細部を詰める予定という。

 

■「維新八策」の骨子全文

 

〈維新八策の目的〉

 

・決定でき、責任を負う民主主義

・決定でき、責任を負う統治機構

・自立する個人

・自立する地域

・自立する国家

・日本の一人勝ちの時代は終わった

・今の日本のレベルを維持するには国民総努力が必要

・国全体でのオペレーションから個々の創意工夫による活性化

・現役世代の活性化

 

(1)統治機構の作り直し

・国の仕事を絞り込む=国の政治力強化

・内政は地方に任せる=地方・都市の自律的経営に任せる

・被災地復興は、被災地によるマネジメントで→復興担当大臣などは被災地首長

・国家の面的全体運営から点と点を結ぶネットワーク運営

・中央集権型から地方分権型へ

・国と地方の融合型から分離型へ

・地方交付税の廃止

・自治体破綻制度

・税源の再配置

・国の仕事は国の財布で、地方の仕事は地方の財布で=権限と責任の一致

・地方間財政調整制度=地方共有税制度の創設

・地方間で調整がつかない場合に国が裁定

・都市間競争に対応できる多様な大都市制度=大阪都構想

・道州制

・首相公選制

・参議院改革→最終的には廃止も視野

 参議院議員と地方の首長の兼職=国と地方の協議の場の発展的昇華、衆議院の優越の強化

 

(2)財政・行政改革

・プライマリーバランス黒字化の目標設定

・国会議員の定数削減と歳費その他経費の削減

・国会改革=役人が普通のビジネス感覚で仕事ができる環境に

・首相が100日は海外へ行ける国会運営

・政党交付金の削減

・公務員人件費削減

・大阪方式の徹底した究極の行財政改革を断行

 

(3)公務員制度改革

・公務員を身分から職業へ

・価値観の転換

・安定を望むなら民間へ、厳しくとも公の仕事を望むなら公務員へ

・大阪式公務員制度改革を国に広げる

・外郭団体改革

・大阪職員基本条例をさらに発展、法制化

 

(4)教育改革

・格差を世代間で固定化させないために、最高の教育を限りなく無償で提供

・教育委員会制度の廃止論を含む抜本的改革

・首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視

・教育行政制度について自治体の選択制

・学校を、校長を長とする普通の組織にする

・大学も含めた教育バウチャー(クーポン)制度の導入

・生徒・保護者による学校選択の保障

・大阪教育基本条例(教育関連条例)をさらに発展、法制化

 

(5)社会保障制度

・受益と負担の明確化(世代間格差の是正)

・年度毎のフローでの所得再分配だけでなく、一生を通じてのストックによる所得再分配

・一生涯使い切り型人生モデル

・現行の年金制度は一旦清算=リセット

・年金の積立方式への移行(最低ライン)

・さらに、資産のある人は、まずはその資産で老後の生活を賄ってもらう→掛け捨て方式(ストックでの所得再分配)

・何歳まで努力をしてもらうのか、老後いくらを保障するのかを設定=事前告知→それに合わせた保険料を設定

・保険料は強制徴収(税化)

・リバースモーケージ(所有不動産を担保に年金のような融資を受ける仕組み)の制度化

・持続可能な医療保険制度の確立=混合診療解禁による市場原理メカニズムの導入

・持続可能な生活保護制度の確立=就労義務の徹底

・ベーシックインカム(最低生活保障)制度の検討

 

(6)経済政策・雇用政策・税制

・新エネルギー、環境、医療、介護などの特定分野に補助金を入れて伸ばそうとするこれまでの成長戦略と一線を画する「既得権と闘う」成長戦略〜成長を阻害する要因を徹底して取り除く

・岩盤のように固まった既得権を崩す

・徹底した規制緩和による新規参入、イノペーション

・現在存在する社会インフラの徹底した選択と集中

・ストックの組み替え=高度成長時代に造られたストックを成熟した国家にふさわしい形へ

・経済活動コストを抑え、国際競争力を強化

・マーケットの拡大=自由貿易圏の拡大→TPP/FTA

・大きな流れ(円高、海外移転など)に沿った対策=大きな流れを人工的には変えられない

・労働集約型製造業の海外移転は止められない

・貿易収支から所得収支、サービス収支の黒字を狙う

・円高による輸入業の儲けを輸出業の損失へ=円高による為替差損益の調整制度(ソブリンデリバティブ)

・高付加価値製造業の国内拠点化

・サービス産業の拡大=ボリュームゾーンの雇用創出→IR型リゾートなど

・医療・介護・保育の分野では一方的な税投入による雇用創出をしない=ユーザーの選択に晒す

・産業の淘汰を邪魔しない=産業の過度な保護は禁物

・人は保護する=徹底した就労支援

・労働市場の流動化、自由化→衰退産業から成長産業へ、外国人人材の活用

・教育機関による人材養成=グローバル人材の養成

・女性労働力の徹底活用

・フローを制約しない税制=民間でお金を回す(使わせる)税制

・一生涯使い切り型人生モデル

・資産課税=固定資産税は現金化、死亡時に精算(フローを制約しない)

・使った分(設備投資、給料、消費)は消費税以外は非課税

・国民総背番号制によるフロー・ストックの完全把握

・(全商取引の把握=非課税となる要件)

・国民総確定申告制

・超簡素な税制=フラットタックス

・減免、特措法などは原則廃止

・夫婦、障害者、事業承継が課題(方策の一例〜一定規模の事業で雇用創出をしている場合のみ、事業承継を認める?それとも原則通り一代限り?資産の売却?)

・脱原発依存、新しいエネルギー供給革命

 

(7)外交・防衛

・自主独立の軍事力を持たない限り日米同盟を基軸

・加えてオーストラリアとの関係強化

・日米豪で太平洋を守る=日米豪での戦略的軍事再配置

・2006年在日米軍再編ロードマップの履行

・同時に日本全体で沖縄負担の軽減を図る更なるロードマップの作成着手

・日米地位協定の改定=対等

・国際標準の国際貢献の推進

・国際貢献する際の必要最低限の防衛措置

 

(8)憲法改正

・憲法改正要件(96条)を3分の2から2分の1に緩和する

・首相公選制

・参議院の廃止をも視野に入れた抜本的改革

・衆議院の優越性の強化

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(註 平成24年(2012)7月5日「維新八策」改訂版が公表された。ほそかわは、この改訂版の内容を検討し、拙稿「橋下『維新八策』は改訂版も未だ『?』」を別途掲載した。ご参照下さい)

 

(3)教育改革は評価できるが、歴史認識と言動を改めるべき

 

 わが国は、サンフランシスコ講和条約の発効によって独立を回復してから、本日で60年を迎えた。昭和27年(1952)4月28日以来、60年もの歳月が過ぎたが、わが国の国家社会には、敗戦と占領統治の影響が色濃く残っている。その表れの場の一つが教育である。日本再建のため教育改革は重大課題である。

 さて、「大阪維新の会」の「維新版・船中八策」の中で、私が、これは地に足がついている、と評価できるのは、その教育改革に関するものである。

 大阪府では、3月3日の府議会本会議で、教育基本2条例と職員基本条例が可決、成立した。問題が多いがなかなか改革の進まない教育界に、改革ののろしを上げたものとして私は歓迎する。

 大阪府では、昨年6月に府立校の教職員を対象にした全国初の国旗国歌条例が成立した。今年3月初めには大阪市で、市立学校教職員に国歌斉唱時の起立を義務づける条例が成立した。こういう着実な前進の積み重ねが大切で、その継続・拡大が全国に大きな改革を広げていくだろう。

 橋下氏は、教育改革の必要性を積極的に語って、実践してきている。大阪府知事時代、「政治が一番しなければならないのが教育」「日本はゆとり教育でみんな勉強しなくなった」「国旗、国歌を否定するなら公務員を辞めればいい」「校長は組織のマネジャー。組織である以上、権限の強化は至極当たり前の話」等と述べてきた。

 本年(24年)2月発表の「維新版・船中八策」のたたき台は、第4策に教育改革を挙げる。その項目は次の通り。

 

・格差を世代間で固定化させないために、最高の教育を限りなく無償で提供

・教育委員会制度の廃止論を含む抜本的改革

・首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視

・教育行政制度について自治体の選択制

・学校を、校長を長とする普通の組織にする

・大学も含めた教育バウチャー(クーポン)制度の導入

・生徒・保護者による学校選択の保障

・大阪教育基本条例(教育関連条例)をさらに発展、法制化

 

 これらのうちの多くが、大阪府及び大阪市では具体化しつつある。その発展に期待したい。ただし、最初に掲げる「最高の教育を限りなく無償で提供」という政策は、財政的な裏付けや教育の基本理念を示してもらわないと、私は了解できない。教育に関しては、教育の目的と目指すべき人間像を明らかにし、その実現のために、これこれの施策を行いたいという打ち出し方が必要だろう。

 公教育においては、日本の次代を担う人材を育てることが、目的に挙げられねばならない。青少年に自国の伝統・文化を受け継ぎ、未来を託すには、自国の歴史を教えることが重要である。この点で、私は、橋下氏が河村名古屋市長が南京事件に関する発言をした際、「公選の首長は歴史家ではない。歴史的事実について発言するなら知見も踏まえ、慎重にすべきだ」と河村氏を批判し、自らは南京事件についての事実関係を論ずる考えはなく、「(発言することで)日本にとってプラスになるようなことがあるとは感じない」と述べたと報じられたことに、大きな疑問を持った。

 私は、橋下氏の現状打破への情熱、改革への意思を高く買う者だが、本件に関する限り、橋下氏には見識も気概もない。河村「南京」発言への対応を通じて、橋下氏らの「維新版・船中八策」は、坂本龍馬にあやかるだけかと疑う。

 教育改革については、橋下氏らは国旗掲揚・国歌斉唱時の起立等、評価できることを進めているが、南京事件等に関する誤った教育を正すところまで踏み込まないと、大きな改革にはならない。 南京事件は東京裁判で、日本の指導者を断罪するとともに、米国の原爆投下を正当化するために、一つのポイントとなった。日本の政治家にとって、南京事件への態度は、日本の再興に関する根本姿勢に関わる。橋下氏は、南京事件について、しっかり研究・検討したことがないのではないか。

 総じて橋下氏の国家観・歴史観は底が浅い、と私は感じる。龍馬の「船中八策」を「維新版」などと気楽に使っているが、龍馬は黒船来航による幕末日本の存亡の危機にあって、当時の志士たちが皆そうだったように、わが国の歴史や国柄について確固たる知識を身につけ、またわが国を取り巻く情勢をしっかり認識し、そして、なにより民族の存亡に係る危機感を持っていた。そこから、「船中八策」という大構想は、生み出されている。龍馬の時代同様、今日においても、伝統・文化・国柄を深くとらえたところからでなければ、日本再建のための大策は策定し得ない。橋下氏は、南京事件を題材として、そのことをよく認識すべきである。

 もう一つ橋下氏が本気で教育改革をしようと思うなら、自身の言動を改める必要がある。別途詳細を書く予定だが、雑誌「SAPIO」平成24年5月9日・16日号で、小林よしのり・中野剛志両氏が対談し、橋下氏を論じている。おそらくそれを読んだのだろう。橋下氏は4月27日、ツイッターで両氏を口撃。反論というより、口汚くののしる喧嘩口調であり、ハマコー並みのガラの悪さである。

 教育には、知育・体育・徳育の三要素がある。これらがバランスよく機能して、始めて健全な青少年が育つ。教育改革は学力の上昇、体力の増強だけでなく、道徳の向上を図るものでなければならない。そうした教育改革を先導する者は、政治家であれ、教育者であれ、保護者であれ、自身の言動に気を付けねばならない。青少年は大人の言動をよく見ているからである。橋下氏は、この点、言動において失格である。密室で大人同士が喧々諤々の議論をするのはよい。だが、教育改革を唱える政治家が、青少年も耳にし目にするメディアで語る時は、自制と品性が求められる。

 大阪維新の会の教育改革は評価できるが、本気で教育改革を全国的に進めようするなら、歴史認識と自身の言動を改めるよう橋下氏に忠言する。

 

(4)憲法改正案は自主防衛と非常事態規定を欠く

 

 去る4月28日わが国が独立回復60年を迎えるに際し、自民党は憲法改正案を発表した。みんなの党、たちあがれ日本は、新憲法の大綱を公表した。次の衆議院選挙は自民党が大勝すると予測されており、その自民党が憲法改正を政権公約の第一に掲げるから、憲法が選挙の争点の一つとなるだろう。戦後初、ようやく来る好機である。

 さて、維新版八策の骨子は、憲法改正を第8の課題としているが、内容は「憲法改正要件(96条)を3分の2から2分の1に緩和する」「首相公選制」「参議院の廃止をも視野に入れた抜本的改革」「衆議院の優越性の強化」の4項目のみ。道州制の導入も憲法改正を要する政策だが、第1の課題である統治機構の作り直しには挙げてあるものの、憲法改正の課題には書いていない。その意図はわからないが、最大の問題はそもそも何のために憲法改正をするのかが説かれていないことである。維新八策の「目的」のキーサードである「決定」「責任」「自立」との関係を、ほそかわなりに慮れば、統治機構を作り直すために憲法を改正するということになるだろうが、憲法改正の課題に、そのように明記はされていない。

 憲法改正に関し、特に重要なのは日本の安全保障をどう確保するかである。ところが、維新八策は、肝心の憲法9条に触れていない。要点を欠いている。大きな欠陥である。第7番の外交・安全保障政策の課題には、「自主独立の軍事力を持たない限り日米同盟を基軸」という前提付きの表現を使っている。日米同盟を基軸とするのは日本外交の根本だが、自主独立の軍事力を持つならどうなのか、自主独立の軍事力を持とうという政策なのか、現在の自衛隊をどうするのか、全体があいまいである。また「日米豪で太平洋を守る=日米豪での戦略的軍事再配置」「国際貢献する際の必要最低限の防衛措置」等と挙げてはいるが、集団的自衛権の行使には踏み込んでいない。

 維新八策の骨子発表後、憲法第9条をどう考えるのか、橋下氏にマスメディアが質問を向けた。橋下氏は2月24日、ツイッターで、憲法9条改正の是非について、意見を明らかにした。そして、9条について「決着をつけない限り、国家安全保障についての政策議論をしても何も決まらない」と指摘。9条改正の是非について2年間と期間を区切って徹底した国民的議論を行い、国民投票で方針を定めることを提案した。

 また橋下氏は、被災地のがれき処理の受け入れが各地で進まない現状について、ツイッターで「すべては憲法9条が原因だと思っている」と述べた。3月5日、発言の真意を報道陣に問われた橋下氏は、「平穏な生活を維持しようと思えば不断の努力が必要で、国民自身が相当な汗をかかないといけない。それを憲法9条はすっかり忘れさせる条文だ」と述べた。「9条がなかった時代には、皆が家族のため他人のために汗をかき、場合によっては命の危険があっても負担することをやっていた」「憲法9条は、自分が嫌なことはしないという価値観だ。自己犠牲しないのなら、僕は別の国に住もうかと思う」と語った。その一方、「平和を崩すことには絶対反対で、9条を変えて戦争ができるようになんて思ってない。9条の価値観が良いか悪いかを、国民の皆さんに判断してほしい」とも述べた。

 こうした一連の発言を見ると、橋下氏は憲法第9条の弊害を強く意識し、戦後の日本人が社会の中で進んで自分の役目を果たそうという姿勢や、互いに助け合い、支え合う生き方を失ってきているのは、第9条が原因だと考えているようである。だが、そこまで強く意識しているのであれば、国民に憲法第9条の改正を訴え、どのような条文としたいのか、どのように「自主独立の軍事力」を持って、「日米豪で太平洋を守る」ようにしたいのか、具体的に提示すべきだろう。政治家がなすべきことは、国民に話し合いと判断を求める前に、自分はこうしたい、それはこういう理由・目的だからだ、と率直に語ることだろう。橋下氏は、それができていない。自分の国を自ら守るという国防の義務を訴えていないからである。この自主独立国家の根本的なあり方を取り戻さないと、日本は本当にはよくならない。そのようにはっきり言わないと、国民への呼び掛けにはならない。ぜひもう一歩、考えを進めて、国民にはっきりと呼び掛けてほしい。

 そういう呼び掛けのできる指導者になるには、まず「自己犠牲しないのなら、僕は別の国に住もうかと思う」という言葉を撤回することが必要である。他人が自己犠牲しないなら、自分が「別の国」に住もうと考えるのは、本当の愛国心ではない。他の誰も自己犠牲しなくとも、我一人でも国を守るという決意こそ、同胞の心を動かす。橋下氏は先の言葉を吐いたことを恥じ、まずそれ撤回したうえで、国防に関する考えを進めてほしい。

 次に、憲法改正に関し、橋下氏は、非常事態規定について、何も述べていない。大きな欠陥である。私は、6年前に新憲法案を作って、マイサイトに公開している。その私案に非常事態条項を設け、折に触れて非常事態規定の必要性を説いてきた。特に独創的なことではなく、明治憲法には規定があり、世界各国の憲法は非常事態の対処を規定している。独立主権国家であれば、不可欠の規定である。昨年東日本大震災が発生し、原発事故が深刻化するなか、私は、この国家非常事態において、早急に憲法に非常事態条項を定め、対応を強化できるように訴えてきた。

 だが、橋下氏は、日本人が大地震・大津波・原発事故という手痛い経験をした後であるのに、憲法改正案に非常事態条項の新設を挙げていない。この点を見て、私は、橋下氏は、日本国民1億2千万を率いる真の指導者に成り得る人材なのか、大きな疑念を持つ。橋下氏は、教育・財政・年金・社会保障・公務員制度等については、改革のできる能力を持っているかもしれない。しかし、一国の総理大臣たるべき人物は、他国からの侵攻、内乱、大規模自然災害等の国家国民の最大危機において、敢然と国民を指導し、国家機関を指揮できなければならない。

 現在の橋下氏は、安全保障と非常事態に関して、国家最高指導者に必要な気構えを持っていないように私には見える。近年の中国の軍拡や北朝鮮の核開発といった東アジアの厳しい国際環境、そして今後も巨大地震が首都や東海・東南海・南海が発生する可能性――こういう環境と時代を生きている日本人としては、橋下氏はまだ状況認識が浅く、感覚が鈍いのではないか。意識と覚悟が変われば、国防の義務と非常事態規定は憲法改正における極めて重要なポイントであることを理解できるようになるだろう。ページの頭へ

 

 

第2章 有識者の橋下氏への評価

 

(1)堺屋太一氏は「平成の信長」と評価

 

 橋下徹大阪市長については、有識者の間で大きく評価が分かれている。これほど極端な例は、私の記憶にはない。そこで有識者数人の評価を取り上げて、検討したい。堺屋太一、佐々淳行、大前研一、佐伯啓思、藤井聡の各氏の見方の比較を行う。

 まず最も高く評価しているのは、橋下氏の後見役で大阪府市特別顧問を務める堺屋太一氏である。堺屋氏は作家・評論家で、経済企画庁長官を務めた経験もある。橋下氏と共著『体制維新――大阪都』(文春新書)を出し、橋下氏の思想・政策の広報・宣伝にも一役買っている。

 堺屋氏は、産経新聞2月26日号でインタビューに答えて、次のように言う。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120226/lcl12022622360002-n1.htm

 

 橋下氏をどういう政治家と見るかーー「歴史に出てくる改革者。平清盛や織田信長の性格を備えた人です。大事なのは、はっきりとした思想を持っていること。ここを飛ばすと、お騒がせ屋になってしまう」

 維新の理念を浸透させるのが先決だとーー「理念を持っている政治家だよ、と。信長は封建社会から近世社会に、清盛は貴族から武士の社会に、それぞれ理念を持っていた。橋下さんもそういう人。現実にやろうとしていることは、消費者主権の倫理に基づいて、大阪都という体制改革をやり、事業を黒字成長型にするという、この3つ。これを極めて頑固にやっている。この頑固さ、倫理への忠実さが一番大事」

 橋下氏は将来的に政治的リーダーになり得ると思うかーー「思います。ただし、まず大阪都に成功しないと。尾張の国を征服しないと信長はなかった」

 橋下氏は「政治家には賞味期限がある」と言っているがーー「賞味期限の範囲内で消費者主権の倫理、大阪都、成長の3つを完成させたら、別の料理になり、賞味期限も延びる。20年かけたら新しい倫理の日本ができる。そのときは、織田信長から豊臣秀吉になっているかもしれない。そうなれば、新しい日本ができる」

 

 堺屋氏は、独創的な創造性を持つ作家だが、通産官僚上がりらしく、データや資料をもとに緻密に調査・企画を行うタイプだと私は思ってきた。その堺屋氏が、橋下氏を平清盛、織田信長、豊臣秀吉という歴史上の人物と並べ、大坂都に成功すれば、という条件付きではあるが、信長にも秀吉にも成り得る人材だと極めて高く評価している。功成り名を遂げた有識者が、地方政治を数年やった程度の若い政治家を、これほど高く評価した例を、私は知らない。

 

(2)佐々淳行氏は「100年に一人の政治家」と期待

 

 堺屋氏ほどではないが、橋下氏を評価し、わが国の閉塞状態を打ち破る改革者として期待を寄せる有識者は多い。その中で、初代・内閣安全保障室長・佐々淳行氏は、橋下氏に期待していたが「船中八策」には失望した、として橋下氏への期待を込めて、要望事項を挙げている。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120224/stt12022403050008-n1.htm

 佐々氏は、産経新聞2月24日号の「正論」の寄稿文を、「日頃から橋下氏の高い志、強い指導力、勇気、行動力を評価し坂本龍馬の遺志を継ぐ救国の英雄になるかとひそかに期待していた」と書き始める。今度は、信長ならぬ坂本龍馬である。だが、佐々氏は「『大阪維新の会』が来るべき国政進出に向けて2月13日に公表した『船中八策』なるマニフェスト(政権公約)を読んで失望した」と言う。理由は、「一番肝心の安全保障・防衛・外交がそっくり抜け落ちていて、これではウソ八百の民主党のマニフェストと同じではないか。これでは泉下の龍馬が哭(な)く」と嘆く。

 佐々氏は、次のように述べる。「『船中八策』は、国民的国家安全保障の諸施策の明確な大方向を、急ぎ再検討して修正しないと、『維新の会』は国政に参加できても、いずれ日本新党、民主党の二の舞い、三の舞いとなってしまい、到底、救国の保守第三極にはなれない。そして、国家安全保障の問題を避けるならば、それは『坂本龍馬の船中八策』の呼称を冠するに値しない。むしろ、この際、橋下徹という100年に1人の政治家にカリスマ性を与えるための、『橋下の船中三十六策』でも『七十二策』でも、そのオリジナリティーを日本政治史に残した方がいいと思う」。

 そして、橋下氏に注文を挙げる。「国家百年の大計として、(1)天皇制の護持、皇室典範の改正、絶家必至の各宮家と旧宮家男系相続人の養子縁組を認め、男性皇族の減少という危機を回避する(2)日米安保条約を『百年同盟』とし、集団的自衛権の行使を首相が宣言し、日米対等となる(3)中国にはトウ小平の『尖閣問題棚上げ論』に戻すことを提案、尖閣諸島は日本にとっても『核心的利益』で譲れないと宣言する(4)このほか、『憲法9条改正』『自衛隊の国軍昇格』『国連改革(憲法に国連のコの字もなし)』『民主党2人の首相の誤れる国際公約の撤回』『食糧・エネルギー安保』『領域警備法制定』−など橋下市長の勇気ある決断を祈っている」と。

 これだけ要望を列記するということは、佐々氏は、橋下氏をこれらの要望を理解し、受容を決断し得る政治家と評価しているわけである。「橋下徹という100年に1人の政治家」と書いているから、よほど期待しているのだろう。清盛・信長など500年に一人クラスと見る堺屋氏よりは控え目だが、明治末年(1912)以後、大正・昭和・平成のすべての政治家より上という見方になる。佐々氏は、橋下氏にさらに「カリスマ性」を与えたいと考えて、わが要望を取り入れよ、と発言しているのである。佐々氏は危機管理のプロだが、自身の発言の危機管理は大丈夫かと案じられるほどの思い入れの強さである。

 

(3)大前研一氏は「ビジョナリー・リーダー」だとして応援

 

 「SAPIO」平成24年5月9日・16日号、経営コンサルタントの大前研一氏が橋下氏への期待と助言を書いた。

 橋下氏は「大阪維新の会」立ち上げに当たって、「平成維新の会」(現・一新塾)を主宰する大前研一氏に直接、名称使用の了承を打診したという。何が名称使用に当たるのか分からないが、橋下氏は大前氏から影響を受け、敬意を払っているようである。大前氏は新自由主義を標榜しており、橋下氏は思想的に通じるところがあるのだろう。橋下氏が推進する発送電分離や道州制は大前氏の案といわれる。

 大前氏も橋下氏を高く評価する。「橋下市長は、これまでに私が会った政治家の中で群を抜いて頭が良い。日本をこういう国にしたいという明確なビジョンがあり、それに基づいて分かりやすい話ができる。しかも私が何か提案したり議論をふっかけたりすると、必ず正面から受け止めて自分なりの考えをめぐらせ、『YES』か『NO』かの結論を出す。そして自分が間違っていたら、いつでも修正する。これは今まで日本にいなかったタイプの政治家であり、国民が求めていた”ビジョナリー・リーダー”だと言える。

 それゆえ、私は橋下市長を応援している。大阪特区が誕生した暁には、私の得意技を生かせる分野での協力を惜しまない。すなわち大阪に世界中からヒト・カネ・モノを持ってきて繁栄を呼び込むことを、全力で手伝う所存である」と。

 ビジョナリーとは、「先見の明のある」「予見力のある」を意味する言葉。「国民が求めていた”ビジョナリー・リーダー”」「今まで日本にいなかったタイプの政治家」と大前氏は橋下氏を称賛する。

 大前氏は橋下氏に「大阪に世界中からヒト・カネ・モノを持ってきて繁栄を呼び込むこと」を期待している。そして、「そのためには、@『中央が言うことを聞かないなら、いつでも兵を江戸に送り込むぞ』という”風林火山”の旗は立てておくが、実際には江戸で無駄な時間は使わない。A目的と関係ないパフォーマンスのような”余計な喧嘩”は厳に慎むこと。以上2つが、橋下革命成功のためには肝心と考える」と述べている。

 私は、この2点は重要な助言だと思う。特に「目的と関係ないパフォーマンスのような”余計な喧嘩”は厳に慎むこと」は、橋下氏の性格をよくとらえた忠告だろう。今の橋下氏が聞く耳を持っているかどうかは分からないが。

 大前氏は言う。「最も重要なことは『成功事例』を1つ作ること」「大阪が成功すれば。日本が変わるのである。ただし、それには時間がかかる」「老練なケ小平が深圳を10年かけて磨き続けたのと同じように、また有能なマハティールが10年かけてマレーシアを作り変えたように、橋下市長が大阪特区を成功させるためには、これから10年、大阪を磨き続けるしかないのである。その結果として大阪が繁栄して初めて、大阪都から『関西道』に進み、統治機構が変わっていくのである。『急いては事を仕損じる』のだ」と。

 この助言も当を得ている。橋下氏は、まず大阪で府・市一体の改革に打ち込み、じっくり実績を上げることである。大阪を変えるのは、なま易しい課題ではないはずである。誰もが認めるだけの結果を出してから、国政に歩を進めるべきだろう。大阪改革を10年でやる間には、歴史観、国家像、憲法、外交・安全保障、経済等につき、深く勉強し、国政の構想を練ることができるだろう。橋下氏はこれからが大阪での正念場なのに、橋下氏は視聴率稼ぎのマスメディアに乗せられ、一部国民の肥大する期待に対し、恰好よく応えようとし、派手に振る舞いすぎている。

 大前氏は、橋下氏の性急な国政進出について、さらに厳しい判断を述べる。「もし『大阪維新の会』が即席で教育した塾生たちを総選挙に擁立して風が起こり、300議席を獲得したとしても、それは小沢チルドレンよりレベルの低い”橋下ベイビーズ”が生まれるだけである。そんなことになったら、橋下改革は100%失敗する」と。

 ここにいう「橋下改革」は、当面の大阪改革を含むはずである。橋下氏を「今まで日本にいなかったタイプの政治家であり、国民が求めていた”ビジョナリー・リーダー”」とまで評価する大前氏は、一方でこのまま国政に進出したら、橋下氏は大阪改革に失敗し、大阪から日本を変えるという改革もできないと見ているわけである。大前氏は「平成維新の会」で国政を動かそうとして失敗・挫折した。その経験に基づく洞察だろう。

 私は、これまで大前研一氏の書いたものを肯定的に引用したことは一度もない。大前氏は新自由主義、グローバリズムの旗手であり、「平成維新の会」の活動は「維新」とは正反対のまやかしの改革運動だと見てきた。だが、このたびの橋下氏への助言・忠告だけは、同意できるものである。問題は、橋下氏に大前氏の助言・忠告に耳を傾ける姿勢があるかどうかである。

 

(4)佐伯啓思氏は「維新」のジャコバン化を警戒

 

 橋下氏を評価し、期待を寄せる有識者がいる一方、橋下氏を保守ではないと批判したり、独裁者として警戒したりする有識者もいる。

 京都大学教授の佐伯啓思氏は、産経新聞2月20日号に、「『維新の会ブーム』の危うさ」と題する一文を載せた。佐伯氏は経済学者で社会思想史家である。橋下氏を1990年代以来の改革論の延長線上にある「急進的改革派」と見て、佐伯氏は強く警戒している。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120220/lcl12022003170000-n1.htm

 佐伯氏は、次のように述べる。「維新の会の政策は、脱原発のように昨年の事態を受けたものは別として、基本的には1990年代以来の『改革論』の延長上にある。いや、それをもっと徹底したものである。経済的にはグローバル化、市場競争主義、短期的な成果主義、能力主義という新自由主義路線への傾斜であり、政治的には、脱官僚化、強力な政治的リーダーシップ、地方分権、財政再建であり、これらは、この十数年の『改革論』そのものである。首相公選なども議論として目新しいものではない」

 「この十数年の『改革』が何をもたらしたのか、そのことを少し踏まえれば、この急進的改革派に対して強い警戒が先立つのが当然ではないのか」

 「グローバル化の功罪、金融自由化の功罪、日本的経営の崩壊の意味、二大政党政治の功罪、小選挙区制やマニフェストの問題、これらの問題を、自民も民主も整理できていない。むろん、マスメディアやジャーナリズムとて同様である。この間隙(かんげき)をついて、明治の『革命』を想起させるような『維新革命』が『民意』をえる。フランス革命において、ジャコバン派が一気に勢力を拡張したのは、あらゆる党派が権力抗争に消耗しているときに、権力の空白を縫って、ただ『民衆の友』というスローガンを掲げたジャコバン派に誰もが反対できなくなったからだ、といわれている。むろん、時代も状況も違うがそうなってからでは遅いのだ」と。

 佐伯氏は、橋下氏を小泉=竹中政権の新自由主義路線を徹底しようとする者ととらえている。さらに佐伯氏は、「維新の会」ブームに危険性を感じ、「維新の会」をジャコバン派になり得るものとたとえる。氏の論を敷衍すると、「維新の会」がジャコバン化するとき、橋下氏は独裁者ロベスピエールとなる、とも言えるだろう。

 新自由主義への傾きについては、橋下氏自身次のように言っている。「僕は、競争を前面に打ち出して規制緩和をする。小泉・竹中路線をさらにもっともっと推し進めることが、今の日本には必要だと思っている」と。平成22年(2010)6月8日、民主党政権が菅直人内閣に代わった時の発言である。「小泉・竹中路線をさらにもっともっと推し進める」、――橋下改革が日本で行われるとすれば、橋下構造改革であり、1990年代からの橋本・小泉・橋下構造改革となる。(註 最初の「橋本」は橋本龍太郎)

 ここで橋下氏の経済政策について一言しておきたい。橋下氏の言うことは、しばしば変化するが、経済政策は新自由主義的であり、この点は変わっていない。本年(24年)3月4日には、フジテレビの番組で「フラット税制がよいと思う」と語った。維新版八策骨子にも「超簡素な税制=フラットタックス」とある。フラット税制は、レーガン政権が行った新自由主義的な税制である。法人税と所得税を極端に低くし、一部の富裕層と株主や経営者の所得を最大にする政策だった。結果は当初の見込みに反して、大幅減税で税収が激減し、財政赤字が拡大した。橋下氏はそのことをよく理解しているのだろうか。

 橋下氏はフラット税制を語る一方で、ベーシックインカムの導入を説く。これは国民に一律月7万円を支給するという政策である。セイフティネットというより、社会民主主義的な政策である。競争や自立、自己責任とは正反対の考え方であり、過度の再配分は国民の依存心を強め、青年層の勤労意欲を削ぎ、デフレを悪化させるだろう。しかも、実施には107兆円もの予算がいる。歳入の税収が40兆円を切るなかで、どうやって原資を確保するのか、私は首をかしげる。選挙で票を集めるための悪しきバラマキ政策ではないのか。

 

(5)藤井聡氏は「嘘つき」発言で最大限に警戒

 

 最後に、有識者のうち最も強く警戒を訴えているのは、京都大学大学院教授の藤井聡氏だろう。藤井氏の専門は、土木計画学、交通工学、公共政策のための心理学。日刊建設工業新聞3月29日号に、藤井氏は、「心ある日本国民は“橋下維新”を徹底的に警戒すべし」という題の文章を寄せた。藤井氏はその未編集稿で言う。

http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/index.php/b4/job/151-ishin-keikai.html

 「もしも維新の会が国家権力を掌握し、彼等が言う『八策』が推進される未来が来たとすれば、日本国民は民主党政権に対して差し向けた後悔の念を遙かに上回る後悔の念を後日抱くこととなろう。なぜ筆者がこれを『断定』できるのかと言えば、それは橋下氏が次のようなセリフを口にしていることを筆者は知っているからである。

 『政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ。その後に、国民のため、お国のためがついてくる。自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならないわけよ。....別に政治家を志す動機付けが権力欲、名誉欲でもいいじゃないか!....ウソをつけないヤツは政治家と弁護士になれないよ!嘘つきは政治家と弁護士のはじまりなのっ!』

 これは(今では絶版となっている)『まっとう勝負』なる彼の書籍の中の言葉である。この言葉からは、彼の政治家としての発言に疑義を抱かざるを得ない。もちろんこれを直接彼に指摘すれば『そんな事はない!』と理路整然と反対するだろうが、一旦上記のような発言をしている以上は、その反論そのものが本当であるのかという疑義を拭うことは原理的に不可能だ。日本国民は、この『真実』を知らねばならない。そして、その上で、橋下氏の発言や行動には最大限の警戒心を抱かねばならぬのである」と。

 藤井氏が引用しているのは、橋下氏自身の発言である。橋下氏は弁護士から政治家になった。ウソをつけないヤツは政治家と弁護士になれず、嘘つきは政治家と弁護士のはじまりだとすれば、橋下氏は嘘つきだから弁護士になることができ、さらに政治家になることができた。政治家を志した動機は、自分の権力欲、名誉欲だということになる。藤井氏が強く警戒を訴えるのは、橋下氏が自ら発した言葉によっている。

 

(6)橋下氏の人物・資質をよく見極めよう

 

 堺屋太一氏、佐々淳行氏、大前研一氏、佐伯啓思氏、藤井聡氏の5名の有識者による橋下評を書いてきた。堺屋氏は橋下氏を「平成の信長」に成り得ると見ているが、信長は単に経済・社会・行政の改革をやった改革者ではない。彼こそ軍事の天才であり、安全保障の達人だった。信長が現代日本にいたら、大胆に安全保障の強化を図るだろう。

 堺屋氏は橋下氏に国内改革を主に期待しているようだが、橋下氏がやろうとしているのは、佐伯氏が指摘しているように1990年代の新自由主義による改革の徹底である。佐伯氏は、維新の会がジャコバン化する恐れを指摘している。

 佐々氏は、危機管理のプロフェッショナルだが、橋下氏をロベスピエールではなく坂本龍馬と並べ、「100年に一人の政治家」と見て、多くの要望を挙げている。だが、期待ばかりが先走っていないか。その点、大前研一氏は、橋下氏を「ビジョナリー・リーダー」と評価しながら、10年かけて大阪で実績を積め、今のまま国政に進出したら100%失敗すると助言する。特に「目的と関係ないパフォーマンスのような”余計な喧嘩”は厳に慎むこと」という一言は、橋下氏を知る者ならではの忠告だろう。

 藤井氏は、橋下氏を強く警戒する。大規模自然災害への対応を訴えている藤井氏の危機意識には、橋下氏の言動にビーンと響くものがないのだろう。それどころか、藤井氏は、「ウソをつけないヤツは政治家と弁護士になれないよ!」という橋下氏の放言に危険性を感じ、国民に周知を図っている。

 信長か、龍馬か、ロベスピエールか。ビジョナリー・リーダーか、それとも唯の嘘つきか。国民は、橋下徹という若い政治家をよく見極める必要がある。橋下氏に限らず、政治家は国民がしっかりした姿勢を示せば、よい働きをするし、国民が漫然としていれば、国をおかしな方向に進める。国民次第で、その人物の優れたところが発揮されるか、逆に悪い部分が動き出すかが決まってくる。国民が真剣に国家社会のことを考え、国政に積極的に関わることこそが、最も重要なことであると私は思う。ページの頭へ

 

第3章 国民の期待と橋下氏の大きな課題

 

(1)「橋下徹総理」を63%が支持

 

 橋下徹氏については、有識者の間で大きく評価が分かれている。一般の国民の間にも、いろいろな見方がある。現状は、国民の間では橋下氏を高く評価し、その活躍に期待する人の方が多いようである。私は次の衆院選挙で新たな連立政権が組まれる場合、「大阪維新の会」を取り込むため、橋下氏を総理に立てる可能性はあると考えている。現時点で可能性は高くはないが、細川護煕内閣の前例がある。それだけに私は、国民は橋下徹という政治家を、よく見極める必要があると思っている。

 「週刊文春」は4月下旬、同誌のメールマガジン会員を対象に「あなたは橋下総理を支持しますか?」との緊急調査を実施した。ズバリ「橋下徹総理」と問うている。まだ国政選挙に出たこともない政治家を「総理」として支持するか、というアンケートを、私は過去に知らない。

 「週刊文春」は、そのアンケート結果を平成24年5月17日号に載せた。「あなたは橋下徹総理を支持しますか?」という質問に、587人が回答し、うち370人が「支持する」と答えたという。「支持率」63%。驚異的な数字である。

 文春の記事で、川上和久明治学院大学教授(政治心理学)は、「この調査に回答した読者は政治に関心があり、選挙に行く可能性が高い層が、自ら理由を書き、主体的に答えているのが特徴」だと言う。文春の政治記事は全体に辛口である。私は文春には特に橋下氏を持ち上げる姿勢を感じない。「SAPIO」などとは違う。その文春の読者の回答結果が支持率63%だから、他の媒体が同じ質問で調査したら、もっとこの数字を超えるだろう。国民の間での橋下氏への評価と期待の高さは、半端なものではないことがわかる。

 文春の記事によると、支持の理由の大半は「今の政治家への批判」「独裁的であっても、リーダーシプと実行力に期待」というもの。不支持の理由は、「その裏返して、独裁や言動の危うさを指摘するものが目立った」という。

 調査には高知県を除く全国の都道府県在住者が回答があった。大阪では72.4%が支持とやはり高い。関西では軒並み高く、兵庫66.7%、京都76.5%とのこと。

 世代別では、若い世代ほど支持が高い。30歳代が68.5%と最も高く、40代67.8%、20代以下66.7%と続く。逆に50代60.3%、60代53.8%、70代以上40.7%と年齢層とともに下がっていく。

 文春の記事は、「若い世代に多いのは『ともかく今の状況を何とかしてほしい』という閉塞状態への期待だ」「既成政党への不信が、橋下氏への支持を高めている」と書き、最後に「橋下氏は(略)希有な政治家であることは間違いない。ただ彼の言動に少しでも『嘘』が見えたなら、国民の心は一気に離れていくだろう」と結んでいる。

 私は、この最後の「言動に少しでも『嘘』が見えたなら」という文言を注視する。

 先回、藤井聡氏の橋下評を書いた際、橋下氏が著書『まっとう勝負』で述べている言葉を引用した。それと響き合うからである。

 「政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ。その後に、国民のため、お国のためがついてくる。自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならないわけよ。....別に政治家を志す動機付けが権力欲、名誉欲でもいいじゃないか!....ウソをつけないヤツは政治家と弁護士になれないよ!嘘つきは政治家と弁護士のはじまりなのっ!」と。

 この橋下氏の「嘘つきは政治家と弁護士のはじまりなのっ!」とう言葉と、文春の記事の結尾、「ただ彼の言動に少しでも『嘘』が見えたなら、国民の心は一気に離れていくだろう」という言葉は、強く響き合う。

 政治家には、さまざまな能力が求められる。指導力、統率力、実行力、判断力、先見力等。デモクラシーにおいては、大衆の人気を得る魅力もなければならない。だが、そうした能力だけでなく、政治家には人徳も求められる。東洋の伝統的な政治思想では、むしろ実務的な能力よりも、徳こそが指導者に求められてきた。「論語」や「孟子」「大学」「中庸」等の古典は、君子の修めるべき徳を説いている。わが国では、その徳の中心に、しばしば「まこと」が挙げられる。真実や誠意であり、嘘のないことである。橋下氏の言う「嘘つき」とは正反対のものである。

 橋下氏が今後、大衆の期待に応えて国家指導者を目指すのであれば、先ほどの嘘つき発言を撤回し、政治家として徳を磨くということが欠かせない課題である。

 

(2)橋下氏は自分を批判する者を口汚く罵倒

 

 政治家には、能力とともに人徳が求められる。橋下氏が大衆の期待に応えて国家指導者を目指すには、徳を磨くことが求められる。この点、橋下氏の課題は大きい。

 雑誌「SAPIO」平成24年5月9日・16日号で、漫画家の小林よしのり氏と京都大学准教授の中野剛志氏が対談し、橋本氏を論じた。両氏は橋下氏にかなり厳しい評価をしている。まず両氏の発言を対談から抜粋して大要を示し、その後、橋下氏の発言を掲載する。このやりとりを通じて、政治家として徳を磨くという課題の重要性を述べたい。

 

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●雑誌「SAPIO」平成24年5月9日・16日号 小林よしのり氏と中野剛志氏の対談「橋下徹の愛国度を仕分けする」(抜粋)

 

 小林:わし、橋下徹の「維新の会」は小泉構造改革と同じ流れだから、「どうせまた改革派だろ」のひと言で済むと思っていたんだよ。しかし今は政党政治が混沌とした状態で、自民党も構造改革路線を総括していない。すると国民は橋下徹の新しさに注目してしまう。その影響力を考えると、やはり一度仕分けしておく必要があるね。

 中野:「維新の会」の政策は、90年代から00年代初頭にかけて流行して失敗した構造改革の焼き直しです。「維新の会」に集まった60代や70代のブレーンが40代、50代の時から主張し続けてきた政策で、時代遅れも甚だしい。そのせいで「失われた20年」になったわけですが、たしかに構造改革の総括をしていないから、再びこれが台頭してくるんでしょうね。

 小林:彼らの主張は、憲法9条改正や国旗国歌の問題、靖国参拝など、わしが過去に取り組んできたテーマばかり。で、すでに自虐史観を相対化するところまでは成功したわけ。だから、保守と称する連中がいまだにその話をしていると「まだそれが好きなのか」とウンザリするんだ。

 

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 中野:タレント弁護士としてテレビで下品な発言をくり返し、政治家になってからもツイッターで他人の悪口を垂れ流している人に魅力を感じるようでは、救いようがないですよ。橋下徹は『まっとう勝負!』(小学館)という著書の中で、「(政治家は)自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならないわけよ」「ウソつきは政治家と弁護士の始まりなのっ!」とまで書いている。政策である「船中八策」のレベルも低い。「参議院っていらないよな」とか「首相はみんなで選んだほうがいい」とか、政治に興味を持った中学生が考えるようなレベルのことでしょう。大学生がこんなレポートを書いたら、私は不可をつけますね。

 

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 小林:「大阪都構想」という言葉遣いも歴史認識が保守らしくないよね。東京都への嫉妬心や対抗心から「大阪だって都だ!」と子供のように言ってるだけで、「都とは何か」をまるで考えていない。ところが誰も「大阪に遷都するつもりか?」とツッコミを入れようとしない。

 中野:「維新」という言葉の使い方にも、歴史認識のズレを感じます。明治維新の時、日本は欧米列強と戦うために地方分権的な幕藩体制をやめ、廃藩置県によって中央集権体制に変えました。ところが「維新の会」は地域主権を主張している。

 小林:逆さまだよね。

 

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 中野:(略)世界がグローバル化したからこそ、これからは国家が強化して、国民が一致団結しないといけません。TPPが典型ですが、グローバル化は多様な社会を画一化するので、北海道から沖縄にいたる地域の多様性が奪われる。だから、地域を大事にしたいなら、中央政府が力をつけて国にシールドを張り、外国資本や海外市場の変動から国内の多様性を守るべきでしょう。しかし「維新の会」が提唱する道州制は、国の権限を地方に移すので、国家が弱体化します。超大国のアメリカですらグローバル金融市場を制御できなくて困ってる時に、日本を分割して対抗できるわけがない。ところが彼らは道州制を掲げて国家を弱めつつ、TPPのようなグローバル化は受け入れる。

 小林:要するに、グローバリズムにどう対処すべきなのか、国民も知識人も政治家もわからなくなっているんだよ。()

 

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 小林:()「君が代」や靖国参拝は、もはや愛国心の証明にはならない。アメリカ追従の新自由主義的な政策は間違いだったことが明らかなのだから、まずはそれを総括すべきなんだ、

 中野:道州制や首相公選制も、要はアメリカの大統領制や連邦制に憧れているだけ。そのうち「大阪都」では飽きたらず、「大阪合衆国」とか言い出すんじゃないでしょうか。そんなのは、USJの中だけにしてほしいですよ。

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 橋下氏はこの対談を読んだに違いない。4月27〜28日ツイッターに猛烈な書き込みをし、激しく小林よしのり氏と中野剛志氏を口撃した。その全文を記す。便宜上番号を振る。

https://twitter.com/#!/t_ishin

 

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●橋下徹氏のツイートでの発言

 

◆平成24年4月27日

 

@「中野剛志もしょうもない思い上がり識者だったか。残念だ。だいたい、年下のくせに面識のない俺を呼び捨てにすんじぇねえよ。霞が関の官僚で大学の准教授。最悪のタダ飯ぐらいルートだろ。こういう奴らは税金でふんだんな時間を与えられて、朝から晩まで責任のないことをやっている。」

A「なんなんだろうね。一度も面識のない相手に、ほんとこういうもの言いができる大人がいるって言うのも日本もダメになったよな。もう自分が絶対に正しい、自分以外は間違いってな調子。しかもこの年齢で。勘違いも甚だしいね。これまでやった仕事もたいしたことのないもんだろ。口だけで。」

B「口ばっかりであーでもない、こーでもないと言うだけでなく、何か一つでも実行してみろって言うの。こういう人間を大量に生み出してきた日本のシステムが問題だ。俺が人の悪口ばかり言ってるって?俺はね、面識もないのに非常識な物言いをする人間に対して同じ言い方をしてるだけだ。」

C「ツイッターで罵るのは、先にこっちに対して罵って来た者に対して同じ調子で言い返しているだけ。TPP亡国論とか言う本で、世間の逆張りを張って多少注目されて勘違いしちゃった典型例。もうこれで日本のインテリ層の仲間入りってもんだ。やれやれ。」

D「小林よしのりは、税金で飯は食っていないので中野剛志よりも多少はましかはしらんが、ようは口だけで、何もやっていない奴。二人似た者同士で語り合っていたら良いが、住民が困っていることを何が一つでも解決しろよ。保守だ、国だと偉そうなフレーズは口に出すが、要は暇児なだけじゃねえか。」

E「こっちも公人だから批判はいいが面識のない相手を呼び捨てにするな。偉そうなことを言う前に最低限の社会人マナーを身につけろ。お前らが考えているほど現実の行政を切りまわすのは楽じゃねえ。中野は官僚辞めてるんだろうな。官僚身分のままで大学で時間もらって生活してるって究極のぷータローだろ!」

F「僕はね、非常識な相手には非常識で討ち返す。常識な相手には当然常識に。日本の識者と称する輩にはほんと非常識が多いね。しかしこの中野剛志、また官僚に戻るっていうなら、ほんと恐ろしいね。寒気がする。こいつは一体何様のつもりで公務員をやるんだろうか・・・・・」

G「小林よしのりももう少しまじめに勉強しろよな。大阪都構想を、大阪を都にすることだって。やれやれ。バカか。大阪府と市の行政機構を変えるという話なんだよ。どんな目的で何をやろうとしているのか、これまでの経緯も含めてもう少し勉強してから批判しろ。」

 

◆平成24年4月28日

 

H「小林よしのりや中野剛志、共通するのは批判はするが、今の現実の課題に対しての具体策は一つもなし。批判は楽。具体策を提示し、実行するのは死ぬほど大変。人間の考える策に完璧なものなどない。批判しようと思えばいくらでも粗捜しはできる。それでもやらざるを得ない。これが現実の政治・行政。」

I「小林よしのりと中野剛志の共通点は、自分の論こそ絶対に正しく、その他の論は全て愚。自分と反対する人間は全てバカ。自分こそが今の日本を引っ張っているという勘違い。それと非常識。まあ僕の嫌いな自称インテリ層の典型だ。僕は学者が嫌いなんじゃない。学者さんの多くに知恵を頂いている。」

J「小林よしのりは、東京都の「都」が、天皇陛下がいらっしゃる「都」と勘違いしている。もう少し勉強しろ。東京都の都は行政体の名称だ。1943年、東京府と東京市が合わさって東京都になったに過ぎない。首都とは関係ない。大阪都構想も府と市を再編する行政機構の変革。」

K「現在「都」と呼ぶしかないから都構想と言っているだけだ。他の名称があればそれで構わん。それを「橋下は都とは何かをまるで考えていない」だって?お前が考えていないんだよ!また自分の漫画で、日本の自虐史観を相対化することができただって?おいおい頼むよ。ガキ相手にしてただけじゃねえか。」

L「そして中野剛志、こういう官僚こそが国賊だね。中野は、少しネットでちやほやされたらもう一流学者、日本の論客入りという認識だ。維新八策が中学生レベルの内容で大学生がこんなレポートを書いたら私は不可を付けますよだって?おいおい、誰が中野の講義を聞くんだよ。維新の会にそんな暇人はいない。」

M「そもそも維新の会の政治塾の講師陣にあなたはノミネートに全く上がりもしない。自分が上で他は下という思い上がりは正しなさい。公の場で下品な悪口を垂れ流さないのが礼儀とか日本人らしい振る舞いだとすれば、橋下はそれをぶち壊しているだって?俺は下品な奴に下品で返しているだけだ。」

N「中野の著書やその他をざっとチェックしたらこりゃ酷いね。TPP亡国論では結構しっかり論じてるのかなと思ったら、ちょっと注目されたらまあ下品で無責任な悪口のオンパレード。批判はするが具体策は一切ない。何よりも、経産省のひも付きで大学に行ってやがる。」

O「税金で自由な時間をたっぷりもらって好きなお勉強をして学生相手にくっちゃべって、そりゃ気楽ご気楽だぜ。ある雑誌に、「私は地方選挙に興味がない」「大阪で起きたバカげた政治運動」だと。ネットでは、「今こそ国の行政組織が強くならなければならない」「計画経済が必要だ」と。」

P「国が偉くて、地方の田舎のことなんかどうでも良いって認識がありありと出ている。大阪のバカげた政治運動って、どこまで有権者をバカにするのか。こういう官僚は選挙を、政治をとことんバカにして、官僚こそ全てって認識なんだろう。大阪の動きは大阪府民の選択だ。」

Q「政治家は専門家ではない。大学教授のように好きなだけ勉強できる時間はない。だから大きな方向性を示して、中身は専門家に委ねる。実行するときには様々な政治的な障壁に出くわすから、それを突破するのが政治家だ。これは専門家にはできない。政治家と専門家の役割分担だ。」

R「だから専門家は、政治家の実行しようとする政策について具体的に批判をし、対案があるなら対案を示すのが役割だ。特に中野のように官僚を一旦辞めた形にして大学に出向し、また官僚に戻る輩は、それが義務だ。それをやらなきゃ税金の無駄遣いだろ。」

S「こちらは現実の行政組織を動かすのに日々のマネジメントがあり、日々現実の課題にぶち当たっている。大阪市役所のHPに日々のスケジュールと課題が掲載されているから、もっと具体的に批判して来い。維新の考えが90年代初頭のままだって?レッテル貼りで批判する一番楽な道を選ぶな。」

㉑「そんなことを言えば、中野の考えなど大宝律令の時代のままだろ。政治家は価値観や方向性を示す。確かに僕らは、自由や競争を重んじる。制度改革や統治機構改革の必要性を感じ、自由貿易を重んじる。中野の価値観と正反対なのだろう。しかし政治はその時代や状況に合わせた舵とりだ。」

㉒「方向性を国民が定めたら中身を考えるのは専門家だ。中野剛志、もう一度官僚に戻るなら、「売国奴に告ぐ」など、国民をバカにしたタイトルの本を出すな。お前のその自由時間は税金で賄われている。官僚だったからこそ、今のいい身分が与えられている。」

㉓「今は大学准教授だから、何を言っても自由だなどと勘違いするな。それなら官僚の身分を完全に捨て去れ。お前のように身分保障に甘えた官僚が日本をダメにした。税金で自由時間を与えられたのは、調子に乗って毒を吐くためじゃない。しっかり勉強して国民に還元しろ。」

㉔「中野剛志、俺を呼び捨てにするなら、俺の目の前でやれ。批判をするなら大阪市政において具体的な批判をしろ。公務員改革でも外郭団体改革でも何か一つでも具体案を提案しろ。学生相手に授業をやって、ネットでちやほやされて調子に乗るな。お前は官僚だ。」

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 ツイッターは一回の掲示が140文字以内。橋下氏は、連続して24回掲示している。その言葉遣いは下品で粗野。反論というより、口汚くののしる喧嘩口調。政治家としての能力はあるとしても、品格がなさ過ぎる。有識者の中には、堺屋太一氏、佐々淳行氏、大前研一氏らのように、橋下氏を高く評価し、日本の改革者として大きな期待を寄せる人たちがいるわけだが、各氏にはこのツイートを読んだうえで、再度橋下評を述べてもらいたいものである。

 

(3)国政を担うには大きな課題が

 

●橋下氏は自ら品格のなさを暴露

 橋下徹氏のツイッターでの小林よしのり氏、中野剛志氏への批判の仕方は、橋下氏自ら品格のなさを暴露したものだろう。

 まず橋下氏は、面識のない者が自分を呼び捨てにするのは、けしからんと怒る。引用における橋下氏の発言の丸文字番号は、先回掲載したツイッターの発言番号である。
 中野氏は橋下氏と面識がないらしい。年齢は2歳年下である。橋下氏はその中野氏に言う。@「だいたい、年下のくせに面識のない俺を呼び捨てにすんじぇねえよ」、A「なんなんだろうね。一度も面識のない相手に、ほんとこういうもの言いができる大人がいるって言うのも日本もダメになったよな」、E「こっちも公人だから批判はいいが面識のない相手を呼び捨てにするな。偉そうなことを言う前に最低限の社会人マナーを身につけろ」
 面識があろうがなかろうが、著名人の場合、「氏」「さん」などつけずに論評したり、引用したりするのは、よくあることである。まして政治家は「公人」であり、「敬称略」で論じることは社会通念上、問題にならない。橋下氏は、中野氏が2歳年下なのに呼び捨てにしたと憤慨しているが、2歳程度の差で呼び捨て云々が口論になるのは、高校生くらい、せいぜい20歳程度までだろう。年上の者がことさらに年齢差を持ち出すのは、一種の威圧のつもりかもしれないが、心理的に幼い態度である。

 橋下氏は一方では、年上の小林よしのり氏を呼び捨てにしている。面識があれば、呼び捨てでよいというものでもないだろう。まして命令口調は、非常識だろうが、橋下氏は言う。G「小林よしのりももう少しまじめに勉強しろよな。大阪都構想を、大阪を都にすることだって。やれやれ。バカか。大阪府と市の行政機構を変えるという話なんだよ。どんな目的で何をやろうとしているのか、これまでの経緯も含めてもう少し勉強してから批判しろ。」、K「現在「都」と呼ぶしかないから都構想と言っているだけだ。他の名称があればそれで構わん。それを「橋下は都とは何かをまるで考えていない」だって?お前が考えていないんだよ!また自分の漫画で、日本の自虐史観を相対化することができただって?おいおい頼むよ。ガキ相手にしてただけじゃねえか。」。
 2歳下の中野氏に「最低限の社会人マナーを身につけろ」等と説教をする橋下氏は、15歳ほども年長の小林氏に対して、この口調である。私は、本稿の第三回に「教育改革を先導する者は、政治家であれ、教育者であれ、保護者であれ、自身の言動に気を付けねばならない。青少年は大人の言動をよく見ているからである。橋下氏は、この点、言動において失格である」と書いたが、猛省を求めたい。

 橋下氏は、中野氏が経産省の官僚でありながら、現在京都大学の准教授をしていることをもって、罵声を浴びせる。@「霞が関の官僚で大学の准教授。最悪のタダ飯ぐらいルートだろ。こういう奴らは税金でふんだんな時間を与えられて、朝から晩まで責任のないことをやっている。」、E「中野は官僚辞めてるんだろうな。官僚身分のままで大学で時間もらって生活してるって究極のぷータローだろ!」、㉔「学生相手に授業をやって、ネットでちやほやされて調子に乗るな。お前は官僚だ。」
 官僚には有能な者、勤勉な者もいれば、そうでない者もいるだろう。一緒くたにして官僚を批判するのは、間違いである。また官僚が大学に出向することは制度に基づいてなされていることである。大学教員は教育・研究・経営などの業務を担っている。その実績に基づいて評価されるべきである。
 中野氏に限らず、中央省庁の官僚も国立大学の教員も職業を持ち、労働をして給与を得ている。それを、「究極のぷータロー」と呼ぶのは、まったく意味をなさない。なお、国立大学は平成16年に法人化され、教職員は非公務員となっている。省庁から法人への出向者の給与は、法人側が全額または一部を負担するだろう。
 また橋下氏は以前、「中野剛志とは考え方は違うが話ができる人間だと思っている」といった肯定的な評価をしていた。ところが、自分が批判されると、一転して、C「TPP亡国論とか言う本で、世間の逆張りを張って多少注目されて勘違いしちゃった典型例」、O「税金で自由な時間をたっぷりもらって好きなお勉強をして学生相手にくっちゃべって、そりゃ気楽ご気楽だぜ。」等と罵倒。この間、中野氏の立場は変わっていないから、要は自分を批判する者への感情むき出しの反発である。
 橋下氏がこれほど自分への批判に敏感に反応するのは、本当の自信がないからだろう。真の実力者は、世人の批評に浮かれも沈みもせず、どっしりと構えて、自らを顧み、自らの信じる道を進む。そのことを橋下氏には知ってほしい。子犬のようにキャンキャン吠えるのではなく、土佐犬のように悠然と構えてもらいたいものである。

 

●幼く独裁者的な性向

 橋下氏の小林氏・中野氏への口撃から、橋下氏は自分を批判する者は許さないという、独裁者的な要素を性格の中に持っていることがうかがわれる。

 橋下氏は、小林氏・中野氏に対して、「口だけで、何もやっていない奴」だと断じる。D「小林よしのりは、税金で飯は食っていないので中野剛志よりも多少はましかはしらんが、ようは口だけで、何もやっていない奴。二人似た者同士で語り合っていたら良いが、住民が困っていることを何が一つでも解決しろよ。保守だ、国だと偉そうなフレーズは口に出すが、要は暇児(ほそかわ註 暇人?)なだけじゃねえか。」、H「小林よしのりや中野剛志、共通するのは批判はするが、今の現実の課題に対しての具体策は一つもなし。批判は楽。具体策を提示し、実行するのは死ぬほど大変。人間の考える策に完璧なものなどない。批判しようと思えばいくらでも粗捜しはできる。それでもやらざるを得ない。これが現実の政治・行政。」等と述べる。
 確かに橋下氏は政治家として現実の課題に取り組んでおり、改革には大変な苦労があるだろう。だが、行政の実務をやっていなければ政治家を批評できないとすれば、一般市民は政治家を批評できないことになる。言論人は言論を通じて国民を啓発し、社会に貢献することができるのであって、橋下氏の小林氏・中野氏への反論は、自分への批判を抑え込むための口封じに過ぎない。
また税金で飯を食うというだけで、その人間はダメだということであれば、公務員はみなダメだということになる。大阪市長も税金で給与を得る公務員である。それで飯を食っている橋下氏自身もダメだということになる。

 橋下氏は、I「小林よしのりと中野剛志の共通点は、自分の論こそ絶対に正しく、その他の論は全て愚。自分と反対する人間は全てバカ。自分こそが今の日本を引っ張っているという勘違い。それと非常識。まあ僕の嫌いな自称インテリ層の典型だ」と批判する。中野氏に対しては、M「自分が上で他は下という思い上がりは正しなさい。公の場で下品な悪口を垂れ流さないのが礼儀とか日本人らしい振る舞いだとすれば、橋下はそれをぶち壊しているだって?俺は下品な奴に下品で返しているだけだ。」と反撃する。
 だが、「自分の論こそ絶対に正しく、その他の論は全て愚。自分と反対する人間は全てバカ。自分こそが今の日本を引っ張っているという勘違い。それと非常識」という橋下氏の言葉は、橋下氏自身に返っていくだろう。
 小林氏は漫画家だが、漫画を表現手段とする政治評論家・ジャーナリストともいえる人物である。小林氏は著書『希望の国・日本』で9人の政治家と対談している。対談の相手は、安倍晋三元首相、石破茂元防衛相、平沼赳夫元経産相、加藤紘一元内閣官房長官、原口一博元総務相や稲田朋美、高市早苗、城内実、田村賢治の国会議員各氏。これらの政治家に、橋下氏のように小林氏を軽侮する者はいない。
 政治家には能力だけでなく人徳を求められる。自分を批判する者に対しても、礼節を持って接し、論理的にも心情的にも相手を信服させる度量がなければ、指導的な政治家にはなれない。私は、橋下氏に自分の言動を反省して、努力・精進してほしいと思う。国政を目指すなら、徳を磨くことが必要である。

結びに〜大阪で実績を積み、徳を磨け

 橋下氏がツイッターで、小林よしのり氏・中野剛志氏を激しく口撃したのは、本年(平成24年)4月27日から28日にかけてだった。この平成24年(2012)4月28日は、わが国が独立を回復して60年という記念すべき日だった。自民党はこの日に合わせて憲法改正案を発表した。みんなの党、たちあがれ日本は新憲法大綱を発表した。この日をめざして、4月28日を主権回復記念日とする法案を制定しようという動きもあった。そういう日に橋下氏は、小林氏・中野氏相手への口撃に躍起になっていた。天下国家のことではなく、自分を批判する者への私的な反論に過ぎないことにである。橋下氏は歴史観・国家観において認識を疑われる点があるが、日本人として自覚が浅く、政治家として意識が低いと言わざるを得ない。歴史観・国家観の弱さがこの4月27〜28日という時期における橋下氏のツイートによく出ていると思う。天下国家の大志より自分の権力欲・名誉欲に傾いてはいないか。
 本稿の冒頭に書いたように、私は橋下氏の現状打破への情熱、改革への意思を高く買う者だが、橋下氏は基本的な姿勢、精神に欠けたものがあり、国家的な政策案にそれが表れていると思う。橋下氏にはその点を自覚・認識して、改善・向上を図ってほしいと願っている。そして、日本人としての自覚を深め、歴史観・国家観を築き直してもらいたいと思う。
 いま橋下氏がなすべきことは、視聴率稼ぎのマスメディアに乗せられることなく、一部国民の肥大する期待に浮つくことなく、まず大阪で府・市一体の改革に打ち込み、じっくり実績を上げることである。大阪を変えるのは、なま易しい課題ではないはずである。誰もが認めるだけの結果を出してから、国政に歩を進めるべきだろう。大阪改革をやる間に、歴史観、国家像、憲法、外交・安全保障、経済等につき、深く勉強し、国政の構想を練ることができるだろう。何より国政を目指すなら、これまでの自分の言動を恥じ、時間をかけて徳を磨くことである。この点に、橋下氏が政治家として飛躍できるかどうかが大きくかかっていると思う。ページの頭へ

 

関連掲示

・拙稿「橋下『維新八策』は改訂版も未だ『?』

 本稿の後に書いた続編

 

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